仕事をしていると、上司や経営陣が「リスクヘッジ」という言葉を使うのを耳にするかもしれません。最近は、新聞やビジネス誌でもリスクヘッジが使われていますが、具体的にどのような意味なのか、気になる人も多いと思います。本記事では、このリスクヘッジについて、意味や具体的な方法、活用ポイントなどを詳細に解説していきます。リスクヘッジについて知りたい方は、ぜひ一読してみてください。
リスクヘッジとは
リスクヘッジとは、「将来に起こり得るリスクを予測して、そのリスクを減らす・回避すること」です。本来リスクという言葉は「不確実性」を表す言葉です。「リスクをとって取引する」といった具合に、前向きな意味で使われることもあります。
「リスク」は、ネガティブな出来事を指すケースが多いです。
「ヘッジ」は日本語で「防止策」という意味です。「リスクヘッジ=危険防止策」と訳してもよいでしょう。
リスクヘッジを使った例文
実際にどのように使うのか、例文を使って確認していきましょう。
リスクヘッジをする
リスクに対応する際に使用します。
「リスクヘッジを取る」「リスクヘッジする」とも言います。
例文:「リスクヘッジをすることが、損失を抑える上で重要だ。」
リスクヘッジが甘い
リスクヘッジの対応が不足しているという意味です。
同様の意味で「リスクヘッジが不十分」「リスクヘッジができてない」といった表現もあります。リスクヘッジが甘いと指摘されたら、リスクヘッジの内容を全面的に見直す必要があります。
例文:「リスクヘッジが甘いと、赤字になりかねない。」
リスクヘッジを図る
「リスクヘッジをする」と混同しやすいですが、「リスクヘッジを図る」という表現の方が、「これから対策する、準備する」という未来的な意味合いが強くなります。
例文:「上司から、リスクヘッジを図るよう指示された。」
リスクヘッジの手順
リスクヘッジの進め方は下記の流れです。
リスクの確認
まずは生じ得るリスクの確認です。複数人で確認し、多様な視点でチェックしましょう。リスクを洗い出したら、要素別に分けて整理してまとめていきます。
リスク分析・順位付け
まとめたリスクを分析して、対処する優先順位を付けていきます。すべてのリスクを同等に扱うことは、現実的に困難です。取捨選択し、効率的にリスク対処できる体制を整備していきます。
リスクヘッジを実行する
リスクの順位付けが完了したら、リスクヘッジを実行です。いつ・どのタイミングで行うか、具体的に決めることが成功の鍵です。
リスクヘッジと混同しやすい用語
リスクヘッジと混同しやすい用語を解説します。
トラブル対応
「トラブル対応」は文字通り「起きたトラブルの対処」を意味します。実際に起ったトラブルの対応はリスクヘッジとは言いません。
リスクテイク
リスクテイクとは「リスクの危険性を理解した上で行動する」という、リスクを前向きに受け入れる意味が込められています。投資の世界では「ハイリスク・ハイリターン」を受入れることを指します。
リスクヘッジは「リスクを避けるための行動」ですので、リスクテイクとは対義語です。誤用しないよう注意してください。
参考:リスクテーク-ウェブリオ
リスクマネジメント
リスクマネジメントとは「企業活動で生じる各種リスクに対して、日常的に対策をし、トラブル発生時も迅速な対応措置で影響を最小限に抑えること」です。トラブルの対応に失敗すると、世間の反発などで企業の存続が危うくなることもあるため、リスクマネジメントがなされます。
例えば不祥事事件が起こると、企業側はすぐに謝罪会見を開きます。これはほぼマニュアル化されています。被害を最小限に抑えるため、会社トップが最初に謝るのです。
このように、リスクマネジメントは現在の企業に必要不可欠なものとなっています。
様々なリスクヘッジの実例
シーンにあわせたリスクヘッジを紹介します。
資産運用でのリスクヘッジ
例えば2021年の夏は、新型コロナウイルスの感染拡大や、米中の経済成長の警戒感、アフガニスタンの政権崩壊などのニュースを受け、投資家の間でリスクヘッジの強化がなされつつありました。為替トレーダーは、新型コロナウイルス感染抑制目的の厳しい制限が課されるニュージーランドから手を引き、安全な投資先に乗り換えました。
これは、投資家が、世界情勢を鑑みてリスクヘッジをした事例です。
参考:ウォール街、リスクヘッジの強化に拍車-デルタ株や米中の減速を懸念
ビジネスでのリスクヘッジ
外国との取引時にフォワード取引(先物取引)を使うのも立派なリスクヘッジです。
フォワード取引とは、将来の特定日に設定した条件で受け渡しを行うものです。例えば通常取引なら、現在1ドル100円なのに3ヶ月後に1ドル120円の円安になる場合、輸入業は損してしまいます。フォワード取引は、前もって売買の価格や数量の約束だけ行い、約束日が来た時点で売買を行います。これによって、価格変動リスクを回避することができます。
参考:先物取引とは-コトバンク
日常でのリスクヘッジ
日常にもリスクは潜んでいます。例えば自然災害や事故、病気です。
火災保険や生命保険の加入は「もしものためのリスクヘッジ」にあたります。
他にも不景気による収入減や失業などです。急に首を切られても困らないように、
最近は副業や週末起業をする人が増えています。
ビジネス用語としてのリスクヘッジ
ビジネス用語として「リスクヘッジ」を利用する際、下記の意味で利用されます。
アクシデントへの対応
ビジネスシーンでは、「アクシデントへの対応」という意味が強いです。急な予定変更や仕様変更、生産トラブルなどのアクシデントに迅速に対処できるよう、準備しておくことも「リスクヘッジ」なのです。
危険の予測
「危険の予測」という意味でリスクヘッジが使用されることもあります。例えば「契約にあたって、リスクヘッジをまとめて欲しい」と言われた場合、このリスクヘッジは「危険の予測」という意味が含まれます。
リスクヘッジを行うポイント
ビジネスパーソンにとって、業務上リスクヘッジを行うことは非常に重要です。あらゆるリスクを踏まえて業務に取り組むことで、トラブルに対処しやすくなります。
リスクヘッジを行う際は、下記のポイントを押さえましょう。
論理的に考える
物事を論理的に考えることは、リスクヘッジの基本です。因果関係を明確にし、「原因」と「結果」の関連性を正しく分析しましょう。合理的にまとめること大切で、感情的になるのはNGです。「きっとこれが原因に違いない」「なんとなくそんな気がする」など、具体的な根拠がなく論理を飛躍させてはいけません。常に論理性を意識して、因果関係を明らかにしましょう。
多角的に思考する
一つの見方に凝り固まってしまうと、リスクを見逃してしまう可能性があります。多角的な思考によって、先入観・固定観念を取り払って考えることができます。
そのためには周囲の意見に耳を傾けることが肝要です。あえて上司や同僚に意見を求め、自分とは異なる考え方に触れましょう。
振り返りを行う
業務の振り返りも、リスクヘッジ能力を高める上で大切です。どうしても1回の成功体験が記憶に強く残りがちですが、成功体験を過信すると適切なリスクヘッジができなくなるので要注意です。定期的な振り返りを行い、常に柔軟に思考する習慣を付けましょう。
リスクヘッジ能力が高い人材を育成するポイント
下記のポイントを押さえて指導することが有効です。
様々な仕事を任せてみる
部下に様々な仕事を任せることで、業務全体の流れを把握させることができます。業務の全体像が見えれば、自分が取り組んでいる業務以外にも注意を払えるため、視野を広げることが可能です。新入社員に対して、業務を細かく割り振ってしまう企業が多いですが、あえて幅広い業務経験を積ませることが、リスクヘッジ能力の向上に繋がります。
評価・フィードバックを行う
部下がリスクヘッジを行えているか否か、評価・フィードバックを行いましょう。部下自信、評価・フィードバックを受けることで視野を広げることができます。主観では気付けない点も多いです。評価・フィードバックの経過を確認すれば、部下の成長も実感しやすくなります。
見本となる先輩社員と仕事をさせる
リスクヘッジ能力の高い先輩社員と一緒に仕事をさせることで、肌感覚でリスクヘッジのポイントを把握しやすくなります。リスクヘッジをどのように行っているか、目で見て確認することが可能です。先輩社員にとっても、部下を教育する機会を得て、新たな知見を得ることができます。
本人に合う方法で落とし込む
得意不得意は様々なので、本人に合う方法でリスクヘッジに必要な能力を養いましょう。
原因と結果の因果関係を考えるところから始める場合、マインドマップや関係図での図式化がおすすめです。
他にも、ニュースになるリスクヘッジについて自分なりの意見を発表させるなどのアウトプットも良いでしょう。
日常生活でもリスクヘッジは活用できる
リスクヘッジはビジネスシーンのみならず、日常生活でも活用することが可能です。
たとえば、老後の生活に備えて個人年金を始めたり、病気になった際の治療費を確保するために医療保険に加入するといったリスクヘッジが挙げられます。
日常生活において、いつ自分に危険が及ぶか正確に予測することはできません。人生そのものが、一定のリスクを常に抱えているといってもよいでしょう。多様なリスクに対応していくためにリスクヘッジを行うことは、人生を充実させるために非常に重要です。
まとめ
リスクヘッジを行うことで、将来起こり得るリスクを減らす・回避することが可能になります。リスクの内容を確認したり、分析・順位付けを行うことがリスクヘッジの第一歩です。組織単位のみならず、個人でもリスクヘッジを意識することで、仕事の成果を高めることができます。本記事で解説した内容を参考にしてもらい、リスクヘッジを実行していきましょう。
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