「トレードオフ」とは、貿易や流通などで使われる経済学の用語です。「一方を追及するともう一方を犠牲にしなければならない」との概念を表す用語で、ビジネスシーンでも使用されます。本記事では、「トレードオフ」の意味や実例、例文などをご紹介します。「トレードオフ」について詳しく知りたい方は参考にしてください。
トレードオフとは?
「トレードオフ」とは、両立できない関係を表す言葉として使われます。「両立できない関係」とは以下のような状態を指します。
- 「一方を尊重することでもう一方が成り立たなくなる」
- 「何かを得るためには何かを手放さなければならない」
- 「ある目標を達成させるためには何かを犠牲にしなければならない」
具体的には「報酬を多く得るために休日返上で働く」「英語を習得するために寝る時間を削って勉強する」などの状態が当てはまります。
トレードオフの実例
両立が不可能な関係を表すトレードオフの状態は、ビジネスシーンのみならず日常生活にも散見されます。
ビジネスシーンにおける使われ方
ビジネスシーンでは、「高品質と低価格」「需要と在庫」の関係が代表例です。
例①:高品質と低価格
消費者は高品質の商品を好む一方で、低価格を求めます。それを実現すれば、消費者が得し、製造側が損します。商売が成り立たなくなるのです。
また「高性能」な商品を「低コスト」で製造してほしいと依頼するメーカーや上司からの要求も、両立が不可能なトレードオフの例に該当します。「高品質・高性能」でありながら「低価格・低コスト」な商品は基本的に成り立ちません。実際に作ったとしても販売個数は増えますが赤字は解消できないでしょう。
例②:需要と在庫
需要の高い商品は、販売機会を逃さないために在庫を多く抱える必要があります。しかし、実際に売れなければ仕入代金は回収できず、資金繰りに困ります。
また、在庫管理として保管場所の賃貸料や、人件費や手間も余計に必要です。かといって在庫を極端に減らすと、消費者の需要に応えられず、販売機会を失います。
このように「高品質と低価格」「需要と在庫」では、一方を得ることでもう一方が失われた状態になってしまうのです。
日常生活における使われ方
私たちの日常生活のなかにもトレードオフは多く存在します。
例①:「立地が良くて大きな部屋に住みたい。でも家賃は抑えたい」
マンションの家賃は部屋の広さに比例します。また立地条件、築年数などによっても値段は変わります。自分が希望する条件を満たそうとすると、その分家賃が高くなります。広い部屋や立地の良さを満たしたマンションとお金はトレードオフの関係なのです。
例②:「おいしいものをたくさん食べたい。でもダイエットしたい」
食欲とダイエットはトレードオフの関係です。
食事管理をせず好きなものを好きなだけ食べては、ダイエットは成功しません。
食欲を制限し自己管理することで目標に近づくのです。
例③:「タバコをやめたくない。でも健康でいたい」
愛煙家にとって喫煙はストレス軽減や気分転換になります、しかし喫煙は健康に悪影響を及ぼすと言われています。「タバコは吸い続けたい」と「健康でいたい」は両立できない関係といえます。
経済学における使われ方
トレードオフの概念は、経済学のなかでも頻繁に使用されています。代表事例は、「経済成長と自然破壊・環境破壊」「福祉政策強化と税負担の増加」が挙げられます。
例①:経済成長と自然破壊・環境破壊
経済成長を重視しすぎると環境破壊が進み、地球温暖化などを引き起こします。一方、自然保全・環境保全に注力しすぎると、温室効果ガスの排出量など様々な制約を遵守する必要があるため、経済の成長が鈍化する可能性があります。
例②:福祉政策強化と税負担の増加
福祉政策の強化には、増税による財源確保が必要です。一方で増税を避けると、財源の確保が難しくなり、福祉政策を強化することができません。トレードオフの概念通り、一方を尊重することでもう一方が成り立たなくなる両立不可能な関係が起こります。
生物学における使われ方
生物学においても「何かを得るために何かを犠牲にする」というトレードオフの概念は生じます。
例①:ペンギンやダチョウの能力
鳥類には、飛ぶことのできないペンギンやダチョウが存在します。ペンギンは飛ぶ能力と引き換えに泳ぐ能力を、ダチョウは飛ぶ能力の代わりに速く走る能力を身につけています。これもトレードオフです。
例②:洪水耐性と乾燥耐性
最近の研究で、植物の洪水耐性と乾燥耐性はトレードオフであることが証明されました。そのため、地球温暖化に対応するための品種改良では、この2つの耐性関係にお折り合いをつけることが大切だとされています。
トレードオフに関連する用語「機会費用」とは?
関連用語として「機会費用」が挙げられます。「機会費用」とは、「あるものを獲得することで犠牲になった利益」との意味をもつ経済用語です。つまり、何かを選択する際、「実際には見過ごしたほうを、もし選んでいた場合、得られる利益」のことを指します。
例①:仕事と子育て
仕事を諦め子育てに専念する選択をした場合、もし働き続けていたら得られていた賃金が機会費用に当たります。
一方で、子育てより仕事を選択した場合、子育てで得られたであろう幸福感が機会費用に当たります。
例②:休日の過ごし方
休日の過ごし方は人それぞれです。
- 外で元気に友達とサッカーをする
- 蓄積された体の疲れをとるためにゆっくり家で休む
アウトドアの場合、体の疲れを十分にとれないことが機会費用に当たります。一方、家でゆっくり休む場合、運動によりリフレッシュができないことが機会費用です。
このように、機会費用の「費用」は、金銭だけではなく時間や感情などにも当てはめることができます。
トレードオフの関連用語
「トレード」の意味は英語の「trade」と同じで、貿易や物と物・人と人を交換することなどを指します。関連するいくつかの用語を確認しましょう。
トレードオフスライダー
「トレードオフスライダー」とは、プロジェクトにおいて予算、品質、納期、スコープ(要望)の4つの項目のうち、何を優先するかの指標です。
例えば、プロジェクトの4項目のなかで予算が固定の場合は、予算が最優先事項になります。他項目(品質、納期、スコープのどれか)の優先度は下がります。
トレードマーク
人物を特徴づけている箇所を表す言葉として使われます。たとえば、「髪が長い」「真っ白な歯」「いつも白いシャツを着ている」など、外見や物などがトレードマークに該当します。
ビジネスシーンにおける「トレードマーク」とは、登録した団体や企業だけが使用できる「商標」を指します。登録された商標には、トレードマーク(™)や登録商標マーク(®)の記号がついています。
トレードシークレット
「トレードシークレット」は、経営学用語の一つです。企業が機密としている情報を指します。機密情報とは「顧客情報」や「特殊な製法」「新製品の情報」「新技術」「社外秘のノウハウ」などが挙げられます。流出したら企業が損害を被るほどの重要な情報です。
トレードタームズ
「トレードタームズ」は「貿易条件」と呼ばれ、海外から商品を輸入する際にかかわる商取引の国際ルールです。商品の費用負担やリスクを負担する範囲などが定められています。
海外との貿易には国内取引とは異なるルールがあります。当事者同士が自国のルールを主張すると、スムーズな取引ができません。解決策として、国際商業会議所は価格条件などの国際ルールを整え、円滑な取引を促進しているのです。
トレードショー
「トレードショー」は、産業見本市を指す言葉です。トレードショーは各業界が行う新商品やサービスを発表するために行われます。最新情報を発信し、その場で商談できるトレードショーも開催されています。
フェアトレード
「フェアトレード」とは、「公正取引」「公正な貿易」などの意味をもちます。開発途上国で生産の原料・製品を適正価格で継続的に購入し、現地の生産者や労働者の生活水準の改善と自立を目指す貿易の仕組みです。
フェアトレードの原料を使った商品は、コーヒーやワイン、お茶、果物など様々です。これらはスーパーなどで販売され、目にする機会も多くなっています。
トレードオフのまとめ
トレードオフは、「何かを得るためには何かを手放さなければならない」といった両立できない関係を表す言葉です。
ビジネスの世界やプライベートでも選択に迫られるシーンは少なからずあります。選択する際は、それぞれの長所や短所を理解したうえで決定を下すことが求められます。
必要な状況になったら、最適な選択を下しましょう。
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