最近では、若年層や新入社員の離職率の高さが懸念されています。仕事や人間関係の悩みを抱え、誰にも相談できずに退職してしまうケースも少なくありません。
多くの企業が社員の定着率向上を課題としている現在、1on1ミーティングの導入を検討している経営者や人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、1on1ミーティングについて、目的や導入方法について解説していきます。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行なう個別面談のことです。アメリカのシリコンバレーが発祥で、優秀な人材の流出防止を目的として生まれた手法です。
1on1ミーティングの開催頻度に決まりはありませんが、週に1度から月に1度の間隔での開催が推奨されています。面談では、上司と部下が1対1でコミュニケーションをとることで、部下の悩みの発見や、社員としての成長促進を図ります。
参考:1on1ミーティングとは?メリット・デメリット、効果的な運用方法を紹介 | THANKS GIFT エンゲージメントクラウド
1on1ミーティングと1対1の面談の違い
近年、日本でも1on1ミーティングの導入企業は増えているものの、「1on1ミーティングと1対1の面談に違いはあるの?」と疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。
1on1ミーティングと1対1の面談には、共通点と異なる点があります。
従来の1対1の面談は、上司による部下の評価や、担当業務の進捗確認が主な目的でした。面談は上司目線で進み、部下は上司の話を聞いたり、ときおり質問に答えたりする程度の面談内容でした。
対して、1on1ミーティングの主役は部下です。業務に関すること、仕事やプライベートで抱えている悩みなどを、部下が能動的に話す点が1on1ミーティングの特徴といえます。
参考:1on1ミーティングとは? 意味やメリット、話すことがない場合の対処法や事例など|企業のご担当者様(アデコ)
1on1ミーティングが注目されている理由
グローバル化の影響を受け、同業他社間の競争が激化している現在、多くの企業が自社の先行きに不安を抱えています。そのため、社員の所属意識を高めることや、主体的な働きを促すことは、安定した事業経営に欠かせない要因になってきています。
また、1on1ミーティングが注目されている背景には、少子高齢化も関係しています。労働人口が減少している現在、優秀な社員を揃えることは企業にとって重要な課題の一つです。「社内には自社の一員としての自覚を持ってもらいたい」「自社に不満を抱えて、他社に転職されたら困る」といった考えを持った企業が、1on1ミーティングの導入を検討する傾向にあります。
参考:1on1ミーティングを効果的に実践するポイントや具体的な進め方をご紹介
1on1ミーティングを導入する目的5選
1on1ミーティングでは、主に以下の5つの導入目的が存在します。
- 部下の自発的成長の促進
- 上司と部下の関係性の構築
- 部下のモチベーションアップ
- 社員の定着率アップ
- チーム全体のパフォーマンス向上
それぞれ詳しくみていきましょう。
目的1:部下の自発的成長の促進
1on1ミーティングでは、部下の成長を大きな目標の一つとみなします。上司と部下が1対1で対話することで、部下は多くの気づきを得られます。仕事に自信が持てない部下であっても、上司からのフィードバックによって、自分の長所や会社への貢献具合に気づけることも少なくありません。
目的2:上司と部下の関係性の構築
上司と部下の良好な関係は、互いのためだけではなく、社内全体にプラスの影響を与えられます。上司に対してオープンな気持ちになれていなかった部下が、1on1ミーティングを重ね、悩みや不安を上司に打ち明けられるようになった事例は数多くあります。
上司と部下の関係が構築されていれば、上司は部下の悩みに早く気づき、問題が大きくなる前に解決の糸口を提案することも可能です。また、仕事や社内の人間関係で悩んでいる部下が、「信頼できる上司がいるから、もう少し頑張ろう」と前向きな気持ちになれることもあるでしょう。
目的3:部下のモチベーションアップ
1on1ミーティングを通じて上司と話すことで、部下は上司が自分の努力を見ていることや、評価してくれていることに気づけるでしょう。
社会人の中には「自分の頑張りを誰も見ていない」と落ち込む人も少なくありません。努力を認めてもらえない状況が続くと、やりがいを感じられなくなり、場合によっては辞職を検討する人も出てくるでしょう。
1on1ミーティングを通じて、上司が自分の成長を認めてくれていると気づければ、部下の仕事に対するモチベーションは向上していきます。
部下のモチベーションアップには他にも方法があります。詳細については以下の記事を参考にしてみてください。
目的4:社員の定着率アップ
1on1ミーティングには、社員の定着率を高める効果が期待できます。若手社員や新入社員の中には、不安や悩みを一人で抱え込み、上司に相談することなく退職してしまう人も少なからず存在します。
信頼できる上司と1対1で話せる場が定期的に用意されていれば、部下は自分の悩みを打ち明けられるようになり、退職以外の解決方法を見つけられるでしょう。
目的5:チーム全体のパフォーマンス向上
マネジメント的立場にある社員やベテラン社員が、手分けをして部下と1on1ミーティングを実施していければ、チーム状態を細分化して把握できます。
満足して働いている社員が多いほど、チーム全体のパフォーマンスは高まります。1on1ミーティングを通じて、個々人のモチベーションや会社への満足度を高められれば、結果的にチーム全体のレベルが底上げできます。
参考:1on1ミーティングとは?メリット・デメリット、効果的な運用方法を紹介 | THANKS GIFT エンゲージメントクラウド
1on1ミーティングの進め方
1on1ミーティングの効果を実感するためには、基本とされている進め方に従う必要があります。
ここからは、1on1ミーティングの進め方について説明していきます。
1:テーマの設定
面談におけるテーマは、部下の意見や考えを考慮しながら設定します。部下にテーマを設定してもらっても構いません。
1on1ミーティングのテーマとしては、以下の例が挙げられます。
- 部下の精神状態の把握
- 社内での人間関係
- 仕事内容について
- 部下のキャリアプラン
- 仕事とプライベートを掛け合わせた相談
1on1ミーティングでは、業務や会社に直結する内容だけでなく、プライベートに関する内容がテーマになるケースもあります。
2:事前準備
1on1ミーティングは、業務の合間に実施するのが一般的です。面談時間が限られているため、事前準備を怠ると面談の意義を感じられないまま終了してしまいます。
部下側は、話したい内容に優先順位をつけておいたり、話す内容を整理したりしておくといいでしょう。上司側は、事前にアドバイスの方向性を定めておくと、ミーティング内容の充実化が図れるでしょう。
3:面談
面談では部下が中心に話し、上司は聞き役に徹するよう心がけましょう。部下が話しにくそうにしている場合は、話しやすいようにフォローするのも上司の役目です。
上司は、面談が建設的な議論の場となるように、注意を払う必要があります。話題が脱線し、核心的な内容まで議論が深まっていないと感じたら、話題を転換し、部下の内面を引き出せるような問いを投げかけましょう。
4:今後の計画を立てる
面談終了後は振り返りを行ない、改善点があれば次回の面談に活かしていきます。振り返りでは、「打ち明けやすい環境であったか」「議論は建設的であったか」「面談をした意味はあったか」などを振り返って評価します。
早急に改善しなければならない問題が浮上した場合や、部下の精神状態の不安定さが懸念される場合は、面談の頻度を増やすことも検討してみましょう。
参考:1on1ミーティングとは?メリット・デメリット、効果的な運用方法を紹介 | THANKS GIFT エンゲージメントクラウド
1on1ミーティングにおける上司の役割
1on1ミーティングの主役は部下といえますが、実りある面談にするためには、上司が自らの役割を理解していることが重要になります。
そこでここからは、1on1ミーティングにおける上司の役割について解説していきます。
1:建設的な面談になるようリードする
面談中に雑談や日常会話を多少入れるのは、問題ありません。ただし、面談テーマに関係のない内容を長時間話したり、雑談が長引いたりしては、1on1ミーティングの趣旨から外れてしまいます。
たとえ上司と部下が共通の話題で盛り上がった場合でも、ミーティングの趣旨に外れていると感じたら、上司は頃合いを見て話題の中心をテーマに戻す役割があります。
2:部下が中心に話す
面談では部下が上司に対して、抱えている悩みや不安を主体的に話すことが求められます。
上司は部下に的確なアドバイスを与え、質問に答える立場にありますが、ミーティング時間も限られているため、長々と話さないよう気をつけましょう。
3:ミーティングを継続する
1on1ミーティングは1度実施したら終了ではなく、継続が重要です。積み重ねることで、普段の会話内容や業務での関わり方にプラスの変化が表れてくるはずです。
1on1ミーティングを重ねるうちに、部下の上司に対する信頼感は向上していきます。「新しい企画を上司へ提案してみよう」「営業スキルの高め方を相談してみよう」といったように、部下のオープンな気持ちを引き出すためにも、上司はミーティングの継続を通じた人間関係の構築を図っていきましょう。
参考:1on1ミーティングとは?目的や進め方を紹介 | 働き方改革ラボ
1on1ミーティングにおける3つの注意点
多くの企業で導入が検討されている1on1ミーティングですが、気をつけなければならない注意点も存在します。
ここでは、1on1ミーティングにおける3つの注意点を紹介していきます。
注意点1:活用が難しいため、挫折しやすい
1on1ミーティングでは、上司にコーチングスキルや傾聴力が求められます。スキル不足の状態で1on1ミーティングを実施しても、期待された効果は得られず、負担だけが増えてしまいます。
そのため、1on1ミーティングを導入したい場合は、上司側への教育や研修を提供する事前準備が大切です。
また、1on1ミーティングは、導入しても効果が出るまでに時間がかかるものです。効果が出ないからといってすぐに断念するのではなく、長期的な活動として取り組んでいきましょう。
注意点2:上司と部下の負担になる
1on1ミーティングを開催することで、本来の仕事が進まなかったり、スケジュール調整に時間が割かれたりするデメリットも発生します。心優しい上司の中には、部下の悩みを真剣に聞くあまり、自分の仕事がおろそかになるケースもあるでしょう。
1on1ミーティングを実施する際は、無理のない頻度や時間で開催し、上司にも部下にも過度な負担をかけない配慮が求められます。
注意点3:上司と部下の相性が合うとは限らない
1on1ミーティングでは上司と部下が1対1で話すため、お互いの相性が重要になります。部下が上司に対してフィーリングや相性の不一致を感じてしまうと、本音で語らず、中身の薄いミーティング内容となってしまうでしょう。
経営者や人事担当者は、1on1ミーティングの対象となる部下と上司の相性を見きわめ、必要に応じて担当上司を変更するなどフレキシブルな対応を心がけてみてください。
参考:1on1ミーティングとは? 意味やメリット、話すことがない場合の対処法や事例など|企業のご担当者様(アデコ)
まとめ
若者の早期離職や仕事によるストレスが問題になっている現在、1on1ミーティングへの注目が集まっています。
部下が気軽に上司へ悩みや不安を相談できることで、働きやすくなったと感じるケースは少なくありません。また、面談を通して「上司は自分を評価してくれている」と気づければ、仕事に対するモチベーションもアップするでしょう。
1on1ミーティングは、成果が出るまでに時間がかかるため、長期的な視点を持って取り組む意識が重要です。
1on1ミーティングを活用し、社員の持続的な成長を図っていきましょう。
参考:1on1ミーティングとは?目的や進め方を紹介 | 働き方改革ラボ
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