「配属ガチャ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。配属ガチャとは、配属先がわからないことへの社員の不安感をあらわしたものです。
配属ガチャには「あたり」と「はずれ」があり、「はずれた」と感じた社員はモチベーションを大きく損なわれ、休業や早期離職を招いてしまう場合もあります。
今回の記事では、配属ガチャはずれの弊害と防止法を解説します。新入社員の早期離職に悩む人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
配属ガチャとは
配属ガチャとは「入社後どのような部署に配属されるかわからない」という不安を、ソーシャルゲームやカプセルトイの「ガチャ」に例えた言葉です。
主にSNSにおいて若年層の間で使われている言葉ですが、現在ではニュースでも取り上げられるようになり、認知度が高まっています。
配属ガチャの「あたり」とは
配属ガチャの「あたり」とは、主に希望どおりの部署に配属されることを指します。
希望どおりではなくてもチームの雰囲気が良い、教育が手厚いなど、社員にとって働きやすい環境であれば「あたり」と見なされる場合もあります。
配属ガチャの「はずれ」とは
配属ガチャの「はずれ」は、主に希望と異なる部署や勤務地に配属されることです。
また、上司や先輩との相性が悪い、業務内容が難し過ぎる、もしくは簡単過ぎるなど、心地良く働けない環境を「はずれ」と呼ぶケースもあります。
配属ガチャがはずれたときに起こりうる問題
新卒社員にとって、最初の配属は重要な問題です。「配属ガチャがはずれた」と感じると、今後のキャリア形成に希望が持てず、労働意欲が低下します。
さらにショックが大きい場合は、休業や早期離職にもつながりかねません。配属ガチャがはずれたときに起こりうる主な問題は次の3つです。
- 早期離職する
- モチベーションが低下する
- 精神的ストレスが原因で休業する
詳しく見ていきましょう。
早期離職する
希望する部署に配属されなかった失望により、社員が早期離職してしまうケースがあります。社員が離職すると、採用にかかったコストを回収できず大きな損失となります。
さらに、退職した社員の穴を埋めるため、新たに採用活動をしなければなりません。費用がかさむだけではなく、採用担当者の手間や精神的負担も大きくなってしまいます。
モチベーションが低下する
希望していた部署に配属されなかった場合、社員は入社後のモチベーション維持が難しくなります。
また、意欲に乏しい社員が配属されたことで、部署全体の士気が低下してしまうおそれもあるでしょう。
精神的ストレスが原因で休職する
配属ガチャに外れると、社員は大きなショックを受けます。周囲の環境になじんでおらず、相談できる相手がいないことから孤独感が高まったり、上司や先輩との相性が悪く、コミュニケーションに弊害が生じたりする場合もあります。
精神的ストレスに耐え切れず、メンタルの健康を害して休業してしまう社員もいるでしょう。社員が休職すると、人事戦略の見直しや社会保険料の支払いといった手間や費用がかかります。また、同部署の社員の負担増やモチベーション低下を引き起こす点も問題です。
「配属ガチャ」という言葉が生まれた背景
「配属ガチャ」という言葉が生まれたのはごく最近ですが、以前より配属は企業が決め、社員に通達していました。
なぜいまになって「配属ガチャ」が話題化しているのでしょうか。その理由としては、働き方の価値観の変化と、日本企業の雇用形態から生まれる配属のミスマッチ問題が挙げられます。
働き手の価値観が多様化している
働き方改革や終身雇用制度の崩壊により、働き手の価値観は大きく変化しています。働くことの意味も「会社への貢献」から「自身を成長させる手段」へとシフトしており、自己分析をもとにキャリアプランを自らでデザインする傾向が強まっています。
「キャリアアップのためにこの部署に行きたい」と具体的な希望を持って入社する社員も少なくありません。
採用後の配属ミスが問題視されている
日本企業の多くは「メンバーシップ雇用」を導入しています。メンバーシップ雇用とは、業務の内容や勤務地を限定せず雇用契約を結び、さまざまな部署で経験を積みながら適性を見極め、キャリアアップの方向性を決める採用方式です。
配属先は採用後、会社側が決めます。結果として、新入社員の希望や適性に合わない配属をしてしまい、配属ガチャの「はずれ」を招くことがあります。
現状の配属方法における問題点
配属ガチャという言葉が生まれる以前から、日本企業の配属方法にはさまざまな問題がありました。配属方法に対して新卒社員が漠然と抱いていた不安が「配属ガチャ」という言葉により顕在化したといえるでしょう。
新卒社員は配属方法に対し、どのような点に不安を抱いているのでしょうか。現状の配属方法における問題点は次の3つです。
- 内定から配属先通知までの期間が長い
- 会社の都合で配属先を決めてしまう
- 社員の適性に合わない配属をしてしまう
それぞれ詳しく紹介します。
内定から配属先通知までの期間が長い
新卒採用は内定から入社までに半年以上のタイムラグが生じます。さらに、企業によっては入社後の新入社員研修を経て配属先が決まることもあります。
待つ時間が長いほど不安は募るものです。情報収集の時間も十分にあるため、部署の雰囲気や業務内容を把握して「ぜひこの部署に行きたい」と強い希望を抱く新卒社員も少なくありません。
そうした不安や希望が高まるほど、配属ガチャに外れたときのショックは大きくなってしまうのです。
会社の都合で配属先を決めてしまう
人材不足に悩まされている企業では、欠員を補充する形で配属先を決めるケースがあります。本来の人事異動の目的である、人材育成や組織の活性化を考慮しない場当たり的な配属は、社員を失望させてしまう要因となります。
もちろん、人材不足の部署に社員を投入するのは、企業存続のために重要です。とはいえ、会社都合ばかりを優先していては、社員に「配属ガチャにはずれた」と思われてしまう危険性があります。
社員の適性に合わない配属をしてしまう
社員の適性を見誤り、相性の悪い部署に新入社員を配属してしまうケースもあります。履歴書や面接だけで人材の適性を見極めることは困難であるためです。
いざ配属されると、部署の求める人材に合ってない、既存社員と円滑にコミュニケーションできないといった問題が起こりえます。
配属ガチャはずれによる離職防止対策
配属ガチャのはずれによる離職を防止するためには、新入社員の希望に沿った配属先を決めるのが一番の対策です。しかし、企業戦略や適性などの問題で、社員の都合ばかりを優先できないこともあるでしょう。
たとえ希望どおりの配属ではなくても「この部署で良かった」と新入社員が感じられるよう配慮することで、早期離職を防止できます。
配属ガチャはずれによる離職防止対策として有効なものは次のとおりです。
- 社員の適性や希望を把握し配属先を決める
- 配属先の状態を確認する
- 可能な限り早く配属先を通知する
- 配属した理由を説明する
- ジョブ型雇用の導入を検討する
- 配属後はこまめにフォローする
以下で詳しく紹介します。
社員の適性や希望を把握し配属先を決める
配属ガチャのはずれによる離職防止のためには、新入社員の適性や希望を考慮して配属先を決めるのが一番の手立てです。面接時の質問や内定後の面談により、社員の性格やスキル、キャリアプランを聞き取りましょう。
社員の特性を重視した配属をすることで、配属ガチャはずれのリスクを下げられます。配属の根拠を社員に説明でき、納得感を得やすい点もメリットです。
配属先の状態を確認する
たとえ新入社員が自身の希望する部署に配属されたとしても、十分な教育を受けられなかったり、既存社員と相性が悪かったりすると、配属ガチャは「はずれ」となってしまいます。
配属先が社員を受け入れられる環境であるか、あらかじめ確認しておきましょう。
多忙を理由に受け入れに対して消極的になっている部署には、社員が配属されるメリットを説明し、理解を促すことも重要です。
可能な限り早く配属先を通知する
できるだけ早く配属先を知らせることも、配属ガチャの不安解消に役立ちます。
見通しが立たない不安感を和らげ、働くことに前向きになってくれる可能性があります。
一方、望まない部署への配属を通知されることで、内定辞退してしまうリスクも無視できません。「早期離職よりは被害が小さい」と割り切るのも一つの考え方ですが、内定辞退により優秀な人材を逃してしまっては本末転倒です。
配属した理由を説明する
配属先決定の理由を説明すると、配属ガチャはずれによる早期離職のリスクを軽減できます。
希望しない部署に配属された場合、新入社員は「なぜ自分がこの部署に配属されたのか」「この部署で自分が望む経験はできるのか」といった不安や疑問を抱きます。
配置決定後、早い段階で1on1の面談を行い、以下の点を個別に説明しましょう。
- 配属先を決めた理由
- 配属先でどのような役割を期待しているか
- 配属先でどのようなスキル・キャリアを得られるか
配属決定の理由や本人のメリットを理解し、配属先に納得できれば、配属ガチャは「はずれ」ではなくなります。
上司や人事担当者が丁寧に説明することにより、信頼関係が構築できる点も個別面談のメリットです。信頼できる相手がいれば仕事への不安感が和らぎ、働きやすくなるでしょう。
ジョブ型雇用の導入を検討する
ジョブ型雇用(職種別採用)とは、職務記述書(ジョブディスクリプション)を具体的に提示して人材を採用する方法です。
採用活動の時点から業務内容や担当領域がわかるため「配属ガチャ」自体が起こりづらくなります。採用のミスマッチを回避し、希望する人材を確保しやすくなる点もメリットです。
しかし、ジョブ型雇用で採用した人材は、ジョブスクリプションで定められた範囲外での配属がしづらくなり、組織の硬直化を招くおそれがあります。
自社の状況や人事戦略を考慮して、採用方法を決めることが重要です。
配属後はこまめにフォローする
新入社員の配属後は、当人が労働環境になじめるよう、フォローする体制を作ることが重要です。
初めて業務に携わる社員は、希望する部署であるか否かにかかわらず、理想と現実のギャップに悩むことも少なくありません。メンター制度や1on1面談などを導入し、社員が悩みや疑問点を相談できる環境を整えましょう。
また、社員へのこまめなフォローには企業への信頼や愛着心を育て、定着率を高める効果があります。
コミュニケーションの機会が多いほど、社員に対してケアが必要なタイミングをつかみやすくなるため、メンタルの問題による離職や休業を防止できる点もメリットです。
配属方法を見直して、新入社員が納得できる最適な配属を実現しよう
配属ガチャがはずれることの弊害と対策法を紹介しました。
働き方の多様化や価値観の変化により、多くの若年層は「会社に貢献する」ことよりも「働くことで自己実現を目指す」ことを重視しています。
そのため、希望する部署に配属されなかったときのショックが大きく、モチベーションの低下や精神的ストレスを引き起こし、離職してしまうケースもあります。
人事異動は事業計画にのっとって行うものですが、会社都合のみで一方的に配属を決めると、新入社員は不安や不満を募らせてしまいかねません。
配属ガチャのはずれによる新入社員の早期離職を防ぐためには、個人の希望や適性、配属先の状態や既存社員との相性など、多面的に分析をしながら、最適な配属を考えることが重要です。
「ミキワメ 適性検査」では、新入社員の適性や、部署との親和性の分析が可能です。新入社員にとっても、企業にとっても理想的な配属を実現するために、導入を検討してはいかがでしょうか。
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