- 40代・50代の静かな退職の実態
- 40代・50代が静かな退職を選ぶ原因
- 静かな退職を防ぐための企業の対策
- 静かな退職に効果的なツール
「静かな退職」が当たり前になっている昨今、40代・50代の中堅層にも広がりを見せ、企業にとって見過ごせない課題となっています。
静かな退職は、仕事への価値観の変化やキャリアの停滞、ワークライフバランスの重視などによって引き起こされます。企業は、これらの要因を未然に防ぐことが重要です。
本記事では、40代・50代の静かな退職の実態や背景、企業が取り組むべき対策について詳しく解説します。
また、静かな退職防止に欠かせないポイントやツールも紹介するので、ぜひ最後までお読みください。

調査結果から読み解く!40代・50代の「静かな退職」
「静かな退職」という言葉が広まるなかで、その実態は年齢層によって異なることが見えてきました。とくに40代・50代の「静かな退職」には、どのような特徴があるのでしょうか。
ここでは複数の調査結果をもとに、静かな退職の背景や実態を以下2つのポイントから深掘りしていきます。
静かな退職は、単なる働き方の変化ではなく、キャリアの停滞や組織の課題とも密接に関わっています。
まずは、その定義から整理していきましょう。
そもそも静かな退職とは
静かな退職とは、仕事への情熱を失い、必要最低限の業務のみをこなす働き方を指します。与えられた以上の仕事はせず、積極的な関与を避けるのが特徴です。
この言葉は、アメリカのキャリアコーチによる動画をきっかけに広まりました。動画がSNSで拡散され、主にZ世代を中心に注目を集めるようになったのです。
以下の記事では、静かな退職の基本を詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

静かな退職の何が悪い?40代・50代の実態と本音
アクシス株式会社が行った、日本国内で働く10代から60代を対象にした調査によると、仕事を「お金を稼ぐ手段」と考える人は83%、「最低限の範囲で」と考える人は81%に上ることが判明しました。
出典:静かな退職(Quiet Quitting)に関する意識調査(PR TIMES)
※情報源:アクシス株式会社(https://axxis.co.jp/)
また、株式会社マイナビの調査では、20~59歳の正社員のうち48.2%が「静かな退職」を実践していると回答。
世代を問わず、仕事への情熱よりも、ワークライフバランスやメンタルの維持を優先する傾向が強いことがうかがえます。
さらに、クアルトリクス合同会社の調査によると、日本では40代・50代の中堅やシニアクラスに静かな退職が多いことがわかっています。
調査の結果、「静かな退職」をしている人々は、「積極的に貢献しようとする意欲は低いが、仕事を続ける意思は強い」という特徴を持つことが分かりました。全回答者のうち、約15%がこのタイプに該当します。
さらに、このグループを属性ごとに分析すると、40代・50代の中堅・シニア層、一般社員、職場での人間関係が希薄な人、業績が平均に達していない人に多い傾向が見られました。
GPTW Japanの調査でも以下のように、静かな退職をする人の7割以上が35歳以上であるという結果が出ています。

調査によると、「静かな退職」をしている人の年齢層を分析した結果、そのうち約30%が34歳以下の若手層であることが分かりました。
参考:GPTW Japan|<調査レポート>「静かな退職」選択のきっかけは企業にあり、7割が「働き始めてから静かな退職を選択した」と回答
こうした調査結果から、多くの人が仕事を生活維持の手段と考え、情熱ややりがいよりも、ワークライフバランスやメンタルヘルスを優先する傾向が強まっていることがうかがえます。
その結果、40代・50代にも、職場との心理的な距離を置く「静かな退職」を選ぶ人が増えているのでしょう。
40代・50代が静かな退職を選ぶ3つの原因
40代・50代の「静かな退職」が増えている背景には、単なる働き方の変化だけでなく、キャリアの停滞や価値観の変化が影響しています。
ここでは、40代・50代が静かな退職を選ぶ3つの原因を見ていきます。
かつては当たり前だった「会社のために尽くす働き方」から、「自分の人生を大切にする働き方」へとシフトしているのです。
それでは、40代・50代が静かな退職を選ぶ原因を深堀りしていきましょう。
1. 仕事への価値観の変化
以前は仕事が生きがいとされていましたが、現在では仕事を生活の一部と考える人が増えています。
前章での調査結果にもあったように、多くの人が仕事を最低限の範囲で行いたいと考え、単なる「お金を稼ぐ手段」として捉える傾向が強まっています。静かな退職を選んだ人の多くが、仕事よりプライベートを優先したいと考えているのです。
また、Z世代の「頑張らない働き方」が、他の世代にも影響を与えている可能性も指摘されています。
とくに注目すべき点は、若手の中にも「静かな退職」を選ぶ人が一定数いることです。急激に増えているわけではないものの、まだ成長の余地が大きく、十分にスキルを伸ばしきれていない若手の間でこの傾向が広がることは見過ごせない問題といえます。
参考:GPTW Japan|<調査レポート>「静かな退職」選択のきっかけは企業にあり、7割が「働き始めてから静かな退職を選択した」と回答
2. キャリアの停滞感と将来への不安
40代・50代の社員が「静かな退職」を選ぶ背景には、キャリアの停滞や将来への不安も大きく関係しています。
「静かな退職」を選ぶ傾向が高い40代・50代の従業員は、年功序列や終身雇用を前提とした人事制度の中で、若手・中堅時代に努力を重ね、将来的な活躍の機会を期待していたと考えられます。
しかし、社会や職場の人事制度が変化し、当初思い描いていたキャリアとは大きく異なる現実に直面したことで、意欲が低下した可能性があります。
昇進やキャリアパスが見えない状況が、仕事への意欲を低下させる要因となっているのです。
さらに、転職の難しさや老後資金への不安が、心理的な焦りや諦めを生み出していると考えられます。年功序列や終身雇用の時代に育った世代ほど、キャリアの見通しが立たなくなり、仕事へのモチベーションを失うケースが多いのでしょう。
実際に「努力しても報われない」との不満が、静かな退職の理由として挙げられています。

「静かな退職」を選んだ理由として最も多かったのは、「仕事よりもプライベートを優先したいと考えるようになった」(38.2%)という回答でした。
次いで、「努力が正当に評価されず、給与にも反映されないと感じた」(27.3%)という理由が挙げられています。
参考:GPTW Japan|<調査レポート>「静かな退職」選択のきっかけは企業にあり、7割が「働き始めてから静かな退職を選択した」と回答
3. ストレス回避とワークライフバランスの重視
40代・50代で「静かな退職」を選ぶ人の多くは、ストレスを避け、ワークライフバランスを重視する傾向が見られます。
長年の業務で疲弊し、責任の重い仕事を回避したいと考える人が増えているのでしょう。家庭や健康を優先する意識が強まり、経済的な安定は求めつつも、過度な業務負担を避ける心理が影響していると考えられます。
これらの要因が絡み合い、40代・50代の「静かな退職」といった働き方につながっているのです。
また、「静かな退職」の言葉を知らなくても、実際にはその働き方をしている人が多いとの調査結果もあります。

「静かな退職(Quiet Quitting)」を知っていると回答した人は31%、聞いたことはあるが意味は分からないと回答した人は17%で合計48%。

自分は「静かな退職をしていると感じる」と答えた人は26%、「ややそう感じる」と答えた人は34%で、合わせると全体の60%に達しました。
参考:静かな退職(Quiet Quitting)に関する意識調査(PR TIMES)
※情報源:アクシス株式会社(https://axxis.co.jp)
企業は、従業員の貢献意欲を維持するために、静かな退職を選択する前の段階から組織改善に取り組む必要があるでしょう。
企業が40代・50代の静かな退職を防ぐための対策5選

企業が40代・50代の社員の静かな退職を防ぐためには、社員の現状を把握し、適切な対策を講じることが重要です。
ここでは、40代・50代の静かな退職を防ぐための企業の対策について、企業事例を交えながら具体的に解説していきます。
※以下の表は右にスクロールできます
対策 | 目的 | 効果 |
---|---|---|
パルスサーベイで静かな退職に関する本音を収集 | 社員が抱える不満や不安をリアルタイムで把握 | 社員への迅速な対応が可能 |
中高年に向けたキャリア研修の実施 | 定年後のキャリアの再設計を支援 | 社員が自らの役割を明確化 |
中高年向け「キャリア再設計プログラム」の導入 | 将来の変化に適応できる力の育成 | 社員の多様なニーズに対応 |
社員のモチベーションを高める仕組みづくり | 組織内での役割や評価制度の見直し | 貢献意欲の高まり |
ワークライフインテグレーションの推進 | 仕事と生活を一体化 | 仕事とプライベートの相乗効果 |
1. パルスサーベイで静かな退職に関する本音を収集
パルスサーベイは、社員の満足度やコンディションを定期的に調査する手法です。短い間隔での実施によって、社員の状態変化を早期にキャッチし、迅速な対応が可能になります。
とくに、静かな退職の兆候を把握するためには、定期的なパルスサーベイの活用が有効です。社員が抱える不満や不安をリアルタイムで把握できれば、適切な対策につなげられるでしょう。
【パルスサーベイの特徴】
- 高頻度で実施する(週1回・月1回など)
- 質問数が少ない(約5〜15問)
- 社員のコンディション変化を早期に把握できる
- エンゲージメントや満足度の測定が可能になる
- リアルタイムなデータ収集に対応している
以下の記事では、パルスサーベイについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

パルスサーベイの資料が必要な方は、こちらからダウンロードできます。
収集したデータをもとに、個別のキャリアカウンセリングを実施し、静かな退職を未然に防ぐための改善策を検討することが重要です。
【株式会社ペンシルの事例】
パルスサーベイ『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を導入後、匿名かつ組織単位のサーベイでは不明だった個人の状態に焦点を当てられるようになりました。
これにより、「いま」困っている人がどれくらいいて、「何に」困っているのかを可視化できるようになったのです。以前は把握できなかった、個々の従業員の不調を早期に発見できるようになった点は大きいでしょう。
同社の『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』導入事例を詳しく知りたい方は、以下の事例を参考にしてください。
パルスサーベイ活用時の注意点
パルスサーベイはあくまで「兆候を把握するツール」であり、導入すれば必ず問題を防げるわけではありません。
調査結果を適切に分析し、必要なアクションを迅速に講じることが、静かな退職の防止につながります。
サーベイの実施にとどまらず、個々の従業員の声に耳を傾けて改善を進めることが重要です。
2. 中高年に向けたキャリア研修の実施
多くの企業が、社員が主体的にキャリア設計を行い、将来の変化に適応できる力を養うことを重視しています。
そのため、60歳以降のキャリアを早期に考える研修を行うことは効果的でしょう。
研修では、定年後の働き方を明確にし、キャリアの再設計を支援することが重要です。働く価値観の転換や貢献戦略の明確化を図り、社員が自らの役割を見出せるよう促すことがポイントとなります。
【研修内容例】
- キャリアビジョンの再構築:新たな働き方の検討
- 働く価値観の転換:「Must」から「Will」への意識変革
- 貢献戦略の明確化:強みを活かし、貢献方法を具体化
- 準備行動の計画:スキル習得や目標設定
- キャリア棚卸し:経験の振り返り、自己分析
- キャリアデザインシート作成:将来のプランの整理
事前課題から始め、研修後には上司とのすり合わせを実施し、実践的な計画を策定すると効果的です。
参考:シニア社員が活躍できる キャリアのつくり方 | 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
【株式会社メガネトップの事例】
キャリアビジョンの明確化や自己分析を通じて、社員の自己肯定感を高め、新たな役割の創出を促進しました。さらに、定年後の働き方を具体的にイメージさせることで、将来への不安を軽減し、エンゲージメントの向上につなげています。
2023年にトライアルで実施した「40代中盤~50代の店長職社員」へのキャリア研修後、85%が「研修がプラスになった」と回答し、95%が「他の従業員にも勧めたい」と答えました。
この結果を受け、2024年には「50歳到達者」を対象に、本格的なキャリア研修を実施しています。
3. 中高年向け「キャリア再設計プログラム」の導入
40代・50代社員が定年後を見据えて働けるよう、キャリア再設計プログラムの提供が求められます。社員の多様なニーズに対応するため、複数の選択肢を用意することが重要です。
【プログラム例】
- キャリアデザイン研修:定年後の働き方を考え、今後のキャリアプランを明確化
- リスキリング支援:新たなスキル習得や資格取得をサポート
- 独立・起業支援:事業計画の立案や起業相談の実施
- 社内キャリアチェンジ制度:異動や新職種への挑戦を支援
- セミリタイア制度:短時間勤務や週休3~4日制の導入
- 再就職支援:転職やセカンドキャリアの選択肢を提供
これらの施策によって社員のキャリア自律を促すことで、組織全体の活性化につなげられるでしょう。
【株式会社明治の事例】
50代社員向けのキャリアデザイン研修を実施。管理職向け・一般職向けの2種類を用意し、キャリアの内省と選択肢の検討、アクションプランの作成を行いました。
研修後、73%の管理職、66%の一般職が「60歳以降のキャリアをイメージできた」と回答。
さらに、研修後の面談でリスキリング支援やキャリア相談を実施し、社員の行動変容を促しています。
4. 社員のモチベーションを高める仕組みづくり
社員の意欲を高めるには、組織内での役割や評価制度の見直しが不可欠です。とくに、成果に応じた公平な評価を行うことで、やりがいや満足感が向上し、貢献意欲が高まります。
また、キャリア形成を支援する研修や面談の実施も効果的でしょう。
【モチベーションを高める施策例】
- 公平な評価制度の導入:成果に基づいた評価を行い、適切なフィードバックを提供
- キャリア形成支援:社員の目標設定をサポートし、成長の機会を提供
- 定期的な面談の実施:個々の悩みを把握した適切なアドバイス
- スキルアップ研修の提供:新たなスキル習得の場を設け、成長意欲を促進
- 上司へのフィードバック強化:管理職が部下のモチベーション向上に関与
こうした施策により、社員は自身のキャリアパスを明確にし、将来への不安を軽減できます。
【NTTコミュニケーションズの事例】
50歳になる一般社員全員を対象にキャリア面談を必須化し、社員の悩みを把握。1500人以上と面談を行い、適切なアドバイスを提供しました。
また、導入研修では人事部長が直接対話し、キャリアの重要性を伝える工夫も実施しています。上司へのフィードバックを強化し、部下の動機付けを促進することで、組織全体の活性化にも成功しました。
参考:d’s JOURNAL|たった1回の面談で50代の社員に行動変容が起きる理由【セミナーレポート】パーソルキャリア株式会社
以下の記事では、モチベーションや人事評価の見直しについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。


5. ワークライフインテグレーションの推進
従来のワークライフバランスは、仕事と私生活を分離し、両者の調和を図る考え方でした。一方、ワークライフインテグレーションでは、仕事と生活を一体化させ、相乗効果を生むことが重視されます。
仕事とプライベートを統合し、双方を豊かにすることで、人生をより豊かにしようとする考え方です。
このワークライフインテグレーションの観点では、企業は柔軟な働き方を提供しながら、従業員が自己実現できる環境を整備することが求められます。
そのためには、労働時間の適正化や多様な働き方の推進が欠かせません。
こうした取り組みは、生産性の向上だけでなく、従業員の幸福度やエンゲージメントの向上にも寄与するでしょう。
また、仕事と私生活を対立させるのではなく、両者を統合し相乗効果を生むワーク・ライフ・インテグレーションの実現も可能です。
【ワーク・ライフ・インテグレーションの推進例】
- 柔軟な働き方の導入:テレワークやフレックスタイム制度の推進
- 育児・介護支援の充実:休暇制度の拡充、短時間勤務の導入
- 労働時間の適正化:業務効率化による残業削減
- ダイバーシティの促進:ジェンダーギャップや雇用格差の是正
- キャリア支援の強化:リスキリングや副業・兼業の推奨
このようなワーク・ライフ・インテグレーションの推進に積極的に取り組んでいる企業の例として、J.フロント リテイリング株式会社の事例を挙げてみます。
【J.フロント リテイリング株式会社の事例】
ワーク・ライフ・インテグレーション推進のため、テレワークや勤務選択制度を導入。また、育児・介護・趣味に応じた短時間勤務を選択可能とし、30・40・50歳でのリフレッシュ休暇を付与しました。
時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を支援することで、従業員のWell-Being Life実現につながっています。
40代・50代の「静かな退職」が企業に与える3つのデメリット
「静かな退職」とは、転職や退職の意向はないものの、仕事への意欲を失い、最低限の業務のみをこなす状態を指します。
とくに40代・50代以上の中堅・シニア層でこの傾向が強まると、企業に深刻な影響を及ぼすでしょう。ここでは、具体的な3つのデメリットを解説します。
企業が静かな退職を防ぐためには、40代・50代の静かな退職のデメリットを知ることが不可欠です。詳しく見ていきましょう。
1. 組織全体の意欲低下
「静かな退職」をする社員の存在は、周囲に不公平感を生じさせ、組織全体の士気低下を招きます。努力している社員が「自分だけが頑張っている」と感じると、次第にモチベーションを失い、悪循環が生まれるでしょう。
GPTW Japanの調査によると、従業員が静かな退職を選択したきっかけは以下のとおりです。

「周囲の多くが同じような働き方をしていたため、自分も静かな退職を選んだ」と回答した人は4.5%でした。
参考:GPTW Japan | <調査レポート>「静かな退職」選択のきっかけは企業にあり、7割が「働き始めてから静かな退職を選択した」と回答
静かな退職を選ぶことによって周囲の働き方にも影響を与え、組織全体の活力が失われるリスクが高まるといえます。
2. 生産性の低下や成長の鈍化
意欲を失った社員が増えると、業務の質や効率が低下し、組織全体の生産性にも悪影響を及ぼします。
経験豊富な中堅・シニア層が持つ専門性や判断力が十分に活かされない状況は、企業の成長を鈍化させる要因となるでしょう。
年齢を重ねるにつれ、昇進の機会が限られることで「努力しても報われない」と感じる人が増え、貢献意欲の低下につながる可能性もあります。
一度「静かな退職」状態に陥ると、再び情熱を持って仕事に取り組むのは難しくなると言われています。
統計分析の結果、「静かな退職」をしている人のエンゲージメントに強く影響を与える特定の要因は見つかりませんでした。
これは、彼らの行動が自身の価値観やプライベートの考え方に根ざしており、外的な要因によって変わりにくいことを示しています。
そのため、一度「静かな退職」状態になった人が、再び仕事への熱意を取り戻し積極的に取り組む可能性は、一般的な従業員と比べて低いといえます。
さらに、クアルトリクス社の調査では、勤続年数が長くなるほどリスキリング(新たなスキルや知識の習得)への意欲が低下する傾向が示されています。
キャリアに関する意識を調査したところ、「明確なキャリア目標がある」「キャリアのロールモデルがいる」「現在の職場でキャリア目標を達成できると考えている」と回答した人はいずれも全体の約4分の1にとどまり、3~4割の人は否定的な意見を持っていました。
また、「既存スキルや知識の深掘り」「新しいスキルや知識の習得(リスキリング)」については、約4割の人が取り組んでいると回答したものの、十分とは言えない状況です。
とくに新しいスキルの習得に関しては、業務の変化に対応するために必要であるにもかかわらず、勤続年数が長くなるほど学習意欲が大きく低下する傾向が見られました。
3. 若年層への悪影響
40代・50代の社員が積極的に働かないと、若手にとってロールモデルの不在につながります。職場に目標とすべき人がいないと、キャリアの方向性を見失い、成長意欲を持ちづらくなるでしょう。
クアルトリクス社の調査では、「職場にキャリアの目標とすべき人がいる」と回答したのはわずか24%でした。多くの若手が指針を持てていない現状が浮き彫りになっています。
また、職場の士気が低下すれば、若手社員のモチベーションも下がり、離職率の上昇につながる恐れもあるでしょう。
このように若年層に波及するため、企業は40代・50代の社員が「静かな退職」に陥らないよう、組織全体で対策を講じる必要があります。
適切なサポートと環境整備を行うことで、全世代が意欲を持って働ける職場づくりを目指すことが重要です。
参考:クアルトリクス合同会社 | 従業員エクスペリエンスに関する調査結果
静かな退職を防ぐために企業がすべきこと
企業が「静かな退職」を防ぐには、従業員のエンゲージメントを高め、働きがいのある環境を整備することが不可欠です。
ここでは、静かな退職を防ぐために企業がすべきポイントを初期対応と中長期の取り組みにわけて説明します。
初期対応と中長期の取り組みにわけて進めることで、あるべき姿へのゴールが明確になります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
デメリットを克服するための初期対応策
静かな退職による悪影響を抑えるため、企業は早期の段階で、以下の対応策を実施する必要があります。
エンゲージメント向上を組織目標に組み込む
従業員のエンゲージメント向上を組織全体の目標として設定し、定期的な満足度調査を実施します。結果に基づく改善策の継続的な実施が重要です。
業務効率化ツールの導入
RPAツールやマクロ機能を活用し、ルーチン業務を自動化しましょう。業務負担の軽減により、従業員が重要な業務に集中できる環境を整えられます。
コミュニケーションの促進
定期的な1on1ミーティングや社内イベントを通じて、従業員同士の交流を活発化させます。職場の孤立感を解消し、エンゲージメント低下を防ぐための機会を増やすことが重要です。
こうした取り組みを通じて、社員のモチベーションを早い段階で引き上げることで、静かな退職を未然に防ぐ体制を実現できます。
中長期的に取り組むべき改善ポイント
長期的な視点で従業員のエンゲージメントを高めるために、以下の施策が有効です。
メンター制度の導入
経験豊富な社員が若手社員を支援し、キャリア形成をサポートしましょう。従業員の成長促進と離職率の低下に効果的です。
キャリアパスの多様化
管理職への昇進だけでなく、専門職やプロジェクトマネジメントなど多様なキャリア選択肢を用意します。個々の適性に応じた成長の機会を提供しましょう。
ロールモデルの明示
社内で活躍する従業員をロールモデルとして示し、キャリアの具体的な指針を提供しましょう。社員の成長意欲と組織への定着率を高めることが可能です。
こうした継続的な施策を通じて、社員が成長を実感できる職場環境を整備することで、組織全体の活性化につながるでしょう。
パルスサーベイで40代・50代の静かな退職の実態を把握しよう
本記事では、40代・50代の静かな退職の実態や背景、企業が取り組むべき対策について詳しく解説しました。
静かな退職の要因には、仕事への価値観の変化、キャリアの停滞、ワークライフバランスの重視などが挙げられます。静かな退職を防ぐには、社員のエンゲージメントを高め、働きがいのある環境を整えることが重要です。
エンゲージメント向上には、社員の心理状態を正確に把握し、適切な対応が欠かせません。そこで有効なのがパルスサーベイです。定期的な調査を行うことで、社員の状態変化を早期に察知し、迅速な対応が可能になります。
『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』なら、静かな退職の兆候を素早くキャッチし、組織全体のエンゲージメントを向上できます。ぜひこの機会に導入を検討してみてください。

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