用語集

PDCAとは?特徴や導入のメリット・問題点、OODAループとの違いについて

「PDCA」は、品質管理や生産管理などの業務を継続的に改善していく手法で、一般企業、教育、医療など、さまざまな場所で活用されています。本記事では、PDCAの意味や成り立ち、メリット、問題点を解説します。PDCAを効果的に回すポイントについてもご紹介します。新たな手法として注目の「OODAループ」の詳細や、PDCAとの違いについてもお伝えします。

PDCAとは?

「PDCA」とは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の頭文字をとった名称で、業務を継続的に改善していく手法のことです。

品質管理の専門家であったW・エドワーズ・デミングが提唱したのもので、デミングサイクル、デミングホイール、またPlan(計画)からAction(改善)までを循環させることから「PDCAサイクル」とも呼ばれています。

参考:PDCAサイクルとは – コトバンク 

PDCAの各プロセスの特徴

「PDCA」の各プロセスを解説します。

Plan(計画)

目標を明確にし、達成するためのアクションプラン(実行計画)を立てます。プランニングでは、以下の5W2Hを意識すると効果的です。

  • Who(誰が)
  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • What(なにを)
  • Why(なぜ)
  • How(どのように)
  • How much(いくらで)

目標やアクションプランは、PDCAサイクルを回すうえでとても重要です。Plan(計画)がしっかりしていないと、あとに続くDo・ Check・ Actionにも悪影響を及ぼします。そのためPlan(計画)は具体的に決めることをおすすめします。

Do(実行)

Plan(計画)で立てた目標やアクションプランをもとに実行や試行をします。

施策の有効性や他施策の余地などを検証することが目的です。

テストとして試行錯誤することで、最も適切な手法を見極めます。計画通りにいかないことも多々ありますが、定量的な記録とともに把握し、活用することが重要です。

Check(評価)

最初に立てた目標やアクションプランが達成できたかどうか、計画通りに進んだのかを評価するプロセスです。

計画通りの場合は成功要因を、計画通りに実行できなかった場合は失敗要因を分析します。どちらの結果でも、Plan(計画)で立てた数値目標に対しての達成率を測定します。

Action(改善)

計画を立てて実行し、明らかになった課題の改善点を考えるプロセスです。特に問題なければ改善せずに今まで通り計画を進めることもあります。改善すべき内容があれば反映させ、次のPlan(計画)へとつなげていきます。

PDCAを導入するメリット

PDCAには以下の3つのメリットがあります。

  • ①課題を見つけやすい
  • ②目標やタスクが明確になる
  • ③目標やタスクに集中できる

①課題を見つけやすい

課題を見つけやすい点が第一のメリットです。

PDCAは、悪い点を改善し、また実行して悪い点を見つけるというプロセスを繰り返し、目標達成に近づける手法です。繰り返し検証を行うことで、今後のとるべき行動や何を変えれば良いのかを考えることができます。

②目標やタスクが明確になる

組織や個人の目標・タスクが明確になることもメリットです。やるべきことが明文化されることで、目標達成や課題解決への道筋を立てやすくなります。

③目標やタスクに集中できる

必要なタスクへの集中を可能にすることが第三のメリットです。PDCAは、Plan(計画)の段階で目標ややるべきことが定められます。その後は各プロセスにそって進めれば、ムダを排除できるのです。

計画を立てないと闇雲な作業により時間をロスしてしまうリスクがありますが、これを回避できます。

PDCAの問題点

PDCAには問題点もあります。

  • ①結果が出るまでに時間がかかる
  • ②各プロセスにおける設定があいまいになる
  • ③PDCAを回すこと自体が目的になってしまう

①結果が出るまでに時間がかかる

PDCAは、Plan・Do・Check・Actionを循環させることで目標へと到達する手法です。

計画から改善までの各プロセスを一通り行うため、スピード感に欠けます。改善点が見つかっても、その改善の効果を検証するPDCAサイクルが必要です。改善できなかった場合、新施策の効果検証で、またサイクルを回さなければなりません。

②各プロセスにおける設定があいまいになる

各プロセスにおける設定があいまいになってしまうことも問題点です。

Plan(計画)において目標達成に至るまでのアクションプランが雑になることや、計画性のないDo(実行)において効果的な結果を生み出さない場合です。

成果を出すためにも、各プロセス設定の明確化し、目標達成までの道筋をはっきりさせましょう。

③PDCAを回すこと自体が目的になってしまう

PDCAは、業務を継続的に改善する手法として優れています。そのため、とりあえずPDCAを回すことで満足することもあります。手段が目的化しても、良い結果は出ず、そこから得られる学びもありません。

効果的にPDCAを回すポイント

ポイントは4つです。

  1. Planで数値などを具体的にする
  2. 不可能な計画は立てない
  3. 計画通りに行う
  4. 定期的に振り返って確認する

①Planで数値などを具体的にする

PDCAを機能させるには、最初が肝要です。目標の数値化など、Plan(計画)で具体的な目標やアクションプランを設定することが重要になります。

「新規顧客の獲得」よりも、「8月に20%オフキャンペーンを3回実施し、新規顧客を100件獲得」のほうが実行しやすいでしょう。また、達成期限の設定も大切です。指定の日までの達成率を判断できるため、より検証の制度が高まります。

②不可能な計画は立てない

非現実的な目標は、施策や改善効果を正しく検証できなくなります。

逆に簡単すぎるのもPDCAを回す意味がありません。無理のない範囲で計画や目標を立てることが重要です。

③計画通りに行う

目標やアクションプランは計画通りに実行しましょう。でなければ計画の良し悪しが判断できないためです。計画通りにいかないときは記録を残しましょう。評価や分析がしやすくなり、改善サイクルを回せます。

④定期的に振り返って確認する

各プロセスで定期的に振り返ることで、Action(改善)だけの振り返りよりも、現状の分析や進捗確認がしやすくなります。例えば週1で振り返ると、軌道修正の方が適宜可能で、PDCAを好循環させることが可能です。

PDCAを導入している企業の具体例

PDCAを導入している企業は多数あります。

ソフトバンク

ソフトバンクでは、「高速PDCA」により好調な業績を実現しました。

  • 目指す大きな目標を細分化する
  • 小さな目標を日・週・月単位でチェック
  • 期間を決めて複数の商品を一気に試し、有効性を比較検討する
  • 結果の検証は毎日行う
  • 達成度を毎日検証し、成功要因・失敗要因を洗い出して改善する
  • 優れた方法をブラッシュアップする

ソフトバンクでは、PDCAを忠実に実行しながらも「やったという雰囲気で終わらせない」ための工夫を取り入ました。その結果、業務の精度とスピードの向上に成功しました。

参考:ソフトバンク元社長室長が初公開!急成長を支えた「高速PDCA」とは? 

無印良品

無印良品の創業者・松井元会長は「C」と「A」を特に重要と考え、この2つの仕組み化に注力しました。

まず、組織レベルで定期的に「C」「A」を実施する時間をデザインします。(例:週1の改善会議)

次に、「C」「A」の対象となる業務プロセスの無駄を省きます。松井氏は「やめる仕事」を洗い出し、業務効率の改善に務めました。

さらに、上記は週次レベルの小さなPDCAなので、それ自体をチェック&アクションしていきます。(例:月1の全体会議)

こうすることで、大きなPDCAを回せるのです。

参考:無印良品のPDCA

トヨタ

日本を代表する企業のトヨタは、徹底的に「ムリ・ムダ・ムラ」を排除してコストを下げることで、生産の効率化を目指しています。

Plan(計画)としては、現地(例:アメリカ)の工場に「トヨタ生産方式」を導入する計画を立てました。

Do(実行)では、「各構成が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産する考え方」である「ジャストインタイム」を導入。またムダをなくすため、「異常が発生したら機械がただしに停止して、不良品を造らない」という「自働化」を採用しました。

Check(評価・検証)では、不良品の発生などが起こった場合、起こった問題に対して、管理者と現場作業員が問題を解消し、ラインを再稼働できる体制を整えました。

Action(改善)は、技術者や管理者、ライン労働者が協力して行います。生産工場で提案された意見のなかで対応可能なものはすぐに採用され、改善へ向けての取り組みを実施します。故障時の修理サービスや、24時間・365日対応のカスタマーサポートなど、手厚いサポートも提供しています。

「トヨタ生産方式」や「ジャストインタイム」は、PDCAを取り入れたメソッドとして有名です。トヨタは最短時間で車を製造するためのシステムを作り上げ、業界内で確固たる地位を築きました。

参考:トヨタ生産方式

PDCAに代わるOODAループとは?

PDCAに代わるメソッドとして注目されているのが「OODA(ウーダ)ループ」です。

OODAループとは、Observe(観察)→ Orient(状況判断、方針決定)→ Decide(意思決定)→ Act(行動)の頭文字を取ったものです。アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が提唱した問題解決メソッドで、意思決定をスピーディーに行う点が特徴です。

参考:OODAループとは-コトバンク

Observe(観察)

情報やデータを収集して現状を明確化します。

ネットのECサイトを例に挙げると、

  • どれぐらいのユーザーが訪問しているのか
  • 1日の新規会員登録者数はどれくらいか
  • どの商品の購入が多いのか

など、上記のようなさまざまな情報を収集して正しく把握する作業を行います。

Orient(状況判断、方針決定)

現状を把握し方針を決定します。収集したデータをもとに、今後の方針を決定します。

Decide(意思決定)

Orientをふまえて、目標達成のための具体的な手段や計画を立てます。

Act(行動・実行)

選択した仮説を実行に移すプロセスです。Act(行動)が終われば、またObserve(観察)へと移行し、OODAを循環させます。

PDCAサイクルとOODAループの相違点

PDCAサイクルとOODAループはどちらも問題解決の手法ですが、「問題解決までのステップ」と「問題の解決方法」の2点が異なります。

  • 問題解決までのステップ

PDCAサイクルは問題を解決するまでのステップとして、最初に目標や計画を立てます。そして実行後、評価・分析をしたのちに起こった問題に対する改善策を考えます。

一方のOODAループは、現状の観察からはじまり、状況判断や方針が決定します。その後、意思決定を行います。そのため、PDCAに比べて素早く課題に対応できます。

  • 問題の解決方法の柔軟性

PDCAサイクルでは、計画から実行まで一通り行ってから改善策を思案します。一方のOODAループは、計画がない状態で、状況を観察したし方向性を定めるため、しばられない発想で問題解決が可能です。

そのため柔軟な発想力が生まれやすいです。

まとめ

PDCAサイクルもOODAループも目標達成に向けた手法として有効です。問題解決までのステップや解決方法に違いがあるため、それぞれの特徴やメリットを知ったうえで運用することが求められます。組織や個人に最適な手法をもちいて目標達成を目指しましょう。

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