ESGは企業が行う取り組みのひとつです。ESG投資という言葉もあるように、近年ESGの注目度は世界中で高まりつつあります。
現代社会で企業が高評価を得るには、業績や財務関連だけでなく、ESGに関する意識や取り組みも必要です。本記事では、ESGについて押さえておきたい情報をまとめました。
ESGとは
ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた用語です。企業を評価する新たな観点として浸透しています。
現代社会には、気候変動をはじめとした環境問題や、人権問題など、さまざまな課題が存在します。このような課題への対策として、企業にはESGの視点を持った事業活動や取り組みが求められるようになりました。
企業の長期的・継続的な成長の実現や、トータルでの企業価値などを考えるうえで、ESGは重要な要素です。
ESG投資とは
ESG投資とは、ESGに配慮した企業への投資を意味します。財務情報ではなく、環境・社会・ガバナンスを重視して投資先を選びます。
かつては財務ではなく環境や社会などを重視する企業は、大きな利益を得にくく、投資のリスクが高いと考えられていました。
しかしESGの重要性が周知された現代では、良い企業と判断される基準のひとつとなっています。ESGを重視した取り組みは、安定的な成長・経営を可能とし、長い目で見ると大きな利益につながるという考えも強いです。
ESG投資の種類
ESG投資は判断の基準や投資先の選択手法などにより、以下の7種類に分けられます。
- ポジティブ・スクリーニング:ESGに関する評価が高い企業を投資先に選ぶ
- ネガティブ・スクリーニング:環境破壊につながるものや、倫理性のないものを投資先の選択肢から外す
- 国際規範スクリーニング:ESGに関する国際的な規範を投資先を選ぶ際の指標とする。除外対象となる国際的な規範として、児童労働や環境破壊などがあげられる
- サステナビリティ・テーマ投資:持続可能性を実現させるテーマに取り組む企業を選んで投資する
- インパクト・コミュニティ投資:社会やコミュニティなどに大きなインパクトを与える活動を行う企業を選んで投資する
- ESGインテグレーション:投資先を選ぶ際、財務情報・ESGに関する情報を総合的に評価・検討する
- エンゲージメント/議決権行使型:単なる投資だけでなく、株主として企業への発言や権利行使を行う
上記7種類のうち、ネガティブ・スクリーニングとESGインテグレーションを採用するケースがとくに多いです。
ESGに対応する方法
ESGに対応するために企業がとれる方法として、以下の例があげられます。
- 利害関係者の期待を見極める
- ガバナンスや透明性確保の徹底
- 従業員に対する内部的な取り組み
それぞれ詳しく解説します。
利害関係者の期待を見極める
ESGに対応するには、投資家などの利害関係者が自社に対して持っている期待の見極めが必要です。
ESGへの対応によって得られる大きなメリットとして、投資拡大やブランドイメージ向上があげられます。ESGに関する取り組みを行なっている企業として高評価を得られ、結果として投資先に選ばれやすくなります。
したがって、単にESG関連の活動を行うのではなく、利害関係者の期待に沿った展開を進めると効果的です。
ガバナンスや透明性確保の徹底
ガバナンスや透明性確保の徹底も、ESGにおいて重要です。
ESG投資では企業の非財務情報を重視します。企業がどのような取り組みを行なっているか、信頼できる企業であるかなどの判断をしたうえで投資先を選びます。
法令にもとづく情報開示の徹底はもちろん、企業の取り組みに関する積極的な配信も必要です。ガバナンス・透明性の確保を徹底しましょう。
従業員に対する内部的な取り組み
ESGの観点で大切なのは、投資家など外部の利害関係者を意識した取り組みだけではありません。従業員を対象とした内部的な取り組みも必要です。
内部的な取り組みは、ESGのSocial、すなわち社会と深く関係します。働きやすい環境づくりや、ダイバーシティに配慮した雇用などは、ESGの取り組みとして高評価につながりやすいです。
なお内部的な取り組みの実施は、あくまでも従業員のためを意識するようにしましょう。外部からの評価ばかりを気にしてしまうと、従業員のことを考えない独善的な施策となる恐れがあります。
ESGの注意点
ESG関連は企業として実施したい取り組みですが、以下のような点に注意が必要です。
- 短期間での効果実感が難しい
- 評価基準がわかりにくい
それぞれ詳しく解説します。
短期間での効果実感が難しい
ESGは結果が出るまでに時間がかかりやすく、短期間での効果実感が難しいです。
ESG関連の取り組みを行なっても、投資拡大や評価向上などの成果がすぐに出るわけではありません。重要性を感じにくいだけでなく、このまま施策を続けて良いかの判断がしにくい点もデメリットです。
ESGに取り組む際は、中長期的に考え、効果が実感できなくても地道に継続的な活動を進める必要があります。
評価基準がわかりにくい
評価基準がわかりにくい点も、ESGへの取り組み時に注意する必要があります。
ESGに関しては、財務諸表などの情報では判断が難しいため、調査会社が算出した指標を用いて評価をするのが一般的です。しかし指標の数自体が多いうえ、調査会社や団体によって基準に違いがあります。したがって評価基準が乱立しており、わかりにくい状態となっているのです。
評価基準が不明瞭なため、具体的な対策が取りにくいという注意点があります。
ESGと似た用語との違い
ESGには以下のように、語感や意味が似た用語がいくつか存在します。
- SDGs
- SRI
- CSR
これらの用語との違いについて解説します。
SDGsとの違い
SDGsはSustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標を意味する用語です。「持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現する」ために採択されたもので、環境・人権などに関する17項目の目標が設定されています。
ESGとSDGsの主な違いは、中心となる存在・取り組み規模の大きさです。ESGは企業や投資家などが重視する指標です。社会に対して良い影響を与える取り組みではありますが、規模は企業・投資家単位のように小さくなります。
一方でSDGsは社会全体で目指すべき国際目標であり、国・地方自治体など広い範囲で取り組みます。
SRIとの違い
SRIはSocially Responsible Investmentの略で、社会的責任投資を意味する用語です。財務状態や経営成績といった経済的観点だけでなく、社会的・倫理的な視点で投資先を選ぶ考え方を表します。
ESGとSRIの大きな違いは、重視する指標の内容です。ESGを重視した投資では、社会問題への意識や取り組み方をもとに企業を選びます。ESGに関する取り組みが、長い目で見ればプラスになるという考え方です。
SRIでは社会的な観点の中でも、とくに倫理性を重視します。環境や社会問題に対する姿勢ではなく、価値観による影響が大きいです。
CSRとの違い
CSRはCorporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任を意味する用語です。
企業の持続的な成長には、株主・取引先・顧客などの関係者はもちろん、社会全体からの信頼獲得が欠かせません。社員など内部関係者との良好な関係も必要です。
信頼獲得・関係構築のためには、安全で倫理性のある活動や、環境への配慮などを行う必要があります。このような社会的責任を果たそうという考え方や取り組みがCSRです。
CSRは完全に企業側の視点ですが、ESGは企業を評価する投資家の視点も含まれています。このような視点の違いが、ESGとCSRを区別するポイントです。
ESGの取り組み事例
ESG関連の取り組みを始める前に、参考として他社の事例を調べるとイメージがしやすいです。今回は事例として以下の2社を取り上げました。
- 三菱商事
- KDDI株式会社
それぞれ詳しく解説します。
三菱商事
三菱商事はコーポレートサイトにおいて、ESG情報を詳しく掲載している例です。ポイントとなる箇所をいくつか取り上げます。
- ミッション・企業理念について触れている:ミッションや企業理念は、事業展開や経営の軸となる要素です。これらの軸からブレることなく、ESGへ取り組むと明言しています
- 将来的な目標を掲げている:三菱商事はESG情報のページ内で、「変化への対応力強化」を目標としています。ESGへの取り組みには、変化への柔軟な対応が必要との考えが理由です
- 具体的な計画に関する紹介:グループとしての強みに触れつつ、ESGへの取り組みに向けた計画も紹介しています
WebでダウンロードできるESGデータブックも公開しており、積極的な情報発信に努めています。
KDDI株式会社
KDDI株式会社もコーポレートサイトでESG情報を公開しています。活動目標だけでなく、以下のように取り組み内容や成果も公表している点が特徴です。
- 違反件数・事故件数ゼロの明記:人権侵害に該当する違反行為の件数や通信・情報セキュリティなどに関する事故件数がゼロと明記し、利害関係者に安心感を与えています
- ESG関連の取り組みの実施例を公表:ステークホルダーダイアログや研修など、ESGに欠かせない取り組みを年に1回以上実施していると公表しています
- 働きやすい労働環境の実現に関する情報の公開:有給取得率や新卒女性の採用率、障がい者雇用率などの情報を詳しく公開しています
ESGに関する詳しい情報の発信は、投資家や利害関係者の評価・判断しやすさを高めるうえで役立っているでしょう。
参考:KDDI株式会社コーポレートサイト ESG (環境・社会・ガバナンス)
まとめ
ESGの重要性は、投資家による企業の評価指標としてますます高まっています。
かつては利益を最重視せず環境や社会問題へ取り組む姿勢の企業は、投資のリスクが高いと判断されていました。しかし近年はその逆で、ESGに取り組む企業は、継続的な成長やトータルでの大きな利益などが期待できると考えられています。
ESGに関する効果的な取り組みのためには、ESG投資の種類や企業として取れる対策や注意点についての理解が必要不可欠です。今回紹介した内容をおさえ、適切な活動を進めましょう。
参考:
ESGとは?その意味やCSRやSDGsとの違い、企業での対応法について徹底解説 | THE OWNER
ESG情報 | 三菱商事
ESGとは?意味やSDGsとの違いは?企業が対応するための方法をご紹介|リファラル採用活性化サービスのMyRefer
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