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コーポレート・ガバナンスとは?目的や強化方法を解説

コーポレート・ガバナンスとは、企業経営が適切に行われているかを監視する仕組み・体制のことです。企業が不祥事を起こさず、利害関係を調整しながら経営するには、コーポレート・ガバナンスの強化が必須です。

本記事では、コーポレート・ガバナンスの目的や強化方法について解説します。コーポレート・ガバナンスの課題についても紹介しますので、最後までご覧ください。

コーポレート・ガバナンスとは

コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)とは、企業経営が適切に行われているかを監視する仕組み・体制のことで、日本語では「企業統治」と訳されます。

企業の意思決定は取締役である経営者が行いますが、株主や顧客、従業員、取引先、金融機関など、あらゆる利害関係者(ステークホルダー)が影響を与えています。そのため、経営者が利己的な意思決定をしないよう抑制し、利害関係を調整しながら経営できるよう、コーポレート・ガバナンスの強化が求められます。

かつての日本企業では、ステークホルダーの中でも特に従業員を重視した経営をしていましたが、近年では株主を重視する米国型のコーポレート・ガバナンスに移行しつつあります。

参考:コーポレート・ガバナンスとは – コトバンク

コーポレート・ガバナンスが注目される背景

日本でコーポレート・ガバナンスが注目されるようになったのは、1990年代のバブル経済崩壊後に企業の不祥事が多発したことがきっかけです。

具体的には、品質不正、損失隠蔽・粉飾決算、私文書偽造・行使など、反社会的行為であることを知りながら意図的に引き起こされた不祥事が多く、企業倫理や社会的責任が問われるようになりました。また、インターネットの普及により個人投資家が急増し、こうした不祥事が激しく批判されるようになりました。

その結果、企業経営を監視するコーポレート・ガバナンスの強化が求められるようになったのです。

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレート・ガバナンスは法律で規定されていませんが、金融庁・東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード」というコーポレート・ガバナンスを実現するためのガイドラインを公表しています。

コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)は、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」の5つの基本原則で構成されています。

参考:コーポレートガバナンス・コード(2021年6月版)- 株式会社東京証券取引所

上場企業の場合、コーポレートガバナンス・コードの実施状況を記載した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を提出する必要があります。そして、実施していない基本原則があれば、その理由を説明しなければなりません。以上のことから、上場企業にとってコーポレート・ガバナンスの整備は不可欠といえます。

コーポレート・ガバナンスの目的

コーポレート・ガバナンスの主な目的は、以下の通りです。

  • 企業の不祥事を防止する
  • 長期的な企業価値を高める

企業の不祥事を防止する

前述の通り、コーポレート・ガバナンスが求められるようになったのは、企業の不祥事が多発したことがきっかけです。一度でも不祥事が発覚すると、長年築き上げた社会的信頼を失ってしまいます。

そのため、コーポレート・ガバナンスを整備し、経営戦略や財務状況などの情報を開示して、不祥事を事前に防止することを目的としています。

長期的な企業価値を高める

また、コーポレート・ガバナンスを整備することは、長期的な企業価値の向上にもつながります。

企業理念や価値観を明示し、リスクマネジメントを徹底しながら健全な経営をすることで、株主からの信頼を獲得できます。その結果、資金調達が容易になり、事業の拡大につながります。さらには、社会全体からの信頼も獲得でき、長期的に企業価値を高めることが可能です。

コーポレート・ガバナンスを強化する方法

コーポレート・ガバナンスを強化する方法は、以下の通りです。

  • 内部統制の強化
  • 社外取締役・監査役、監査委員会の設置
  • 執行役員の設置
  • CEO不参加の取締役会を実施
  • 役員報酬の見直し

内部統制の強化

まず、コーポレート・ガバナンスを強化するためには、内部統制の構築が不可欠です。

内部統制とは、法令を遵守しながら企業を経営するためのリスク管理体制のことです。企業が従業員に対して各種ルールを制定し、社内で不正や違法行為が生じないよう統制します。

コーポレート・ガバナンスとよく混同されがちですが、コーポレート・ガバナンスは法律で規定されていないのに対し、内部統制は会社法や金融商品取引法などによって幅広く規定されている点が異なります。

社外取締役・監査役、監査委員会の設置

また、社外取締役・監査役、監査委員会を設置し、第三者視点の監視体制を強化する必要があります。

内部監査だけではなく、第三者視点での監査を行うことで、客観性の高い意思決定ができます。また、経営者の不祥事を見過ごしたり、思い込みで経営判断をしたりするリスクを低減することも可能です。

執行役員の設置

さらに、執行役員を設置することも重要です。

執行役員とは、取締役会とは別に設置される業務執行の責任者です。企業の意思決定は取締役会で行われますが、執行役員が設けられている場合は、業務執行の権限が執行役員に与えられます。

取締役会から業務執行の権限を分離することで、権力集中を防ぐことが可能です。

CEO不参加の取締役会を実施

CEO(最高経営責任者)は、企業の意思決定において大きな権力を持つため、CEOに権力が集中しすぎて他の役員が意見を出しづらくなるケースもあります。

その場合、CEO不参加の取締役会を実施することで、CEOの影響力を排除した意思決定ができるようになります。

役員報酬の見直し

企業の業績に対して役員報酬が高すぎると、株主をはじめとするステークホルダーから不信感を抱かれてしまいます。

そのため、役員報酬がどのように算出されたのかを明確に説明する必要があります。定期的に役員報酬を見直し、適正な金額を設定しましょう。

コーポレート・ガバナンスの問題点

ここまでコーポレート・ガバナンスの必要性について説明しましたが、コーポレート・ガバナンスを整備するにあたって、以下のような問題が生じることがあります。

  • 人件費がかかる
  • 企業活動のスピードが低下する
  • オーナー企業では機能しづらい

人件費がかかる

まず、コーポレート・ガバナンスを整備するために、社外取締役・監査役、監査委員会を設置すると、当然人件費がかかります。

特に、社外取締役は企業の透明性を確保するための重要なポジションであり、経営や監査の知見がある優秀な人材を採用する必要があるため、1人あたり年間数千万円の人件費が発生することもあります。

企業活動のスピードが低下する

また、社外取締役・監査役、監査委員会を設置することで、企業活動のスピードが低下する恐れがあります。

例えば、経営者がすぐに事業を展開したいと考えていても、監査側から問題を指摘された場合は、事業の進行を停止しなければなりません。その間に、他の企業に先を越されるリスクもあります。

コーポレート・ガバナンスによってビジネスチャンスを逃してしまっては、本末転倒といえるでしょう。

オーナー企業では機能しづらい

なお、経営者やその家族が自社株をすべて保有するオーナー企業の場合は、そもそもコーポレート・ガバナンスが機能しづらいといえます。

本来、経営者を監視する立場である株主が社長となると、外部からの監視が行き届かない状態になります。もし社外取締役などを設置しても、社長の意向に逆らえないケースもあるでしょう。

コーポレート・ガバナンスの強化に成功した事例

最後に、コーポレート・ガバナンスの強化に成功した事例を紹介します。

花王

1社目は、大手消費財化学メーカーの花王です。

花王では、コーポレート・ガバナンスを経営上最も重要な課題のひとつに位置づけ、業績面のみならず、非財務的な戦略・取り組みを強化して、中長期的に健全な成長を遂げています。

「経営監査室」「品質保証、環境安全、危機管理、法務・コンプライアンス、会計財務」「現場各部門」の3つのディフェンスラインを構築して、社内の監視体制を強化している点も特徴です。

参考:コーポレート・ガバナンス – 花王株式会社

塩野義製薬

2社目は、大手製薬会社の塩野義製薬です。

塩野義製薬は、2019年に「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、コーポレート・ガバナンスへの取り組みが高く評価されています。

社外取締役を3名設置し、第三者視点の監視体制を強化するとともに、指名諮問委員会・報酬諮問委員会の設置や、執行役委員制度の導入など幅広い取り組みを行っています。

参考:コーポレート・ガバナンス|シオノギ製薬(塩野義製薬)

まとめ

コーポレート・ガバナンスとは、企業経営が適切に行われているかを監視する仕組み・体制のことです。日本では、1990年代のバブル経済崩壊後に企業の不祥事が多発したことがきっかけで、コーポレート・ガバナンスの強化が求められるようになりました。

コーポレート・ガバナンスは法律で規定されていませんが、上場企業の場合は「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を東京証券取引所に提出する必要があります。

コーポレート・ガバナンスを強化するためには、内部統制の強化、社外取締役・監査役、監査委員会の設置、執行役員の設置などが有効です。一方、コーポレート・ガバナンスを整備することで人件費がかかったり、企業活動のスピードが低下したりする場合もあります。

本記事を参考に、コーポレート・ガバナンスについて理解を深めていただけると幸いです。

参考:
コーポレートガバナンス│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
コーポレート・ガバナンス | 日本取引所グループ
企業の安全性を高めるコーポレート・ガバナンス|基礎知識やメリットを紹介 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE
コーポレートガバナンス・コード
花王 | コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンス | 企業情報 | シオノギ製薬(塩野義製薬)

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