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メンター制度の成功事例を解説|導入効果を高める3つのポイントとは

【この記事でわかること】
  • メンター制度の成功事例
  • メンター制度のメリット・デメリット
  • メンター制度の導入効果を高めるポイント

メンター制度は、人材の定着やエンゲージメント向上に有効な人材育成施策のひとつです。導入企業も増加傾向にあり、以下のような悩みを抱えている人事担当者も多いのではないでしょうか。

「メンター制度の効果が見えない」
「メンター制度の導入方法がわからない」

本記事ではこのような課題を抱えている企業に向けて、メンター制度の成功事例10選と導入効果を高めるポイントを紹介します。

本記事を読めば、メンター制度の活用方法に悩んでいる人事担当者が、自社に合った設計・運用を行えるようになります。AIツールを活用した効果測定方法も学び、メンター制度を有効活用しましょう。

目次

メンター制度とは 

メンター制度とは、経験豊富な社員(メンター)がメンティ(後輩社員)を支援する制度です。業務上のスキルや知識はもちろん、人間関係やキャリアといった精神面でのサポートも行います。

厚生労働省はメンター制度を以下のように定義しており、職場全体の風土改革や従業員のエンゲージメント向上にも有効です。

メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動です。

引用:厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及 マニュアル」|1-2「メンター制度」とは「ロールモデル」とは p3

メンター制度には、メンターとメンティという立場があり、以下のような違いがあります。

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください

立場特徴
メンター・新入社員や後輩社員に対して助言やサポートを行う社員
・後輩と年齢が近く、他部署の人間が望ましい
メンティ・メンターの指導を受ける立場の社員

なお、メンターがメンティに対して行う人材育成手法(助言や指導)をメンタリングと呼びます。メンター制度は、効果的なメンタリングを実現するための仕組みだと覚えておきましょう。

メンター制度の成功事例10選|導入企業の取り組みから学ぶ設計方法

近年では、人材の定着を目的に多くの企業がメンター制度を導入しています。メンター制度の導入を成功させるには、企業の育成方針に応じて最適な制度設計や運用を行うのがポイントです。

ここからは、メンター制度の導入企業と成功事例を以下10選紹介します。

導入企業メンター制度の導入事例
トヨタ自動車株式会社独自のめんどう見で人材を育成
キリン株式会社メンタリングチェインによる女性活躍推進
株式会社メルカリ経営層をメンターに配置
株式会社資生堂若手社員が幹部のメンターに
株式会社高島屋入社10年目のメンターが入社4年目のメンティを支援
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社メンター・メンティ向けのマニュアルを整備
株式会社商船三井中途社員向けのメンター制度
稲畑産業株式会社OJT制度とメンター制度を併用
株式会社シニアライフアシスト交換日記の取り組みで人材の定着率を向上
株式会社テコテックメンターランチ会の実施

各社のメンター制度について詳しく解説するので、自社における導入イメージをつかむ参考にしてください。

1. トヨタ自動車株式会社|独自のめんどう見で人材を育成

企業が抱えていた課題・多様な価値観や能力を持つ人材の育成・女性管理職比率向上
取り組み内容・「ほめる・叱る・見守る」を軸に、職場先輩や面倒見役が新人を多面的にサポート
・社外メンター1on1も導入
メンター制度の導入効果・2022年〜2023年のメンター活動では、約60人のメンティが参加
・アンケートで高い満足度を獲得

トヨタ自動車では、「めんどう見」と呼ばれる独自の人材育成方針に基づいて、メンター制度を含む育成体制を整えています。

「めんどう見」は、「ほめる」「叱る」「見守る」の3つのコミュニケーションを軸に、部下の成長や現場の信頼関係強化を目指す制度です。

具体的な「めんどう見」の方法は以下のとおりで、単に業務サポートを行うのではなく、社員一人ひとりの成長を中長期的に支援しています。

  • ほめる:現場では、上司や先輩が日々の変化や成長を細かく観察し、成果や努力を具体的に評価して「ほめる」ことでやる気を引き出す
  • 叱る:必要な場面では「叱る」ことで厳しさと優しさをバランスよく伝える
  • 見守る:部下の自立を促しつつ、困ったときにはすぐにフォローできる体制を整える

「めんどう見」では、新入社員の2〜3年上の先輩が「職場先輩」として任命され、仕事だけでなくプライベートの悩みまで幅広く相談できる関係性を築きます。

また、現場で日々の不安や疑問をすぐに相談できる存在として「めんどう見役」が任命され、より身近な立場から新人をサポートしているのが特徴です。

トヨタの「めんどう見」は、全員が安心して働ける職場づくりと強い信頼関係に基づく生産性向上を実現しており、企業文化としての人材育成の成功事例といえます。

2. キリン株式会社|メンタリングチェインによる女性活躍推進

企業が抱えていた課題・女性活躍推進・女性管理職の育成
取り組み内容・女性社員同士がメンター
・メンティを連鎖的に担当し、キャリア支援を循環
メンター制度の導入効果・女性管理職比率が2023年には13.6%に上昇
・離職率も低下し、長期的なキャリア形成を実現

キリン株式会社では、女性活躍推進の一環として「メンタリングチェイン」と呼ばれる独自のメンター制度を導入しています。女性総合職の継続的なキャリア形成や、女性管理職・経営職の育成を目的とした制度で、2013年からスタートしました。

キリンのメンタリングチェイン制度では、役員や女性管理職がメンターとなり、後輩女性社員のキャリアや働き方について定期的に助言を行っています。

また本制度は、役員のメンタリングを経験したメンティが次のメンターとなるのが最大の特徴です。メンタリング経験者を増やすことで、社内における女性活躍推進の理解を広げ、キャリア支援の輪を広げています。

制度導入後は、総合的な課題となっていた女性社員の離職率が低下し、長期的なキャリア形成の促進はもちろん、女性管理職や役員の登用も着実に進みました。

参考:厚生労働省|メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル(p3)

3. 株式会社メルカリ|経営層をメンターに配置

企業が抱えていた課題・経営層と現場における情報交換
・組織風土の向上
取り組み内容・経営層がメンターとなり、社員が希望する経営陣と1on1で交流
メンター制度の導入効果・第1回(2020年)の参加者アンケート満足度は4.68点(5点満点)
・参加者からは「視野が広がった」「意思決定スピードが上がった」などの声が多数

株式会社メルカリでは、2020年4月から「Exec Mentoring Program」という独自のメンター制度を導入しています。本制度では、直属の上司ではなく「斜め上」にあたる経営層をメンターに配置し、社員が自ら希望する経営陣とペアを組むのが特徴です。

プログラムの期間は半年間となっており、月1回の頻度で1on1メンタリングを実施します。実施頻度・内容・進め方はメンティの希望で決まり、メンティ自身のキャリアや課題について経営層から直接フィードバックを受けます。

過去には経営トップがメンターとなったこともあり、経営層と現場社員の情報交換を促進することで、組織風土の向上を図っている事例です。

参考:株式会社メルカリ mercan|“斜め上の経営陣”がメンター、やり方はメンバーが決める──メルカリ新メンタリング施策の手応え

4. 株式会社資生堂|若手社員が幹部のメンターに

企業が抱えていた課題・社内のデジタル化
・世代間ギャップの解消
取り組み内容・若手社員が幹部のメンターとなり、ITや価値観を伝達
メンター制度の導入効果・部長級以上の役職者が必ず受講
・IT活用や世代間交流が進み、若手の提案による業務改善事例も多数

株式会社資生堂では、若手社員が幹部や役員のメンターとなる「リバースメンタリング」を採用しています。

本制度は従来のメンター制度とは逆に、20代・30代の若手社員が幹部や役員に対して、ITスキルや最新のデジタル技術などを伝える仕組みです。

各部門長の推薦で選ばれた若手社員がメンターとなり、1年間に3〜6回のミーティングを実施します。ミーティングでは、SNSツールの活用や他社事例の研究といった多様なテーマを扱い、具体的な業務改善や現場との連携強化にもつながりました。

本制度の導入は、IT活用の向上や世代を超えたコミュニケーション促進といった効果を生み、導入から数年で部長級以上の役職者が必ず受けるプログラムへと育っています。

若手社員にとっては経営層の意思決定や視点に触れる貴重な機会となり、幹部層にとっても新たな発想や現場感覚を得る場となっています。

参考:株式会社資生堂|多様なプロフェッショナル人財

5. 株式会社高島屋|入社10年目のメンターが入社4年目のメンティを支援

企業が抱えていた課題・OJTの機能低下
・社内のコミュニケーション不足
取り組み内容・入社10年目の社員が4年目社員を半年間支援
メンター制度の導入効果・メンティのキャリア意識向上(海外研修へのチャレンジ者が増加)
・主体的なキャリア形成が促進され、メンターの育成力も向上

株式会社高島屋では、業務の細分化によるコミュニケーションの希薄化やOJTの機能低下といった課題を背景に、2009年からメンター制度を導入しています。

入社4年目の社員(メンティ)を、異なる部門の入社10年前後の課長層社員(メンター)が半年間にわたり支援する仕組みです。メンタリングは計6回実施され、メンティのキャリアビジョンの明確化や業務への主体的な取り組みを促します。

メンター・メンティ双方への事前ガイダンスやメンタリングスキル研修など、制度運用における取り組みも充実しています。若手社員の自律的な成長と、メンター自身の育成力向上に寄与している成功事例です。

参考:株式会社髙島屋|サステナビリティ「ステークホルダーに対する取り組み」

6. あいおいニッセイ同和損害保険株式会社|メンター・メンティ向けのマニュアルを整備

企業が抱えていた課題・女性社員のキャリア形成支援
取り組み内容・異なる部署の先輩がメンターとなり、マニュアルや研修を整備
メンター制度の導入効果・「異なる職種の先輩と話すことで新たな視点が得られた」などの声が多数
・女性社員の定着率やキャリア意識が向上

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社では、女性社員のキャリア形成支援を目的として、メンター制度を導入しました。所属部署とは異なる部支店長が指導・相談役となり、メンティに対して多角的なアドバイスを提供しています。

本制度では、メンター・メンティが安心して取り組めるよう、マニュアルを整備しているのが特徴です。マニュアルには、メンタリングの進め方や面談の頻度・内容などを具体的に記載し、事前に共有することで、メンター制度の効果を最大化しています。

7. 株式会社商船三井|中途社員向けのメンター制度

企業が抱えていた課題・中途社員の早期定着、組織適応
取り組み内容・所属外の先輩がメンターとなり、1on1で業務を支援
メンター制度の導入効果・中途入社社員の定着率向上
・入社10年で3つ以上の業務経験と合わせて早期戦力化を実現

株式会社商船三井では、多様な人材の活躍を促すことを目的に、中途入社社員(キャリア入社社員)を対象としたメンター制度を導入しました。所属チーム外の先輩社員がメンターとなり、1on1ミーティングを定期的に実施しています。

1年を通じて目標設定を行い、定期的な面談によって現状や課題を関係者間で共有します。本制度の導入により、中途社員が自身の成長を振り返りながら、業務上の悩みやキャリア形成について相談できる環境を整備しました。

また商船三井では、入社後10年間で少なくとも3つの異なる業務を経験するジョブローテーションも実施しています。メンター制度と組み合わせることで、自律的なキャリア形成を促進し、中途社員の定着や早期戦力化を目指しているのが特徴です。

参考:株式会社商船三井|人財育成

8. 稲畑産業株式会社|OJT制度とメンター制度を併用

企業が抱えていた課題・若手の成長支援
・多面的な育成
取り組み内容・所属部署のOJTと他部署のメンターを併用
メンター制度の導入効果・新入社員の定着率向上
・安心して相談できる環境の整備

稲畑産業株式会社では、新入社員や若手社員の成長を支えるため「OJT制度」と「メンター制度」を併用した育成体制を取り入れました。

入社後2年間を育成期間とし、育成期間中はOJT制度として所属部署の先輩社員(トレーナー)が実践的なスキルと知識の習得を支援します。同時に、所属部署以外のベテラン社員がメンターとなり、新入社員や若手社員の精神的なサポートをしています。

メンターはキャリア形成や仕事上の悩みといった相談にのり、若手社員が安心して相談できる環境を整えているのが特徴です。各種研修制度も整っており、若手社員の職場適応やモチベーション維持につなげています。

参考:稲畑産業株式会社|社員を育てる研修制度

9. 株式会社シニアライフアシスト|交換日記の取り組みで人材の定着率を向上

企業が抱えていた課題・離職率の高さ
・職場の孤立感
取り組み内容・従業員同士で交換日記を実施し、気軽に思いを共有
メンター制度の導入効果・離職率が約30%から10%台に低下
・心理的安全性向上と職場の雰囲気改善に寄与

株式会社シニアライフアシストでは、従業員の定着率向上を目的に「交換日記」を取り入れています。同社は、介護付有料老人ホームやデイサービスセンターを運営しており、離職率の高さが大きな課題となっていました。

そこで従業員同士が日々の業務や悩みを自由に書き、読み合う「交換日記制度」を導入したところ、気軽に想いを発信・共有できる環境が整い、職場内のコミュニケーションが活性化しました。

さらに、自治体の事業や社会保険労務士のアドバイスも活用し、働き方改革を推進しています。従業員の声を積極的に取り入れる風土を醸成し、UIJターン者(※)の採用にも成功した事例です。

※UIJターン者:大都市圏から地方へ移住し、働く者のこと

参考:厚生労働省|メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加 マニュアル・事例集(p62)

10. 株式会社テコテック|メンターランチ会の実施

企業が抱えていた課題・新卒社員の早期定着、孤立防止
取り組み内容・年齢の近い先輩とのランチ会や面談を実施し、相談しやすい場を提供
メンター制度の導入効果・新卒社員の定着率が90%超
・ランチ会で「会社に早く馴染めた」との声も多数

株式会社テコテックでは、メンター制度の導入を通じて新入社員の早期定着を実現しました。同社では、配属先とは異なる事業部の年齢の近い先輩社員がメンターとなり、入社後3か月間・月1回の面談を実施しています。

なかでも特徴的なのが、メンターランチ会の取り組みです。会社がランチ代を補助し、メンターとメンティが食事をともにすることで、リラックスした雰囲気の中での交流を促進しています。

ランチ会や面談での相談内容は原則として上司に報告されないため、新入社員は業務や人間関係について気軽に相談できるのが魅力です。

メンターランチ会を通じて部署を越えたコミュニケーションが生まれており、会社全体の活気や一体感の醸成にもつながっています。

参考:株式会社テコテック|採用情報「メンター制度のご紹介」

【立場別】メンター制度のメリットとデメリット

メンター制度には、企業・メンター・メンティそれぞれにメリットとデメリットがあります。以下の表に、各立場別のメリット・デメリットを整理しました。

※以下の表は右にスクロールできます

立場・視点メリットデメリット
企業・離職率の低下
・次世代リーダーの育成
・社内のコミュニケーション活性化
・効果の不明確性
・人員リソースの確保
メンター・仕事へのモチベーション向上
・指導力向上によるキャリアアップ
・業務負担の増加・評価への未反映という懸念
メンティ・不安の軽減
・早期戦力化
・キャリアの方向性の明確化
・メンターとのミスマッチによるストレス増加
・メンターの指導力による成長スピードの差

メンター制度がもたらす影響は、ポジティブな面ばかりではありません。メンター・メンティ間の相性や、企業側の支援体制によって成果に差が出るため、各立場を理解した制度設計が求められます。

【企業側】メンター制度のメリット3選

メンター制度の導入メリットは、若手社員の早期戦力化や定着率の向上だけではありません。具体的には以下のようなメリットがあり、制度をうまく活用すれば企業全体の組織力や人材育成の質を高められます。

メンター制度は、長期的な目線で見ても企業側にメリットの大きい制度です。ここでは、企業側が得られる3つの代表的なメリットを見ていきましょう。

従業員の定着率が向上する

メンター制度を導入すれば、新入社員や若手社員が早く職場に馴染み、安心して業務に取り組める環境を整えられます。

業務指導だけでなくキャリア相談や人間関係といったサポートも行うので、メンティの孤立感や不安の軽減に有効です。メンティのモチベーションや満足度も高まり、結果として従業員の定着率向上につながります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構のデータによると、職場の離職理由として人間関係がランクインしていることがわかりました。

初めて勤務した会社の離職者を対象に離職理由を調査したところ、もっとも多かったのは「労働時間・ 休日・休暇の条件がよくなかった(35.2%)」でした。

順に「人間関係がよくなかった(28.4%)」、「賃金の条件がよくなかった(24.2%)」となっており、離職防止にはメンター制度による人間関係・コミュニケーションの活性化が重要だと考えられます。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状」|1. 初職が正社員であった人の離職理由(p231)

従業員の定着率向上は、企業文化の安定にも貢献します。人材の流動が激しいと組織のノウハウも蓄積されにくくなりますが、長期的な定着が進めば知識や価値観の共有も円滑になるでしょう。

従業員の定着率を向上させる方法について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。

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リーダーや管理職候補の育成につながる

メンター制度は、将来のリーダーや管理職候補の育成にも効果的です。メンターとしての役割を担うことでリーダーシップや指導力が自然と磨かれるので、組織的に指導者層の土台を形成できます。

評価制度にメンター活動を含めれば、リーダーシップの発揮を促す仕組みにもなるでしょう。企業側としては、若手育成と同時に中堅層の成長も促すことで、組織全体のレベルアップを図れるのがメリットです。

社内のコミュニケーションを活性化できる

メンター制度は、部署や年次を超えたコミュニケーションの活性化にも貢献します。組織全体に横のつながりが生まれることで、風通しのよい職場環境を醸成できるのがメリットです。

日本メンター協会の調査によると、企業におけるメンター制度の導入目的1位は「職場のコミュニケーションの活性対策」でした。

出典:日本メンター協会|メンター制度導入実態調査

メンター制度による対話の積み重ねは、組織全体のエンゲージメントを高める要因になります。社員同士の信頼関係が深まれば、チームワークやコラボレーションの質が向上し、業務効率にもよい影響を与えるでしょう。

社内のコミュニケーションを活性化させるアイデアを知りたい方は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。

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【メンター側】メンター制度のメリット2選

つづいて、メンター側のメリットを2つ解説します。

メンターとしての役割を担うと業務が増大しますが、将来的なキャリアアップにつながる可能性があります。後輩社員を指導することで、自分のキャリアにとっても刺激になるのがメリットです。以下で詳しく見ていきましょう。

仕事へのモチベーションが向上する

メンターとして若手社員や後輩の成長を支えることは、自身の仕事へのモチベーション向上にもつながります。

普段の業務とは異なる「人を育てる」という役割を担うことで、新たなやりがいや達成感を得られるのがメリットです。とくにメンティが成長していく姿を目の当たりにすると、責任感や自信が生まれ、前向きな気持ちになるでしょう。

また、メンターとしての経験は、自分の知識やスキルを見つめ直す機会にもなります。メンティに教える過程で自己理解が深まり、視野の広がりを感じられるのも魅力のひとつです。

キャリアアップを目指せる

メンターとして人材育成の役割を担えば、リーダーシップやマネジメントスキルを実践的に磨けます。

多くの企業では、管理職やリーダーに対して「人を育てる力」を求めるのが一般的です。そのため、メンターとしての実績を積めば、昇進や人事評価においてもプラスに働く可能性があります。

また、メンティとの関わりを通じて、コミュニケーション力や問題解決能力が高まるのも大きなポイントです。これらのスキルは、どのような職種・ポジションでも汎用性が高いため、今後のキャリアの幅を広げるうえで大きな武器となるでしょう。

【メンティ側】メンター制度のメリット2選

メンター制度は、新入社員や若手社員といったメンティにとって、大きな支えとなる制度です。本章では、メンティの視点から見たメンター制度のメリットを2つ紹介します。

メンティ側の利点を理解し、効果的なメンター制度を設計しましょう。

職場に馴染みやすくなる

メンター制度によって業務面以外のサポートを提供すれば、新入社員や若手社員が職場に早く馴染めるようになります。

とくに新卒社員や中途社員は、業務の流れや社内文化に慣れるまでに時間がかかることも少なくありません。不安を感じやすい初期段階でメンターによるサポートを受けることで、精神的なストレスを軽減できるでしょう。

また、メンターとの信頼関係を築ければ、メンティは「この会社で頑張っていこう」という前向きな意識を持ちやすくなります。組織全体の定着率がアップするのはもちろん、チームの結束力が向上するのもメリットです。

知識やスキルの習得につながる

メンティにとって、メンター制度は知識やスキルを効率的に習得できる絶好の機会です。

メンターから直接指導を受けることで、OJTではカバーしきれない実践スキルや職場特有の暗黙知を身につけられます。疑問点や不明点に対してもその場でアドバイスをもらえるため、成長スピードが大きく加速するでしょう。

また、定期的なフィードバックを通じて、自分の強みや課題を客観的に把握できるのも大きなメリットです。自己成長を実感しやすくなるので、業務へのモチベーション向上にもつながります。

【企業側】メンター制度のデメリットと対策2選

メンター制度の導入は、メリットだけではありません。実際に運用していると、以下のような課題・デメリットに直面するケースもあります。

制度を形だけ整えても、効果が出なければ従業員の不満や形骸化の原因となってしまいます。制度をより実効性のあるものにするためにも、デメリットを理解し、事前に対応策を講じておきましょう。

メンターとメンティの相性が悪いと逆効果になる

メンター制度において、もっとも大きなリスクのひとつが「相性のミスマッチ」です。メンターとメンティが関係をうまく築けない場合、指導が機能せず、かえってストレスや不満を生む可能性があります。

とくに双方の価値観やコミュニケーションスタイルが異なると、誤解や摩擦が起きやすくなるでしょう。実際に「人事担当者のためのメンター制度入門」によると、メンター制度を活用しきれていない失敗例として、相性のミスマッチが挙げられていました。

メンタリングプロセスの途中で相性のミスマッチに気付いたとしても、メンティから変更を言い出せない状況は少なくありません。相性が悪いまま進めると、メンター制度を最大限に活用することは難しくなります。

参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ|人事担当者のためのメンター制度入門 導入ポイントと若年層の育成・定着策への活かし方

相性のミスマッチを防ぐには、メンターとメンティの選定プロセスに工夫が必要です。適性診断ツールを活用して相性のよいペアを組んだり、関係性がうまくいかない場合に再マッチングできる環境を整えたりと対策を講じましょう。

メンティに複数の相談先を提供し、一人のメンターに依存しすぎない仕組みを作ることも重要です。

制度導入による効果を把握しにくい

メンター制度は成果を数値化しにくく、効果検証が難しいという課題があります。

定着率や社員満足度の向上といったメリットはありますが、どの程度影響があったのか可視化できないケースは珍しくありません。効果を定量的に評価できなければ、制度の継続や改善も困難になるでしょう。

メンター制度の導入効果を可視化するには、組織サーベイや定期的なアンケートの実施が有効です。制度運用の現場からリアルな声を集め、メンタリングの質をチェックしましょう。

また、メンティの目標設定と進捗管理を行い、成果を定量化する仕組みを整えることも大切です。組織サーベイやアンケートについては、以下の記事を参考にしてみてください。

【メンター側】メンター制度のデメリットと対策2選

導入企業も多いメンター制度ですが、その担い手であるメンター側にとっては負担や課題も少なくありません。具体的には以下のようなデメリットがあり、場合によっては心理的な負担の増加やモチベーションの低下につながる恐れもあります。

ここからは、メンター側の視点から見たデメリットを対策とともに解説します。

業務負荷が増大する

メンターに任命された社員は、通常の業務に加えてメンティの指導やサポートを行う必要があります。必然的に業務負荷が増大するため、繁忙期やメンティに手がかかる場合は両立が難しくなることもあるでしょう。

通常の業務が圧迫されると、メンター自身のパフォーマンスやモチベーションが低下する可能性もあります。このような事態を避けるためには、以下のように制度設計の段階で業務量の調整を考慮することが重要です。

〈メンターの業務負荷を調整する方法〉

  • メンターの担当業務を一部軽減する
  • 制度期間を明確に定める
  • 支援ツールやマニュアルを用意して負担を減らす
  • メンターへのフォロー体制を強化する

制度運用時は、メンターが感じている負荷を定期的にヒアリングし、必要に応じてサポート体制を見直しましょう。

仕事の評価につながらない恐れがある

人事評価に人材育成の項目がない企業では、メンターを務めても仕事の評価につながらない可能性があります。メンター業務に時間を割いても、人事評価に反映されなければ、モチベーションを維持するのは困難です。

メンターの不満を防ぐには、メンター活動を正当に評価する制度設計が求められます。たとえば、メンティの成長や定着に寄与した実績を評価項目に含めれば、メンター自身のやりがいにつながるでしょう。

メンター制度を形骸化させないためにも、メンター制度と評価制度を連動させ、努力が報われる仕組みをつくることが重要です。

【メンティ側】メンター制度のデメリットと対策2選

ここでは、メンティ側の視点から起こりうるメンター制度の課題を2つ紹介します。

メンターとの相性や指導力によっては、メンティ側にも思わぬ負担や戸惑いが生じる可能性があります。デメリットを未然に防ぐためにも、以下で必要な対策を確認しておきましょう。

メンターによってはストレスが増大する

メンターとの相性が悪いと、制度がかえってストレスの原因になる場合があります。とくに指導方針やコミュニケーションスタイルが合わなければ、気軽に相談できなくなるでしょう。

以下の論文では、メンター・メンティの性格の一致・不一致が、メンティに対する支援の質に影響すると示唆されていました。

メンターとメンティの性格タイプの一致・不一致は、メンティが自分に合った支援を受けられるかという支援の質に影響を与えます。

メンタリングは2者間での関係性となるため、お互いが自身の性格やコミュニケーションスタイルを理解したうえで、適切に関わりあうことが大切です。

また企業側も、メンティの性格に合ったメンターを選定することで、メンター制度の効果を最大化できると考えられます。

参考:仁田光彦|企業内での公式メンタリングと若手の自己適応感との関係についての 探索的研究

相性のミスマッチによるストレスを軽減するには、メンター以外の相談窓口を設けておくのがポイントです。メンターとメンティのマッチングでは性格や価値観を考慮し、定期的な満足度調査によって運用状況を見直すことも有効でしょう。

なおストレス耐性の高さは、人によって異なります。以下の記事では、ストレス耐性を見極める方法や高める方法を解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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指導力に応じて成長スピードに差が生まれる

メンターの指導力や経験にばらつきがあると、メンティの成長スピードに差が出てしまうのもデメリットです。

指導力が高いメンターなら短期間で大きく成長できますが、指導力が不十分なメンターのもとでは十分なサポートを受けられず、成長が停滞する可能性があります。

このようなメンティの不公平感を防ぐためには、メンター自身の育成プログラムを導入するのがおすすめです。指導方法やフィードバックの基本を学んでおけば、メンタリングの質を一定に保てます。

また、メンティにも自己学習や複数の相談先を用意しておくことで、特定のメンターに依存しすぎない育成環境を整えられるでしょう。

メンティの心理状況を可視化し、適切な育成環境を整えたいなら『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』の活用がおすすめです。以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にして導入を検討してみてください。

ミキワメウェルビーイング_幸福度_高める_離職_休職_防ぐ
『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』とは?社員の幸福度を高め離職・休職を防ぐ『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』は、社員の幸福度を可視化して必要なケアができるサーベイツールです。社員の定着率を高めて生産性向上が期待できます。質問例や導入の流れも解説していますので参考にしてみてください。...

メンター制度がいらないと言われる理由は?

多くの企業で導入が進むメンター制度ですが、「いらない」といった意見も少なくありません。メンター制度がいらないと言われる理由には、OJT(オンザジョブトレーニング)との混在が挙げられます。

OJTとメンター制度を並行している会社では違いが曖昧になり、教育内容が重複してしまう恐れがあるので注意が必要です。

また、メンター制度を導入しても、指導の質やコミュニケーションが不十分だと「形骸化」するリスクが高まります。現場では「仕事が増えるだけ」と捉えられ、社員の不満を助長する可能性もあるでしょう。

メンター制度の導入効果を高めるポイント

最後に、メンター制度の導入効果を高めるポイントを、準備編と運用編の2つに分けて解説します。

※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください

メンター制度の導入効果を高めるポイント具体的な施策
【準備編】メンター制度を成功に導く方法・メンターの役割や選定基準を明確にする
・メンターに対するフォローを強化する
【運用編】メンター制度の効果を最大化する方法・組織サーベイで効果を測定する

メンター制度の効果を最大化するには、準備段階から明確な設計を行い、導入後も継続的に改善を図ることが重要です。メンターやメンティが安心して取り組めるような仕組みを整備し、制度の導入を進めましょう。

【準備編】メンター制度を成功に導く方法

メンター制度の導入を成功させるには、まず制度の目的を明確に設定することが大切です。新入社員の早期戦力化や離職率の低下など、達成したいことを社内で共有し、制度設計に反映しましょう。目的を明確にしたら、以下2つの準備に取り掛かります。

ここから詳しく解説するので、制度開始前に確認してみてください。

メンターの役割や選定基準を明確にする

メンター制度を機能させるためには、メンターの役割と選定基準を明確に定義することが欠かせません。

メンターの役割は、業務知識やノウハウの共有だけでなく、メンティの心理的サポートやキャリア相談など多岐にわたります。メンターとしての役割や期待する行動を具体的に示しておけば、制度導入後の混乱を防げるでしょう。

また、メンターの選定では、勤続年数や役職だけでなくコミュニケーション能力や共感力を考慮することが重要です。メンターの質が制度の成果を大きく左右するため、性格診断ツールなども活用し、効果的なマッチングを目指しましょう。

メンターに対するフォローを強化する

メンター制度を円滑に運用するには、メンターに対するフォロー体制を整えることも大切です。追加のメンタリング業務によって負荷が増大するため、会社としても継続的にサポートしていく姿勢が求められます。

具体的には、メンター向けの定期的なフォローアップ研修を実施し、指導スキルの向上を図るのがポイントです。メンターが抱える悩みや課題を解消できるよう、専用の相談窓口やサポート担当者を設置するのもよいでしょう。

メンター制度を導入する際のポイントや、運用におけるよくある課題を詳しく知りたい方は、メンター制度設計のポイント(無料をダウンロードしてみてください。効果的なメンター制度の設計と運用方法を解説しています。

【運用編】メンター制度の効果を最大化する方法

メンター制度の導入準備が整ったら、運用フェーズにおいて効果を最大化させる方法を考えましょう。メンター制度の効果は可視化しづらいため、組織サーベイや定期的な面談を通じて運用状況を把握することが大切です。

ここでは、メンター制度の効果測定に組織サーベイを活用する方法を詳しく解説します。

組織サーベイで効果を測定する

メンター制度の導入効果を測定するには、組織サーベイの実施がおすすめです。

組織サーベイによってメンターとメンティの考えや満足度を把握することで、「メンター制度が機能しているか」を客観的に検証できます。

ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』は、従業員のメンタル状態を可視化するサーベイツールです。従業員の心理状態をスコアリングでき、メンター制度による負荷やストレスを素早く察知できます。

また、『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を使えば、従業員の性格や心理状態に応じて適切なサポート方法のアドバイスを受けられるのも魅力です。必要に応じてメンター制度の改善を図れるので、より効果的な制度運用が可能になるでしょう。

サーベイツールを導入し、メンター制度の効果を最大化しよう

メンター制度には、若手社員の成長支援や定着率の向上など、多くのメリットが期待できる一方で、制度が形骸化するリスクや、メンターへの負担増といった課題もあります。

こうした課題を回避し、制度を継続的に改善するためには、実態を可視化できる「サーベイツール」の導入が有効です。

とくにサーベイツールを活用することで、メンター・メンティ双方のリアルな声や、制度が職場全体に与える影響を数値で客観的に把握でき、改善ポイントが明確になります。

たとえば、短時間で従業員の心理状態を可視化できる『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』は、早期課題発見に役立つツールとして、多くの企業が活用しています。

メンター制度をより良く運用したいとお考えの企業は、ぜひ導入を検討してみてください。

ABOUT ME
佐藤 透
ミキワメラボの編集者・コンテンツマーケティングを担当。大学卒業後、複数のIT企業で勤務。HR領域や新しい働き方のトレンドに興味を持ち、2022年からリーディングマークに従事。

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