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ドミナント戦略とは?メリットやデメリット、実施する際のポイントを紹介

ドミナント戦略とは、特定のエリアに同じ看板を持つ店舗を集中出店し、対象エリアに店舗を普及させる戦略です。ドミナント戦略をとることで、競合他社は対象エリアに参入しにくくなるため、安定的な利益が期待できるといわれています。

本記事では、ドミナント戦略の概要を紹介したうえで、メリットやデメリット、実施する際のポイントを解説します。

ドミナント戦略とは

「ドミナント(dominant)」には、「支配的な」や「最も有力な」といった意味があります。ドミナント戦略では、エリア内に同じ看板を持つ店舗を集中出店し、同業他社が入り込む余地をなくします。つまり、対象地域を自社のチェーンストアで支配しようと試みる戦略です。

ドミナント戦略が成功すれば、対象エリアのシェアを独占できます。ただし、特定のエリアに自社のチェーンストアを集中的に出店すると、一極集中型の店舗展開に見られるデメリットが生じることもあるため、注意が必要です。

ドミナント戦略とランチェスター戦略

ドミナント戦略と類似する戦略として、ランチェスター戦略があります。ランチェスター戦略は、F・W・ランチェスターが提唱した戦略で、マーケティング理論のひとつとしても有名です。

ランチェスター戦略では、弱者が強者、あるいは強者が弱者に勝つための戦略を明らかにしています。鍵となるのは以下の3つの戦略です。

  • シェアトップを狙う
  • 差別化を図る
  • リソースを集中させる

弱者が強者に勝つためには、規模の小さな市場への戦力集中がポイントとみなされています。

ドミナント戦略のメリット

ドミナント戦略を導入することで、以下の5つのメリットが得られます。

  • 独占利益を獲得できる
  • 地域カラーに合わせた販売促進を展開できる
  • 経営資源の効果的活用
  • コスト削減
  • 地域に浸透しやすい

それぞれ詳しく説明していきます。

メリット1:独占利益を獲得できる

ニッセイ基礎研究所の「チェーンストアにおけるドミナント出店戦略の経済分析」によると、高いシェアがあれば独占権を利用した価格設定が図れます。

同業他社が参入しにくい環境を作り出すドミナント戦略では、自社で対象地域の商品価格を設定できるケースもあります。
値下げ競争のないなかで、自社・顧客の両方が納得の価格設定を検討できる点が、ドミナント戦略のメリットのひとつです。

メリット2:地域カラーに合わせた販売促進を展開できる

地域によって消費者が求めているものや趣向、ニーズは異なります。例えば、関東と関西では味の好みが異なり、九州と東北では気温差も大きいでしょう。

全国チェーン店の場合、全店舗共通の広告宣伝を一斉に行うことで、知名度を全国的に高める方法があります。ただし、全体へ向けた宣伝となるため、地域によっては宣伝効果が薄いケースもあるでしょう。

各地域の特徴に合わせた宣伝を展開することで、対象地域の消費者の心を掴みやすくなります。ひとつのエリアに複数店舗を展開するドミナント戦略では、地域に合った宣伝を効率的かつ低予算で行うことが可能です。

メリット3:経営資源の効果的活用

フランチャイズ経営では、店舗管理や物流の最適化が重要です。展開地域を拡大しすぎると、店舗間の移動に時間がかかり、スムーズな巡回や物流業務が図れない恐れがあります。

一方、ドミナント戦略では店舗間の距離が近いため、配送や仕入れ業務を少ない負担で実行でき、物流にかかる時間の短縮化が可能です。

また、ひとつのエリアに集中出店させるドミナント戦略では、他店舗へのサポートに出向きやすいため、混雑度に合わせた柔軟な対応が実現できます。ほかにも、距離の近さから店舗間で在庫を調整しやすいため、在庫切れの際にも素早い対応が可能です。

メリット4:コスト削減

フランチャイズ形式で進出地域を拡大する場合、商品の配送時間やコストの増加がネックです。エリアを一部に絞ったドミナント戦略であれば、輸送距離も短く、費用を最小限に抑えられます。

地域が限定されていることから、広告宣伝費の削減も期待できるでしょう。特定の地域に対して宣伝すればよいため、余計なコストが生じにくく、費用対効果の高い宣伝活動が実施できます。

メリット5:地域に浸透しやすい

人は何度も接触した対象に対して、好感度を高めていく傾向にあります。この現象は心理学で、「単純接触効果」と呼ばれるものです。

エリアを絞って出店するドミナント戦略では、店舗や看板が地域住民の目に触れやすいため、単純接触効果が期待できます。店舗への好感度を無意識に高めてもらえれば、地域での認知度も向上し、事業展開がスムーズに運ぶことでしょう。

ドミナント戦略のデメリット

メリットの多いドミナント戦略ではあるものの、導入にあたってはデメリットにも目を向けておく必要があります。
ドミナント戦略の主なデメリットは、以下の3点です。

  • 災害や人口減少のリスクが高い
  • カニバリゼーションが発生しやすい
  • 地域環境の変化による影響を受けやすい

それぞれ詳しく説明していきます。

デメリット1:災害や人口減少のリスクが高い

ドミナント戦略は、災害や人口減少に弱いといわれています。例えば、集中出店している地域で地震が起きた場合、全店舗で損害が発生したり、営業停止に追い込まれたりするケースも考えられるでしょう。

また、地方の若者は、職や娯楽を求めて大都市圏へ移動します。そのため、若者を対象にした店舗を出店したものの、人口減少により対象地域のターゲット層が少なくなる可能性もゼロではありません。

集中出店することで効率化や利益独占を図れるドミナント戦略ですが、災害や人口減少の影響を受けやすい点がデメリットといえます。

デメリット2:カニバリゼーションが発生しやすい

カニバリゼーションには「共食い」という意味があります。同じ会社の店舗がエリア内で顧客を奪い合い、カニバリゼーションを引き起こすケースも、珍しくありません。

フランチャイズチェーン店の場合、利益の一部をロイヤリティとして本部へ支払いますが、残りは支店の取り分です。同じ看板を掲げる店でも各店舗がライバル関係にあることから、ドミナント戦略によってカニバリゼーションが発生しやすくなります。

デメリット3:地域環境の変化による影響を受けやすい

集中出店を図るドミナント戦略では、地域環境の変化に弱いデメリットがあります。
例えば、エリア内に巨大ショッピングモールや競合他社の店舗などが進出してきた際、顧客が一気に他社へ流れてしまう可能性も考えられるでしょう。

ひとつのエリアに集中して店舗を出店している場合、地域環境の変化によって需要が下がると、すべての店舗に影響が及びます。結果として、一部店舗の撤退、もしくは全店舗の撤退となってしまうケースも見受けられます。

ドミナント戦略を行うポイント

ドミナント戦略で成功するためには、押さえておきたい以下の3つのポイントがあります。

  • 地域特性の把握
  • 地域人口の調査
  • 競合調査

それぞれ詳しくみていきましょう。

ポイント1:地域特性の把握

ドミナント戦略の成功には、出店予定の地域に関する調査が欠かせません。地域の特性を理解せず集中出店を試み、実施後に想定外の困難に直面する事態は避けたいものです。

巨大ショッピングモールがある地域は、住民の多くがショッピングモールを活用している可能性があります。「人口が多いから顧客獲得も容易だろう」と楽観視して地域に参入してみたところ、ショッピングモールとの顧客の取り合いに苦戦するケースも少なくありません。

また、飲食チェーン店を出店する場合、「飲食店が少ないから出店の余地があるな」と安易に考えるのは危険です。外食文化が地域になかったり、提供料理を好むターゲット層が少なかったりする可能性も考えられます。

ポイント2:地域人口の調査

ドミナント戦略で狙うべきエリアは、人口が長期的に安定している地域、もしくは人口増加が見込まれる地域です。

少子化の現在、人口が増加傾向にある地域は限られています。採算が取れる数のターゲット層が存在するか調査したうえで、ドミナント戦略を実施していきましょう。

ポイント3:競合調査

先に同業他社がドミナント戦略を実施しているエリアでは、参入しても激しい競争に巻き込まれることになり、期待された成果を得るのは難しいでしょう。
ドミナント戦略を実施する前には、徹底した競合調査を実施し、競合の規模やシェアについて確認しておくことが重要です。

競合の存在しない地域の場合、そのエリアでは需要がないサービスの可能性もあるため、ご注意ください。

ドミナント戦略の成功事例

ドミナント戦略は、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、カフェといった店舗の展開に適している戦略です。

最後に、ドミナント戦略の実施に成功した以下の2社の事例を紹介します。

  • ウォルマート
  • セブン‐イレブン・ジャパン

ウォルマート

ウォルマートはアメリカ最大手のスーパーマーケットチェーンです。ドミナント戦略を軸に出店を進め、成功を収めた企業のひとつといえます。

創業当初のウォルマートは、生活必需品を低価格で販売する店として注目されていました。購入頻度が少ない商品も低価格で取り扱った結果、お得感から顧客から高い支持を集めていきました。

1960年代後半、ウォルマートはドミナント戦略を導入し、物流センターを中心に集中出店を試みます。人口が少ないエリアに集中出店したことで、発注管理や配送にかかるコスト削減に成功し、地域ナンバーワンのスーパーマーケットにまで成長できました。

セブン‐イレブン・ジャパン

ドミナント戦略を実行している日本の代表的企業として、セブン‐イレブン・ジャパンがあります。同社では店舗を集中し、エリア内に工場を作ることで配送時間の短縮化や、生鮮食品の品質保持を実現しました。

ドミナント戦略が功を奏し、2018年に出店数2万店舗、そして2020年に世界で7万店舗を展開する世界トップクラスのチェーン店へと成長を遂げました。

まとめ

ドミナント戦略とは、特定の地域に集中して出店する経営戦略です。

ドミナント戦略を活用すれば、対象地域で独占的な利益獲得を図れるだけでなく、宣伝費用や運送コストの削減が期待できます。
ドミナント戦略の実施の際には、同業他社の動向や地域特性の事前調査が重要です。同業他社や地域に関する調査を怠ると、出店後に想定外の問題に直面する可能性があるため、ご注意ください。

ドミナント戦略の特徴を深く理解したうえで、自社の経営戦略に活かせるか検討してみましょう。

参考:
ニッセイ基礎研究所|チェーンストアにおけるドミナント出店戦略の経済分析
セブン-イレブン・ジャパン|これまでの歩み

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