「有給休暇」は法律に定められた労働者の権利です。本記事では、有給休暇が付与される要件や日数、取得できない場合の対処法について解説します。
有給休暇とは?
有給休暇(年次有給休暇)とは、所属企業に継続して勤務することで付与され、「有給」で休むことが可能な休暇のことです。
心身の疲労回復やゆとりある生活を送るための休暇であるため、取得しても賃金は減額されません。
労働者の権利として法律で定められており、年5日を確実に取得させることが雇用主に義務付けられています。
参考:有給休暇-コトバンク
有給休暇の取得率
厚生労働省「就労条件総合調査」によると、平成30年(又は平成29会計年度) の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(練越日数は除外)は、労働者1人平均18.0 日(平成30年調査18. 2日)です。そのうち労働者が取得した日数は9.4日(同9.3日)で、取得率は 52.4% (同51.1%)となっています。
さらに取得率を企業規模別にみると、「1,000 人以上」が58.6%、「300~999 人」が49.8%、「100~299人」が49.4%、「30~99人」が47.2%です。
取得率は企業規模に比例していますが、取得率100%にはほど遠いのが現状です。それでも2019年の労働基準法改正により、以前に比べて向上はしています。
付与される要件
下記2つどちらも満たす場合、10日間の有給休暇が付与されます。
- 勤務開始日から6か月以上経過している
- 勤務日のうち8割以上出勤している
付与日数
労働基準法第39条により、業種・業態や、正社員・パートタイムなどの区分なく、 一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇の付与が義務付けられています。
なお付与日数は勤務年数や週所定労働日数によって異なります。
通常の労働者の場合
勤務年数 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
継続勤務年数が6年6か月に達すると付与上限日数の20日間が取得できます。
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
週所定労働日数によって付与日数が変わります。
週所定労働日数が4日(年間の所定労働日数が169日~216日)の場合
週所定労働時間が30時間未満でも、継続勤務期間6か月以上で7日間の有給休暇が付与されます。1年経過するごとに8日、9日、10日、12日、13日と増えていき、6年6か月経過時点で15日間の付与となります。
週所定労働日数が2日(年間の所定労働日数が73日~120日)の場合
週所定労働時間が30時間未満でも、継続勤務期間6か月以上で3日間の有給休暇が付与されます。
1年経過するごとに4日、4日、5日、6日、6日と増えていき、6年6か月経過時点で7日間の有給休暇が付与されます。
週所定労働日数が1日(年間の所定労働日数が48日~72日)の場合
週所定労働時間が30時間未満でも、継続勤務期間6か月以上で1日の有給休暇が付与されます。
1年経過するごとに2日、2日、2日、3日、3日と増えていき、6年6か月経過時点で3日間の有給休暇が付与されます。
参考:https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf
有給休暇は繰越できる?
有給休暇の有効期限は発生日から2年間です。1年間で消化しきれない場合、翌年度に繰り越しが可能です。繰越できる最大日数は20日間です。ただし有効期限を超えると自然消滅するので注意しましょう。
労働基準法に違反した場合の罰則
雇用主は、労働基準法の内容を遵守することが求められています。違反した雇用主には、労働基準監督署の指導が入ります。
改善できないと、労働基準法第39条により30万円以下の罰金が科せられます。これは対象労働者1人につき1罪です。
有給休暇の管理について
労働者の有給休暇は雇用主が管理します。労働基法改正に伴い、雇用主である企業は、「年次有給休暇管理簿」の作成と3年間の保存も義務付けられました。
年次有給休暇管理簿とは?
「年次有給休暇管理簿」とは、有給休暇を付与した労働者ごとに「時季(有給休暇を取得した日付)」「日数(取得した有給休暇日数)」「基準日(有給休暇付与の日付)」を明記した書類のことです。作成した書類は労働基準監督官が立ち入る臨検において閲覧と提出を求められた場合、提示しなければなりません。
管理は勤怠管理システムが主流
システムを導入すれば有給休暇の付与日数や取得状況、繰り越した日数などを一括管理できます。法改正時にはバージョンアップされるため、有給休暇の管理をスムーズに行うことが可能です。労働基準法違反を避けるためにも、システムでしっかり管理することが求められます。
有給休暇をもっと知るためのQ&A
有給休暇に関してさらに知っておきたい点についてまとめてご紹介します。
有給休暇の取得には雇用主の許可や理由の説明が必要?
有給休暇は労働者の権利として認められているため、原則として会社の許可や承諾は必要ありません。取得の理由を詳しく申告する義務はなく、「私用のため」と伝えるだけで問題ありませんが、業務に支障がでないよう、事前調整は忘れずに行いましょう。
申請のタイミングは?
申請タイミングに明確なルールはないので、企業側に確認しましょう。原則として前日までに申請すれば問題ありませんが、3日前など「○日前までに申請」とルールを定めている企業もあります。事前にわかっていれば1か月前などに伝えておくと業務に支障がでないでしょう。
時季変更権とは?
時季変更権とは、企業側が、有給休暇の日にちを変更できる権利です。労働者の希望通りだと正常な事業運営ができないと判断した場合、雇用主は取得日を変更することが可能です。この「時季変更権」は労働基準法によって認められています。
原則として労働者の希望日程が最優先されますが、どうしても業務が滞る場合に限り行使が可能です。
時間単位でも取得できる?
1日単位での取得が原則ですが、雇用主と労働者間で労使協定が締結されれば時間単位での取得も可能です。その際、年に5日分が上限です。
介護や育児休業の場合は?
介護や育児が理由の欠勤が、育児・介護休業法で定められている「子の看護休暇・介護休暇」に該当する場合、有給休暇とは別に休暇取得が可能です。現在は1時間単位での取得も可能です。
【子の看護休暇】
- 利用条件・・・小学校就学前の子どものケガ・病気の世話、健康診断や予防接種を受けさせるとき
- 上限日数・・年度において5日間(小学校就学前の子どもが2人以上いる場合は10日間)
【介護休暇】
- 利用条件・・・要介護の状態にある家族の介護、その他の世話をするとき
- 上限日数・・・年度において5日間(要介護の状態にある家族が2人以上いる場合は10日間)
有給休暇を取得できない場合の対処法は?
繁忙期などで取得できなかった場合は、代わりとなる日を雇用主に申請しましょう。
正当な理由なく拒否される場合は、人事部などの担当部署に相談しましょう。それでも改善されない場合は労働基準監督署への相談・通報も検討してください。
労働基準監督署は、法律違反する企業から労働者を守る役割を担う機関です。通報すると会社への立ち入りや指導が行われます。
まとめ
有給休暇は前日までに申請すれば取得可能ですが、業務に支障がでないよう会社や同僚に配慮する必要があります。有給休暇が取得できない場合は法律違反になるため、労働基準監督署への通報も検討すべきです。
ワークライフバランスの観点から有給休暇に関する法律も改正されましたが、取得率はまだ低いのが現状です。雇用主である企業は、事業が滞って悪影響がでない限り、労働者の希望を優先させる必要があります。労働基準法を遵守し、適切に対応しましょう。
【参考】
https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=1559
https://work-holiday.mhlw.go.jp/holiday/time-unit.html
https://hiroshima-kigyo.com/column/7397
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