社員のパフォーマンス向上を目指す企業が多いなかで、実際の職場では「部下との信頼関係をうまく築けない」と悩む上司や人事担当者の方も少なくありません。
そこで注目されているのが、上司と部下が定期的に対話を行う「1on1ミーティング」です。部下の成長段階に応じて1on1の内容を変えることで、部下の自己理解を促し、自律的に行動できる人材への育成が可能になります。
本記事では、1on1ミーティングの進め方を中心に、以下の内容を網羅的に解説します。
- 1on1の目的と基本的な進め方【6ステップ】
- 目的に応じた1on1ミーティングのやり方
- 1on1を進めるときのポイント・上司の役割
この記事を読むことで、自社に最適な1on1の運用方法が明確になり、社員の成長を最大化させる人材マネジメントを実現できます。
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1on1ミーティングとは?

1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に1対1で行う個別面談のことです。
1980年代にアメリカの半導体メーカー「インテル」で始まったとされ、その後はシリコンバレーのIT企業(グーグル、マイクロソフト など)を中心に広がっていきました。
1on1の主な目的は、業務の進捗を確認するだけでなく、対話を通じて部下との信頼関係を構築し、成長・成果をサポートすることです。
面談の実施頻度に決まりはありませんが、週1回から月1回の間隔での開催が推奨されています。定期的に上司と部下が1対1でコミュニケーションを取ることで、部下が抱える不安や課題を把握しやすくなり、必要に応じてサポートできるようになります。
1on1が注目されている理由・背景
1on1が注目されている理由は、人材の定着が重要な経営課題となるなかで、「仕事のやりがい」を生み出すマネジメントが必要になってきたためです。
従来は、年1〜2回の評価面談で十分と考えられてきました。しかし、評価面談だけでは、部下の悩みやキャリアの希望を把握しきれず、問題が表面化したときには手遅れになっているケースも少なくありませんでした。
そのほかにも、以下のような時代的な背景が考えられます。
- リモートワークの普及によって、日常の何気ないコミュニケーションが減った
- 性別や世代、国籍を問わず多様な働き方に寄り添う必要が出てきた
- エンゲージメントや心身の健康(ウェルビーイング)への注目が高まった
このように変化の大きい時代において、1on1は「やりがいを高め、人を活かすマネジメント」として、いまや欠かせない取り組みとなっています。
参考:心理学と組織論からみた理想の1on1 〜マネジメントに関わる理論とその共通要素〜|組織心理研究所
1on1と一般的な面談の違い
職場で行う一般的な面談は、人事評価や業務進捗の確認、人事上の伝達(異動 など)が主な目的です。部下の成長支援や心理的なサポートよりも、業務に関する話題・テーマを中心に面談を行う傾向があります。
一方1on1では、「仕事へのやりがい」や「普段抱えている課題・不安」などのテーマを中心に対話を行います。
評価面談のように上司主導で進めるのではなく、部下が話したいテーマを考え、上司はその内容を引き出しながら対話するのが1on1の特徴です。
また、実施頻度にも違いがあります。評価面談は、年に1〜2回程度の実施が一般的ですが、1on1は「週1回」や「月1回」の頻度で行います。
1on1を実施する3つの目的・メリット

企業が1on1ミーティングを実施する目的は、主に以下の3点です。
上司と部下が継続的に対話することで、普段の仕事では見えにくい価値観や悩みを共有できるようになります。
以下より、それぞれの目的を解説します。
部下の自発的成長の促進
1on1の大きな目的は、上司と部下の1対1による対話を通じて、部下に新たな気づきを与え、自発的な成長を促進させることです。
具体的には、上司が部下の話にしっかりと耳を傾け(傾聴)、以下のような問いかけを行うことで、部下は自分の考えを整理できます。
「いまの課題に取り組むなかで、工夫できることはある?」
「成果を出すために、何が足りていないと思う?」
パーソル総合研究所の調査において、「上司の部下に対するマネジメント行動」と「1on1を通じた部下の成長」の関係を分析しています。その結果、以下のような上司の行動や姿勢が、部下の成長にプラスの影響を与えていることがわかりました。
- 面談時、上司は本音を話してくれる
- 部下のアイデアや提案を積極的に検討し、尊重する
- 部下自身でも気がつかない意見を伝えてくれる
このように、1on1における上司の傾聴・問いかけ・尊重の姿勢は、部下の内省を促し、「自ら考え行動する力」を育てる重要な取り組みと言えます。
上司と部下の信頼関係の構築
1on1を通じて、上司と部下がお互いの状況や価値観を理解することで、信頼関係の構築につながります。
業務上のやり取りや日常のコミュニケーションだけでは、部下からの十分な信頼を得るのは難しいです。しかし、定期的な対話を通じて「上司は自分の話を聞いてくれる」という安心感を与えることで、部下は本音を打ち明けやすくなります。
株式会社リクルートの調査によると、企業の人事担当者に1on1ミーティングの効果について質問したところ、「上司と部下の関係性向上」の回答が多く見られました。
- 上司と部下のコミュニケーション機会が増えた(60.1%)
- 上司と部下が本音で話せる関係になっている(40.2%)
上司と部下の信頼関係が構築されることで、上司は部下の悩みに早く気づき、問題が大きくなる前に解決の糸口を提案できます。
また、仕事や人間関係で悩んでいても、部下は「信頼できる上司がいるから、もう少し頑張ろう」と前向きな気持ちで行動できるようになります。
社員の離職率低下(やりがいの向上)
信頼できる上司と1対1で対話できる場を設けることで、部下は自分の悩みや不安を打ち明けられるようになります。
1on1を通じて上司は部下の話を受け止め、具体的なアクションプランを一緒に考えることで、部下が安心して話せる雰囲気をつくりながら解決方法を提案できます。
株式会社リーディングマークの調査によると、大企業の人事担当者に「若手社員の離職対策で最も効果を感じたもの」を質問したところ、36.8%は「定期的な1on1面談の実施」と回答しました。

1on1ミーティングの実施によって、個々のモチベーションや会社への満足度が高まり、結果的に組織力の底上げにつながります。
また、キャリアの希望や挑戦したいことを聞くことで、部下にとって「やりがいを感じられる役割・業務」を与えることも可能です。
1on1ミーティングの基本的な進め方【6ステップ】

部下の成長を促す1on1ミーティングにするためには、基本的な進め方を把握しておく必要があります。6つのステップに分けて詳しく解説します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
進め方 | ポイント | |
---|---|---|
1 | 事前準備 | ・部下のための時間であることを説明する ・許可なく内容を他言しないことを伝える |
2 | 本題前の雑談 (アイスブレイク) | ・部下の緊張を和らげ、安心して話せる雰囲気をつくる ・プライベートを深く聞かないようにする |
3 | 前回の振り返り | ・小さな成果でも「ここがうまくいったね」と言葉にする ・成果が出なくても部下を責めず、改善策を一緒に考える |
4 | メインテーマの対話 | ・部下が考えたテーマを中心に話す ・自由に考えを広げられるようにオープンクエスチョンを活用する |
5 | ネクストアクションの検討 | ・実行可能な行動を決める ・上司が一方的に指示するのではなく、部下自身に行動を決めてもらう |
6 | 今回の振り返り・記録 | ・今回の1on1を簡単に振り返る ・1on1の内容は必ず記録に残す |
以下より、各ステップを詳しく見ていきましょう。
1.事前準備
進行役を務める上司(マネージャー)は、1on1ミーティング開始前に目的を再確認し、全体的な流れを頭に入れておきましょう。
その上で、チームメンバー全員に1on1の導入説明を行います。
【説明事項】
- 1on1の目的と概要(狙いや意図、実施頻度 など)
- 部下のための時間であること(話すテーマは自由 など)
- 守秘義務について(許可なく内容を他言しない など)
1on1で話すテーマは、基本的に部下が決めます。上司は、部下の近況や前回の記録を確認したり、あらかじめテーマの候補を共有したりすることで、対話をスムーズに進められます。
2.本題前の雑談(アイスブレイク)
1on1の冒頭は、軽い雑談(アイスブレイク)でリラックスした雰囲気をつくりましょう。
仕事以外の話題から対話を始めることで、部下の緊張を和らげ、安心して悩みや不安を話せるようになります。具体的な雑談のテーマは、以下のとおりです。
雑談のテーマ | 質問例 |
---|---|
季節 | 最近、朝晩が涼しくなってきましたね。体調を崩していませんか? |
ニュース・時事 | 最近◯◯のニュースを見ましたが、どう思いました? |
家庭 | 休日は家族とどんなふうに過ごしていますか? |
地域 | 駅前に新しいお店ができましたね。行ったことはありますか? |
雑談で大切なのは、上司がリラックスした雰囲気をつくり、「この場では自由に話しても大丈夫」と部下に感じてもらうことです。
アイスブレイクを挟むことで、メインテーマの対話の質が高まり、部下の本音を引き出しやすくなります。
3.前回の振り返り
雑談(アイスブレイク)をしたあとは、前回の1on1で話した内容やアクションの進捗確認を行いましょう。
進捗があった場合は、その努力や成果を認め「どの点がよかったのか」を一緒に振り返ることが重要です。小さな成果でも「ここがうまくいったね」と言葉にすることで、部下のモチベーションにつながります。
具体的な質問例を「成果が見られた場合」と「成果が見られなかった場合」に分けて紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
状況 | 質問例 | ポイント |
---|---|---|
成果が見られた場合 | 前回の課題に取り組んで成果が出ましたね。どの取り組みに効果があったと思いますか? | 成功の要因を本人の言葉で整理させる |
取り組みを継続できたのは素晴らしいですね。次はどんな形で応用できそうですか? | 成果を称賛した上で、次のステップにつなげる | |
成果が見られなかった場合 | 前回の取り組みでは、どんな点が難しかったですか?一緒に考えてみましょう。 | うまくいかなかった原因を一緒に考える姿勢を示す |
どんなサポートがあれば、もっと進めやすくなりそうですか? | 部下を責めず、サポートする意思を伝えて安心感を与える |
前回の振り返りでは、過去の取り組みや経験をもとに、未来の成長につなげるための「気づき」を与えることが大切です。
4.メインテーマの対話
前回の振り返りをしたら、事前に決めたテーマを中心に対話をします。
本題に入る前に、以下の点を部下に確認することで、「1on1はあなたのための時間」であることを伝えられます。
- テーマの確認(部下に話したいトピックを聞く)
- 時間配分の確認(話したい時間の目安を聞く)
- 関わり方の確認(話を聞いてほしいのか、一緒に考えてほしいのか など)
上司は、「傾聴」と「共感」の姿勢で話を聞きつつ、必要に応じて質問を投げかけ、部下の思考を深めるサポートをします。
「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、自由に考えを広げられるようにオープンクエスチョン(思考を促す質問)を活用しましょう。
【質問例】
- いまの悩みのなかで、自分でコントロールできる部分はどこだと思いますか?
- 今回の取り組みで、一番やりがいを感じたのはどんな瞬間でしたか?
- 今後さらに成長するために、どんな経験を積みたいと思いますか?
「1on1で話すことがない」と悩んでいる上司や人事担当者の方は、以下の記事をご覧ください。具体的なテーマや質問例を紹介しています。

5.ネクストアクションの検討
メインテーマでの対話を終えたら、その内容を踏まえて「次の行動(ネクストアクション)」に落とし込みます。
具体例は以下のとおりです。実行可能な行動を決めて、小さな一歩から始めてみましょう。
- 次回の1on1までに、〇〇業務の手順を簡略化できる方法を3つ考えてみる
- 来週末までに、〇〇の資料をまとめて上司に共有する
- 次の会議で、〇〇に関する意見を自分から発言してみる
- 週1回、〇〇の業務に挑戦し、学んだことをメモにまとめる
- 目指しているポジションについて、〇〇さんに話を聞いてみる
ネクストアクションを検討するときは、上司が一方的に指示するのではなく、部下と一緒に具体的な行動を考え、最終的には部下自身に決めてもらいましょう。
そうすることで、部下の自律性を高め、自分の行動に責任感を持って取り組めるようになります。
6.今回の振り返り・記録
1on1の最後は、ミーティングの内容やネクストアクションの振り返りをします。
部下には「今日の話で印象に残ったことは?」と尋ね、上司自身も「私はこの点がよかった」といった形でフィードバックしましょう。
1on1終了後は、あとから会話内容を振り返られるよう記録に残します。ネクストアクションを言葉や数値で記録しておけば、部下が日常業務のなかで迷ったときに立ち返り、自分の行動を決められます。
また、会話内容の文字起こしを自動化し、継続的に1on1を実施したい場合は、1on1ツールの活用がおすすめです。
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目的・成長段階に応じた1on1ミーティングのやり方【3選】

1on1ミーティングでは、部下の成長段階に応じて、対話の内容や関わり方を変える必要があります。
ここでは、組織心理研究所(株式会社リーディングマーク)の資料を参考に、信頼関係の構築から自律的な行動促進まで、それぞれの段階に適した進め方を整理して解説します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
フェーズ | 対話のポイント |
---|---|
部下との信頼関係を構築したい | 部下が「安心して話せる」と思えるように、1on1の枠組みを設定する |
部下に自己理解を促し、思考レベルを高めたい | 成果を承認しつつ「広い視野」「次のレベル」を意識させる |
部下の自律的な意思決定と行動を促したい | 少しハードルの高い要求や挑戦を提示し、期待していることを伝える |
以下より、各フェーズの進め方を解説します。
フェーズ1:部下との信頼関係を構築したい
部下との信頼関係がまだ十分に築けていない段階では、部下に「安心して話せる場」と感じてもらえるように進める必要があります。
まずは、1on1の枠組みを明確に設定しましょう。
- 日時はいつか
- 何分のミーティングなのか
- 話したことは誰に共有されるのか
- 共有する場合、どのような形で行われるのか
- 他の人に知られたくない内容は、共有しないままにしてくれるのか
実際の対話では、部下が日々感じていることを率直に話せるよう、「受容」と「共感」を意識します。上司は「困っていることはある?」「それはいつ頃から?」といった質問を行い、状況を掘り下げながら聞くことに徹しましょう。
部下が「話を聞いてもらえた」「気持ちを受け止めてもらえた」と感じることが、信頼関係を強化する大きな要素になります。
以下の記事では、マネジメント理論に基づく1on1の流れを解説しています。部下との関係性を強くしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

フェーズ2:部下に自己理解を促し、思考レベルを高めたい
部下との信頼関係がある程度築けたら、次のフェーズでは「自己理解の促進」と「思考レベルの向上」を支援しましょう。
そのためには、部下が自分の仕事や役割をより広い視点で捉えられるように、フラットなフィードバックが必要です。
フィードバックにおいて、部下の取り組みを確認していると、つい不足している点に目が向きがちです。成果が出ている部分や、役立っている部分をしっかりと指摘し、称賛するようにしましょう。
小さな貢献を認めることで、部下の心のなかに「自分は役に立っている」という実感が生まれ、主体的な成長意欲につながります。
また、フィードバックするときは、部下に期待をもたせるコミュニケーションも大切です。
上司は「できていないこと」ばかりを指摘するのではなく、事業やチームの目標を踏まえ「あなたには〇〇を期待している」と具体的に伝えましょう。これにより、部下は自分の役割がより明確になり、視野を広げて考える習慣が身につきます。
フェーズ3:部下の自律的な意思決定と行動を促したい
部下との信頼関係が十分に築かれ、フィードバックを素直に受け止められる段階に入ったら、より高い成果を目指すための対話を行いましょう。
このフェーズでは、以下のような対応が求められます。
- 部下の視座を引き上げるフィードバック
- 行動の質に関する具体的な指摘
- ストレッチ目標の提示(少し高めの挑戦的な目標)
多少の負荷をかけても部下との関係性が崩れる心配は少なく、むしろ「期待されている」と感じて、モチベーションが高まる可能性が高いと言えます。
対話では、「現状に満足せず、さらに上を目指すには何が必要か」を一緒に考えることが重要です。
「いつまでに、何を、どう進めるべきか」「誰を巻き込むべきか」といった助言を行うことで、部下は「自分で判断し行動できる力」を磨いていきます。
また、これまでの努力や貢献に対して、感謝と労いの言葉を伝えることも忘れてはいけません。部下のことを認めた上で、「さらに上の役割を任せたい」と期待を伝えることで、部下はより主体的に成果を追求するようになります。
1on1における上司の5つの役割|信頼を深める進め方のポイント

1on1を有意義な時間にするには、上司の部下に対する関わり方が重要です。ここでは具体的な役割と進め方のポイントを紹介します。
以下より、各ポイントを詳しく見ていきましょう。
また、1on1の活用法や成功のポイントをまとめた記事もご用意しています。マネージャーを指導する立場の経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

開始前に目的や概要を説明する
1on1を始めるときは、部下が「この時間は何のためにあるのか」を理解できるように、目的や進め方を丁寧に説明する必要があります。事前に説明がないと、部下は一般的な評価面談と誤解し、身構えてしまいます。
「今日は評価を伝えるのではなく、あなた自身の思いや将来を一緒に考えるための時間」
このように伝えることで、部下は安心して自分の考えや気持ちを話しやすくなります。また、具体的な日時やミーティング時間、話すテーマなども合わせて伝えておきましょう。
1on1の開始前に目的や概要を説明することで、対話がスムーズに進み、部下との関係性も築きやすくなります。
雑談で話しやすい雰囲気をつくる
1on1の冒頭でいきなり仕事のテーマを話し出すと、部下は緊張し、悩みや不安を言いにくくなります。最初の数分間は、軽い雑談(アイスブレイク)を取り入れ、話しやすい雰囲気をつくりましょう。
雑談のテーマは、「最近ハマっていること」や「休日の過ごし方」など、業務に関係のない話題で構いません。雑談を通じて部下の表情が和らぎ、緊張がほぐれてくると、その後の本題も話しやすくなります。
とくに若手社員や、上司に対して緊張しやすい社員にとっては、雑談の時間を設けることで安心感につながります。
ただし、雑談はメインテーマへの流れをつくるための手段であるため、雑談だけで1on1を終えないようにしましょう。
部下の話を「傾聴・共感」の姿勢で受け止める
1on1ミーティングでは、上司が一方的に話すのではなく、部下が話したいテーマを中心に部下主導で進める必要があります。そのため、上司はしっかりと部下の話に耳を傾け、共感を示すことが重要です。
前回の1on1から進捗が見られない場合でも、「どうしてできなかったの?」と問い詰めるのではなく、以下のように寄り添いながら解決策を一緒に考えましょう。
「今回はうまく進められなかったみたいだね。どんなことが一番大変だった?」
「思ったとおりに進まなかった要因は、どんなところにあったと思う?」
傾聴と共感の姿勢を示すことで、部下は「本音を言っても大丈夫」と感じるようになり、お互いに信頼できる関係性を築けます。
部下の思考・行動を促すコーチングを行う
1on1ミーティングは、上司が答えを教える場ではなく、部下が自分で考え行動するための時間です。そのため、部下の思考と行動を促すような質問(コーチング)を行う必要があります。
具体的には、以下のような問いかけをして、部下に考える時間を与えましょう。
「この課題に取り組む上で、どんな方法が一番効果的だと思う?」
「目標を達成したら、自分はどんな状態になっていると思う?」
「いまの状況を改善するために、自分でできそうな工夫はある?」
「周囲の人の力を借りるとしたら、誰にどんな協力をお願いできそう?」
また、「他の部署のやり方を取り入れてみては?」と視野を広げる提案で、解決策を導き出すのも有効です。
部下の思考・行動を促すコーチングを行うことで、部下は主体的に課題に向き合う習慣が身につきます。
1on1を継続的に行うように計画する
1on1ミーティングは、一度実施して終わりではなく、継続的に行うことが重要です。
部下と対話する時間を定期的に設けることで、普段のコミュニケーションでは話せないテーマを一緒に考え、上司と部下の相互理解を深められます。
具体的には、週1回から月1回を目安に計画し、たとえ10分程度の短時間でも実施するように心がけましょう。
1on1を「優先度の高い予定」として扱うことで、部下に対して「自分との時間を大切にしてくれている」という安心感を与えられます。
また、1on1を重ねるうちに、部下の上司に対する信頼感も高まっていきます。
「新しい企画を上司へ提案してみよう」
「営業スキルの高め方を相談してみよう」
このように、部下のオープンな気持ちを引き出すためにも、上司は継続的なミーティングを計画し、人間関係の構築を図る必要があります。
1on1を導入している企業のやり方・事例

1on1を導入している企業の取り組みについて、2社の事例を紹介します。
※モバイルでは以下の表を右にスクロールしてご覧ください
取り組み内容 | 効果 |
---|---|
人間関係やメンタル面の状況を踏まえた1on1を実施 | ・リモートワークの環境下でも、社員をフォローできるようになった ・月に1人はいた退職者が「2ヵ月に1人」にまで減少した |
サーベイ結果に基づく1on1を行い、ネクストアクションを決定 | ・サーベイの結果に基づいて、フォローの優先順位を決められるようになった ・「いま」困っている人が「何に困っているのか」を可視化できた |
企業の事例を確認することで、「自社で1on1をどう活用できるか」「どんな工夫が効果的か」といった実践の手がかりを得られます。
以下より、各社の事例を解説します。
人間関係やメンタル面の状況を踏まえた1on1を実施
グローバルICTサービスを展開する株式会社サイバーネーションでは、若手社員への指導やメンタル面のケアを、先輩社員(エルダー)が主体となり行っています。
エルダーは、各個人の業務状況や人間関係、メンタル面などを月次報告書にまとめています。しかし、コロナ禍以降は対面でのフォローができなくなり、問題を未然に防げていませんでした。
そこで同社では、報告書だけでは把握しきれない「心の健康状態」を、エンゲージメントサーベイの調査結果で把握するように改善しました。
状態がよくないメンバーに対しては、調査結果をもとに1on1ミーティングを実施し、リモートワークの環境下でもカバーできるような体制を整えています。
人間関係やメンタル面の状況を踏まえた1on1を取り入れたことで、個々の些細な変化にも気づけるようになりました。結果として、月に1人はいた退職者が「2ヵ月に1人」にまで減少しています。
事例:ミキワメで見えてきた、オンライン時代の社員ケア|株式会社サイバーネーション
サーベイ結果に基づく1on1を行い、ネクストアクションを決定
デジタル戦略コンサルティング事業を展開する株式会社ペンシルでは、サーベイの結果から社員の心理状態を把握し、個々の状況に応じたケアを実施しています。
具体的な流れは、以下のとおりです。
- 月に1回サーベイを配信
- 調査結果のコメントの有無をチェック
- 前回から急激なスコアの変化がないかを確認
- 状態が悪化している社員と1on1を実施
- 改善に向けたネクストアクションを決定
以前は、現場にマネジメントを任せすぎてしまい、フォローの優先順位に乖離が生じていました。サーベイ導入後は、客観的な情報をもとに「フォローを優先すべき人」がわかるようになり、1on1などの適切な対応につなげています。
サーベイの活用により、「いま」困っている人が「どのくらい」いて、「何に困っているのか」を可視化できるようになりました。
事例:組織と個人の心の健康状態を見える化し、エンゲージメントのさらなる向上へ|株式会社ペンシル
マネジメント状況を可視化するなら「1on1ツール」の活用を
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参考:『ミキワメ マネジメント』の管理画面
1on1を継続的に運用するためには、会話内容を記録し、組織としてマネジメント状況を管理する必要があります。
そこで役立つのが「1on1ツール」です。ツールを活用し「前回どのような話をしたか」「ネクストアクションは何か」を記録・管理することで、社員一人ひとりの成長のプロセスを把握できます。
また、ツールの多くは、対話内容を文字起こしする機能も搭載されており、1on1後に議事録を作成する必要がありません。そのため、チームを統括する上司(マネージャー)の負担を軽減できます。
1on1ツールを導入することで、継続的な運用が可能になるだけでなく、部下へのマネジメントの質を高め、組織の成長を支える仕組みを構築できます。
1on1ツールの導入を検討している方は、以下の「おすすめツール18選」の記事をご覧ください。導入による効果やツールの選び方も解説しています。

1on1の進め方・やり方に関するよくある質問

1on1の進め方・やり方について、2つの「よくある質問」に回答します。
以下より、詳しく解説します。
1on1では何を話すべき?テーマやネタは?
1on1ミーティングは、評価や業務報告の場ではなく、部下の成長を後押しするための時間です。そのため、部下の話したいテーマを中心に、対話を進める必要があります。
1on1で話すテーマ例として、以下が挙げられます。
- 業務を進めるなかで感じた課題や悩み
- 成功体験や達成感を得たエピソード
- 今後やってみたい仕事やキャリアの希望
- 職場環境や人間関係に関する気づき
また、対話を行うときは「最近、一番やりがいを感じたことは?」といったオープンクエスチョンをすると効果的です。選択肢を限定しない質問をすることで、部下は自分の考えや気持ちを率直に表現できます。
「1on1で話すことがない」と悩んでいる上司や人事担当者の方は、以下の記事を確認してみてください。その原因と具体的な対策を解説しています。

1on1でやってはいけないことはある?その回避法は?
1on1でやってはいけないことは、一般的な評価面談のように、評価・指導中心の時間にしてしまうことです。
「1on1は評価・指導の時間」と認識されてしまうと、部下は本音を隠して無難な話しかしなくなり、対話の質が下がってしまいます。このほかにも、以下のような行動や態度は避けるべきです。
- 上司が一方的に話し続ける
- 部下の話を途中で遮る
- 否定的なフィードバックをする
- 1on1の予定を変更、またはキャンセルする
- 雑談だけで終わる
これらを防ぐためには、上司自身が「1on1は部下のための時間」という強い意識を持ち、あらかじめ目的や進め方を部下に共有しておくことが大切です。
部下との対話では、成果を認める言葉をかけたり、共感の姿勢を示したりすることで、安心して話せる雰囲気をつくれます。
以下の記事では、1on1が無駄と感じる理由と対策を詳しく解説しています。有意義な時間にするための準備方法も紹介していますので、本記事と合わせて確認してみてください。

まとめ:目的に応じた進め方で、部下が主役となる1on1を目指そう

1on1ミーティングは、上司主導で進めるのではなく、部下が「主体的に考え、話し、行動できる」ように進行する必要があります。改めて、1on1の進め方を確認しておきましょう。
また、部下の成長段階に応じて、質問や提案するネクストアクションを柔軟に変えることも大切です。事前に1on1の進め方を確認し、自分が「どのような姿勢で部下に向き合うべきか」を意識して臨みましょう。
>>「目的・成長段階に応じた1on1ミーティングのやり方」を確認する
人事の立場としても、組織全体のマネジメント状況を俯瞰して把握するために、1on1ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。