「ダブルバインド」とは、矛盾するメッセージを相手に投げかけることで、混乱やストレスがかかるコミュニケーションを指します。本記事では、ダブルバインドの意味や事例について解説します。ビジネスシーンや恋愛での活用方法もご紹介します。
ダブルバインドとは?
「ダブルバインド」とは、矛盾する2つのメッセージを投げかけることで、受け手が混乱し、精神的にストレスがかかるコミュニケーションを指します。
人類学者や社会科学者などの肩書をもつグレゴリー・ベイトソンが1956年に提唱しました。
「二重」どの意味をもつ「Double(ダブル)」と、束ねるなどの意味をもつ「bind(バインド)」を組み合わせた造語で、日本語では「二重拘束」と訳します。
ダブルバインドの種類
ダブルバインドには「否定的」と「肯定的」の2種類が存在します。
前述のストレス的コミュニケーションは否定的ダブルバインドにあたります。
否定的ダブルバインドが起こりやすい場面
否定的ダブルバインドは無意識に生じることもあります。
特に上下関係や親子関係において起こりやすいです。
否定的ダブルバインドの例:親子関係
例えば子供が自分の悪事を内緒にしている場合、親は「正直に言えば怒らないから話してごらん」と言います。子どもが正直に話すと親は怒ります。
矛盾する2つのメッセージを受けた子どもは、「正直に話したのに怒られた」ため、どう行動べきだったか混乱します。親子関係における典型例です。
否定的ダブルバインドの例:学校
「自由に発言しましょう」「自分の個性を大事にしましょう」と主張する教師が、そう振る舞う子供に対し「空気を読め」「周りとの協調意識を持ちなさい」と言った場合、ダブルバインドが生じます。
表面上では多様性や個人的主義価値観を謳いながらも、結局は協調性や関係志向を重視する風潮は、不登校や引きこもりを生む要因とも言われています。
否定的ダブルバインドの例:職場
上司から「わからないことがあれば何でも聞きなさい」と言われた部下は、「○○が理解できません」と正直に質問します。すると上司は「何でも人に聞かずに自分で調べなさい」と叱ります。
部下は、言われたとおり質問したにも関わらず叱られるという、理解できない状態に陥ります。
否定的ダブルバインドによって起こるデメリット
否定的ダブルバインドによるデメリットは以下の3つです。
メンタルに悪影響がでる
混乱し疑心暗鬼の状態になるため、メンタルに悪影響がでます。
ダブルバインドを受けた人は、自身の行動や判断に自信がもてず、不安が増大し、自己肯定感が低くなります。例えば親子関係の場合、自己主張しない子供になります。自分の頭で考えることができなくなってしまうのです。
行動に悪影響がでる
自らの感情を抑え込み萎縮してしまうなど、行動に悪影響がでます。
例えば職場でダブルバインドがあると、
上司の顔色を伺いながら仕事を進めるようになります。
仕事における積極性や意欲が低下し、「上司に怒らないための行動」が目的となり、本来のパフォーマンスが発揮できなくなるのです。
信頼関係が低下する
受け取り側は、発信者の本音を理解できなくなり、不信感が増大します。
この人についていこうと信用できなくなり、関係にヒビが入ります。
無意識な否定的ダブルバインドの回避方法
否定的ダブルバインドを無意識に行っている場合があります。
以下の方法で防止しましょう。
あらかじめ期日を決める
人に物事を依頼する際、あらかじめ期日を決めましょう。
部下に「時間のあるときでいいからこの資料をまとめておいて」と伝えた後、「いつになったらできるんだ」と叱ると、ダブルバインドが生じます。
「明日の午後までにまとめておいて」などあらかじめ期日を決めて依頼しましょう。
そうすれば期日を過ぎたことを注意しても矛盾に感じることはないでしょう。注意された理由もはっきりしているため部下も混乱しません。
なぜダメなのかを説明する
回答や行動をただ反対するのではなく、なぜダメなのかを説明すれば、相手も納得します。
部下に「営業したい商品を選んでいいよ」と伝えたとします。しかしラインナップを見て「これじゃダメだ」と注意した場合、矛盾したメッセージになります。
「この案だと会社の売れ筋商品ばかりだから、売れていない商品も含めて提案するべきだ。別のプランも考えてみよう」など、なぜ回答がダメだったのか理由を加えて説明することで部下も理解します。
いったんは考えに共感し受け入れることで、部下も意見を言いやすい環境になるのです。
選択肢を与えて選ばせる
一方的に意見を押し付けるではなく、相手に選択肢を与えて選んでもらいましょう。
選択肢は「5分後か10分後どっちにする」など、どちらを選んでも発言者側に支障がでない案を示すことがポイントです。あらかじめ用意した選択肢から選ばせるテクニックは、ビジネスシーンや恋愛において活用できます。
この方法は「エリクソニアン・ダブルバインド」と呼ばれ、催眠療法家であるミルトン・エリクソンが、ダブルバインドを応用して作った理論です。
肯定的ダブルバインドや治療的ダブルバインドとも呼ばれ、相手の判断をある程度コントロールできるとも言われています。
肯定的ダブルバインドをビジネスシーンや恋愛で活用する方法
肯定的ダブルバインドの活用方法をご紹介します。
ビジネスシーン
営業で顧客に「Aを試してみませんか?」と聞いても、相手は「はい」または「いいえ」で答えますが、「AかB、どちらを試したいですか?」では、「Aを試す」または「Bを試す」の回答を引き出すことができます。
これは交渉術として自分に有利な条件で議論を進めることにも活用できます。他にも「AかB、どっちにする?」という広告のキャッチコピーでは、商品購入を前提にした選択肢によって購買意欲を高める効果が期待できます。
恋愛
デートの日程決めで、「いつ行こうか?」と聞くと選択肢が多すぎます。「○日と○日ならどっちがいい?」と日付を限定すれば、相手は答えやすくなります。
気になる相手と円滑に連絡を取り合うテクニックです。
肯定的ダブルバインドを活用する際の注意点
肯定的ダブルバインドを使用する際の注意点を確認しておきましょう。
相手に納得して選択してもらう
相手が納得することが大切です。「自分の意志で選んだ」と思わせましょう。そのためも、はじめは簡単に選べる質問にしましょう。
相手が答えやすい内容にする
それほど親しくない相手に「温泉か遊園地どっちに行きたい?」と聞いても「行かない」と返事をされるでしょう。選択肢の内容は、相手との距離感を鑑みて作ることがポイントです。
選択肢の順番に注意する
「新近効果(リーセンシー効果)」もポイントです。親近効果とは、最後に与えられた情報ほど強く印象に残り、評価に影響する現象です。相手に選択肢を提示する際は、選んでほしい内容を最後に伝えましょう。
参考:親近効果-シマウマ用語集
ダブルバインドを多用しない
ダブルバインドは多用しないように気をつけましょう。特定の相手に対して頻繁に使うと、「常に選択させられている」ように感じてしまいます。
肯定的ダブルバインドを使われたときの抜け出し方
肯定的ダブルバインドを使われたときの対策を説明します。
回答を拒否する
提示された選択肢のどちらかを選んでも、自身に不利になることもあるでしょう。対処するには自身の言動に注意することです。選択肢のなかから選ぶことに違和感を感じるなら、回答すること自体を断りましょう。
誰かに相談する
上下関係がある人から不利な選択を強いられることもあります。頼れる上司や先輩、同僚など、誰かに相談して客観的なアドバイスをもらいましょう。何度も迫ってくる相手を叱ってもらうのも有効です。
状況を観察する
周囲の状況を観察すると抜け出すきっかけになります。質問内容や相手の表情などを冷静になって観察し、意図的なダブルバインドなのかを見極めましょう。
無視する・距離を置く
ダブルバインドは夫婦間のモラハラや職場のパワハラにつながりやすいです。
どうしても解決しないなら、なるべくその言動を受け流しましょう。それも厳しければ、離婚や転職もありです。
まとめ
ダブルバインドには肯定的・否定的の2種類が存在します。
肯定的ダブルバインドはビジネスシーンや恋愛において活用できます。接客や営業などをしている方はぜひ取り入れて活用しましょう。
否定的ダブルバインドは無意識のうちに行っていることもあるため、注意しましょう。矛盾するメッセージを受け取る側は、メンタルや行動に悪影響がでる可能性や、信頼関係が崩れるリスクがあります。
ダブルバインドはメリット・デメリットを理解して適切に活用しましょう。
<参考記事>
ダブルバインドの意味とは – 具体例や対処法と併せて解説 (1) | マイナビニュース
子どもの自己肯定感が低下する「ダブルバインド」。“条件付きの愛” は危険です | STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ
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