本記事では、ロスジェネ世代の意味、世代が抱える課題、ロスジェネ世代に対する支援策などを中心に取り上げ、それ以外の「団塊」「新人類」「バブル」「ゆとり」世代との違いもあわせて解説します。
ロスジェネの意味とは?「ロスジェネ」世代の年齢は?
ロスジェネは1970年〜1984年頃に生まれ、バブル経済崩壊後の超就職難の時代に就職活動をした世代を指します。「ロスト・ジェネレーション」の略で、ロスト=失われた、ジェネレーション=世代を組み合わせて「失われた世代」を意味します。
2021年現在の年齢が40代〜50代前半です。
NHK「クローズアップ現代プラス(2017年12月14日放送回)」は、ロスジェネ世代を「一生貧困を宿命づけられている不遇の世代」と表現しました。
同番組では、ロスジェネ世代の実情を「非正規や派遣就労など、今でも不安定な雇用に苦しんでいる」「一つ上のバブル世代の存在が昇進・昇格の障壁になっている」と伝え、大きな話題となりました。
参考:NHK|アラフォー・クライシス “不遇の世代”を襲う危機
参考:現代ビジネス|一生貧困の宿命「アラフォー・クライシス」を生んだ犯人は誰だ
ロスジェネ世代が生まれた背景とは?
ロスジェネ世代が生まれたのは「バブル崩壊」が原因です。
バブル崩壊後、企業は人件費削減に注力しました。不景気をリストラや雇用調整で乗り切るためです。そして、大幅に新規採用枠を減らし、結果として、ロスジェネ世代が生まれました。
ロスジェネ世代=就職氷河期の求人倍率
ロスジェネ世代は、バブル崩壊後の不景気のあおりを受け、倍率が高く厳しい就職活動を強いられました。非正規社員や派遣社員、無就労者が多いため、低賃金や不安定収入を理由に将来の不安を抱える「アラフォー・クライシス」や「中年フリーター」とも呼ばれる世代です。
この実態は求人倍率からも読み取れます。厚生労働省の労働白書によれば、就職氷河期における大卒の求人倍率(有効求人数÷有効求職者数)は以下のとおり大きく低下しました。
【大卒の求人倍率】
・1990(平成2)年 2.77 (バブル世代)
・2000(平成 12)年 0.99 (ロスジェネ世代)
(就職氷河期における若者の状況)
バブル経済崩壊以降、厳しい雇用情勢の中で若者の就職環境も厳しいものとなり、いわゆる就職氷河期がいた。
この間の状況を概観してみよう。まず、就職率・就職内定率(就職希望者のうち就職(内定)者の占める割合)と求人倍率を見てみると、大卒では求人倍率は 1990(平成2)年の 2.77 から 2000(平成 12)年には 0.99 に、就職率は調査を開始した1997(平成9)年の 94.5%から 2000 年に 91.1%まで落ち込んだ。
引用元:厚生労働省|平成21年度版労働白書
「求人倍率が1を切る」ということは「就職活動で内定が1つも得られない可能性がある」ことを意味します。あらゆる企業で採用枠が極端に減らされ、就活に難航した人が多かったのです。
参考:現代ビジネス|一生貧困の宿命「アラフォー・クライシス」を生んだ犯人は誰だ
ロスジェネ世代以外にもある!団塊・新人類・バブル・ゆとりの意味とは?
ロスジェネ世代以外で、時代を象徴する「団塊世代」「新人類世代」「バブル世代」「ゆとり世代」の4つを見ていきましょう。
団塊世代
「団塊世代」は1947年〜1949年に生まれた世代です。戦後ベビーブーム世代とも呼ばれ、成人を迎えた1970年頃は学生運動が最も盛んな時期でした。高度経済成長期の「右肩上がりの日本」を肌で感じた世代です。
この名称は元経済企画庁長官・堺屋太一氏の小説『団塊の世代』から名付けられました。
就職先では終身雇用や年功序列が一般的であり、競争意識が強く「頑張れば報われる」の感覚が強い世代です。世代労働人口が700万人近く存在するため、団塊世代労働者が一斉に退職を迎える「2012年問題」はダイヤモンドなど多くのメディアで話題になりました。
参考:マイナビニュース|団塊の世代とは? 年齢や特徴についてわかりやすく解説
参考:DIAMOND|なぜ震災後も新卒採用は衰えなかったか団塊世代の大量引退で到来する「2012年問題」 の深刻
新人類世代
新人類世代は1950年代後半〜1964年に生まれた世代です。彼らは高度経済成長期に子供時代を過ごしました。新人類とは「古い世代とは違う、まったく新しい価値観のもとに行動する若者」を意味します。思春期にはマンガやアニメ、テクノポップ、インベーダーゲームなどが流行しました。
参考:「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」…: 日本経済新聞
新人類の由来は、1985年に発表された朝日ジャーナルの連載記事「新人類の旗手たち」です。翌年には「新人類」が新語・流行語大賞に選出されました。
新人類
古い世代とは違う、まったく新しい価値観のもとに行動する若者群を新人類と名付けたのは、『朝日ジャーナル』編集長の筑紫哲也。
新人類世代が社会に出る頃には、日本企業の国際的な地位が高まり「Japan as No.1」と言われました。日本の成長やビジネス環境の成熟に伴い、量的拡大やPDCAを求められた世代です。
バブル世代
バブル世代は1965年〜1969年に生まれた世代です。
彼らが社会に出る頃、高度経済成長期で成熟した日本国内に資金が大量に流入し、企業は不動産や事業開発に資金を惜しみなく投じました。
さらに、企業は規模拡大を視野に新卒の大量採用を行い、バブル世代は大卒の5割以上が一部上場企業に入社したとも言われています。2021年現在、50代後半のバブル世代は企業内の人員ボリュームが大きく、待遇、評価、定年後雇用の在り方は人事部門の悩みの種となっています。
参考:日経ビジネス|「バブル崩壊」の語源 18世紀英国で起きた「南海泡沫事件」の顛末
参考:DIAMOND Online|バブル世代のシニア化、再雇用加速で経営が頭を悩ます「お荷物」社員の実態
ゆとり世代
ゆとり世代は1987年〜2004年生まれで、「ゆとり教育」を受けた世代です。
ゆとり世代の特徴は、比較的自分の内面に忠実な点です。ワークライフバランスという言葉が示すように、「自分のやりたいこと」「自分の時間」を大切にする傾向が強いです。
また、周囲からは「指示待ち」「リスク回避志向」「モチベーションが低い」などと批判されることも多いですが、「仕事は出世や自己実現が目的ではなく、生きるため(ライスワーク)」という姿勢が目立つ世代でもあります。
ゆとり世代が反応するポイントは「他者貢献」「協力して行動」です。
ロスジェネ世代が抱える課題とは?
ロスジェネ世代は就職活動で苦労した世代です。しかし、社会人となってからも課題を抱えています。
雇用が不安定である(非正規雇用や無就労者が多い)
ロスジェネ世代には非正規雇用者(派遣、契約、アルバイトなど)、無就労者が多く存在します。
内閣府「就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料」では以下のとおり公表されています
(2008年時点)。
調査対象者: 1,689万人
非正規の職員・従業員: 371万人
非労働力人口: 219万人(うち無職者が40万人)
全1,689万人のうち、590万人(約35%)が正社員として働けていないな状態です。「就職活用がうまくいかず仕方なくフリーターになった」「雇用が不安定なので将来設計ができない」という人も多いことでしょう。
非正規雇用であるが故に「希望職種が有期雇用の募集しかない」などロスジェネ世代の多くが雇用に関する課題を抱えています。
参考:朝日新聞DIGITAL|「ロスジェネ 女性 非正規」:2 支える手は
キャリア形成が難しい
ロスジェネ世代は非正規の仕事に就かざるを得なかった人が多く、キャリアを築く機会に恵まれませんでした。
非正規雇用のため、部署異動で経験値を積んだり、ゼネラリストを目指せる立場にありません。有期雇用の場合は契約満了と同時に新たな職場を探す必要もあります。
また、非正規雇用であると仕事内容が限定的になりやすいです。さらに、職場における教育訓練、スキルアップや専門性を高める機会も不十分なのです。
実際、厚生労働省「非正規雇用」の現状と課題」によると、「正社員以外に教育訓練を実施している事業所は、計画的なOJT、OFF-JTのいずれも、正社員の約半数」であることがわかりました。
【正社員と正社員以外の教育訓練実施事業所】
正社員 | 正社員以外 | |
計画的なOJT | 56.5% | 22.3% |
OFF-JT | 68.2% | 29.0% |
【事業所における教育訓練の実施状況】
正社員以外に教育訓練を実施している事業所は、計画的なOJT、OFF-JTのいずれも、正社員の約半数となっています。
このように、正社員以外(非正規社員)は正社員に比べて教育訓練の機会が少ないのです。
十分な所得がない(低賃金)
非正規雇用者は、正規雇用者に比べて低賃金です。
非正規雇用者の年収は正規雇用者の3〜4割程度であり、両者には大きな給与格差があります。また、日本には正規と非正規間の格差を是正する規制がなく、OECDから「労働市場の二極化が日本の大きな問題である」と指摘されています。
毎年刊行されている“Employment Outlook”や“Economic Policy Reforms”、随時公表される調査書などの内容を見てみると、OECDは「労働市場の二極化(labour market dualism)」が日本の大きな問題であると一貫して指摘している。
引用元:大和総研|日本は「正規雇用の解雇が最も難しい国」?
「ロスジェネ世代とバブル世代では50万円近く給与格差がある」「年収200万円で結婚を諦める」など、給与格差はロスジェネ世代が抱える大きな課題です。
参考:Newsweek|40代ロスジェネの年収は10年前のバブル世代より50万円も低い
参考:東洋経済ONLINE|年収200万で結婚諦める38歳男の苦労人生
ロスジェネ世代の特徴とは?
困難な就職活動を経たロスジェネ世代にはどのような特徴があるのでしょうか。
参考:日経xwoman|ロスジェネ世代の「働く意識」485人調査の結果を発表
特徴1.働くことに対する意欲が高い
ロスジェネ世代は「働きたくても働けない」「不本意な雇用形態で働かざるを得ない」という就労環境下にあります。
そのため、働くことに対しては、前向きで意欲が高い特徴があります。「自分の能力を発揮できる環境」「やりたい仕事に取り組めること」に対する喜びが強いからです。
女性も育児休業から復帰するなど、男女ともに働き続けた結果「共働きで子育てする」土台を作った世代とも言えます。
特徴2.堅実である(貯蓄やスキルアップなど)
不安定な雇用や不十分な収入などを背景に、将来への不安が強いロスジェネ世代。
「お金はしっかりと貯蓄する」「仕事をこなせるようにスキルアップする」など、あらゆる面で堅実さを持っています。
特徴3.IT業界の成功者が多い
ロスジェネ世代が就職活動をする頃は、ちょうどITテクノロジーの発達期と重なっています。
- 藤田晋(サイバーエージェント)
- 西村博之(2ちゃんねる)
- 小澤隆生(ヤフー)
- 岩瀬大輔(ライフネット)
など、現在のIT業界で一定の成功を収めている人が多いです。
ロスジェネ世代を支援する施策!就職・転職に活用しよう
就職難を経験したロスジェネ世代を支援する施策を2つ紹介します。就職・転職時に活用できるため、ポイントを押さえておきましょう。
施策1. 就職氷河期世代支援プログラム
1つ目は内閣府の「就職氷河期世代支援プログラム」です。
プログラムの概要は以下のとおりです。
- ハローワークの無料相談
- 資格取得や職業訓練などの支援
- 公務員試験
- ロスジェネ世代限定求人の紹介など
今後の就職・転職活動に関する支援をしてくれるプログラムです。「働きたいけど自信がない」「スキルアップしたいけどお金と時間がない」「正社員になりたいが年齢が気になる」といったロスジェネ世代にぴったりです。
参考:内閣官房|就職氷河期世代支援プログラム(リーフレット)
施策2.就職氷河期世代活躍支援プラン
厚生労働省からは「就職氷河期世代活躍支援プラン」が用意されています。
プラン内容は以下です。
- ハローワークの求人紹介や面接対策
- 短期で資格取得を目指す短期資格等習得コース事業
- サポートステーション
- ひきこもり地域支援センター
- 自立相談支援など
「今の仕事を見直したい」「社会で働くための準備をしたい」「社会とのつながりを持ちたい」という方に向けて、一人ひとりに合わせた適切な支援プランが設けられています。
まとめ
バブル経済が崩壊し長引く不景気下で就職難に遭ったロスジェネ世代は不安定な雇用や低賃金などが原因で、苦しい生活を送っている人が多いです。
現在では、ロスジェネ世代向けの支援策が打ち出されるなど、国を挙げてサポートが始まっています。自身に合った環境で活躍できるよう、就職・転職活動に支援策を活用してはいかがでしょうか。
本記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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