企業を経営する上で重要な要素であるクレドですが、きちんと意味を理解しているでしょうか?当記事ではクレドについてその言葉の意味から、導入するメリット・導入方法まで徹底解説しています。
クレドについて深く理解したい場合は、ぜひ当記事を最後までご覧ください。
クレドとは?
クレドとは「信条」「志」「約束」「我は信じる」を意味するラテン語です。
ビジネスでは、「企業活動の拠り所となる、価値観や行動規範を簡潔な言葉で表現したもの」をクレドと言います。
特に、従業員一人ひとりが心がける行動指針や信条を指します。
バリュー・ミッション・ビジョンと違い
クレドはミッション、ビジョン、バリューと近い意味を持つ言葉ですが、厳密には異なります。
ミッションは「企業の目的・使命・任務など、企業が経営を通して実現したいもの・目指したいもの」です。つまり、「誰にどんな価値を提供するのか、社会にどのように貢献するのか」を具体的に言語化したものです。会社の基礎となる考え方です。
一方、ビジョンは「企業がそうなるべき理想の姿、目指すところ」意味する言葉です。つまり、ミッションを前提として、企業の目標・方向性を明文化したものなのです。ビジョンが決まっていると、重要な意思決定の明確な判断軸になり、企業の方向性がぶれません。
クレドは、バリューとほぼ同意ですが、バリューが企業全体の価値観を指すのに対し、クレドは個人レベルまで落とし込んだものを意味します。
クレドが重要視される背景
2000年代に起こった多くの不祥事事件が理由ですです。アメリカのエンロン社やワールドコム社、日本の食品偽装問題など、倫理観の欠如による多数の不祥事がありました。
それにより、日本では2006年に金融商品取引法や公益通報社保護法が制定され、企業の法令遵守が求められる時代になりました。
しかし、モラル意識は、経営層が主張するだけでは実現しません。従業員一人ひとりが、その重要性を認識し、理解する必要があります。このように、従業員個々人が倫理観を持った行動をするために、クレドが求められているのです。
クレドの目的
企業がクレドを作成する目的は、コンプライアンスや社員の増加などが挙げられます。
上記の通り、今の時代は、一企業がコンプライアンスを意識し、倫理観を持った経営、行動をすることが求められています。クレドを設け、従業員まで行動指針を落とし込むことは、社員が迷ったときの道標になり得るのです。
例えばアメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンがとった、1982年の「タイレノール事件」への対応です。この年、同社の解熱鎮痛剤「タイレノール」に何者かが毒物を混ぜ、7人が死亡しました。ジョンソン・エンド・ジョンソンは素早く対処し、多額の費用をかけて製品の回収を進めたのです。さらに、「買わないように」という呼びかけを積極的に行いました。結果的に同社への社会的信用は高まり、社員の忠誠心も強くなりました。
参考:「伝説」の危機管理、クレドのおかげ:いつも財布に「経営哲学」 迷ったら立ち返るJ…|NIKKEI STYLE
クレド導入のメリット
クレドの導入によるメリットを解説します。
コンプライアンス
クレドを元に、社員の自主的に意識改革が実現できます。具体的な行動規則を守れば、コンプライアンス対策につながるでしょう。
組織風土に合う人材の育成
人材育成もメリットの一つとして挙げられます。
クレドを記載したカード(クレドカード)を社員に配布することで、組織に一員としての自覚を促すことができます。
他社との差別化
クレドは本来、社内向けの情報です。しかし、社外に大体的に発信することで、他社との差別化も図れます。なぜなら「自社の方針・考え」を公表でき、企業イメージの醸成効果もあるからです。
参考:クレドとは何か。導入メリットから作成手順、浸透方法までを紹介 | HR大学
理念・ゴールを明確にできる
経営理念や企業理念は抽象的なものが多いです。そのため、社員によって解釈が異なったり、具体的に理解するのが難しい場合があります。
そこで、クレドで具体的に行動指針に落とし込むことで、社員全員が同じ方向・ゴールを向いて行動しやすくなります。
クレドを導入する方法
クレドを導入する方法についてまとめました。
下記手順を踏んでクレドを導入しましょう。
- 作成する目的を決める
- 部署ごとに代表を選出し、議論する
- 経営方針・理念を調査する
- アンケートで社員の声を聞く
- 調査をベースに文章化し、社員に周知する
作成する目的を決める
- なぜ作成するのか
- クレド導入で何が変わるのか
- いつまでの作成するか
- どのように従業員へ周知するか
等々を、きちんと明確にしておきましょう。認識を揃えておくことで、スムーズに作成できます。
部署ごとに代表を選出し、議論する
次に部署ごとに代表を選出ます。メンバーは様々な部署・役職から選出しましょう。
偏った視点では偏ったクレドしか完成しません。行動指針は、どの立場の人でも理解できるものにする必要があるのです。そのため、幅広い部署や役職の代表者を集めて議論を行うことが重要です。
経営方針・理念を調査する
クレドは経営方針や理念を軸に構成するべきものです。事前調査はしっかり行いましょう。
同時に、経営者の意見を収集するのも良いでしょう。
アンケートで社員の声を聞き、分析する
上層部の意見だけで設定するクレドはあまり効果がありません。
場合によっては、無理のある押し付けになってしまいます。
- 従業員のあるべき姿は?
- どのようなクレドなら実行できるか?
現場や末端の意見もきちんと取り入れることが、クレドの成功の秘訣です。
社員向けのアンケートなどで意見を汲み取りましょう。
キーワードの選定・文章化
収集した意見をもとに文章を作成します。
企業運営のキーワードや、自社に合う言い回しなどを見つけると良いでしょう。
社員が理解でき、行動にすぐ移せるような具体的な内容にするのがポイントです。
社員に周知する
上記の調査や議論をベースにクレドを作成しましょう。
完成後はしっかりと社員全体に周知してください。
- 朝礼で読み上げる
- クレドカードを全社員に配布する
- オフィスの壁にはる
- 社員手帳に記載する
クレドを浸透させるためにも、強い施策を打つことが必要です。
クレドを導入する際の注意点
クレドを導入する際の注意点についてまとめました。
価値観の押し付けはしない
トップダウンでクレドを作成すると、価値観の押し付けになりがちなので注意しましょう。
クレドは社員主体で作るべきものです。上層部の意見だけで作成すると、必ず反発や不和が起こります。クレドを設定する際は、各部署の代表者の議論、社員アンケートの実施などを行い、社員の声をきちんと汲み取ることが重要です。
主体的な意識を持ってもらう
クレドは社員が主体となり設定するものです。
しかし、上層部だけで作られたものというイメージがあると、どうしてもとっつきにくくなってしまいます。
クレドを作成する際は、社員一人ひとりが自分達で作成したのだという意識を持たせることが重要です。
上記理由からも、上層部だけで勝手にクレドを設定することのないように注意しましょう。
時代に合わせて柔軟に変える
クレドは、その時代や社会に合わせて変える必要があります。
時代にそぐわないと、企業が間違った方向に進んでしまうからです。
定期的に、社会や時代との適合性を確認しましょう。
クレドの導入事例
クレドを実際に導入した企業の事例を紹介しましょう。
ジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、1943年に「我が信条(Our Credo)」を策定しました。
- 第一の責任は顧客に
- 第二の責任は全社員に
- 第三の責任は地域社会に
としています。そして最後の責任は、株主に、と設定しました。
【引用】 社是、経営理念、ビジョン、ミッションなど、その会社を表す文書は何種類もありますが、ジョンソン・エンド・ジョンソンについて言えば、「我が信条」という、A4用紙一枚の文書があるのみです。この文書は顧客、社員、地域社会、そして、株主という四つのステークホルダー(利害関係者)に対する責任を具体的に明示したものです。起草以来60年以上に亘り、ジョンソン・エンド・ジョンソンの行動指南役として機能し続け、今後もその役割を果たし続けることでしょう。
この文書は1943年 — ジョンソン・エンド・ジョンソンのニューヨーク証券取引市場での株式公開一年前 — に三代目社長ロバート・ウッド・ジョンソンJrによって起草されました。取締役会において「この文書はジョンソン・エンド・ジョンソンという会社の社会的責任(Company Social Responsibility)を記したものである。」として導入されて以来、ジョンソン・エンド・ジョンソンは一貫して、この「我が信条」を行動の拠り所としています。
引用:「我が信条(Our Credo)」とは | ジョンソン・エンド・ジョンソン
顧客を守ることが社員を守ることにつながり、地域が守られ、そして株主が守られるといった流れがあると説明しています。
顧客第一の姿勢をクレドで示しているのが、ジョンソンエンドジョンソンというわけです。
楽天
楽天の企業理念は「インターネットを通じて、人々と社会を“エンパワーメント”する」です。この理念を達成するために、具体化したのが「世界一のインターネットサービス企業へ、成功の5つのコンセプト」です。
- 常に改善、常に前進
- Professionalismの徹底
- 仮説→実行→検証→仕組み化
- 顧客満足の最大化
- スピード!!スピード!!スピード!!
上記クレドがあることで、プロフェッショナルな集団へ所属しているという意識や、顧客満足の追求が使命であること、スピード感が重要であることが社員に周知できているのです。
まとめ:クレドを導入して社員の行動指針をはっきりさせよう
クレドは「信条」「志」「約束」を意味するラテン語です。
企業活動の拠り所となる、価値観などを簡潔な言葉で表現したものをクレドと言います。
クレドを設定することで、コンプライアンスの強化や人材育成、企業ゴールの明確化などが容易になります。
しかし、クレドは社員主体で設定するべきものですが、トップダウンで設定すると価値観の押し付けになり、効果を発揮しません。
クレド設定の際は、きちんと社員の声を反映したものを設定することを忘れないようにしてください。
クレドを正しく設定し、社員と経営者の共通のゴールへ向かって迷わず進めるようにしましょう。
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