定期的に1on1を実施していても、部下の成長につながるような深い対話ができていないケースも少なくありません。
実際に離職対策に関する調査では、大企業の48.1%が「若手社員のニーズや価値観を十分に理解できていない」と回答しました。
参考:大企業の若手社員の離職対策に関する実態調査|株式会社リーディングマーク
効果的な1on1を実現するためには、短時間でも話をする機会を設け、部下の考えに耳を傾ける必要があります。
本記事では、部下のモチベーションを高め、成長や成果につながる1on1のコツを詳しく解説します。
- 有意義な1on1にするためのコツ8選(準備編・実践編)
- 部下のタイプ別のコミュニケーション術
- 部下の成長を促す1on1の流れ5ステップ
この記事を読むことで、部下の性格や状況に合わせた1on1のやり方がわかり、心理的安全性の高い職場をつくるヒントが得られます。ぜひ最後までご覧ください。
株式会社リーディングマークでは、1on1を仕組み化し、部下の成長をサポートする『ミキワメ マネジメント』を提供しています。詳細は以下の資料にまとめていますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
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なぜ1on1が必要なのか?期待される効果

1on1は、一般的な面談とは異なり「部下が話したいテーマ」を中心に対話を進めます。評価や指導が目的ではなく、部下の成長と成果を最大化させるための時間です。
1on1を定期的に実施することで、以下のような効果が期待できます。
以下より、それぞれの効果を詳しく見ていきましょう。
上司と部下の信頼関係が深まる
1on1を定期的に行うことで、上司は部下の仕事に対する考え方や価値観、日常業務での悩みなどを把握できます。
部下にとっても「自分の話を受け止めてくれる」「気持ちに寄り添ってもらえる」という安心感につながり、お互いの信頼関係が深まります。
実際に、人事担当者634人を対象に「1on1ミーティングの導入効果」を調査したところ、6割以上の企業で「上司と部下のコミュニケーション機会が増えた」ことがわかりました。

出典:【調査発表】1on1ミーティング導入の実態調査|株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
調査結果からも、1on1は部下の話を聞くだけの時間ではなく、信頼関係の構築につながる有効な手段であることが示されています。
会社・チーム全体の信頼関係が深まり、日常のコミュニケーションが円滑になることで、意見交換や相談がしやすい雰囲気が生まれます。
部下の思考・行動の質が高まる
1on1は評価や指導をする時間ではなく、上司が部下の話を聞きながら、気持ちや考えの整理をサポートするための時間です。
仕事を通じて得た気づきや、日々の小さな成功体験を振り返ることで、部下は自分の強みや改善点を客観的に理解し、自らの考えで行動するようになります。
たとえば、部下が「最近、業務の進め方を工夫したら時間を短縮できた」と話した場合、以下のような質問を投げかければ、部下の内省を促進できます。
「その工夫を思いついたきっかけは何でしたか?」
「取り組んでみて、一番うまくいった点はどこだと思いますか?」
「今回の経験をほかの業務に活かすとしたら、どの場面が考えられますか?」
上司の問いかけに対し、部下は自分の言葉で説明しようと思考することで、気づいていなかった強みや改善点を発見できます。
心理的安全性の高い職場をつくれる
定期的に1on1を実施し、部下が安心して相談できる環境を整えることで、心理的安全性の高い職場づくり(自分の気持ちを自由に表現できる状態)につながります。
上下関係にとらわれず対等な関係性を築くことで、普段の業務でも率直な提案や問題提起が行われ、チーム全体の風通しがよくなります。その結果、早期の課題解決や離職防止につながるのです。
実際に、若手社員の不安や不満を早期にキャッチし、休職・離職を防ぐ手段として、多くの企業で1on1が取り入れられています。
株式会社リーディングマークの調査によると、若手社員の離職対策として、大企業の76.6%が「定期的な1on1面談」を実施していることがわかりました。
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1on1を継続することは、部下の心理的安全性を高めるだけでなく、組織全体の成長につながる取り組みと言えます。
現場でよくある1on1の課題(忙しい、効果がない)
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多くの効果が期待できる1on1ですが、実際の現場では「忙しくて1on1ができない」「面談の効果がない」といった課題があるのも事実です。
パーソル総合研究所の調査によると、正社員(上司・部下)3000人に「1on1に関する困りごと」を尋ねたところ、以下のような実態が明らかになりました。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
上司 | 部下 |
---|---|
面談について学ぶ仕組みがない(35.4%) | 面談の効果が感じられない(29.7%) |
私が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい(35.3%) | 面談について学ぶ仕組みがない(28.3%) |
面談の効果が感じられない(27.6%) | 上司が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい(26.3%) |
面談しなければならない部下が多すぎる(26.3%) | 面談前に何を準備すればよいかわからない(24.2%) |
部下への以前の助言が部下の行動に反映されていない(25.7%) | 上司からの助言を、どう行動に移せばよいかわからない(20.8%) |
参考:部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査|パーソル総合研究所
この調査結果からわかることは、1on1の意義は理解されているものの、上司・部下ともに「運用面の難しさ」が大きな課題となっている点です。
上司は「忙しさ」「スキル不足」によって十分な準備や時間を確保できず、部下は「効果の実感が薄い」「行動に結びつかない」と感じています。
こうした課題を解決するためにも、1on1の仕組みやサポート体制を整え、誰もが継続できる取り組みにする必要があります。
【準備編】有意義な1on1にするためのコツ3選

1on1を円滑に進めるためには、スケジュール調整や面談方法の検討など、事前の準備が欠かせません。以下の3つのポイントを実践してみましょう。
とくに多忙な職場では、1on1を後回しにしてしまうケースも少なくありません。あらかじめ予定表を共有し、短時間でも実施する仕組みを整えておきましょう。
以下より、それぞれのポイントを解説します。
多忙でも1on1の時間を必ず確保する(ルーティン化)
1on1ミーティングを継続するためには、他の業務よりも優先度を上げ、短時間でも必ず実施する「覚悟」を持つことが大切です。
たとえ10〜20分でも、スケジュール通りの時間に実施することで、上司・部下の双方にとって「必ず話を聞ける(話せる)場」として定着します。
しかし、繁忙期や突発的な業務が入ったときには、1on1の予定を変更したり、キャンセルしたりするケースも少なくありません。
「今日は忙しいからまた今度」
「業務が落ち着いたら考えよう」
「空いた時間にやろう」
こうした対応が繰り返されると、部下は「自分との時間を後回しにしている」と感じ、信頼関係が損なわれる可能性があります。
どうしても予定の変更が必要な場合は、速やかに再調整を行い、必ず1on1の時間を設けることが重要です。
部下に予定表を共有し、上司中心のスケジュールにする
1on1を実施するときは、上司主導でスケジュールを計画してから、部下に予定表を共有しましょう。
部下に日時を決めてもらうと、遠慮してなかなか候補を出さなかったり、他の業務を優先したりする場合があります。
また、上司は複数のメンバーと面談を行う必要があり、一人ひとりと個別に調整していては負担も大きくなってしまいます。
1on1を計画するときは、上司中心のスケジュールをあらかじめ共有した上で、以下のような工夫をしてみましょう。
- 候補日を3つほど提示する
- 毎回同じ曜日・時間を指定する
- 繁忙期は短時間の1on1を計画する
このように上司が主導してスケジュールを決めることで、1on1が「日常業務の一部」として定着するようになります。
1on1は可能な限りオフラインで行う
部下と1on1を行うときは、可能な限りオフライン(対面)で実施しましょう。
オンライン(Zoom など)でも実施できますが、細かな表情や雰囲気までは伝わりにくいため、部下の小さな変化に気づけない可能性があります。
直接対面で話すことで、非言語情報(表情・姿勢・声のトーン など)から、言葉だけではわからない心理状態やコンディションを感じ取れます。
また、オフラインの1on1は、雑談から自然な流れで本題に入り、リラックスした雰囲気をつくる点でも効果的です。
もちろん、出張やリモートワークなどで対面の1on1が難しい場合もあります。そのときは、カメラを「オン」にして目線を合わせる、雑音が入らないよう個室で行うなど、部下の話を傾聴できる工夫をしましょう。
【実践編】有意義な1on1にするためのコツ5選

1on1を有意義な時間にするためには、事前準備だけでなく、実際の進め方や部下との関わり方を意識する必要があります。以下の5つポイントを押さえて、部下の成長をサポートしましょう。
以下より、それぞれポイントを詳しく解説します。
気負わずリラックスした気持ちで1on1に臨む
1on1を実施するときは、「部下の話を聞き逃してはいけない」と過度に構えず、日常会話や雑談の延長のような軽い気持ちで臨みましょう。
冒頭から難しいテーマを取り上げてしまうと、部下は身構えてしまい、沈黙が続いたり会話が途切れたりする可能性があります。まずは、最近のニュースや近況などの軽い雑談から入り、会話を少しずつ広げていきましょう。
また、部下に声かけするときも、以下のように堅苦しい雰囲気を見せないことで、部下は緊張せず1on1に臨めます。
「今日は近況も含めて、コーヒーでも飲みながら話そう」
「気になっていることがあれば何でも聞かせて」
「雑談でもいいし、思いついたことで構わないよ」
部下が安心して話せるように声かけをすることで、1on1が「何でも相談できる場」として定着し、結果として部下との信頼関係の構築につながります。
テーマが決まっていない場合は「最近どう?」から始める
とくにテーマが決まっていないときは、シンプルに「最近どう?」のオープンクエスチョンから始めてみましょう。
この問いかけは、曖昧かつ回答に幅があるため、1on1では一般的によくない質問として考えられています。
しかし、テーマが決まっていない場合は、あえて「最近どう?」と投げかけることで、仕事やプライベートなど部下が話しやすい話題から切り出せます。
小さな話題から「具体的にどんなことがあったの?」と深掘りしていけば、最終的に業務上の課題やキャリアの悩みなど、本質的なテーマにつながるのです。その他にも、以下のような質問が効果的です。
「そのとき、どんなふうに感じた?」
「一番うまくいったと感じることは何?」
「少しでも大変だと感じていることはある?」
深掘りする質問を通じて、部下に自分の気持ちや考えを整理する時間を与えることで、普段は言葉にしにくい本音を引き出しやすくなります。
以下の記事では、1on1で話すことがないと感じる原因と対策を解説しています。テーマ設定に悩んでいる上司や人事担当者の方は、本記事と合わせて確認してみてください。

オープンクエスチョンで話を広げつつ「傾聴」に徹する
1on1では「はい」「いいえ」で答えられる質問だけではなく、部下の思考を促すオープンクエスチョンを活用しましょう。
オープンクエスチョンとは、回答の選択肢を限定せず、自分の考えを自由に話してもらうような質問方法です。具体的には、以下のように5W1H(いつ・どこで・誰と・何を・なぜ・どのように)を用いて質問を投げかけます。
「最近、仕事で達成感があったのはいつですか?」
「どのような環境だと、仕事に集中しやすいですか?」
「一緒に働いていて、とくに信頼できるメンバーは誰ですか?」
「いまの業務で、もっと改善したいと思う点は何ですか?」
「なぜその分野に挑戦してみたいと感じるのですか?」
また、部下の話を途中で遮らないように、最後まで耳を傾ける姿勢(傾聴)が大切です。相づちやうなずきの動作を交えることで、部下は「自分の話をしっかり受け止めてくれる」という安心感を得られます。
部下と対等な立場で「成長・成果」を喜ぶ
1on1を有意義な時間にするためには、部下の話の中で「成長」や「成果」が見えたタイミングを見逃さず、その頑張りを一緒に喜ぶことが大切です。
上司が「できて当然」といった雰囲気を出してしまうと、部下は自分の努力が認められていないと感じ、やる気を失ってしまう恐れがあります。
部下の成果を喜ぶときも、「よくやった」「がんばった」と上から目線で褒めるのではなく、部下と対等な立場で以下のような言葉をかけましょう。
「私はこの取り組みがとくにいいと思った」
「その工夫は自分も学びになった、ありがとう」
「あなたのおかげで仕事がスムーズに進んだ」
「目標に近い成果が出て私も嬉しかった。次も一緒に頑張ろう」
上司の喜びの言葉を通じて、部下が「努力を認められている」と実感することで、次の挑戦に向けてポジティブな姿勢を持ちやすくなります。
以下の記事では、マネジメント理論に基づく1on1の流れについて詳しく解説しています。部下との関係性に課題がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

「本当のありたい姿」を聞き、次のアクションにつなげる
日々の業務に追われると、部下は自分のキャリアや目標を見失ってしまうことも少なくありません。そこで1on1を通じて、短期的な目標だけでなく、部下が思い描く「本当のありたい姿」を聞くことが大切です。
以下のような質問を通じて、具体的な理想像を聞き出しましょう。
「いまの業務の中で、一番やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?」
「理想のキャリアを実現するとしたら、どんなスキルが必要だと思いますか?」
「将来的にどのような役割やポジションを担いたいですか?」
「自分の強みを一番活かせるのは、どんな仕事だと思いますか?」
「もしチャンスがあるなら、どんなプロジェクトに挑戦してみたいですか?」
部下の「本当のありたい姿」を聞いたら、その理想と現状のギャップを分析し、次回の1on1までにできる行動を一緒に考えましょう。
小さな行動を積み重ねることで、部下は「着実に理想の姿に近づいていること」を感じながら、自信を持って日々の業務に取り組めるようになります。
1on1では部下の性格・特性の見極めが必要

効果的に1on1を進めるには、部下一人ひとりの性格や行動特性を見極め、それに合わせた対話の仕方やコミュニケーションが大切です。
たとえば、内向的な部下は、自分の悩みや不安を話すことに抵抗があるかもしれません。その場合は、以下のように質問を工夫して答えやすい雰囲気をつくってみましょう。
「最近、楽しいと感じた仕事はありましたか?」
「仕事を進める中で、サポートがあると助かる場面はありますか?」
一方、自己主張の強い部下に対しては、話を整理したり要点をまとめたりするなど、話が脱線しないような工夫が必要です。
しかし、部下一人ひとりの情報をすべて手作業で管理しようとすると、上司(マネージャー)の負担が大きくなります。
そこで有効なのが「1on1ツール」の活用です。1on1ツールを活用することで、過去の会話記録や社員の性格をもとに、一人ひとりの状況に合わせた対話が可能になります。
また、1on1の内容を自動で文字起こしするため、議事録を作成する必要がなく、上司の負担も軽減できます。
1on1ツールの導入を検討している人事担当者の方は、以下の記事をご覧ください。おすすめのツールを目的別に紹介しています。

【部下の性格別】1on1のコツ・コミュニケーション術

部下によって性格や考え方、仕事の実力はさまざまです。そのため、1on1では単に話を聞くだけではなく、部下のタイプに合わせた接し方やコミュニケーションが大切です。
ここでは、4つのタイプに分けて1on1のコツを解説します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
部下のタイプ | 1on1のコツ |
---|---|
仕事熱心でエース級の働きをする社員 | 価値観を尊重しつつ、「チームの力になってほしい」と役割を委ねるような言葉をかける |
一定の成果は出すが、ストレスに弱い社員 | 合格と不合格の間にある「及第点」を設定し、そこを達成できれば十分だと伝える |
経験豊富な中堅・ベテラン社員 | これまでの経験や実績を認め、「あなたの知見をもっと活かしてほしい」と尊敬の言葉をかける |
多様な価値観を持つZ世代の社員 | 多様な価値観を理解し、「将来どうなりたいか」「どのような働き方を望むか」といったテーマに触れる |
以下より、詳しく見ていきましょう。
仕事熱心でエース級の働きをする社員
エース級の働きをする社員は、仕事熱心で強い責任感を持ち、自分の考えや価値観に基づいて行動する傾向があります。
そのため、提案やアドバイスを軸に1on1をするのではなく、部下の価値観を尊重しつつ「チームの力になってほしい」と役割を委ねるような対話が効果的です。
エース社員は、会社の方針に従うというよりも、自分が納得したら行動しようとするため、「なぜその方針が必要なのか」を丁寧に説明することが大切です。
まずは、本人の考えを聞いた上で、以下のような言葉をかけてみましょう。
「あなたの声でみんなが動く」
「後輩もあなたを信頼している」
このような声かけをすることで、部下は自分の存在価値を再認識し、組織の一員として力を発揮しようと行動します。
以下の記事では、エース社員のモチベーションが低下する原因と対策を詳しく解説しています。本記事と合わせて確認してみてください。

一定の成果は出すが、ストレスに弱い社員
部下の中には、一定の成果は出すものの、職場環境の変化やプレッシャーに弱い人もいます。この部下との1on1では、安心して話せる雰囲気づくりを意識することが大切です。
上司(マネージャー)になる人は、過去に実績を上げてきた優秀な人材がほとんどです。そのため、自分と同じ基準で部下を見てしまい、100点を求めるケースも少なくありません。
ストレスに弱い部下に対して、高すぎる基準を求めてしまうと、本人は「自分は期待に応えられていない」と感じ、ますます不安やプレッシャーが強くなります。
1on1では、合格と不合格の間にある「及第点」を設定し、そこを達成できれば十分だと伝えることが重要です。部下のストレス耐性を見極めた上で、一人ひとりの特性に合う「伸びしろ」と「許容量」を設定しましょう。
以下の記事では、ストレス耐性が高い人・低い人の特徴について解説しています。適性検査を活用した「ストレス要因の分析方法」も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

経験豊富な中堅・ベテラン社員
中堅・ベテラン社員は、豊富な経験と熟練したスキルに加え、自分で考えて行動する力を持ち合わせています。
一方で、過去の成功体験に基づいた「仕事の進め方」を重視する傾向があるため、方針の変更や新しい取り組みに対して、抵抗を感じるケースも少なくありません。
1on1では、これまでの経験や実績を認めた上で、「あなたの知見をもっと活かしてほしい」といった尊敬の言葉をかけてみましょう。
新しい取り組みを行うときも、「従来のやり方を改善できる部分はないか」と相談することで、前向きに意見を出してくれるようになります。
中堅・ベテラン社員には、会社への貢献に対する感謝を示しつつ「もう一度心に火をつけるような言葉」をかけ、新たなチャレンジを提案してみましょう。
多様な価値観を持つZ世代の社員
2000年代生まれのZ世代の社員は、インターネットやSNSなどを通じて多様な価値観を持つようになった世代です。そのため、仕事のキャリア観や働き方に対しても、一人ひとり独自の価値観を持っています。
【具体例】
- 仕事よりもプライベートの時間を重視する
- リモートワークなど柔軟な働き方を求める
- 副業や転職もキャリアの選択肢として考える
Z世代の社員は、「自分らしく働けるか」「スキルをどう活かせるか」といった基準で行動する傾向があります。
1on1では、業務の進め方だけでなく、「将来どうなりたいか」「どのような働き方を望むか」といったテーマにも触れてみましょう。
一人ひとりの価値観を理解し、仕事の意義・目的を丁寧に説明することで、部下は納得感を持ちながら働くようになります。また、普段もこまめに声かけを行い、「しっかり見てくれている」という安心感を与えることが大切です。
以下の記事では、必要最低限の業務のみをこなす働き方「静かな退職」について詳しく解説しています。Z世代を中心に流行している背景や、日本の現状も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

部下の成長を促す1on1の流れ|5ステップ

1on1を通じて、部下の成長・成果を最大化させるためには、段階的なアプローチが必要です。5つのステップに分けて紹介します。
以下より、それぞれ詳しく見ていきましょう。
また、1on1の進め方を網羅的に解説した記事もご用意しています。部下の成長段階に応じた対話方法も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

1.目的・期待値の設定
まずは、1on1を始める前に「この時間は何のために行うのか」を明確に設定しましょう。
目的が曖昧なまま進めると、一般的な面談と変わらない業務報告や評価の時間になってしまいます。以下のように具体的な目的を設定し、部下と共有しましょう。
- キャリアの方向性を一緒に考える
- 業務上の課題や悩みを聞き、解決策を検討する
- 部下の強みを発見し、さらに伸ばす方法を考える
また、組織の目標を達成するために、上司は部下一人ひとりの強みを把握し「どのような場面で活かせるか」を考えることが大切です。
一人ひとりの役割における「成功の定義」や「期待値」を明確にすることで、部下は具体的なゴールをイメージしやすくなります。
2.実施スケジュールの決定
1on1を継続的に行うために、具体的な実施スケジュールを決めましょう。以下のように、1on1の種類ごとに予定を決めておくことで、習慣化(ルーティン化)しやすくなります。
※以下の表は右にスクロールできます
種類 | 実施スケジュール | 内容 |
---|---|---|
短時間の軽いやり取り | ・週1回以上 ・1〜10分程度のやり取り (メール、電話、立ち話 など) | ・部下との継続的なコミュニケーションを図り、「自分のことを見てくれている」と感じさせる ・業務上の問題を把握し、迅速に解決策を提案する |
通常の1on1ミーティング | ・月1〜2回 ・10〜30分程度 | ・成功と課題を振り返り、業務の優先順位を再設定する ・期待値や仕事量、目標について計画的に話し合う |
育成型のコーチング | ・必要に応じて実施 ・10〜30分程度 | ・プロジェクトの任命や、キャリア開発の機会に関する会話をする ・部下のやりたいことや成長の機会を模索し、方向性を一緒に考える |
とくに繁忙期は、1on1の優先度が低くなりがちですが、できる限り予定を変更(キャンセル)せず実施しましょう。
10分程度の立ち話や、出張先でのオンライン面談など、1on1を途切れさせない工夫を行うことで習慣化につながります。
3.テーマ・進め方の確認
1on1を実施するときは、その場の思いつきで会話を進めるのではなく、事前にテーマを設定し、進め方を確認しておきましょう。
基本的に「部下が話したいこと」がメインテーマです。上司は、あらかじめ部下にアジェンダを共有し、どのような話題について話すかを整理しておくことが大切です。
また、スムーズに会話を進められるように、全体的な流れも確認しておきましょう。
【1on1の基本的な進め方】
- 本題前の雑談(アイスブレイク)
- 前回の振り返り
- メインテーマの対話
- ネクストアクションの検討
- 今回の振り返り・記録
部下が課題や不安を抱えている場合は、それを最初の話題として取り上げることで、安心感が生まれ、より深い対話へとつなげやすくなります。
4.対話の実施・記録
事前準備が完了したら、スケジュールに沿って1on1を計画的に実施しましょう。
実際の対話では、部下が安心して話せるような雰囲気をつくることがもっとも重要です。上司主導で話を進めるのではなく、聞き手として相づちやうなづきを交えながら、部下の話を聞くこと(傾聴)に徹しましょう。
とくに重要な点は、部下の「できていないこと」ばかりに注目せず、小さな成功や進捗を指摘し、部下と一緒になって喜ぶ姿勢を持つことです。前向きなフィードバックは部下の自信になり、次の目標へのモチベーションにつながります。
また、1on1の対話内容は必ず記録に残し、上司と部下の双方があとから振り返りできるようにしておきましょう。
【具体的な記録内容】
- 部下が語った課題や不安
- 上司のフィードバック内容
- 次回までに取り組むアクション
議事録の作成が負担になっている場合は、対話内容を自動で文字起こしする1on1ツールの活用がおすすめです。
株式会社リーディングマークでは、1on1を仕組み化し、部下の成長をサポートする『ミキワメ マネジメント』を提供しています。
AIがネクストアクションを自動生成するなど、1on1の運用を支援する機能が搭載されています。詳細は以下の資料にまとめていますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
5.次回の計画・継続的な実施
最後は、次回の1on1までのアクションプランを決めます。具体例は以下のとおりです。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
目的 | 具体例 |
---|---|
業務改善 | 資料作成を効率化するため、外部ツールを試用し、次回までに使用感を共有する |
スキルアップ | オンライン研修を受講し、学んだ内容をチームに還元する |
キャリア形成 | 興味のある部署の業務内容を調べ、次回の1on1で相談する |
アクションプランを決めるときは、抽象的な目標ではなく「具体的に何を、いつまでに行うか」を明確にすることが重要です。
目標値が高すぎると、達成できなかったときに部下が自信を失ってしまう可能性があります。そのため、最初は小さな行動目標から設定し、少しずつ高い目標に見直していきましょう。
1on1のコツに関するよくある質問

1on1のコツに関する「よくある質問」について、以下の2点に回答します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1on1で話すべきテーマやネタは?
1on1で話すべきテーマは、業務の進め方や職場の人間関係、個人的な悩みなど、仕事・プライベートに関係なくどのような話題でも構いません。基本的に「部下が話したいこと」をテーマに設定しましょう。
部下は「とくに話題がない」と感じる場合もあるため、事前に「話題リスト」を共有し、その中から選んでもらうなどの工夫が必要です。たとえば、以下のようなテーマが挙げられます。
- 業務の中で感じている課題や改善点
- 自分の強みを活かせた経験
- 今後挑戦したい業務(キャリアの方向性)
- 職場の雰囲気や働きやすさに関する意見
- プライベートとの両立や健康面での不安
部下自身に「話したいこと」を決めてもらうことで、受け身ではなく、主体的な姿勢で1on1に臨むようになります。
以下の記事では、1on1で話すテーマ(ネタ)を網羅的に解説しています。テーマ選定に悩んでいる方は、本記事と合わせて確認してみてください。

1on1でやってはいけないことは?失敗例はある?
1on1のよくある失敗例として挙げられるのは、年に1〜2回行う評価面談と同じように、上司が一方的にフィードバックや評価をする場になってしまうケースです。
本来の1on1では、部下が自分の話したいことを話し、上司が傾聴・共感の姿勢で話を聞ききます。対話を通じて、部下の成長や成果につながるサポートを行うことが、1on1の目的です。
また、以下のような対応も失敗例としてよく見られます。
- 日常的な業務報告や雑談だけで終わらせる
- 上司が一方的に話し続ける
- 「できていないこと」ばかりを指摘する
- 1on1の予定を変更、またはキャンセルする
1on1を有意義な時間にするためには、双方向の対話を意識しつつ、上司は「どのような話でも受け止める(共感する)姿勢」を持つことが大切です。
以下の記事では、1on1が無駄だと感じる理由と対策について詳しく解説しています。1on1を継続させるポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ:部下の性格に合わせた1on1のコツを身につけよう

1on1の効果を高めるためには、テーマ設定やスケジュール調整などの事前準備が重要です。
また、部下の性格に合わせて、対話方法やコミュニケーションの取り方を変えるなど、実践的な工夫も求められます。改めて、1on1を効果的に進めるコツを確認しておきましょう。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
準備 | ・多忙でも1on1の時間を必ず確保する(ルーティン化) ・部下に予定表を共有し、上司中心のスケジュールにする ・1on1は可能な限りオフラインで行う |
実践 | ・気負わずリラックスした気持ちで1on1に臨む ・テーマが決まっていない場合は「最近どう?」から始める ・オープンクエスチョンで話を広げつつ「傾聴」に徹する ・部下と対等な立場で「成長・成果」を喜ぶ ・「本当のありたい姿」を聞き、次のアクションにつなげる |
1on1では、部下が決めたテーマを中心に対話を進め、上司は「傾聴」と「共感」の姿勢を徹底することが大切です。
部下との信頼関係を築くためにも、小さな工夫を取り入れながら、自分なりの「1on1の型」を磨いていきましょう。