講演レポート

「ウェルビーイングリーダーズサミット『2年で社員が6割辞めたベンチャー企業を、3年間で活気あふれる組織に立て直した方法』」

本レポートは、2022年9月28,29日に開催された、「ウェルビーイングリーダーズサミット by ミキワメ」の基調講演の文字起こしです。ウェルビーイングを牽引する様々なリーダーにご登壇いただき、組織に関する様々なテーマとウェルビーイングの結びつきについてお話しいただきました。

飯田:皆さんこんにちは、ウェルビーイング・リーダーズサミット2日目ということで、本日最初のコンテンツをお送りします。「2年で社員が6割辞めたベンチャー企業を、3年間で活気あふれる組織に立て直した方法」というテーマです。本当にお恥ずかしく、また苦労をかけた卒業生には申し訳ないという話ですが、ウェルビーイングを通じて組織を改善していった話を皆さんとシェアしていきます。

飯田氏自己紹介

今更ですが、少し私の自己紹介をします。仕事にやりがいを感じている日本人が18%しかいないというデータがあります。国のデータなのですが、これに危機感を感じ、東京大学経済学部の3年生だった頃に学生起業をしました。今はミキワメ事業が好調に推移している状況ですが、かなり紆余曲折、谷あり谷あり谷ありということで、長い間苦労してきたのが正直なところです。今は社員が100名弱ぐらいの状態です。

何をやっているのかというと、大きく2つのアルゴリズムを持っています。1つは左側の「ミキワメ適性検査」です。人の性格は明らかにすることが可能で、その性格を基に会社が候補者を採用したほうがいいか、懸念点が何なのかということを明らかにできるということがひとつ。

そして、いい人を採ったけれど、ふとしたきっかけでコンディションを崩してしまうこともよくあることです。心の幸福度である「ウェルビーイング」の状態を測るロジックがあり、これを従業員さんに定期的に受けていただいて心の状態を明らかにします。ほかにも、心の状態も性格もわかっている状況で、どのようにその人をケアしてあげればいいのかをアドバイスできる『ミキワメ ウェルビーイング』というサービスもやっています。

要するに、性格と心を可視化して、しっかりと自社に合った人を採ってアサインして、かつ心のコンディションを見ながらウェルビーイングに活躍できるように継続的にケアしていく。そのようなことを可能にするサービスをやっています。

ミキワメをリリースして2年半ぐらいなのですが、お陰様で全国の大企業から中小・中堅企業まで様々な会社さんにご活用いただいている状況です。

これも今さらという感じですが、ウェルビーイング・リーダーズサミットの「ウェルビーイング」という言葉について。皆さんご存知かもしれません。身体だけでなく心も健康であること、そして社会的にも良い状態にあって幸せであることを「ウェルビーイング」といいます。

私は、事業も組織も崩壊させてしまった経験があります。それでもウェルビーイングを実現すれば、どんな組織も変えられます。この点をぜひ皆さんにお伝えしたいと思います。

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株式会社リーディングマークの話

ここからは私たちの話です。リーディングマーク組織崩壊の歴史についてです。申し上げたように学生起業し、マンションオフィスで頑張っていました。2014年頃に、スマートフォンで撮った動画を履歴書代わりにできれば面白いと考え「レクミー」というサービスを作りました。

今でこそ就職活動で動画を使うことが当たり前になりつつありますが、当時はうまく立ち上げられず失敗しました。

学生や企業とのコネクションができたので、それを活かしながら合同企業説明会をやって、なんとかマネタイズしながら次のテーマを探っている時期がありました。レクミーでITプロダクトをやると思って入ってきたのに、「なんかちょっとイメージと違うぞ」と感じた社員もいました。

事業が苦しいだけでなく、組織崩壊が起きました。離職率30%オーバー。どういうことかというと、3年も経つと社員が全員いなくなるということなんです。

モチベーション偏差値は40台

モチベーションクラウドさんを使ってエンゲージメントの偏差値を測っていたのですが、40台でした。極めて危険な水準にずっといた状態です。さらに、私自身の心も限界になっていきました。会社に行くと「ちょっとやめさせてください」とか「これはおかしいんじゃないですか?」という話をよくされることから、精神的にツラくて胃が痛い状態でした。それでも経営危機であったため、会社に行かないとしょうがないので頑張ってチャレンジしてきました。

何よりきつかったのは、社員を幸せにしてあげられていない状態に対してでした。こんなことでは駄目だということで、自分の人生をかけて社員を幸せにし、組織を立て直していくことを決意しました。

まだまだ課題だらけですが、当時と比べれば飛躍的に良くなっていると感じています。この立て直しを実現できたポイントを、しくじり先生ではありませんが皆さんとシェアしていきたいと思っています。

組織立て直しのポイント

この4点がポイントだったと思っています。この4点はバラバラに書いてあるように見えますが、総じていうと「社員の心が健康・幸せで、事業の成果が上がる経営」。これを私は「ウェルビーイング経営」と呼んでいます。ウェルビーイング経営をやっていったことが、組織立て直しのポイントでした。

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4Pで会社の強みと弱みを明確化

1つ目は「4 Pで会社の強みと弱みを明確化していく」ということ。自社の推しポイントと捨てポイントを明確化する試みです。たとえばコカコーラ社のコカコーラのポイントは、フレッシュであるとか若々しいとか、そういうところだと思います。「コカコーラを飲んで健康になる」と思って飲んでいる人はいませんよね。要するに、優れたプロダクトというのは、「これが強みだ」というものが立っているのと同時に「この部分は捨てよう」というメリハリがしっかりしているんですね。

当時を振り返ってみると、とにかく人を採用したいわけです。そうすると面接で「ウチの給料は今は普通ぐらいかもしれないけれど、将来上がるよ」と言ったり「異動したいなら異動できる場合もあるよ」といったように、何でもできるようなアピールをしていました。そんなわけありませんよね。

推しポイントを決めて捨てポイントも明確化し、面接のときから「これはウチでは無理だよ」とちゃんと言おうと決めました。このフォーカス&チョイスは、ぜひ皆様にも意識していただきたいポイントです。ちなみに当社の場合は、このPhilosophy「ミッション」を大切にしていこうと決めました。

理念に共感する方の採用

次は2点目です。理念を主ポイントとするのであれば、それに合った人を採ろうということです。当時も大変素晴らしいメンバーがいたと今でも誇らしく思っています。ただ、ミッションやバリューというところが少し弱い状況でした。どう行動するのが正しいか判断する軸がありませんでした。そうすると、苦しい状況になると社員がそれぞれの正義を主張して、対立状態になるんです。

たとえば、何かをお客様に納品する時に、体力的には苦しいけど妥協なくやり切ろうとする人と、サステナブルにやるためには効率性を重視し、そこそこで納品しようと考える人もいます。どちらも不正解とは言えませんが、局所局所で対立していくことが増えてしまいました。

そこで、ミッションやバリューをしっかり作っていこうとしました。ミッションは人の自己実現を支援するために仕組みを作り、成果を上げて有益かつ大きなインパクトを世間に出すためのものです。バリューも重要です。

バリューのポイントは、「このバリューをやっていくと、自分たちの事業にとってもプラスになるよね」というお題目ではなく、バリューをやると連動して事業も成功するようなものに設定することが重要です。

たとえば当社のバリューに「全部自分ごと」というものがあります。いわゆるSaaSの会社だと、仕事を縦割りして「あなたはインサイドセールス」「あなたはフィールドセールス」と細分化していき、ともすれば部分最適になるという考え方が主流な状況です。我々は「全部自分ごと」ということで、何かあったら明日から事業責任者や社長でもおかしくないぐらいの視点で全部やろう、という考え方です。

実はこの「ウェルビーイング・リーダーズサミット」というイベントも、当社でカスタマーサクセスをやっているメンバーが「こういうイベントがあったらいいのでは?」と発案して「じゃあやってみようか」と立ち上がったわけです。ウェルビーイング・リーダーズサミット部という部は当然ありません。このような感じでどんどん染み出して仕事をしていくことが正しいですし、今回実際6,000人ぐらいの方にお越しいただいて、我々としても大変良い場となりました。全部自分ごとでやっていくことが、事業を前に進めることや、我々の利益に繋がっていきます。そのように、バリューと事業成果が繋がっていくような設計でバリューを見直しています。

これはトーマス・ギルバートさんという方の古典的な整理です。パフォーマンスというのは「知識×資質×動機」だと言っています。スキルは前職での実績や面接で判断しやすいものです。一方、動機は測りづらいですよね。理念への共感という点を考えるのであれば、この測りづらい動機や考え方にむしろ着目していく必要があります。

我々も「ミキワメ」というブランドで性格検査を持っていますが、他社さんの検査でもいいと思います。どういう性格の方が自社の理念にあったマインドを持っているのかを、定量的に測定し始めました。それによって、採用ミスがほぼ起きないようになりました。

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社員の性格を活かすマネジメント

次にポイントの3番目「社員の性格を活かすマネジメント」についてです。皆さんちょっと考えてみてください。落ち込んだ社員や部下がいた時にどうフォローしますか?

よくあるのがこんな感じですね。「ちょっと落ち込んでるらしいね、飲みに行こうよ」と。ホルモン焼きって書いてありますね、私もホルモン好きですけれども。ただですね、落ち込んだ時にホルモン焼きを食べればよいというわけでもありません。むしろ、困っている時や落ち込んでいる時は、ちょっと一人の時間をもらって考えを整理したいという性格の人もいます。

考え方や性格によって、ケアの方法や正しいコミュニケーションは変わってきます。私もまがりなりにも起業してから十数年間HRの領域でやっているので、一応HRのプロだという自負もなくはありません。ただ、全然プロではなかった、わかっていなかったということに気づきました。

これはカオナビさんの調査ですが、社員の個性を把握することはなかなか難しいという話です。60%の社員が、「上司から理解されていると仕事のパフォーマンスに良い影響がある」と回答しています。実際に理解してほしいと思っているんですね。一方で、社員さんの個性を理解している上司は、なかなか存在しないという現実があります。

これは別の研究です。ロンドンビジネススクールの教授の調査です。個性を重視したマネジメントを行うと、社員の定着率が高まるというデータがあります。「自分は社員のことがわかっていない」という前提に立ち、どうすれば理解できるかということを2歩も3歩も含めてきちんと理解し、その理解をした社員の性格や個性を活かすマネジメントをやっていく。そういうところを非常に強く意識しました。

ウェルビーイングへのコミット

最後のポイントです。このイベントのテーマでもある「ウェルビーイングへのコミット」です。当時の自分たちを振り返ってみると、「ウェルビーイング負のスパイラル」に陥っていました。

成果が出てないわけです。成果が出ないと「やらないと」ということで限界まで働きますよね。そうするとすり減ります。すり減っていると成果が出ません。また限界まで働く。この負のスパイラル。これを抜け出すためには、どこかのやり方を変えて正のスパイラルに変えていかなければいけません。

そこで、「自分らしく正しく楽しく働く」ということをまず置こうと決めました。そうすると成果が出ます。成果が出ると「もっとやりたい」とエンゲージメントが高まります。自分らしく楽しく働く、成果が出る、もっとやりたいという「ウェルビーイング正のスパイラル」を回していこうと決断しました。

実際にウェルビーイング・リーダーズサミットのWebページにも掲載していますが、ウェルビーイングをやると、組織に対して良い影響があることがわかっています。離職率が下がる、欠勤が減る、生産性・創造性や売上がぐっと上がることなどがわかっています。

ウェルビーイング経営で、チームは劇的に変化しました。ずっと低かったモチベーション偏差値が一気に70台になりました。全国でもトップ1%というところまで、ウェルビーイング経営のおかげで改善したのです。

そして、離職率も30%を超える水準から4%というところまで劇的に変わりました。当社の上半期がこの9月で終わりますが、離職ゼロです。もちろん離職がゼロであれば正しいということではないのですが、全く別の組織になったということは確実に言えます。そういう形で組織が少しずつ良くなっていきました。

しかし、「ミキワメ」も開発して、ここからどんどん伸ばしていくぞというところで、1つ問題が発生しました。社会環境の変化です。

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新型コロナウイルス発生後の事業

新型コロナウイルスの発生です。もともと合同企業説明会でマネタイズしたのですが、これは密の極みですよね。売り上げがあっという間に無くなり、倒産の危機に追いやられました。せっかく良くなったところで、倒産の危機ということです。

ただし、当時はすでにウェルビーイング経営によって組織状態が変わっていました。組織の底力がついていたんです。こうした危機的な状況だと、普通にやったら潰れてしまうため、社員をクビにしてコストを圧縮しようと考えてしまうものです。しかし、私はメンバーや組織のポテンシャルや力を考えていたので、真逆の考え方を取りました。

「事業が苦しいので、経営者は報酬を引き下げよう」ということで、私を筆頭に役員の給料を引き下げました。ただし社員に対しては、「もう絶対大丈夫だから、事業のトランスフォーメーションを苦しいけどやっていこう」ということで、社員の雇用継続をコミットしました。

4月の入社式もできなくなり、急遽オンラインでやりました。意外に盛り上がり、これをヒントに「合同企業説明会もオンラインでできるのでは?」と考えました。5月にはオンラインで我々のサービスをすべて提供するようにと、一気にトランスフォーメーションしました。今でこそ当たり前ですが、当時はすごいスピードで対応できたなと思っています。

むしろ粗利は増える形になり、コロナ発生直後の2020年の4月にリリースした「ミキワメ」も、初月の受注は1社でしたが、組織が団結して急成長しました。

終わりに

繰り返しになりますが、私は過去の失敗をすごい反省しています。これ以上不幸せなチームや個人を生み出したくないという想いでやっています。これを私のライフワークとしたいと。

自社から不幸せな社員を出さず、社員を幸せにしていくことはもちろん、世の中をウェルビーイングが溢れる世の中にしていきたい、という想いでこのサミットも開催しています。組織でお悩みの方も観ていると思います。もしお悩みであれば、このミキワメの技術も使いながら皆さんとディスカッションさせていただき、どうすれば御社の組織をよくできるのかということを話し合っていければと思っています。このイベントを観ていただいている方であれば、私が直接かつ無料で拝見し、一緒にどうすれば組織を良くできるのかを考えていきたいと思っています。

今日ご参加いただいている私たちや皆様から採用やマネジメントを変えて、日本をウェルビーイングで溢れる国にしていきたい、みんなでやっていければ嬉しいと思っています。以上、私から組織を良くするためのいくつかのTipsをシェアさせていただきました。

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