確証バイアスとは「自分の意見や仮説を支持する情報を優先的に探してしまうこと」をいいます。
本記事では、確証バイアスの意味やビジネスシーンにおける具体例、対策などを中心にお伝えしていきます。
確証バイアスの意味とは?認知バイアスとの関係
確証バイアスは、「自分の意見や仮説を支持する情報を優先的に探してしまう傾向」を意味します。自分の先入観や意見を裏付ける情報ばかり重視・選択肢、都合の悪い情報を無意識に目を背け排除してしまうのです。
【引用】 確証バイアスとは,仮説や信念を検証する際に支持する情報ばかり集め,反証する情報を無視または集めようとしない傾向を指す
引用元:行動科学の視点から見た行動経済学
確証バイアスと認知バイアスの関係は?
確証バイアスは、認知バイアスの一種です。
認知バイアスは、自分の偏見や先入観などによって非合理的な判断を下してしまう心理的傾向のことです。思い込みをもっていると認知が歪み「なぜあんな選択をしたのだろう?」という後悔につながりかねません。正しく合理的な選択をするために、バイアスの罠から抜け出しましょう。
確証バイアスを明らかにした「ウェイソン選択課題」
確証バイアスの有名な実験が、ペーター・カスカート・ウェイソン氏による「ウェイソン選択課題」です。
<実験概要>
『片面に偶数(1・4)、もう一方の片面に色(赤・青)が書かれたカードがある。何枚かカードを裏返し「カードの片面が偶数なら、もう片面は赤だ」という仮説を証明したい。この場合、少なくとも、どのカードとどのカードをめくれば仮説を確認できるか。』
よくある回答は「4と赤」です。しかし、これは不正解。正解は「4と青」です。なぜなら、仮説が成り立つためには「片面は偶数、裏面は赤ではない」を満たせば十分だからです。つまり、赤の裏面を確かめる必要はありません。
しかし、多くの人は確証バイアスによって、仮説に合致する条件のみを確認しようとします(偶数と赤のカードを裏返します)。ウェイソン氏は、実験によってこの心理的傾向を明らかにしました。
身の回りに潜む認知バイアス
身の回りには多くの認知バイアスが存在します。翻弄されないためにもまずは認知バイアスの存在を理解しましょう。
『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』によると、確証バイアスを含め認知バイアスは60種類以上も存在します。
その中でも、ビジネスシーンや身の回りに潜むバイアスを中心に解説します。
内集団バイアス
内集団バイアスは「同じ集団にいる人に対して高評価をしたり、良い印象を受けやすい傾向」のことです。
内集団とは自分が所属する集団、外集団とは自分が所属していない外部の集団です。また、内集団は組織、学校はもちろん、出身地や人種など幅広い枠組みを意味します。
企業や組織、チームの結束力を強化するメリットがある一方、強すぎると外集団に対して差別的な行動に及ぶ恐れがあります。
例)自分と同じ大学を卒業した部下は優秀だと決めつける
後知恵バイアス
物事が起きてから、その結果は予測可能だったと考えやすい傾向のことです。言われるまで気付かなかったことも、発生後に「当然のことだ」と思う感覚です。こうならないためにも、結果に固執せず、「別の結果はなかったか?」と常に振り返る意識を持ちましょう。
例)放任主義なのに、部下が大きなミスをしたら『やっぱり俺の思った通りだ!』と叱る上司
正常性バイアス
異常事態に直面したとき、一定の範囲内までは正常だと考えてしまう心理です。
例)津波がきても「自分は平気だろう」と避難せず、被害にあう
本来、心の平穏を守り心理的ストレスを軽減するための機能です。
特に、少しずつ危険度が増していく危機的状況で働きやすい心理メカニズムといえます。緊急時に適切な行動を取るためにも、「本当にこのままで大丈夫か?」と想像力を働かせましょう。
同調性バイアス
集団行動において他人と同じ行動をとることが安全だと考える心理です。「とりあえず周りに合わせて行動すれば安全だ」という感覚です。
例)非常ベルが鳴ったが、周りの同僚と同じように逃げない
同調性バイアスは、一致団結して助け合う場面でとても大きな力を発揮します。しかし「みんながそうしているから」という単純な理由で判断・行動することは避けましょう。
参考:日本赤十字社|知ってほしい!避難の妨げになる「正常性バイアス・同調性バイアス」
自己奉仕バイアス
成功は自分の能力によるもの、失敗は自分ではどうにもできない(都合よく解釈する)と考える認知バイアスです。成功を自分の手柄とするのに失敗の責任を負わない人の一般的傾向と言われています。
例)仕事が成功したときは「自分の能力が高いからだ」と考え、失敗は「周囲の環境が悪い」と他人のせいにする
過信は傲慢につながります。常に自分を客観視し、周りに感謝する習慣をつけましょう。
参考:日本人の帰属における自己卑下・集団奉仕傾向の共存とその意味について
ハロー効果
ハロー効果は「ある特定のものに対する評価が、因果関係がない項目の評価に影響を与える心理です。後光効果や光背効果とも呼ばれます。
例)
・有名大学卒だからきっと優秀だろうと思い込む
・好感度の高い有名人がCMに出ているから安心な商品だと考える
ハロー効果はポジにもネガにも働き、不当な評価や誇大表現につながりやすいバイアスです。事実と先入観はしっかり分けましょう。
参考:感情エピソードの会話場面における表出性ハロー効果の検討
ダニング=クルーガー効果
能力が低い人ほど自分の能力を過大評価する心理です。優越の錯覚とも呼ばれ、自己評価と他者からの評価にズレが生じてしまうことを意味します。
例)業務に慣れたからミスが減ったのに、「自分のスキルが上達したからだ」と錯覚する
ダニング=クルーガー効果は、根拠のない自信としてプラスに働くこともあります。しかし、自信過剰な人は学習が疎かになり、成長が止まります。常に謙虚さを忘れず、他者からののフィードバックを素直に受け入れましょう。
参考:心理学者が解説「なぜ世間には『バカ』がこれほどまでに多いのか」
ビジネスシーンにおける確証バイアスの具体例
ビジネスにおける具体例を紹介します。
確証バイアスはポジにもネガにも作用します。
採用面接で目が曇る(ネガ)
「この人は優秀そうだ」という第一印象を持つと、優秀さを裏付ける資格や成績にばかり目を向けて、反証情報を意図的に避けたり、シャットアウトしてしまいます。
例)「学生時代、一つのことをやり遂げた」と言う候補者に対して、
- 第一印象が良い場合の評価;「継続力のある人だ」
- 第一印象が悪い場合の評価:「さまざまな分野の経験値が足りない」
採用面接では、コミュニケーション能力や志望動機、入社後のキャリアイメージを確認すべきです。第一印象に左右されず、一定の基準を設けて適切な採用面接を実施しましょう。
参考:人事採用面接における表情の役割と影響 p.29
人物評価・人材育成で評価を誤る(ネガ)
人物評価や人材育成は、持続的な組織活動にとって非常に重要です。公正な評価や育成を意識しましょう。
例)体育会系出身なので打たれ強いと思っていたが、実際そうでもなく、必要以上に低い評価をつけしまった。
例)高い評価を社員が成果を出せなくても「、周りからは「珍しいね、そんなこともあるよ」と都合良く解釈される
重大な意思決定の場面で夢を見てしまう(ネガ)
重大な意思決定の場面において、根拠のない思い込みには注意しましょう。
例えば、自社で拡大展開を検討している事業に対し、コンサルティング会社から夢のように魅力的な施策を提案されることもあるでしょう。しかし、提案内容が自社の経営方針と合致するという理由だけで意思決定すると、大きな損害を被る恐れがあります。
代表的なのがスタートアップ企業のテラリアンスです。
「飛行機から石油を探知する技術の完成」を目的に、ゴールドマン・サックスなど世界的投資会社から約5億ドルを調達ましたが、事業は見事に失敗しました。
このように、いくら優秀な経験豊かなプロフェッショナルでも、重大な意思決定を前にすると目が曇ってしまうことがあります。原因はまさにストーリーテリング(確証バイアス)です。魅力的な提案を裏付ける情報のみ認識し、都合よく解釈してしまったのです。
重大な意思決定の場面こそ、慎重かつ十分に情報を精査しましょう。
参考:日経ビジネス|ゴールドマン、シリコンバレーVCもはまった「思い込み」の罠
リターゲティング広告やディスプレイ広告に活用する(ポジ)
確証バイアスのポジティブな活用法です。
一度自社サイトに来たユーザーを追跡するリタゲ広告や、幅広いサイトに出稿するディスプレイ広告は、確証バイアスを利用して下記の効果が期待できます。
- 「最近よく見るから人気商品だ」と思わせる(バーダー・マインホフ現象)
- ポジティブな情報のみを広告に掲載し、ネガティブイメージ与えない
- 自社のサービスや商品を覚えてもらい、無意識に探させる
顧客のアフターフォローを手厚くする(ポジ)
特に高額な商品を購入た顧客に対しては、購入後に丁寧なアフターフォローを行いましょう。アフターフォローの満足度が高ければ、商品の満足度(「買ってよかった」という気持ち)も高くなります。そして良い評判だけ受け入れ、良くない評判は無意識にシャットアウトするでしょう。このように強い確証バイアスがかかった状態は、リピート買いにつながりやすいです。
確証バイアスを回避する対策|反証する証拠を探すこと
確証バイアスの原因は「自分は正しい」「自分の考えを変えたくない」という思考のクセです。しかしこの思い込みから抜け出さなければ正しい選択や判断はできません。
確証バイアスの回避方法は「反証する証拠を探す」です。
具体的な方法を4つ解説していきます。
1.クリティカルシンキング|考察方略
クリティカルシンキングとは批判的思考のことです。結論や選択に対して、「本当にそうなのか」「別の結論はないか」と複数の視点で考えることで、結論や選択の確度が高まります。客観的な視点で物事を見つめ直すことができるのです、
2.確証バイアスがあると認識する|バイアスへの事前警告と熟考の教示
「誰にでも、思い込みや先入観=確証バイアスはあるものだ」とあらかじめ認識しましょう。そうすれば、他人の固執した意見も「相手はバイアスに影響されている」と捉えることができます。そして、「こういう考えもありますよ」と別の切り口を提案でき、前向きな議論ができるのです。
3.第三者の意見を聞く|説明責任
第三者の意見を聞きましょう。信頼できる人、知見のある人から意見をもらうことで、自分自身の思考の偏りに気づけます。「絶対に自分は正しい」と頑なにならず、第三者の意見を聞く姿勢を持ちましょう。
4.先入観の原因を探す|ルール・表象・バイアスに関する訓練
私たちの認知は、これまでの経験や知識がベースでできています。自分に先入観や思い込みがある場合は、その原因(きっかけ)を探しましょう。
過去に一度衝突したからといって、お互いの人間性が原因ではなく、仕事の進め方が噛み合わなかっただけの可能性もあります。原因を探れば、「人間性が合わなかった」という思い込みを捨てられるでしょう。「なぜ自分はこう思うのか」を深堀りすれば、思い込みを排除するきっかけになります。
まとめ
確証バイアスは認知バイアスの一種で、自分の意見や仮説を支持する情報を優先的に探してしまう心理メカニズムです。
確証バイアスは誰でも陥る可能性があります。
日頃から、自分の判断・選択が確証バイアスにかかっていないかを意識し、時には他者からのフィードバックに耳を傾けるなど対策をしましょう。
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