社員の離職率低下や生産性向上を目指し、エンゲージメントサーベイの導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
サーベイを活用して、エンゲージメントを高める改善策の検討には、企業の目的に合った「収集したい情報」を盛り込んだ質問項目の選定が重要です。
人事評価や労働条件などの自社が求めている情報を収集することで、課題や問題点が浮き彫りとなり、効果的な改善につなげられます。
本記事では、エンゲージメントサーベイで用いられる主な質問項目について、具体的な質問例と合わせて紹介しています。
質問設計や運用時に気をつけるポイントも解説していますので、エンゲージメントサーベイを実施する際の参考にしてみてください。
そもそもエンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、社員と組織との関わりの深さを数値化して、表面化した課題を改善するために行われる調査のことです。
定期的にサーベイを行うことによって、社員のエンゲージメントや心理状態の変化をタイムリーに確認でき、離職のサインが出ている社員の把握につながります。
エンゲージメントサーベイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。エンゲージメントサーベイの効果や導入の流れをわかりやすく解説しています。
また、エンゲージメントには、大きく分けて2種類に分類され、それぞれの意味や内容は以下のとおりです。
エンゲージメントの種類 | 意味・内容 |
---|---|
従業員エンゲージメント | 「組織のために貢献したい」と感じる意欲をあらわす指標 |
ワークエンゲージメント | 仕事に対して「活力・熱意・没頭」を満たしている度合い・指標 |
「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」は、以下の記事でそれぞれの違いの詳細を解説しています。
エンゲージメントサーベイの主な5つの質問項目・質問例
エンゲージメントサーベイで使われる主な質問項目は、以下の5つが挙げられます。
実際にサーベイの質問を検討するにあたって「どのような情報を収集すればよいのか」とわからない方も多いのではないでしょうか。
以下より、エンゲージメントサーベイの質問項目と質問例を紹介していきますので、自社の目的に合った質問選定の参考にしてみてください。
1.経営・組織との関わり
「経営・組織との関わり」の質問項目では、経営陣との関わり度合いや、組織の目標・ビジョンへの共感度を把握します。質問例は以下のとおりです。
- 組織のビジョンに対して、自分の仕事が貢献していると感じますか?
- 組織の目標についての情報提供に満足していますか?
- 組織の成果に貢献していると感じますか?
- 組織の変化に対する透明性に満足していますか?
- 経営陣が社員の声を聞く機会がありますか?
- 経営陣が社員の意見を聞き、実行に移すことがありますか?
- 経営陣は事業の方向性について適切な意思決定をしていると感じますか?
組織と社員との関わりは、組織運営において欠かせない要素であり、組織への信頼性にも大きく関係します。
組織のビジョンと社員の働く目的との調和は、エンゲージメント向上に寄与する重要な要素の一つです。
2.人事評価・キャリア形成
「人事評価・キャリア形成」の質問項目では、人事評価の公平性やキャリアアップへの期待度・満足度について把握します。質問例は以下のとおりです。
- 自分の仕事に対する評価に満足していますか?
- 上司や同僚は自分の仕事ぶりを認めていると感じますか?
- 昇進の機会について情報提供がありますか?
- 仕事の成果に対して正当な報酬を得ていると感じますか?
- 昇進や昇給についての透明性はありますか?
- キャリア形成に関する計画やサポートが提供されていますか?
- キャリア目標の達成に向けた支援があると感じますか?
人事評価やキャリア形成に関する期待度・満足度を把握することで、人事戦略の改善や社員のモチベーション向上への施策に反映できます。
人事評価について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。具体的な評価制度の策定手順も解説しています。
3.労働条件・待遇
「労働条件・待遇」の質問項目では、仕事とプライベートが両立できる労働環境であるか、休暇制度が充実しているかを把握します。質問例は以下のとおりです。
- 労働時間は柔軟に調整できる環境ですか?
- 休暇制度や休暇取得の環境に満足していますか?
- 給与について満足していますか?
- 福利厚生制度に関する情報提供が充実していますか?
- 労働条件についての透明性はありますか?
- 快適で安全な労働環境だと感じますか?
- 待遇の改善に向けた提案ができますか?
労働環境や労働条件、待遇に関することは、社員のエンゲージメントや満足度に直結するため、課題や問題点を把握してスピーディーな改善が重要です。
4.仕事に対する熱意・誇り
「仕事に対する熱意・誇り」の質問項目では「どれだけ仕事に対して熱意を持ち、組織貢献への誇りを感じているか」を把握します。質問例は以下のとおりです。
- 自身の仕事に対する熱意をどのくらい持っていますか?
- 仕事で成果を挙げることに対して、誇りを感じますか?
- 仕事に対する意欲を高めるためのサポートはありますか?
- 仕事への達成感はありますか?
- 仕事への情熱を維持するための環境が整っていますか?
- 目標達成に向けたサポートが提供されていますか?
- 自分の会社を友人や知人に勧めたいと思いますか?
仕事への熱意や誇りを持っている社員は「自分の仕事がどのように組織に貢献しているのか」を認識し、モチベーションを高く維持して働く傾向があります。
そのため、定期的にサーベイを行い、社員の意欲低下やコンディション変化をタイムリーに把握して、社員の情熱を維持するための対策検討が重要です。
5.人間関係・コミュニケーション
「人間関係・コミュニケーション」の質問項目では、上司とのコミュニケーションやチーム連携など、尊重し合う人間関係であるかを把握します。質問例は以下のとおりです。
- 上司とのコミュニケーションで意見を自由に述べられますか?
- 社員同士の連携が円滑であり、協力的ですか?
- チーム内のコミュニケーションは活発に行われていますか?
- 上司や同僚との関係に満足していますか?
- チーム内のコミュニケーションを図る取り組みがありますか?
- 社員同士で協力するプロジェクトへの参加機会がありますか?
- コミュニケーションの改善に向けた提案ができますか?
良好な人間関係によって、コミュニケーションが活発に行われて、個人の仕事やプロジェクトがスムーズに進行します。
チーム内の連携が強化されることで、社員一人ひとりが主体的に行動し、組織全体の生産性向上も期待できます。
サーベイツール『ミキワメ ウェルビーイング』の質問項目例
ここからは、サーベイツールの一つである『ミキワメ ウェルビーイング』の質問例を紹介します。
エンゲージメントサーベイは、自社の独自システムやアンケートを使っても実施できますが、データの収集・分析に時間と労力がかかってしまいます。
効率的かつ効果的な調査を行うために、サーベイツールの導入がおすすめです。
エンゲージメントサーベイに適した10個のツールについて、以下の記事で紹介しています。自社の目的や組織運営に合ったツール選びの参考にしてみてください。
以下より『ミキワメ ウェルビーイング』の質問例を質問項目ごとに紹介していきます。
経営・組織との関わり
人事評価・キャリア形成
労働条件・待遇
仕事に対する熱意・誇り
人間関係・コミュニケーション
『ミキワメ ウェルビーイング』は、エンゲージメント以外にも心理状態やコンディションに関する質問もあるため、休職・離職の傾向を察知して、社員一人ひとりの性格を考慮したケアが行えます。
『ミキワメ ウェルビーイング』の詳しい機能や特徴を知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。導入から活用までの流れもわかりやすく解説しています。
エンゲージメントサーベイの参考となる調査方法・質問例
エンゲージメントサーベイの質問を検討する際に、参考となる調査方法を3つ紹介します。
さまざまな調査方法を参考にすることで、社員のエンゲージメントをあらゆる側面から評価でき、より効果的な改善策が検討できるでしょう。
以下より、それぞれの調査方法とその質問例を解説していきます。
eNPS(他者への推奨度)
eNPS(employee Net Promoter Score)とは、自分が働いている会社を「他者にどのくらい推奨したいか」を示す指標のことです。
基本的な質問構成は「推奨度」を測定する質問に加え、組織に対する満足度や貢献意欲に関する質問もあります。質問例は以下のとおりです。
質問の種類 | 質問例 |
---|---|
推奨度の質問 | 自分が働いている会社について、どのくらい親しい友人や知人に紹介したいですか? |
その他の質問 | ・会社の勤務時間に満足していますか? ・仕事とプライベートのバランスを取りやすい環境ですか? ・仕事に熱意を持って取り組んでいますか? ・あなたの成長に対して上司はサポートをしていますか? ・あなたの意見やアイデアは尊重されていますか? ・会社の目標やビジョンに共感して働いていますか? ・今後、会社が成長していくと感じていますか? |
eNPSは単なる満足度ではなく、他者に推奨する視点で自分の会社を評価するため、より正確で正直な回答が得られやすい傾向です。
以下の記事では、eNPSの意味や計算方法をわかりやすく解説しています。eNPSを高める方法や調査手順も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q12(12の質問)|ギャラップ社
エンゲージメントサーベイの参考となる調査方法の一つに、アメリカ調査会社のギャラップ社が開発した「Q12(キュートゥエルブ)」があります。
「Q12(キュートゥエルブ)」とは?
ギャラップ社が開発した、従業員のエンゲージメントを評価するアンケートツールです。
Q12は、従業員エンゲージメントを長年研究してきたギャラップ社が導き出した、以下の12個の質問で構成されています。
- 私は仕事のうえで、自分が何を期待されているかがわかっている
- 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている
- 私は仕事をするうえで、自分のもっとも得意なことをする機会が毎日ある
- この1週間で、よい仕事をしていることを褒められたり、認められたりした
- 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる
- 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる
- 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる
- 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる
- 私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる
- 仕事上で最高の友人と呼べる人がいるこの半年の間に、職場の誰かが
- 私の仕事の成長度合いについて話してくれたことがある
- 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った
このQ12を一般的な質問項目に当てはめてみると、以下のように分類されます。
質問項目 | 質問No. |
---|---|
経営・組織との関わり | Q7、Q8 |
人事評価・キャリア形成 | Q1、Q4、Q6、Q12 |
労働条件・待遇 | Q2 |
仕事に対する熱意・誇り | Q3、Q9 |
人間関係・コミュニケーション | Q5、Q10、Q11 |
ギャラップ社では、Q12を基本としたエンゲージメントサーベイツールも提供しているため、自社への導入によって、調査内容の分析や各業界との比較が効率的に行えるでしょう。
経済産業省が提示している質問例
経済産業省が主催した「経営力強化に向けた人材マネジメント研究会」において、エンゲージメントサーベイの質問例が公開されています。
頻度が少ない「エンゲージメントサーベイ(センサス)」と、頻度が多い「パルスサーベイ」に大別されており、それぞれの質問例は以下のとおりです。
サーベイの種類 | 質問例 |
---|---|
エンゲージメントサーベイ | ・私は、自分の会社全体としての目的 ・目標・戦路をよく理解できている ・経営陣は、事業の方向性について健全な意思決定をしている ・自分の会社はよい職場だと他の人にも勧めたい ・自分の会社で動くことに誇りを持っている ・自分の仕事について、給与や福利厚生など公正に報酬を得ていると思う |
パルスサーベイ | ・今日一日を振り返ってどんな気分ですか? ・先週やり遂げた仕事を誇りに思いますか? ・今週、上司はあなたをサポートしてくれましたか? ・あなたの上司は、あなたの話を聞いていますか? ・あなたの職場では、自社の掲げる行動指針(バリュー)が体現されたと思いますか? ・いまの職場に満足していますか? |
参考:企業の戦略的人事機能の強化に関する調査(47ページ)|経済産業省
エンゲージメントサーベイのなかでも、実施頻度が多いものはパルスサーベイにも該当します。それぞれのサーベイの特徴や質問例を参考にして、自社の目的に合った質問設計をしてみましょう。
エンゲージメントサーベイの質問設計・運用時のポイント
エンゲージメントサーベイの質問設計時や、実際に運用する際に気をつけるポイントは以下の5つです。
エンゲージメントサーベイを行う際は、回答する社員のことを考え、負担にならない頻度や回答しやすい質問の検討が重要です。
以下より、エンゲージメントサーベイの質問設計と運用のポイントを解説していきます。
シンプルでわかりやすい質問文にする
エンゲージメントサーベイで使用する質問は、回答する社員が容易に理解できるように、シンプルかつわかりやすい質問文にしましょう。
「わかりやすい質問」と「わかりにくい質問」の例を紹介します。
【わかりやすい質問】 | 組織のビジョンについて理解していますか? |
【わかりにくい質問】 | 組織の戦略的ビジョンについて洞察し、どの程度理解していますか? |
抽象的な表現や複数の質問が一つになっているなどの「わかりにくい質問」は、回答者によって解釈の相違や回答の迷いが生じてしまい、正確な情報が収集できません。
どの回答者でも同じ解釈ができるように、シンプルな質問文を検討しましょう。
回答の負担にならない質問数を設定する
エンゲージメントサーベイの質問数は、回答者の負担にならない程度の多さに設定しましょう。
質問数が多すぎると回答に時間がかかり、日常業務の支障となるため、社員が負担を感じてしまいます。
逆に質問数が少なすぎると、収集したい情報が手に入らず、課題や問題の発見が遅れてしまい、適切な対処ができなくなることも考えられるでしょう。
社員に負担をかけず効果的に運用するために、一度にすべての情報を収集しようとせず、いま必要な情報だけに絞った質問数にすることが重要です。
目的に沿った質問項目を選定する
エンゲージメントサーベイを行う際は、あらかじめ調査目的や改善目標を決めたうえで、質問項目を選定するようにしましょう。
たとえば、調査目的が「社員の満足度向上・チームの連携強化」だった場合、以下のような質問が効果的です。
- あなたは現在の職場環境に満足していますか?
- あなたのチームでのコミュニケーションは円滑ですか?
- あなたの意見や提案が職場で評価されていると感じますか?
サーベイを行う際は、事前に目的や実施時期を社内で共有することで、社員がサーベイの目的を理解して積極的に参加してくれるでしょう。
定期的にサーベイを実施する
一度のサーベイでは、組織や社員が抱えているすべての課題を把握できるわけではないため、定期的かつ継続的にサーベイを行うことが重要です。
年に1〜2回程度のサーベイだけでは、社員が「いま」感じている不満や要望を聞くための機会損失になります。
週1回や月1回といった高頻度のサーベイを行うことで、社員の心理状態の変化や社内のタイムリーな情報が入手できます。
調査結果を共有・フィードバックする
エンゲージメントサーベイの調査結果は社内で共有し、回答した社員に対してフィードバックすることが重要です。
社員が調査結果を認識することで、組織の現状把握と課題に対する当事者意識を持つようになり、改善に向けた行動も積極的になります。
サーベイを実施するだけが目的にならないためにも、調査結果を社内で共有して、課題の発見と改善策の検討をスピーディーに行いましょう。
エンゲージメントサーベイは無駄?効果的な活用方法
エンゲージメントサーベイが無駄だと言われる主な理由は、調査した結果が改善に活かされておらず、組織の状態や環境が変わっていないためです。
それ以外にも無駄だと言われる原因はいくつかあり、以下の記事で詳しく解説していますので確認してみてください。
以下のようなポイントを抑えることで、エンゲージメントサーベイを効果的に活用できるでしょう。
- サーベイの目的を事前に社員に伝えて理解を得る
- 社員の意見・ニーズを取り入れた改善策にする
- 社員の性格を考慮した質問項目にする
社員が満足する改善を行うことで、組織全体のエンゲージメントが高まり、離職リスクの低下にもつながります。
以下の記事では、エンゲージメントを高めるメリットについて詳しく解説しています。具体的なエンゲージメント向上施策も紹介していますので、施策を検討する際の参考にしてみてください。
まとめ:エンゲージメントサーベイは目的に合った質問項目を設定しよう
今回の記事では、エンゲージメントサーベイの質問項目と質問例を中心に解説してきました。
サーベイを効果的に活用するために、目的に合った質問項目を選定し、定期的にサーベイを実施することで、あらゆる側面から課題の把握ができます。
また、サーベイツールの導入によって、社員の性格や心理状態に応じた質問が行えるため、より正確な情報が収集できるでしょう。
人事担当者の方は、本記事の質問項目や質問例を参考にして、エンゲージメントサーベイを組織改善のために有効活用してみてください。
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