2023年3月20日、株式会社リーディングマークによって開催された「みんなのHR博覧会 by ミキワメ」において、ソフトバンク株式会社の源田泰之氏が、「ソフトバンクに習う『人的資本最大化のための戦略人事論』」と題して講演しました。講演要旨は次のとおりです。
人的資本に対するソフトバンクの取り組み
源田:皆さんご存知のとおり、現政権においても人的資本投資は非常に重要視されています。
今年は人的資本の項目開示が必要になるため、人事の皆さんは色々準備されていると思います。この後ご説明しますが、ソフトバンクでは人的資本項目の開示は、方法であり通過点だと捉えています。いかに人的資本を最大化させるのか、それに対してどのような取り組みをやっていくのか、こういった点を重視しています。
会社と個人の関係性の変化
会社と個人の関係性は大きく変わってきています。会社の情報もオープンで、人材の流動性も高まってきている現状から考えると、選び・選ばれる関係といえるでしょう。ソフトバンクでも、社内の人から「働き続けたい」と思われ、社外の人から「この会社で働いてみたい」と思われるために何が必要か、その点を考える必要性を感じています。
人事の方向性の変化
人事の方向性として、例えばマネジメントにおいては、管理志向からオープン化へと変化しています。ベクトルや方向性も、内向き・社内中心から社外発信の強化へと目を向ける必要が出てきました。
個人にとって一番重要なのは、キャリアの部分です。これまでは、会社が社員のキャリアを決めていました。ところが今では、自律型のキャリアへと変化を見せています。そのため、従業員はどのように自らのキャリアをデザインし、どのように成長していきたいのか考える必要があります。
ウェルビーイングとパフォーマンス
心身共に健康な状態であることが、生産性、創造性、売上や離職率、欠勤率などに影響します。当社では、ウェルビーイング経営を推進すると、結果的に人的資本の最大化に繋がっていくものと考えています。
ウェルビーイング経営を推進していくために、健康経営マップというものを活用しています。人的資本を最大化することが、中長期を含めた会社の未来を作っていく。そう考えながら推進しています。プレゼンテーションは以上です。
飯田:ありがとうございました。ここからは質問の時間に入ります。
人的資本を最大化する方法
飯田:どうすれば人的資本の最大化が達成できるでしょうか?
源田:人的資本への投資が重要です。当社では、約5.4%の賃上げを発表しています。ほかにも、社員の成長をどう後押しするのか、この点も欠かせません。色々なチャレンジの機会があり、チャレンジの機会を通じて社員が成長していく。こうしたサイクルを会社の中にいながら回せるよう、様々な施策を打ち出しているのが現状です。
複数の施策を通じて人的資本を高める
飯田:企業の中には、手を挙げても叶わなければ、不満が溜まったり退職するリスクに繋がるのでは?と懸念する声もあります。その点はいかがでしょうか?
源田:今は、会社の状況がSNSや掲示板などを通してオープン化されています。その中で、躊躇して社員の成長を促すような施策を打たないことのほうが、よほどリスクに繋がりますし、退職にも繋がってくると思います。
また、人の価値観は多様化しています。「この施策をやれば全員ハッピー」といったものはありません。「こういったことをやると自律的なキャリアに繋がっていくだろう」と複数の施策を打ち出す必要があるのです。
例えば、ジョブポスティングやFAといったものを通じて、社員が自分のやりたい仕事にチャレンジできる制度を充実させる。当社の場合、自社だけでなく、グループ会社のLINEやヤフーにも異動できる制度となっています。
副業を解禁している会社も、最近増えてきましたよね。当社では、現時点で550名程度が副業をしています。また、社内副業制度も始めました。他部署を最大20%ぐらい兼務して、本部の仕事をしながら別のチャレンジをしてみる。こうした取り組みも実施しています。
さらにOff- JTでいうと、「ソフトバンクユニバーシティ」という取り組みがあります。対話型の研修を、年間のべ1万人以上が受講しています。ほかにも「ソフトバンクイノベンチャー」という、新規事業開発制度があります。解決してみたい課題を自分で提案して、良ければ事業化し、自らが社長となって推進する制度です。
何か一つの施策を実施したらOKではなく、様々な打ち手を講じ、それに対して社員が応募して広げていくスタンスでやっています。
圧倒的に成長できる環境を社内に作る
飯田:ここに異動したい、チャレンジしたいという場合、手が挙がったものを参考にしながら人事が配属を決めていく形なのでしょうか?
源田:まずFAは、年に1回手挙げです。「営業のこの部署でこういう仕事がしたいです」と自分で営業の○○部に行きたいと希望を出せます。もちろんその中で、ある程度人数のコントロールはします。例えば3名合格のところに20名申し込んだ場合は、受け入れる側の部署が書類選考や面接選考を行ないます。
成長できる環境をどう作るのか?それには自律性が必要です。「会社にとって大事だからやれ」と言われてやるのか、「自分がチャレンジしたい」と思ってやるのでは、仕事に対するモチベーションが大きく変わります。自分で意思決定したからこそ、工夫してやれたり大変なことも乗り越えられたりするのだと思います。
社員の成長を促すために、色々なチャレンジの方法を考える。それを社員が選び、自律的に自分のキャリアをデザインしながら挑戦できるような職場環境を作る。根底にそうした考えがあります。
視聴者へのメッセージ
飯田:お伺いしたいことはたくさんあるのですが、最後に、視聴者の方々にメッセージをお願いします。
源田:これをやればうまくいく、これをやれば社員がみんな成長していくものというのは、残念ながらありません。会社の事業体やカルチャー、状況といったものに合わせて様々な打ち手が考えられるでしょう。
まずは、社員がどのようなことを求めているのか、経営層がどのように社員の成長を促したいと思っているのか、そこを確認するのが第一歩です。打ち手も一択ではないため、様々な打ち手を講じてみて、PDCAを回しながら自社にとって最適な仕組みを考えていく。そうした姿勢が重要ではないでしょうか。人事もチャレンジしていきましょう!ということですね。
飯田:貴重なお話をありがとうございました。
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