フリーライダーとは、組織の利益に貢献していないにもかかわらず、集団利益に乗り込む人を指します。集団の中にはフリーライダーと呼ばれる人たちが一定数含まれることも珍しくありませんが、フリーライダーが増えると組織全体に大きな影響が出るため、注意が必要です。
そこで本記事では、フリーライダー社員の特徴や対策について紹介していきます。
フリーライダーとは
「フリーライダー」という言葉は、社会学や経済学といった学問分野でも使われています。自己の利益を生み出す行動に対して対価を支払わず、他者の功績や努力によって得た利益を享受する意味で用いられることが一般的です。
たとえば、国民には納税義務が課されています。国民ひとりひとりが納めた税金によって社会サービスは支えられており、公共施設やサービスの一部は税金により無料で提供されています。しかし現実では、税金を納めていない人にも公共施設や公共サービスの利用が認められている状況です。
ローパフォーマーとの違い
近年、企業においてもフリーライダーの存在が問題視されていますが、「ローパフォーマー」や「ぶら下がり社員」と呼ばれる人たちと混同してしまうケースも珍しくありません。
スキルや能力が一定レベルに達していない人をローパフォーマーと呼ぶのに対して、フリーライダーは他人の成果にタダ乗りし、自分の出した成果以上の報酬を得ている人です。また、ぶら下がり社員は主体性に欠け、指示された仕事以外やらない人を指します。
フリーライダーは昔から存在していた
近年、企業におけるフリーライダー社員の存在が問題視されています。しかし、フリーライダー社員はここ数年のうちに登場したわけではなく、昔から存在していました。
たとえば、組織の利益にタダ乗りする社員に対し、「給料泥棒」といった言葉を用いる風潮が過去にはありました。
人間関係が密であった時代においては、給料泥棒という表現を用いても大きな問題はありませんでした。しかし、コンプライアンスの厳しくなった現在では、社員に「給料泥棒」と言っただけでパワハラ認定される可能性もあります。そうした背景から、次第に給料泥棒という表現は使われなくなり、代わりに登場した言葉が「フリーライダー」といえます。
フリーライダー社員が会社に与える悪影響
フリーライダーと呼ばれる社員が社内に存在すると、フリーライダー社員を抱える部署のみならず、会社全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
以下、フリーライダー社員が会社に与える影響について解説していきます。
悪影響1:周囲のフリーライダー化
一人もしくは少数のフリーライダー社員が社内に存在することで、周囲がその社員の働き方に影響を受け、フリーライダー化するケースもゼロではありません。
フリーライダー社員をそのままにしてしまうと、「怠けてもクビにならないなら、自分も手を抜こう」「真剣にやっても給料に差がないなら、真面目にやるだけ損だ」と思う社員が発生するようになり、会社全体の生産性低下を招いてしまいます。
問題視するほどの数ではないと判断し放置した結果、「気がつけばフリーライダーばかりの会社になっていた」という事態にならないよう、ご注意ください。
悪影響2:社内全体の士気の低下
フリーライダー社員が存在することにより、対価相応の成果を出している人の分け前が減るほか、業務負担が他の社員に生じる可能性があります。また、「真面目に働いてもメリットがない」という雰囲気が生まれてしまうと、社内全体の士気低下につながりかねません。
悪影響3:優秀な社員の転職
「真面目にやるよりも上手に手を抜く方が得だ」という考え方が社内全体に広まると、モチベーションの高い優秀な社員のエンゲージメントが低下し、場合によっては競合他社へ転職してしまう可能性も考えられます。
優秀な人材が流出してしまうと、競合他社に勝とうとする意欲や、市場に新しい価値を提供したいという意思も失われるため、生産性が低下し、クリエイティブな案の出にくい雰囲気が社内に生まれてしまいます。
フリーライダー社員は周囲の同僚や部下だけではなく、会社経営にも影響を及ぼす存在といえるでしょう。
フリーライダー社員の5つの特徴
フリーライダー社員とはどのようなものなのか、具体的な特徴を把握しておくと理解が進みます。
フリーライダー社員の特徴としては、主に以下の5点が挙げられます。
- 責任感がない
- 成果を自分のものにし、失敗は他人に押しつける
- 仕事を真面目にしない
- 能力を過信している
- 部下や後輩社員へ偉そうな態度を取る
それぞれ詳しくみていきましょう。
特徴1:責任感がない
フリーライダー社員の特徴の一つとして、責任感のない点があります。「自分に任された仕事だからしっかり完遂しよう」「責任を持って担当業務に取り組もう」といった考えに至らず、責任から逃げやすい点が特徴的です。
仕事を手抜きしがちであるため、不手際やケアレスミスも多発する傾向にあります。
自分の不手際によって周囲に迷惑がかかったり、上司にフォローしてもらったりしても「申し訳ない」という気持ちになりにくい点が、フリーライダー社員の特徴の一つです。
特徴2:成果を自分のものにし、失敗は他人に押しつける
フリーライダー社員は、労働意欲が乏しい傾向にあります。人によっては労働意欲が低いだけではなく、他人の成果を横取りするフリーライダー社員も存在します。
たとえば、チームプロジェクトにおいて大した働きをしなかったのにもかかわらず、周囲の成果を利用して昇進アピールを試みるケースがあります。
また、不備やミスによってプロジェクトが失敗に終わった場合は、「自分はミスなく作業したのに、他のメンバーが足を引っ張った」などと自己弁護し、他人にミスを押しつけようと考えるのもフリーライダー社員の特徴です。
特徴3:仕事を真面目にしない
フリーライダー社員は勤労意欲が乏しく、仕事を怠けたがる特徴があります。
以下、フリーライダー社員に見られる勤務態度の一例を紹介します。
- 最低限の仕事しかしない
- 不当な理由での遅刻や欠席が多い
- 主体的に働かない
- 業務遂行能力が極端に低い
フリーライダー社員は基本的に業務パフォーマンスが低いため、仕事を任せても期待した結果は見込めず、周囲のフォローが必要になるケースが多く見られます。
特徴4:能力を過信している
フリーライダー社員の中には、「自分は仕事ができる」「周囲よりもスキルが高い」「会社から必要とされている」と思い込んでいる人も存在します。そのため、期待していた評価を周囲から得られなかった場合は、自分ではなく他者に原因があると考えます。
特徴5:部下や後輩社員へ偉そうな態度を取る
フリーライダー社員は、後輩や部下に対して横柄な態度を取る傾向にあります。「自分は先輩だ」「後輩は雑用をやればよい」といった考え方を持ち、高圧的な程度で年下の社員に接するフリーライダー社員も少なくありません。
後輩の失敗をフォローしたり、部下の成長のために時間を割いて指導したりすることも期待できないため、フリーライダー社員は社内の雰囲気を乱す厄介な存在といえます。
参考:「フリーライダー」の意味とは?4つの具体例と対策方法を紹介 | TRANS.Biz
フリーライダー社員への対策
フリーライダー社員が周囲にいることで、他の社員への業務負荷が大きくなったり、社内の統一感が乱れたりすることがあります。真面目に働いている社員が不利益を被らないよう、フリーライダー社員への対策を導入していきましょう。
ここからは、フリーライダー社員への対策として、以下の3点を紹介していきます。
- 定期的な面談の機会を設ける
- 平等な昇進機会の提供
- 仕事内容の可視化
対策1:定期的な面談の機会を設ける
社員と管理職が面談することで、管理職は各社員の結果だけではなく、プロセスや仕事への意気込みを把握できます。
社員側としても、面談により自分の実力や成果を客観的に評価してもらえることで、自身の力量を過信することを防げます。また、評価側が社員のスキルや能力を理解していれば、他人の成果を横取りしようと考える社員の不正にも気づけるでしょう。
面談方法としては、1on1ミーティングとして月に1~2回程度、上司と部下が面談する方法がおすすめです。定期的な面談によって上司と部下の信頼関係が強化されるだけでなく、社内の風通しを良くする効果も期待できます。
対策2:平等な昇進機会の提供
健全な組織運営のために、全社員に対して昇進のチャンスを平等に与える取り組みも重要です。
たとえば、一度の失敗やミスで降格した社員であっても、その後の努力や活躍次第では昇進機会が与えられることを、前例などを通じて会社の意思を社員へ示すよう心がけましょう。
また、ある程度の権限や裁量が与えられている社員には、高いポジションや自由とともに責任を与えてみると、モチベーションアップを図れます。
対策3:仕事内容の可視化
フリーライダーが生まれる要因として、社員それぞれの業務内容が把握できていないケースや、成果のみが評価対象となってしまっているケースがあります。
経営者や管理職の人間が社員の勤務状況を把握していない場合に、フリーライダーは生まれやすくなります。
部署内のコミュニケーションの活発化、日報の作成、チーム間のタスク共有などを通じて、社員それぞれの進捗状況を可視化できるよう取り組んでみましょう。
参考:
「フリーライダー」の意味とは?4つの具体例と対策方法を紹介 | TRANS.Biz
フリーライダー問題の具体例と組織を改善するための5つの対処法
まとめ
最近ではフリーライダーと呼ばれる社員の存在が、企業経営の大きな課題となっています。フリーライダー社員が社内にいると、他の社員に負荷がかかり、全体の士気を下げてしまう可能性があります。
フリーライダー社員を生み出さないためには、社員それぞれの勤務状況を把握する管理体制や、平等な昇進機会の提供が重要とされています。
経営者や人事担当者は、定期的な1on1の実施や社内コミュニケーションの活性化を図ることで、社内にフリーライダーが生まれにくい環境づくりを心がけてください。
フリーライダーの特徴や対策を理解し、健全な会社づくりを目指していきましょう。
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