- メンター制度の基本と、OJTなど他の制度との違い
- 「企業」「メンター」「メンティ」にとってのメリット・デメリット
- 導入時にありがちな失敗と、成功させるためのポイント
- 適性検査を活用した効果的なメンター・メンティの組み合わせ方
メンター制度は、社員の離職防止やキャリア支援を目的に多くの企業で導入されています。
一方で、「失敗例」や「いらない」といった否定的な意見も多く見られます。とくに、メンターとメンティにおける組み合わせのミスマッチは、制度がうまく機能しない大きな原因のひとつです。
本記事では、メンター制度の導入を検討している企業担当者に向けて、「企業」「メンター」「メンティ」それぞれの視点でのメリット・デメリットと、メンターを選ぶ際のポイントを解説します。
これにより、メンター制度をただ導入するだけでなく、効果的に運用することが可能になります。社員の定着や育成、さらには組織全体の活性化にぜひお役立てください。

メンター制度とは

メンター制度は、社員の定着や育成を支える重要な人材開発施策のひとつです。
しかし、制度の目的や内容を十分に理解しないまま導入すると、「形骸化している」「思うような効果が出ない」といった課題を生じることがあります。
ここでは、メンター制度の基本的な仕組みや特徴を、以下の視点から解説します。
制度における全体像の正しい理解が、導入・運用の成功につながる第一歩です。詳しく見ていきましょう。
メンター/メンティ/メンタリングの定義
メンター制度を正しく運用するには、制度を構成する「メンター」「メンティ」「メンタリング」の意味と関係性の理解が欠かせません。
これらの言葉はよく使われますが、具体的に「誰が、何を、どこまで担うのか」が曖昧なまま導入されることもあります。
ここでは、各用語の一般的な定義とともに、組織での役割の違いという視点で見ていきましょう。
※以下の表は右にスクロールできます
用語 | 定義・意味 | 組織での役割・特徴 |
メンター | 支援者・助言者。信頼関係をもとにサポートする存在。 | 社員定着・女性活躍・リーダー育成などを目的に任命される。 |
メンティ | メンターの支援を受ける側。新入社員や若手社員が対象。 | 職場適応やキャリア形成の支援を受け、自身の成長につなげる。 |
メンタリング | メンターがメンティに行う支援全般。対話を通じた成長支援。 | 実務だけでなく、人生・価値観・人間関係を含む幅広いテーマが対象となる。 |
参考:日本メンター協会|メンター/メンタリング/メンター制度とは ~詳細にわかりやすく解説します!
メンター制度は、メンティの成長を支えるだけでなく、メンター自身の学びや気づきを得る機会でもあります。
対話を重ねる中で多様な価値観に触れることで、視野の拡大や自己理解の深化につながります。とくに、メンティの相談相手が評価に関与しないフラットな立場である点は、制度の信頼性を高める要因です。
利害関係のない関係だからこそ本音が交わされやすくなり、心理的安全性の向上にも大きく貢献します。
他制度との違い
メンター制度をより深く理解するには、OJTやエルダー制度との違いを明確に把握することが重要です。各制度には、次のような項目に違いがあります。
- 目的
- 支援内容
- 担当者と対象者の関係性
これらの違いを知っておくことで、自社の課題に応じた適切な制度選択がしやすくなります。
【メンター制度・OJT制度・エルダー制度の違い】
※以下の表は右にスクロールできます
項目 | 目的 | 支援する範囲 | 育成対象者 | 育成担当者の部署 | 担当者との関係性 |
メンター制度 | キャリア形成やメンタル面のフォロー | 実務以外(キャリア、人間関係、メンタルなど) | 新入社員・若手社員(新卒に限らない) | 主に他部署 | 他部署の先輩。利害関係が少なく、フラット |
OJT制度 | 実務スキルの習得・即戦力化 | 実務中心(手順や技術の指導) | 新入社員や既存社員など幅広い | 主に同部署 | 上司・先輩。評価を伴う上下関係 |
エルダー制度(ブラザー・シスター制度) | 新卒社員の早期適応支援 | 実務、社内ルール、場合により精神面や相談対応も含む | 主に新卒社員 | 主に同部署 | 年齢が近い先輩。距離感が近く、相談しやすい雰囲気を重視 |
それぞれの制度には共通点もありますが、「何を目的とし、誰が、どのような関わり方をするか」によって大きく異なることもあります。
たとえばOJTは、実務の中でスキルを習得させる“業務中心”の育成手法です。エルダー制度も日常業務に即したサポートが基本で、いずれも「教える側と教わる側」という関係性が明確に存在します。
一方、メンター制度は「教える」よりも「寄り添う」ことを重視しており、実務の指導ではなく、精神的なサポートを行うのが大きな特徴です。とくに他部署や評価権限のない先輩が担当することで、メンティと対等な関係を築きやすくなります。
このように、実務支援に特化した制度とは異なり、メンター制度は長期的なキャリア形成や心理的安全性の確保を支える仕組みとして設計されている点に注目しましょう。
メンター制度とOJTとの違い
メンター制度とOJT(On the Job Training)は、いずれも育成担当者が新人を支援する制度ですが、根本的な目的に違いがあります。
OJTでは実務スキルの習得を通じて、即戦力となる人材を育てることが主な狙いです。
一方、メンター制度が重視するのは、キャリア形成や精神的な安定の支援です。メンターは他部署の先輩が担うため、直属の上司と比べて利害関係が少なく、メンティが本音を話しやすい環境を築きやすくなります。
メンター制度は、OJTとは異なる切り口で社員の成長を後押しする仕組みと言えます。
以下の記事ではOJTとOFF-JTの違いを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

メンター制度とエルダー制度の違い
メンター制度とエルダー制度は、いずれも新入社員のサポートを目的としていますが、対象者や支援の範囲に違いがあります。
エルダー制度は、主に新卒社員の早期職場適応を目的としており、同じ部署の年齢が近い先輩が実務や社内ルールの指導を行います。対して、メンター制度は新卒に限らず、幅広い層の若手社員を対象とし、キャリア・メンタル両面を支える支援制度です。
また、メンターは他部署の社員が担うため、フラットな関係を築きやすく、職場内の横断的なコミュニケーション促進にもつながります。
支援範囲の広さや関係性のフラットさが、メンター制度ならではの魅力です。
知っておきたいメンター制度の目的と効果

企業における人材育成や定着は、変化の激しい時代においてますます重要になっています。
その中で注目されているのがメンター制度です。この制度は、若手社員の成長支援や定着促進だけでなく、従業員のウェルビーイング向上や組織全体のエンゲージメント強化にも効果があります。
ここでは、メンター制度が注目されている背景や導入目的などを解説します。
健全な職場環境を維持し、企業の持続的な成長を実現するために、メンター制度がどのような効果をもたらすのかを見ていきましょう。
なぜいま、メンター制度が注目されるのか
日本では少子高齢化が進み、労働人口は年々減少しています。企業にとって「人材の確保」は、いまや待ったなしの課題です。終身雇用の崩壊や転職の一般化により、優秀な人材を採用・定着させることが難しくなっています。
こうした状況で求められるのは、社員の「帰属意識」や「ロイヤリティ」の向上です。とくに、新卒や中途入社の若手社員が早期に定着し、活躍してくれる環境づくりが重要になります。
そこで注目されているのが、メンター制度です。メンター制度は、若手社員が抱える不安や悩みに寄り添い、精神的な支えとなることで、離職防止に役立ちます。
ビジネス環境が目まぐるしく変化するいま、メンター制度は「人材の定着」に貢献する重要な仕組みとして、多くの企業から関心を集めています。
メンター制度の導入目的
メンター制度の目的は、社員の定着と成長支援です。ただ一方的に支援するのではなく、メンターとメンティが「一緒に成長する関係性」を築く必要があります。
そのためには、上下関係にとらわれない信頼関係を育むことが不可欠です。何でも話せる安心できる場があることで、メンティは自分の課題に気づき、前向きに行動できるようになります。
一方、メンターも指導を通して、コミュニケーション力やマネジメント力を高めることが可能です。こうした相互成長の仕組みは、社員一人ひとりのキャリア自律を促し、結果的に組織全体の力を底上げします。
ウェルビーイングやエンゲージメントとの関係
メンター制度は、社員のウェルビーイング向上にも効果的です。
ウェルビーイングとは、心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態のことです。仕事への満足感や人間関係の良好さも含まれます。
この状態を実現するには、信頼に基づいたコミュニケーションが欠かせません。メンター制度では、メンターとメンティが気軽に対話できる場があり、不安の軽減や精神的安定に寄与します。
ウェルビーイングが高まることで、社員の意欲ややりがいが向上し、結果としてエンゲージメントも高まります。つまり、メンター制度は、社員の幸福度を土台に、会社への貢献意欲を高める仕組みとして有効なのです。
以下の記事では、ウェルビーイングやエンゲージメントについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
企業も人も成長する!メンター制度の導入メリット

メンター制度は、社員の定着や育成にとどまらず、組織全体の活性化にもつながる有効な施策です。新入社員をただサポートするだけでなく、メンターとメンティが「ともに成長すること」を目的としたこの制度は、企業にとって多くのメリットをもたらします。
ここでは、メンター制度の導入で得られる具体的な効果を、企業・メンター・メンティそれぞれの視点から紹介します。
組織文化をよりよくしたい、社員の成長を後押ししたいと考える方にとって、メンター制度の具体的な効果の把握が大きなヒントになるはずです。
参考:日本メンター協会|メンター制度:効果的な導入の5つのポイント、効果やデメリットを詳しく解説
企業にとってのメリット
メンター制度は、人材戦略の要とも言える施策です。もっとも期待される効果は、社員の早期離職防止と定着率の向上です。とくに、新卒や中途採用者、若手社員に対して大きな効果を発揮します。
多様性を大切にする組織文化をつくったり、女性の活躍を後押ししたりする効果も期待できます。メンターを担う社員は、対話を重ねる中でコミュニケーション力やマネジメントスキルを高め、将来のリーダーとしての成長を促すことが可能です。
このように、メンター制度は個々の能力向上に加え、企業全体の活力や競争力の強化にも寄与する重要な仕組みといえます。
メンターにとってのメリット
メンター制度は、メンター自身の成長にもつながる貴重な機会です。制度の本質は「メンティとともに成長すること」にあり、支援する立場のメンターも多くの学びを得られます。
メンタリングを通じて磨かれるのは、コミュニケーション力とマネジメント力です。
また、多様な背景を持つメンティとの対話から、自分の視野が広がり、新たな価値観に触れる機会にもなります。
相手を支援する中で、自身の強みや課題に気づき、自己理解が深まることも、メンター経験ならではの大きな魅力です。
メンティにとってのメリット
メンティにとってメンター制度は、安心して働ける環境づくりに大きく貢献します。信頼できる先輩がそばにいることで、不安や孤立感が軽減され、スムーズに職場に適応できるためです。
また、自由な対話を通じて得られる「気づき」は、成長やキャリア形成の原動力となります。仕事だけでなく、プライベートや将来の悩みにも向き合える環境は、メンタルヘルスの観点からも非常に有効です。
このような支援体制があることで、メンティは前向きな気持ちで業務に取り組み、着実に成長していけます。
メンター制度はいらない?三者それぞれが直面するデメリット

メンター制度は多くのメリットをもたらす一方で、運用方法を誤ると「形骸化」や「リソースの無駄遣い」といったデメリットを招く恐れもあります。
とくに、メンタリングの質を保ちにくい点や、メンターとメンティの組み合わせなど、人間関係に起因する問題は避けて通れません。
ここでは、企業・メンター・メンティの3者それぞれが抱えうるリスクとその背景を具体的に解説します。
デメリットの把握によって、制度を失敗させないための事前準備や注意点が見えてくるはずです。ぜひ参考にしてください。
参考:日本メンター協会|メンター制度:効果的な導入の5つのポイント、効果やデメリットを詳しく解説
企業にとってのデメリット
メンター制度は、運用が不十分だと期待する成果が得られない恐れがあります。メンタリングの質が見えづらく、実施状況が把握しにくいためです。
たとえば、形だけの面談で終わってしまったり、進捗が報告されず「やっているふり」になってしまったりするケースもあります。外からは実態が見えにくいため、制度がブラックボックス化する危険性があるのです。
結果として、時間や労力をかけても人材の定着や育成につながらず、リソースの無駄遣いに終わる可能性も否定できません。
こうしたリスクを避けるには、企業はメンタリングの実施状況や成果を可視化し、進捗や課題を定期的に確認・評価できる仕組みを整える必要があります。
メンターにとってのデメリット
メンターにとっての課題は、努力に見合った成長を実感できない可能性があることです。メンティとの組み合わせや関係構築に失敗すると、対話が表面的になりやすいためです。
たとえば、信頼関係を築けなければ建設的な話ができず、「時間ばかり取られて意味がない」と感じてしまいます。
また、業務負担が増えることで、制度への不満が蓄積することも少なくありません。
このような状況では、制度自体への参加意欲が下がり、組織全体への波及効果も得られにくくなります。そのため、メンターには支援体制や相談の場が必要です。
メンティにとってのデメリット
メンティの立場での最大のリスクは、支援が機能せず「期待はずれ」に終わることです。これは、メンター制度がメンターの力量や関係性に大きく左右されるためです。
たとえば、質問しづらい雰囲気や、形式的なやりとりしかできない関係だと、メンティは不安や疑問を抱えたままになってしまいます。「何でも話せる」と感じられなければ、メンター制度の本来の価値を実感できません。
支援が機能しないと「この制度、意味あるの?」と不信感を持たれ、早期離職につながる恐れもあります。だからこそ、メンティの声を拾い、制度設計に反映する仕組みが不可欠です。
メンター制度の成功事例

メンター制度は導入効果が見えにくく、「本当に必要なのか」と悩む声も少なくありません。
一方で、目的を明確にし適切に運用すれば、離職防止や職場の風土改善につなげることが可能です。
ここでは、実際に制度を導入して成果を上げた企業の事例を2つ紹介します。
この成功事例からは、メンター制度が単なる育成施策にとどまらず、職場全体の風土や働きやすさを変えるきっかけになり得ることがわかります。ぜひ、自社で制度を検討する際の参考にしてみてください。
事例1:大峰堂薬品工業|メンター制度で離職ゼロを実現
大峰堂薬品工業は、業容拡大と業務量の増加により、若手社員の離職が深刻な課題となっていました。原因として挙げられたのは、社内のコミュニケーション不足です。
当初は、メンター制度に明確な効果を見出せていませんでしたが、日本メンター協会の体験を通じ、「心地よく、前向きなコミュニケーション」の大切さを実感し、制度導入に踏み切ったと言います。
新入社員を対象に、部署を越えた1年間のメンタリングを実施したところ、離職者ゼロを達成しました。信頼関係が築かれたことにより、全員が職場に定着しています。
雑談を交えた気軽な対話が信頼を深め、「何でも話せる」雰囲気が若手の安心感につながった好事例です。コミュニケーションを軸とした制度運用が、定着率向上に大きく寄与したことがわかります。
参考:日本メンター協会|大峰堂薬品工業様 メンター制度導入事例 新入社員職場定着目的
事例2:古野電気|職場風土改革につなげた「若手相談員制度」
古野電気株式会社は、若手社員の育成がうまく進まないことや、相談しにくい職場環境が経営課題の兆しとして顕在化していました。とくに、上司や先輩が多忙で十分にフォローできないことや、年齢差による指導ギャップなど、現場のコミュニケーションに課題が見られたのです。
こうした状況を受けて導入されたのが、「若手相談員制度」です。日本メンター協会の説明会で模擬メンタリングを体験したとき、「話すこと」「聴くこと」の価値を再認識し、「この関係性を職場に持ち込みたい」との想いから制度の導入が決まりました。
同制度では、入社3年目の社員と入社10年前後の社員をペアとし、2年間にわたって継続的な対話を実施しました。その中で、日常的な悩みを気兼ねなく相談できる関係が育まれ、若手社員の意識や行動にもポジティブな変化が現れたと言います。
「本音で話せる相手がいる」ことが、職場の心理的安全性を高める大きな効果をもたらしました。結果として若手社員の定着だけでなく、組織全体のコミュニケーション風土の改善にもつながったのです。
参考:日本メンター協会|古野電気様 メンター制度導入事例 若手社員育成目的
メンター制度の失敗例と改善ポイント

メンター制度は、適切に運用すれば社員の定着促進や職場のコミュニケーション活性化など、多くの効果をもたらします。
しかし、導入や運用を誤ると、かえって制度が形骸化し、現場の信頼を損なう結果にもつながりかねません。
ここでは、実際に起こりうる失敗とその背景、そこから得られる学びを確認していきましょう。
よくあるつまずきや制度が機能しなくなる背景を知ることで、見落としがちな落とし穴や、制度を形骸化させないための設計ポイントが見えてきます。ぜひ、自社での運用を成功に導くための具体的な気づきを得てください。
失敗例1:相性が悪く、信頼関係が構築できない
メンター制度がうまく機能しない理由として、メンターとメンティの組み合わせの悪さが挙げられます。信頼関係が築けなければ、対話は形式的になり、制度は本来の目的を果たせません。
この問題は多くの場合、部署や年齢層などの表面的な基準で機械的にペアを決めてしまうことが原因です。たとえば話しづらい雰囲気や価値観のズレがあると、対話が深まらず、お互いに心を開けないまま制度が形骸化するリスクもあります。
信頼関係が築けないと、「ともに成長する」という制度の目的が果たされず、参加者にとって単なる負担となってしまいます。
こうした課題を防ぐには、「話しやすさ」や「価値観の近さ」に配慮したペアビルディングが重要です。制度の土台を整えることで、質の高い対話と学びが生まれます。
失敗例2:交流機会が少なく制度が形骸化してしまう
もうひとつの失敗例は、メンターとメンティの交流機会が確保されていないケースです。
対話の頻度が低ければ、信頼関係は育たず、制度の意義も薄れてしまいます。とくに、部署をまたぐ関係では、普段の業務で接点が少ないため、意識的に時間を取らないと面談自体が後回しになりがちです。
その結果、実施したことになっているだけの“やったふり”状態に陥るケースもあります。交流不足によりメンティが孤立し、メンター側も現状を把握できないと、悪循環に陥ってしまいます。
また、制度そのものが形だけになっているケースも少なくありません。
このような状況を回避するためには、メンタリングを定期的に行えるスケジュールの設計や、進捗の見える化といった仕組みの導入が不可欠です。
相性で差がつく!新人育成を成功に導くメンターの選び方

メンター制度を効果的に機能させるうえで、「誰と誰を組ませるか」というペアビルディングの質は、制度の成果を大きく左右する要素です。
近年では、そうした組み合わせを勘に頼らず判断するために、適性検査などの客観的データを活用する企業が増えています。
本章では、メンター制度におけるマッチングの重要性と、適性検査を活用したペアビルディングの考え方・活用事例を解説します。
「話しやすさ」や「価値観の近さ」に配慮した効果的なメンターアサインによって、新人育成の質や社員の定着率が大きく変わってくるはずです。
相性が制度成功のカギになる理由
メンター制度を効果的に機能させるには、メンターとメンティの相性が極めて重要です。信頼関係が築かれなければ、制度の本質である自由で深い対話が生まれません。
相性が合わないと、互いに遠慮して形式的なやりとりに終始し、悩みを打ち明けにくくなることもあります。その結果、メンタリングは単なる時間の消化となり、成長の実感も得られなくなります。
たとえば、紹介したメンター制度の成功事例の企業では、「何でも話せる関係性」が制度成功のカギとなっていました。本音で対話できる相手がいることが、若手社員の定着や職場への信頼感につながったのです。
メンター制度を形骸化させないためには、感覚任せではなく、組み合わせを意識したペアビルディングが不可欠です。
適性検査で実現する効果的なメンターアサイン
相性を客観的に判断する手段として、適性検査を活用したペアリングが注目されています。性格傾向や価値観の数値化によって、組み合わせの根拠が明確になるためです。
勘や経験だけに頼ると、相性の良し悪しにばらつきが出やすく、制度の再現性が下がる恐れがあります。その点、適性検査を活用すれば、一定の基準でマッチングが可能になります。
たとえば、『ミキワメ 適性検査』の「似ている社員チェック」では、新人と性格傾向が近い社員にメンターのアサインが可能です。実際にこの機能を活用して効果を上げたメンターアサインの事例を紹介します。
【ある1,000人規模以上の企業の例】
メンターの選定を施設長や現場責任者の主観に頼っており、ミスマッチや指導効果のばらつきが課題でした。
そこで、『ミキワメ 適性検査』を導入し、性格傾向が似ている社員を新卒社員のメンターにアサインする仕組みを構築しました。比較対象はエリアや施設単位に絞り、配属現場に合ったリアルなマッチングが可能となっています。
また、あえて別拠点の社員をメンターにすることで、拠点を越えた横のつながりも促進しました。これにより、新入社員は業務面だけでなく、心理的にも早期に職場に馴染みやすくなり、戦力化のスピードと定着率が向上しています。
メンターアサインに客観性と説得力が加わったことで、現場からの納得感も高まり、組織全体の人材育成の質が底上げされた事例です。
適性検査は完全な答えではなくとも、ペアリングの質を高める有効な指針となります。制度の成功率を上げるためにも、データを活用したアサインを前向きにしましょう。
以下の記事では、『ミキワメ 適性検査』の特徴を詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

メンター制度導入5つのステップ

メンター制度は、新入社員の早期立ち上がりや若手社員の成長支援、組織内のコミュニケーション活性化に有効な手段です。
しかし、ただ導入するだけでは、期待する効果が得られないケースも少なくありません。制度を成功に導くためには、目的設定から運用、そして継続的な改善までのプロセスを着実に進めることが重要です。
本章では、効果的なメンター制度を構築するための5つのステップをご紹介します。
これらのステップを踏むことで、貴社のメンター制度が形骸化することなく、社員一人ひとりの成長と組織全体の活性化に貢献する制度として機能するはずです。
1. 目的の明確化と全社共有
メンター制度を導入するときは、「なぜ導入するのか」という目的を明確にし、関係者全体で認識を共有することが不可欠です。
目的が曖昧だと、制度の方向性が定まらず、期待する成果を得られない恐れがあります。メンター制度の根底にある目的は「ともに成長すること」であり、これを組織の価値観として掲げたうえで、具体的な導入目的を設定しましょう。
厚生労働省の統計によると、令和2年3月に卒業した新卒就職者の3割以上が3年以内に離職しています。
新規高卒就職者、新規大学就職者ともに前年度より増えており、新入社員の定着促進は、多くの企業にとって重要な課題です。
成功事例で紹介した企業も、若手育成や離職防止を目的にメンター制度を導入しています。具体的な目的を設定し、全社で共有することが制度成功の第一歩となります。
2. ルール設計と運用体制の構築
メンター制度を円滑に運用するためには、明確なルール設計と、制度を支える体制の構築が欠かせません。
メンタリングは基本的にメンターとメンティの二者間で行われるため、状況の可視化が難しいという課題があります。たとえば期間や頻度、話し合うテーマなどをあらかじめ定めることは重要です。
また、安心して対話できるよう、守秘義務に関するルールを設けることも必要です。運用体制としては、進捗を定期的に確認し、「やったふり」を防ぐ仕組みづくりが求められます。
3. メンター/メンティの選定・マッチング
制度の効果を左右するのが、適切なメンターとメンティのマッチングです。
信頼関係の構築には「話しやすさ」や「価値観の近さ」が影響するため、組み合わせのよさが重要となります。主観的な判断で行われていた組み合わせでは、能力や人間関係がかみ合わない恐れがあります。
そこで有効なのが、『ミキワメ 適性検査』のような客観的データを用いたマッチングです。「似ている社員チェック」機能を活用し、性格傾向が近い社員をメンター選定の参考にした事例もあります。
こうしたツールの活用によって、より効果的な信頼関係の構築と、制度の定着を図ることが可能です。
4. メンターへの研修・サポート体制
制度の質を高めるためには、メンター自身のスキル向上が不可欠です。単に経験や役職があるだけでは、よいメンターとは言えません。傾聴やキャリア支援の姿勢、メンティへの理解を深めるなど、対話を支える力を高める必要があります。
日本メンター協会は、対話スキル向上や実践力を磨くための研修プログラムを提供しています。こういった研修を受けるのもおすすめです。
また、教材の整備や、困ったときに相談できる仕組みを設けることも効果的です。メンター自身が成長できる環境が、メンティの安心と信頼構築につながります。
5. 導入後の運用・振り返りと改善
メンター制度は導入して終わりではなく、定期的な振り返りと改善が欠かせません。運用が形式化すれば、「やったふり」や形骸化の原因となります。
実施の有無や頻度を定期的に報告する仕組みを整えるとともに、メンタリングの「質」も把握しましょう。中間ヒアリングやアンケートを通じて、信頼関係の深まりや、対話の実感を確認することが大切です。
ペアの関係性に課題が見られる場合は、関係の見直しや再調整の余地を設けることで、対話の質や制度の信頼性を高めることが可能になります。
目的と相性を軸にメンター制度の設計を進めよう

メンター制度を成功させるためには、「何のために行うのか」という明確な目的と、「誰と誰を組ませるか」という相互理解を前提とした組み合わせの工夫が不可欠です。
目的が曖昧なままでは制度は形骸化し、相互理解のないマッチングでは信頼関係を築けません。
そのために有効なのが、性格傾向や価値観の特徴を可視化できる適性検査の活用です。こうしたデータを参考にすれば、感覚や思い込みに頼らず、より納得感のあるペアビルディングを実現できます。
たとえば『ミキワメ 適性検査』では、「似ている社員チェック」などの機能を活用し、相互理解を深めるための材料として活用可能です。あくまで判断材料として活用することにより、メンター制度の再現性や定着率向上につなげられます。
最終的に目指すべきは、社員が安心して成長できる環境を整え、企業全体の活力や人材の定着率を高めることです。その第一歩として、目的に沿ったメンター制度の設計を、いまから始めましょう。
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