2022年9月28日・29日に株式会社リーディングマークによって開催された「ウェルビーイングリーダーズサミット」において、株式会社日立製作所フェロー / 株式会社ハピネスプラネット代表取締役CEOの矢野和男氏と、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム代表理事の香川憲昭氏が、「ハピネス&ウェルビーイング経営の本質 ~予測不能な時代を生きる〜」と題して講演しました。講演要旨は次のとおりです。
昨日の前提が今日には通用しない現代
50年前にドラッカーが「未来はそもそも予測できない」と断言しています。現在の世の中は、昨日の前提を超えることが今日、明日と常に起きています。これは予測不能です。この前提自身が日々変わるなかでは、黙って昨日のとおり今日の業務をやっていても、変化を感じとれません。そのため、見直しを積極的に実施していく必要があります。
大きな目的や目標は、意志を持って予測不能な中で決めるしかありません。しかし状況は日々変化しているので、常に見直しが求められます。特に、現場で状況変化を一番よく理解している人たちが、機動力を持って変化を起こしていく必要があるのです。
既知のことを活用する仕組みと、変化に適応する仕組み。前者ができていないと組織として成り立ちませんし、既知のことだけでは、変化を無視する組織になります。つまり、これらを両立するのが我々の持っている唯一の答えということです。そして、実際にこれらのポイントに向き合っていくためには、社員それぞれが常に成長していこうとする意志が背後にないといけません。
幸せとは何か?
多くの人が「仕事がうまくいったら幸せになれる」と思っています。「健康だったら幸せになれる」とも言いますよね。実はそういう因果関係は、極めて弱いことがデータでわかっています。むしろ因果関係は逆です。幸せだと仕事が頑張れるし、幸せだと病気になりにくいのです。
我々が常に高めていける幸せというのは、実は4つの要因で成り立っています。それを明らかにしたのがFred Luthans教授です。
- ・Hope:道は見つかると信じる力
- ・Efficacy:現実を受け止めて踏み出す力
- ・Resilience:困難に立ち向かう力
- ・Optimism:どんな状況も前向きに楽しむ力
我々は、ともすれば「根拠なしに自分のことは信じられません」「準備が整わないと行動できません」と思ってしまいます。しかし、別の見方もできますよね。「自分を信じるから根拠が見つかる」「行動するから準備が進む」といったように。つまり、どう思うのかは自分で選べるということです。
「Happiness Planet Gym」とは?
今年の5月に「Happiness Planet Gym」というサービスをスタートしました。私が着目したのは「応援」です。スポーツにあって、ビジネスにないものですよね。応援は、される側もする側も前向きな精神的エネルギーを持ちます。これをビジネスで使わない手はありません。
「Happiness Planet Gym」の仕組みを紹介します。朝に「リタちゃん」というキャラクターが「今の一歩に集中しよう!」といったメッセージを社員に投げかけます。そのメッセージを受けて、社員の田中さんが「先延ばしにしていたテスト項目の整理を進めます」と意思表示する。すると、同僚の山本さんが「先延ばしにしていた作業に着手。私も見習います!」といったような応援メッセージを投稿し、リアクションします。
前向きさを促す体系化された提案によって、単なるToDoを超えた想いを社員が発信し、それに対して周囲が応援メッセージを送る。こうした流れによって、まさに田中さんの今日の仕事の根幹・中心の部分を応援できるようになります。
さらに、デジタルならではのサービスが「The Triangle」です。月曜日になるとシステムが3人組の応援団を自動生成します。私がそのひとりだとすると、私が前向きなことを書くと、ほかの2人が応援してくれる。一週間、3人組で互いに応援しあい、翌週になるとまた新たな3人組が組まれます。
システムデータを確認すれば、過去の履歴でどこがV字型(上司や部下の縦の関係)になっているか、どこが三角形(同僚との横や斜めのつながりを含めた関係)になっているか全部わかります。このV字状を無くし、三角形で組織中が埋まるように自動でアサインする。要するに、応援を通じて人間同士の繋がりを組織の中に作る試み。こうした仕組みとなっています。
2022年の5月に始めたばかりのサービスですが、すでに120社の幅広い企業にご利用いただいています。
前向きに応援しあう
まとめです。
- 1)未来は、前向きさとつながりが生む
- 2)毎週2%の継続がすべてを変える
- 3)常に前提を見直す組織・社会へ
- 4)社会も企業も人の心で出来ている
企業も社会も、人を歯車のように考えていませんでしたか?それは違いますよね。人は心を持っていて、心次第でまったく違うものになります。この当然の事実を皆さん受け止めましょう。
一人ひとり、必ず今日からできることがあります。皆さんが今日から動き出してくれるのであれば、こうして話してきた甲斐があったと思います。私は「前向きな人が6%しかいない今の社会を、次世代へ残すわけにはいかない」と思い、会社を作り、書籍『予測不能の時代』を出版しました。ぜひ我々の仲間になっていただき、何かできるところからスタートしていただけると幸いです。
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