「セルフモチベーション」という言葉は聞いたことがあるものの、その意味や具体的な方法がわからない人事担当者の方もいるでしょう。
セルフモチベーションとは、自分自身でモチベーションをコントロールする方法や技術のことを指す言葉です。
仕事をするうえで、周囲に左右されず安定した成果を出すためには、高いモチベーションの維持が必要です。
社員が自身でモチベーションを高く保ち続けられれば、仕事に対して主体的に取り組むようになり、他の社員にもいい影響を与えます。
本記事では、セルフモチベーションを身につけるメリットや、モチベーションを高める方法を「社員向け」と「組織向け」に分けて解説しています。
「セルフモチベーションを高める取り組み」の事例も紹介していますので、組織の活性化に向けた施策の検討材料として、ぜひ参考にしてみてください。
セルフモチベーションとは?
セルフモチベーションとは、自分自身でモチベーションをコントロールする方法や技術のことを指します。
セルフモチベーションの実践により、社員一人ひとりの自発的な意欲や意志を通して、仕事の目標達成に向けて前向きなエネルギーを発揮します。
単なる仕事へのやる気だけではなく、社員自身の成長や仕事の達成感にもつながる点も、セルフモチベーションは有効な手段です。
モチベーションを高めるには、セルフモチベーション以外にもさまざまな方法があります。以下の記事では、企業の制度や環境を見直すポイントに焦点をあて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
セルフモチベーションとセルフマネジメントの違い
セルフモチベーションとよく似ている言葉に「セルフマネジメント」があります。
セルフマネジメントには「自己管理」の意味があり、モチベーションに加えて、自分自身の体調や仕事の管理も含めた概念です。
内発的なやる気や情熱を高めるセルフモチベーションに対し、時間やリソースを計画・管理する手法をセルフマネジメントと言います。
セルフモチベーションが重要な理由
セルフモチベーションは、以下のような理由から重要視されており、社員個人の仕事の成果にも直結しています。
- 多様な働き方に対応すべく、社員自らが目標設定して自律的に働く必要があるため
- セルフモチベーションを身につけ、高い意欲を維持して目標達成に近づけるため
- 仕事で発生するストレスを自分で対処し、組織全体の安定性を高めるため
社員一人ひとりがセルフモチベーションを身につけることで、継続的な努力が必要なときや、困難な課題に直面したときに効果を発揮します。
セルフモチベーションを身につけるメリットや効果
セルフモチベーションを身につけることで、以下のようなメリットや効果が得られます。
人事担当者の方は、セルフモチベーションを養うことが社員の能力向上だけではなく、組織の健全な成長にもつながることを理解しておきましょう。
以下より、セルフモチベーションを身につけるメリットを解説していきます。
周囲に影響されずモチベーションを維持できる
セルフモチベーションを身につけることで、周囲の状況に関わらずモチベーションの維持ができます。
社内外のさまざまな要因に左右されず、社員自身でモチベーションを維持することは、業務の効率性と安定性に直結するスキルです。
瞬時の状況変化やプレッシャーに影響されなければ、目標に向かって着実に進む能力が身につき、組織のなかで柔軟かつ迅速な行動ができます。
仕事の成果が安定して評価が高まりやすい
セルフモチベーションによって、安定的に業務をこなし成果を出し続ければ、周囲からの評価も高まりやすいです。
モチベーションの高い社員は、単に業務を行うだけでなく、重要なプロジェクトを完遂すべく積極的に取り組む努力を怠りません。
その結果、困難な課題でもモチベーションを保ちながら挑戦することで、組織の利益にもつながり、成果に対する高い評価が得られます。
安定した業務品質によって評価が高まれば、成果に見合った報酬やキャリアアップの機会も増え、より一層のモチベーションアップが期待できます。
周囲の社員のモチベーションも高まる
モチベーションが高い社員のポジティブな「エネルギー」や「働く姿勢」は、周囲の社員にもいい影響を与えて、職場全体のモチベーションも高まります。
セルフモチベーションを身につけている社員の特徴は、困難な状況にも臆せず、前向きな発言や行動をする点です。
セルフモチベーションは社員個人だけではなく、組織全体にもメリットがあることから、早期にスキルを身につけることが大切です。
【社員向け】セルフモチベーションを高める5つの方法
社員が自身でセルフモチベーションを高めるには、主に以下のような方法があります。
- 明確な目標を決めてゴールをイメージする
- 目標を細分化して小さな成功体験を積み重ねる
- 目標にしている人をロールモデルに設定する
- 失敗した場合の最悪な状況をイメージしておく
- 悩みや不安を抱え込まず他の人に打ち明ける
上記の方法を普段の仕事のなかで実践し、効果が出た方法や自分に合った方法を継続的に行っていきましょう。
以下より、セルフモチベーションを高める方法について解説していきます。
明確な目標を決めてゴールをイメージする
セルフモチベーションを高めるためには、まず明確な目標を設定して、そのゴールを具体的にイメージすることが欠かせません。
組織内での自分の目標は、具体的な数値や期限、行動レベルまで落とし込んで明確にする必要があります。
目標設定する際は「SMARTの法則」にもとづいて、達成可能な目標を決めましょう。
法則 | 概要 |
---|---|
Specific(具体性) | 達成したいことを具体的な数値であらわす |
Measurable(計測可能) | 目標を数値化して達成度を測定する |
Achievable(実現可能) | リソースや時間の制約内で達成可能な目標にする |
Relevant(関連性) | 組織・個人の目標との関連性を持たせる |
Time-bound(期限付き) | 目標の達成期限を設ける |
上記の方法で目標達成を強くイメージすることで、達成したときの喜びや誇りが感じられ、モチベーションを高く保って自発的に行動できます。
目標を細分化して小さな成功体験を積み重ねる
設定した目標を細分化して、小さな目標を達成する「成功体験」を積み重ねることが、セルフモチベーションを高めるうえで重要なプロセスです。
以下のような手順で目標を細分化し、スモールステップで実行してみましょう。
- 大きな目標を小さな目標に細分化する
- 小さな目標の優先順位をつける
- 重要度・緊急度の高いタスクに取り組む
小さな成功体験を積み重ねることで「自分にもできる」といった、自己効力感も高まります。
自己効力感とは?
目標を達成する能力があることを自分で認識し、成功への自信や確信を持っていること。
自己効力感が高まれば、次の目標達成に向けて積極的に行動するようになり、さらにモチベーションが高まる好循環が生まれます。
目標にしている人をロールモデルに設定する
目標にしている上司や同僚をロールモデルに設定することで、セルフモチベーションの効果が高まります。
ロールモデルとなる人物への憧れによって、その人の思考・発言・行動を自分にも取り入れようと考えることから、自分自身のモチベーションも高めやすいです。
ロールモデルから直接学べる機会を作ることで、より具体的な目標設定や行動への動機づけができます。
失敗した場合の最悪な状況をイメージしておく
モチベーションをコントロールするうえで、仕事やプロジェクトで失敗した場合の「最悪な状況」を事前にイメージしておくことが重要です。
目標を決めて仕事に取り組もうとしても、失敗を恐れるあまり行動をためらってしまい、モチベーションや自己効力感が下がる可能性もあります。
下記のように失敗した場合の状況を、目標設定する段階で具体的に想像しておきましょう。
- プロジェクトの納期に間に合わず、上司やメンバーからの信頼を失う
- クライアントから契約を解除され、自社の売上が低下する
失敗したときのイメージによって「失敗を防ぐためにはどうしたらいいか」のように、対処法を考えるキッカケとなり、モチベーションの低下も防げます。
悩みや不安を抱え込まず他の人に打ち明ける
セルフモチベーションを高める方法として、悩みや不安をひとりで抱え込まず、他の人に打ち明けることも重要な取り組みです。
仕事の不安や悩みだけではなく、私生活や家族のことも含めて上司や同僚に打ち明けることで、カタルシス効果によってモチベーションを維持できます。
カタルシス効果とは?
ネガティブな感情やストレスを発散させて、心のゆとりや精神的な安定をもたらす効果のこと。
また、上司や同僚との対話のなかで、悩み解決に向けた糸口や対処法も見つけられ、次の行動が取りやすくなる効果もあります。
【組織向け】社員のモチベーションを高める5つの方法
続いては、組織に向けた「社員のセルフモチベーションを高める方法」を5つご紹介します。
セルフモチベーションを高めるには、社員自身が考え行動することで効果を発揮しますが、上記のような環境づくりは組織主導で行う必要があります。
なお、社員のモチベーションを高めるためには、理論にもとづいた手順での実施や、マネジメント手法の活用が欠かせません。
以下の記事では、モチベーションアップの取り組み事例も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
社員のセルフモチベーションを高める方法について、以下より解説していきます。
組織やチームの目標を明確に設定する
セルフモチベーションを高めるには、社員個人の目標に加えて、組織やチームの目標も明確に決めておくことが重要です。
組織の目標が明確であれば、社員一人ひとりの目標が決めやすいうえに、組織と社員が同じ方向性を持って仕事に取り組めます。
前述の「SMARTの法則」にもとづき数値や期限を設けて、必要人員やリソースを考慮しながら目標を設定しましょう。
1on1ミーティングを実施する
「1on1ミーティング」は、個人間や組織内のコミュニケーションを活発にし、社員一人ひとりのセルフモチベーション向上の効果的な手法です。
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う個別面談のことです。以下の記事では、1on1ミーティングの目的や進め方を詳しく解説していますので、導入時の参考にしてみてください。
上司と部下が直接対話することで、上司は社員個別のニーズや課題に焦点を当て、具体的な方向性を示しながらサポートできます。
1on1ミーティングでは、仕事以外のプライベートなことも気軽に相談できるよう、定期的に場を設けることが重要です。
また、前述したカタルシス効果によって、社員の不安やストレスも軽減できます。
1on1は、上司がメンバーのモチベーションを高める絶好の機会です。
下記を使い分けることで、部下のやりがいを高められます。
- 「共感的な1on1」:個別に話を聞き、受け止めて信頼関係を推進する
- 「指導的な1on1」:部下の仕事状況を一緒に確認し、できているところと伸びしろを把握しながらフィードバックする
ストレングスファインダーで有名なギャラップ社による2019年の調査では、年に数回しかフィードバックしない場合よりも、週に数回フィードバックする場合のほうが、エンゲージメントが2倍から4倍も違うというエビデンスも得られています。
参考:ギャラップ社の調査についての記事
1on1を定期実施し、部下に有意義なフィードバックをする文化の浸透は、社員の生産性を飛躍的に向上すると推測できます。
エンパワーメント(裁量権の付与)を強化する
社員へ裁量権を与える「エンパワーメント強化」によって、社員は仕事を自分ごととして考え主体的に取り組むようになります。
エンパワーメントとは?
「力・権限を与える」ことを意味する言葉。ビジネスにおいては、社員自身の裁量で仕事が進められる環境を提供すること。
エンパワーメント強化で、組織からの期待を感じられる点と、仕事に対する自己決定力を高められる点から、セルフモチベーション向上につながります。
また、目標達成への責任感が生まれ、成果に対する誇りを感じやすくなることもエンパワーメントの効果の一つです。
セルフモチベーションが高まって主体的に行動する社員が増えれば、社内の雰囲気もよくなり仕事の質も高まります。
社員同士で賞賛し合える制度を導入する
社員同士がお互いを認め賞賛し合うことで、組織全体がポジティブな雰囲気になり、社員のモチベーションを高められます。
同じ立場で働く社員から「ありがとう」「今後も一緒に頑張ろう」と認められることで、良好な人間関係を保ち、モチベーションも高まりやすくなります。
なお、ピアボーナスは金銭報酬である必要はなく、モノによる報酬やポイント付与などの取り組みも効果的です。
エンゲージメントサーベイを実施する
エンゲージメントサーベイの実施は、組織の健全性を把握し、社員のモチベーション向上への施策検討に有効な手段です。
エンゲージメントサーベイとは?
社員の組織に対するエンゲージメント(貢献意欲)や、仕事へのモチベーションを調査する手法のこと。
エンゲージメントサーベイはアンケート形式で調査が行われ、個別相談やミーティングでは聞き取りにくい「社員のリアルな声」が収集できます。
調査した情報を集約・数値化し、以下のような項目の把握が可能です。
- 仕事への活力やモチベーション
- 組織への貢献意欲や愛着
- 仕事内容や業務負担
社員のモチベーションの実態を把握・分析することによって、セルフモチベーションを高める施策の検討につなげられます。
以下の記事では、エンゲージメントサーベイを実施する目的や効果を詳しく解説しています。調査に適したツールも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
社員のモチベーション向上に影響する法則
社員のモチベーション向上には、さまざまな法則が影響しますが、今回は「サンクス効果」と「ピグマリオン効果」をピックアップしてご紹介します。
法則 | 概要 |
---|---|
サンクス効果 | 他者からの感謝やポジティブなフィードバックが、モチベーションやパフォーマンスにいい影響を与える効果 |
ピグマリオン効果 | 他者から期待を得ることで、その期待に応えるように行動が変化する効果 |
上記の法則にもとづいて、社員のモチベーションを高める施策や制度を検討していきましょう。
以下より、それぞれの効果を解説していきます。
サンクス効果
サンクス効果とは、社員の「仕事の成果」に対して感謝を伝えることで、モチベーションやパフォーマンスが高まる効果のことです。
社員への感謝は、ただ単に感謝の言葉を伝えるだけではなく、目標達成の努力や貢献に対して、具体的な評価内容を伝えましょう。
以下の記事では、人事評価の概要や評価基準を詳しく解説しています。人事評価の流れも紹介していますので、制度構築の際にぜひ参考にしてみてください。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、上司や同僚など第三者から期待を得ることで、より力を発揮するために行動が変化する効果のことです。
周囲からの期待が高まると、社員はその期待に応えたいと主体的に行動するようになり、仕事のパフォーマンスが向上します。
社員への期待が明確で具体的であるほど、ピグマリオン効果が強く現れ、結果としてモチベーションや生産性の向上につながります。
社員のセルフモチベーションを維持させるコツ
社員のセルフモチベーションを維持させるためには、以下のようなポイントを把握しておくことが重要です。
上記の方法から自社に合った手法やアプローチを実践し、組織全体の生産性向上につなげましょう。
以下より、社員のセルフモチベーションを維持させる方法について、一つずつ解説していきます。
モチベーションの種類や理論を知る
セルフモチベーションを身につけ維持するうえで、社員自身がモチベーションの種類や理論を知っておくことが大切です。
以下の2種類の意味を理解し、モチベーションに関わる要因を明確にしておきましょう。
種類 | 意味 |
---|---|
外発的動機づけ | 評価や報酬を得るために行動すること |
内発的動機づけ | 誇りや喜びのような感情を得るために行動すること |
また、モチベーションの代表的な理論には、以下の3つがあります。
- マズローの欲求階層説
- ハーズバーグの二要因説
- マクレガーのX理論Y理論
マズローの欲求階層説は、人間が持つ欲求を5段階に分類した理論であり「どの欲求を満たせばモチベーションが高まるか」のような、アプローチの検討が可能です。
その他の理論については、以下の記事で詳しく解説しています。モチベーションを高める具体的な方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
モチベーション低下の要因やパターンを知る
社員自身がモチベーション低下の要因やパターンを知っておくことで、問題を早期に発見して適切な対策が打てます。
モチベーションに関わる要因を知るためには、以下のような方法が効果的です。
- 定期的に自己評価と仕事の振り返りをする
- 感情の変化やストレスを感じた出来事を記録する
モチベーション低下の要因がわかれば、モチベーションが上がらなくても自分を責めすぎず、場合によっては割り切って物事を考えられます。
セルフモチベーションの方法をアドバイスする
セルフモチベーションの方法を知らない社員に対して、組織側からアドバイスすることも有効な手段です。
セルフモチベーションを高める方法を伝えることで、社員は自分に合った方法を実践し、モチベーションをコントロールするスキルが身につきます。
前述したエンゲージメントサーベイには、社員の性格や状態を把握して、モチベーション向上のアドバイスが提供されるツールもあります。
『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』では、社員一人ひとりの性格を踏まえたアドバイスが提供され、社員が自律して行動できるようなアプローチが可能です。
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セルフモチベーション向上に取り組む企業事例
ここからは、セルフモチベーション向上に取り組んでいる企業の事例をご紹介します。
事例を通して他の企業から学び、自らの組織に取り入れることで、セルフモチベーションを向上させる手法やアイデアが得られます。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは「自ら主体性を持って決断し、自走できる人材育成」を目指し、以下のような取り組みを行っています。
- 日常的に「抜てき」を行い、小さなことでも期待して仕事を任せる
- 部署や職種ごとに必要な知識・スキルを身につけるための研修を行う
- 自走するためのセルフ・リーダーシップを重視した制度を構築する
上記の取り組みによって、社員が自信を持って成長できる環境が整い、88.6%の社員が「働きがい」を持って仕事をしています。
参考:サイバーエージェントの“自走する”人材育成|株式会社サイバーエージェント
まとめ:セルフモチベーションで「仕事の成果」の安定化を図ろう
今回の記事では、セルフモチベーションの概要や高める方法を解説してきました。
組織の生産性を高めるためには、社員の仕事に対する「モチベーションの維持・向上」が欠かせません。
社員自身でモチベーションをコントロールできるようになれば、困難なプロジェクトでも果敢に挑戦するようになり、組織の発展にも貢献してくれます。
まずは社員に向けてエンゲージメントサーベイを行い、組織状態やモチベーションを可視化して、セルフモチベーションを高める施策を検討してみましょう。
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