用語集

MBO(目標管理制度)とは?種類や導入手順、メリットや注意点などを詳細解説!

企業の中には従業員個人の自主性を高めて業務効率を上げることに成功している企業も見られます。このような企業で採用されているマネジメント手法が「MBO(目標管理制度)」です。

本記事ではMBO(目標管理制度)について、種類や導入手順、メリットや注意点などを詳細解説していきます。MBOについて知りたい方、また導入してみたい方はぜひ一読してみてください。

MBO(目標管理制度)とは

MBOとは従業員個人、もしくはグループごとに業務の目標を定め、その目標の達成度によって評価をする仕組みです。「Management by Objectives」の略称で、日本語では「目標管理制度」と呼ばれています。ノルマで強制的に管理するのではなく、本人が主体的に目標を定め、進捗や実行をするやり方です。

MBOを提唱したのは経営学者として有名なP.F.ドラッガーです。彼は著書の『現代の経営』において、「企業から一方的に管理されるのではなく、社員が自己管理によって自分の仕事をマネジメントしていくことが重要である」と説いています。

参考:目標管理制度 / MBOとは – コトバンク

日本では、バブル経済崩壊後に導入が広まりました。「年功序列」「終身雇用」の崩壊により、成果主義がブームになったのです。

参考:『目標管理がノルマ化してしまう』日本式MBOに抜け落ちた概念とは?

MBOには大きく分けて3つの形態がある

MBOの設定は企業によって様々ですが、大きく分けると下記の3つの形態に分かれてきます。

  • 課題達成型
  • 組織活性型
  • 人事評価型

課題達成型

課題達成型はトップダウン形式です。企業全体の目標をベースに従業員個人の目標を設定します。個人目標は売上目標など具体的な数値をもとに設定されるケースが多いです。
しかし、ノルマとして課すとメンバーのモチベーションが低下するので、注意してください。

組織活性型

組織活性型は日本における一般的なMBOの形式です。従業員自ら目標を立てさせることで、自主性が高まります。

組織活性型の根拠になっているのは「Y理論」と呼ばれる経営理論です。この理論は人間を「本来仕事が好きであり、目標達成のために自ら問題解決にあたる性質がある」と捉えています。

引用:Y理論について
(1)仕事をするのは人間の本性であるが、条件しだいで、満足したり嫌悪したりする、(2)人間は自分から進んで身をゆだねた目標には自発的に努力する、(3)献身的に努力するか否かは、達成して得る報酬しだいである、(4)人間は条件しだいで責任を引き受ける、(5)人間は問題解決能力をもっている、(6)人間の能力は組織内で一部しか活用されていない

引用元:X理論・Y理論とは – コトバンク

組織活性型は、上記の性質を活用したMBO形式です。自主性の尊重は部署やチーム全体の活性化にも繋がり、従業員の勤労意欲を高まるのでとても効果があります。

人事評価型

人事評価型とは、人事評価基準にMBOを組み込む形式です。目標は企業からのトップダウンではなく、従業員・部署ごとにボトムアップで決めていくケースが多いです。この方法をとることで、個人の能力アップも期待できます。
人事評価型は、従来の年功序列による人事評価とは異なり、若手社員でも適切な評価がされやすい点がメリットです。

MBOを活用するメリット

MBOを活用するメリットとして下記の点が挙げられます。

  • 従業員のモチベーションを高めて業務効率を改善できる
  • 個人・企業の目標の方向性を合わせられる
  • 評価基準が明確になる
  • 振り返りやすい

従業員のモチベーションを高めて業務効率を改善できる

不適切なマネジメントによって従業員のモチベーションが低下すると、会社全体の売上も低下しかねません。

しかし、MBOを活用して従業員の目標を設定すれば、従業員が主体的に働きやすくなります。モチベーション向上による生産性アップも期待できるので、売上も上がりやすくなるでしょう。

モチベーションを向上させる方法については、以下の記事でご覧ください。

個人・企業の目標の方向性を合わせられる

個人・企業の目標の方向性を合わせられる点もメリットです。双方の目標がずれると、認識齟齬や意見対立が生じ、企業活動の足並みが揃いません、
個人・企業目標の方向性を合わせれば、全体と個人の目標をリンクできるので、中長期的な動きの見通しもつきやすいです。

評価基準が明確になる

従業員の評価基準を明確にできます。上司から一方的に評価されるのみでは評価内容に納得できない従業員も少なからず出てきます。しかしMBOは、目標の達成度合いで評価が決まるので、人事評価の透明性も維持できます。

振り返りやすい

MBOは従業員のリフレクションに最適な機会です。自分の働き方や能力を客観視でき、より成長するための改善点を見つけられるでしょう。今後やるべきことが明確になるので、

MBOを活用するデメリット

MBOのデメリットは下記の3点です。

  • 目標のレベルにバラつきが生じる
  • 人事評価の負担が重くなる
  • 組織よりも個人が優先されてしまう

目標のレベルにバラつきが生じる

MBOは従業員主体で目標を立てます。そのため、人によって目標レベルにバラつきが生じる可能性が高いです。例えばある人は高い数値目標を掲げ、もう一人は達成しやすい目標を設定するという場合です。
これでは成長スピードにも格差が出てしまいます。差を埋めるために、最終的に上司がトップダウンで目標設定することも多いです。そのため、100%従業員主体の目標設定ではなくなる可能性があります。

人事評価の負担が重くなる

達成度合いを人事評価に加える場合、評価者の負担が重くなります。従業員ごとに目標が異なるのは勿論、達成度合いを具体化・数値化するのが大変だからです。
そのため、公平さを維持するため、評価者間で基準を合わせる必要があります。したがって、MBOは通常よりも評価コストがかかることが多いです。

組織よりも個人が優先されてしまう

MBOが浸透すると、組織よりも個人の意見が優先されやすくなります。部署やチーム内でまとまりがなくなるケースも少なくありません。どこまで従業員個人の目標や行動を認めるか、事前に基準を設けることが重要です。

MBOの運用方法

MBOを運用する際は下記の手順に沿って進めていくのが一般的です。

  1. 会社の目標を設定する
  2. 個人の目標を設定する
  3. 目標の進捗を確認する
  4. 個人で自己評価を行う
  5. 上司から評価を得る
  6. 会社全体で評価を行う

①会社の目標を設定する

最初に、経営層や部長が中心となり、会社全体の目標を決めます。
その後、従業員全体に目標を共有します。その際は、

  • 目標の設定背景
  • 達成後のビジョン
  • 会社の将来


など、具体的に伝え、現場の理解をしっかり得ましょう。

②個人の目標を設定する

次に従業員個人による目標設定です。上司の指導は必要ありません。従業員が主体的に考えてください。悩む人でもスムーズにできるよう、「目標設定ガイドライン」を作成しておくのがおすすめです。

ガイドラインには最低限下記の内容を記載しておきましょう。

  • 目標の構成要素(個人目標と会社目標の違いなど)
  • 目標の作成手順(目標の書き方や具体例など、職種・役職ごとに記載する)
  • MBOにおける目標の評価基準、定義(評価基準の段階、基準の定義など)

個人目標が完成したら、上司がチェックします。

  • 会社目標方向性が揃っているか
  • 難易度が高すぎないか(ちょうど良い負荷か)

高すぎる目標はストレスになります。身の丈より少し高いレベルで、ちょうどよい負荷がかかる程度にしましょう。

適切だと判断できたら、内容を可視化(目標管理シート)に記入します。

③目標の進捗を確認する

設定した個人目標に沿って業務を進めていきます。適宜、上司と従業員間で時間を設け、目標の進捗確認をしましょう。最低1ヵ月1回は行ってください。
上司が一方的に指導するというよりかは、部下自身に目標の進捗や課題などを主体的に説明させることが大切です。必要であれば軌道修正するなど、うまく上司がフォロー・サポートしてください。

④個人で自己評価をする

どこまで達成できたか従業員個人で自己評価を行います。過小評価や過大評価はせずに、
自分の成長を冷静に振り返りましょう。

⑤上司が評価をする

自己評価の後は上司の評価です。この評価はあくまでも「従業員個人の自己評価の妥当性」の確認が目的です。
従業員自身と上司の評価に差がある場合は、原因を明確にしてください。最終的に調整して、評価内容を決定します。

⑥会社全体で評価を行う

最終的に会社としての従業員評価を確定します。ここでは上司が直接経営層に評価内容を報告・説明したり、評価内容のバランスを確認します。ここでの確定内容は主に次年度の給与・昇給に反映されます。

MBO導入が適さない企業もある

MBOは従業員の主体性を育むのに有効な制度です。しかし、組織の特徴によっては導入が適さない場合もあります。

例えば下記です。

  • すでに組織がフラット化されている
  • トップダウンのマネジメントが確立している
  • 会社全体の目標が頻繁に変更される

すでに組織がフラット化されている

例えば経営層と従業員が直接コミュニケーションを取れる等、すでに組織がフラット化されている場合です。すでに個人の主体的な目標設定・行動が促されているケースが多く、MBOを導入しても効果は限定的です。むしろ評価や面談などの負担が重くなり、企業運営に支障をきたす可能性もあるでしょう。

トップダウンのマネジメントが確立している

トップダウンのマネジメントが確立している組織も、MBOが不向きです(組織改革を除いて)。経営層・管理職も現体制に慣れているため、いきなりMBOを導入しても適応できないでしょう。

会社全体の目標が頻繁に変更される

スタートアップなどの全体目標が頻繁に変更される組織にも、MBOは適しません。都度個人目標も調整しなければならず、現場に負担がかかるためです。また、目指す方向性がコロコロと変わると、自己目標を適切に評価しづらくなります。

MBO活用の注意点

現在、国内でも多くの企業が導入しているMBOですが、成果主義の弊害も起こっています。
例えば富士通です。

  • 人事評価が給与につながるため、失敗を恐れる社員が増えた。
  • 短期的で達成できる数値目標のみ追いかけるようになった。長期的な挑戦をする社員が減り、ヒット商品が生まれなくなった。
  • 地味な通常業務がおろそかになり、アフターケアでトラブルが多発した
  • 個人の成果は数値で表すのが難しく、実質的に好業績部署の社員が有利だった。給与に対する不満から、社員の士気が低下し、業績は悪化した。

参考:給料に満足していない人が見落とす根本論点 | ワークスタイル | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

成果主義を成功させるには、数字や業績のみでなく、能力景気動向も鑑みて相対的に評価するのが良いでしょう。

参考:相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること | HR大学

MBO(目標管理制度)を活用して従業員の主体性を高めていこう!

MBO(目標管理制度)では従業員が主体的に目標を設定します。適切に運用すれば、企業全体の目標と従業員個人の目標をリンクさせることも可能になります。
従業員の自主性を高めて業務効率の改善を進めたい場合にもMBOの導入は最適です。本記事で解説した内容を参考にしてもらい、組織運営にMBOを活用してみてください。


参考:目標管理(MBO)とは?メリットやデメリット、運用の流れを紹介します。 – Resily株式会社(リシリー)
参考:MBO(目標管理手法)がマッチする組織と、しない組織の違いとは | パラれる|プロフェッショナル人事を経営の味方に

ABOUT ME
ミキワメラボ編集部
ミキワメラボでは、適性検査、人事、採用、評価、労務などに関する情報を発信しています。

活躍する人材をひと目でミキワメ

ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。

社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。