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ボーナスの決め方|賞与の種類と具体的な計算方法、注意点を解説

ボーナスは従業員のモチベーション向上と企業の業績向上を両立させる重要な報酬制度ですが、適切な制度設計と運用は多くの経営陣にとって悩みどころです。

本記事では、ボーナスの定義や平均支給額、主な種類、計算方法を詳しく解説します。

ボーナス(賞与)の定義

「ボーナス(bonus)」と「賞与」は毎月の給与とは別に支給される臨時の報酬を指す言葉として、同義で使用されています。

国税庁による賞与の定義も「定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するもの」としています。

給与は労働基準法第24条で「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められていますが、賞与は一般的に就業規則や労働契約で定められているものです。法的な支払義務はなく、支給の有無や時期の決定については企業の裁量に委ねられます。

企業におけるボーナスの支給状況|決定要因や平均支給額について

支給の有無や時期が企業の裁量に委ねられているボーナスは、以下のような要因の影響を受けます。

  • 同業他社の動向
  • 企業規模
  • 経営方針
  • 財務状況
  • 労働組合の有無や交渉力

厚生労働省の令和4年就労条件総合調査によると、賞与がある企業の割合は全体で87.9%ですが、従業員数が1000人以上の企業と100人未満の企業では10%以上も差があります。

支給時期は多くの企業で夏季(6月・7月)と冬季(12月)の年2回支給で、なかには夏期・冬季のほか決算月に「決算賞与」を加えて年3回支給する企業もあります。

ボーナスの平均支給額についても見てみましょう。国土交通省の「毎月勤労統計調査」によると、平均の支給額と支給月数は以下のとおりです。

  • 2024年夏季ボーナス:平均額41万4,515円、支給月数は1.05ヶ月
  • 2023年冬季ボーナス:平均額39万5,647円、支給月数は1.05ヶ月

また、ボーナスの算定方法については「考課査定により算定(個人別業績)」「基本給全体が対象」とする回答が上位となっています。

賞与制度を導入するにあたって決めるべき7つの項目

ボーナスの適切な制度設計と運用は、従業員のモチベーション維持や労使間の認識齟齬によるトラブルを防ぐために重要です。

制度の種類を具体的に見ていく前に、賞与制度を設定するにあたって決めておくべき項目を解説します。

支給目的「企業の利益を分配するため」「会社の業績向上への貢献を評価するため」などの目的を明確にする
支給要件・「会社の業績が一定の基準を満たした場合」や「個人の業績評価結果に基づいて」などの条件を設定する
・勤続年数や勤続年数や試用期間中の扱いなども明記するとよい
・「会社の業績に応じて」などの文言を入れておくと、業績悪化時の不支給や減額の根拠となり、柔軟な運用が可能となる
支給対象者・正社員のみか、パートタイマーや契約社員も含むかを明確にする
・「支給日に在籍している従業員」など、いつの時点で在籍していた従業員が対象なのかを決めておく
算定方法・「基本給連動型」「業績連動型」「決算型」などの支給形式と計算方法を定める
・「基本給×支給月数」「基準額×評価係数」などの計算式を明示する
・パートタイマーや契約社員について別途規定を設ける場合は「一律○万円」「直近数ヶ月の平均月給×○ヶ月分」などを明示する
支給時期・回数支給回数や支給時期を決める
(賞与の支払い回数が年4回以上になると、健康保険法や厚生年金保険法で給与扱いとなり、保険料の計算方法を変更する必要がある点に注意する)
査定期間「夏季賞与:前年10月から当年3月まで」「冬季賞与:当年4月から9月まで」など具体的な期間を設定する
不支給・減額条件「会社の業績が著しく悪化した場合」「出勤率が一定以下の場合」「懲戒処分を受けた場合」など、業績不振時や懲戒処分を受けた場合の条件を明記する

決定した項目は、就業規則などに明示し、従業員に周知する必要があります。

また、契約書に「業績により支給しない」と明記していないにもかかわらず賞与を支給しない場合は、労働基準法違反にあたる点に注意しましょう。

ボーナスの支給形式には、主に「基本給連動型」「業績連動型」「決算型」の3つがあります。次章からは、それぞれの概要と計算方法について解説します。

ボーナスの決め方と計算方法(1)基本給連動型賞与

基本給連動型賞与とは、月給の一定倍率(例:3ヶ月分)で支給される賞与制度です。

長期雇用を前提とする大企業や公務員に適しており、従業員間の給与格差がそのままボーナスに反映される年功序列型の支給形式のため、勤務年数が長い従業員ほど支給額が高くなります。

基本給連動型賞与のメリット・デメリット

シンプルな仕組みの基本給連動型賞与には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット・従業員にとっては収入、企業にとっては予算の見通しが立てやすい
・企業側の賞与計算業務の負担が少ない
・従業員に支給額の根拠を説明しやすい
・従業員に安心感を与えられる
デメリット・成果を出している若手よりもベテラン社員に多く支給される傾向がある
・能力の高い従業員に不公平感を与える可能性がある
・業績悪化時に賞与を減額しにくい
・個人の業績や成果が反映されにくい
・従業員のモチベーション低下につながるおそれがある
・業績が悪化している状況でも賞与支給の義務が生じ、資金繰りに苦慮する場合がある

基本給連動型賞与の計算方法

基本給連動型賞与の計算は、以下の3つのステップで行います。

1. 基準額の設定月額給与や基本給(残業代や通勤手当を除く)を基準とするのが一般的
2. 支給月数の決定業界平均や企業の財務状況を考慮して設定する
3. 基準額 × 支給月数で算出【例】
基本給30万円、支給月数3ヶ月の場合
30万円 × 3ヶ月 = 90万円

多くの企業では、この手順で算出した金額に後述する評価係数を掛けて最終的な支給額を算出します。

ボーナスの決め方と計算方法(2)業績連動型賞与

業績連動型賞与とは、個人や部門の業績評価に基づいて支給額が変動する賞与制度です。

業績に大きな変動要素がない大企業よりも、成長産業や競争が激しい業界の企業に適しています。

業績連動型賞与のメリット・デメリット

従業員の努力や成果を直接支給額に反映させられる業績連動型賞与には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット・個人の成果が直接反映されるため、モチベーション向上に効果的
・固定給を上げず、業績に応じて柔軟に報酬を調整できる
デメリット・評価基準の設定と運用に注意が必要
・個人業績の比重を高めすぎると、従業員が個人プレーに走る可能性がある
・業績が悪化した際に賞与が大幅に減少するリスクがある

業績連動型賞与の計算方法

業績連動型賞与の計算は、以下の5つのステップで行います。

1. 賞与原資の決定「経常利益の10%」「半期の粗利益×分配率」など、経常利益や営業利益の一定割合を設定する
2. 業績指標の選定業績を評価する指標を選ぶ

【例】
・部門:売上高達成率・利益率など
・個人:目標達成率・知識習得度・意欲・チームへの貢献度・出勤率など
3. 評価係数の設定評価ランクに応じて賞与額を調整するための係数を設定する

【例】
・S評価:1.5
・A評価:1.3
・B評価:1.1
・C評価:0.9
・D評価:0.8
4. 評価の決定部門・個人の業績に基づき評価を決定する
5. 基準額 × 評価係数で算出【例】
基準額50万円、A評価の場合
50万円× 1.3 = 65万円

業績連動型賞与に個人の評価係数を用いると、従業員の貢献度を賞与に反映できます。しかし、適正な評価のためには、客観的で公平な評価基準の作成と、定期的な進捗確認や状況把握が欠かせません。

ボーナスの決め方と計算方法(3)決算賞与(全社一体型)

決算賞与とは、会社全体の業績に応じて支給される、全社員で利益を分かち合う形式の賞与制度です。

中小企業や従業員の一体感を重視する企業に適しており、以下の3つの支給タイプがあります。

一律型全従業員に同額を支給する。計算が不要で手続きが簡単だが、貢献度の差が反映されない。
給与連動型基本給×支給率で算出する。明瞭で計算が簡単だが、貢献度に関わらず勤続年数が長い人の支給額が多くなり不満が出やすい。
給与非連動型等級・勤続年数・個別評価などに基づいて決定する。貢献度に応じた公平な支給が可能だが、計算に手間がかかる。

決算賞与のメリット・デメリット

決算賞与には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット・全社的な業績向上を促進し、チームワークを強化できる
・企業の業績が直接反映されるため、従業員の経営参画意識が高まる
・企業の財務状況に応じて柔軟に賞与額を調整できる
デメリット・業績が悪化した場合、賞与が大幅に減少するリスクがある
・全社的な売り上げが低迷すると、個人や部署の貢献度にかかわらず賞与が減額される

決算賞与の計算方法

給与非連動型の決算賞与の計算は、以下の5つのステップで行います。

1. 営業利益目標の設定1人当たりの営業利益目標を設定し、従業員数を掛けて全社営業利益目標を決める

【例】
100万円×50人=5,000万円
2. 超過利益の算出実際の営業利益から目標を引いて超過利益を計算

【例】
実際の営業利益8,000万円 -全社営業利益目標目標5,000万円 = 3,000万円(超過利益)
3. 賞与原資の決定超過利益の一定割合を賞与原資とする

【例】
超過利益の1/3を賞与原資とする(3,000万円÷ 3 = 1,000万円)
4. 分配率の決定従業員数や役職に応じて分配比率を決定する

【例】
・一般社員:1.0
・主任:1.2
・課長:1.5
・部長:2
5. 賞与額の算出(賞与原資 ÷ 役職係数の合計)× 分配率で従業員ごとの支給額を決定する

【例】
役職係数の合計:58.5の場合
一人当たりの基準額: 1,000万円 ÷ 58.5 = 17万940円
・一般社員: 17万940円
・主任: 17万940円 × 1.2 = 20万5,128円
・課長: 17万940円 × 1.5 = 25万6,410円
・部長: 17万940円 × 2.0 = 34万1,880円

ボーナスを決める際の注意点

賞与制度の導入と支給額を決定する際は、以下の2点に注意が必要です。

  • 制度設計をシンプルにする
  • 算定理由は従業員が納得できる内容にする

それぞれ解説します。

制度設計をシンプルにする

多くの要素を考慮するあまり、ボーナス制度に複雑なルールを設けると、従業員の混乱や不満を招くだけではなく、人事労務担当者の負担増大や算定ミスにもつながります。

明確な基準に基づいたシンプルな制度設計を行い、従業員が理解しやすく運用もスムーズな賞与制度を構築しましょう。

算定理由は従業員が納得できる内容にする

ボーナスの算定理由は従業員に必ず伝える必要があります。そのため、具体的な評価基準や業績指標に基づいた算定方法を用いて、公平性と透明性を確保した制度を設定しなければなりません。

また、金額算定の理由に納得のいかない支給は、従業員の会社に対する不満と不信感のもととなり、従業員のモチベーション維持という目的に逆行してしまいます。

過度な減額や理由のない不支給は認められないため、適切な金額に設定して従業員へ納得感のある説明を行いましょう。

労使双方が納得するボーナス支給額を決定しよう

ボーナスは従業員のモチベーション向上に寄与する一方で、支給額の低下は逆効果にもなり得ます。従業員個人の評価も影響を与えるものの、どの支給形式でもボーナスの原資となる企業が生み出す利益であり、業績の向上が欠かせません。

したがって、従業員の成果で利益を最大化し、その対価として納得できるボーナスを支給できる状態が理想的です。結果として、従業員のモチベーション維持や離職防止にもつながるでしょう。

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