若手社員の育成は、将来の中核人材確保と組織の活性化につながる企業成長の要です。
本記事では、若手育成における5つの課題と実際の企業における育成事例、効果的な育成方法について解説します。
VUCA時代における若手社員育成の重要性
現代のビジネス環境は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った「VUCA時代」と呼ばれています。
DXやグローバル化の加速、パンデミックや自然災害に代表される予期せぬ出来事の発生など、社会が急激に変化する状況下では、企業においても柔軟な適応力が求められます。
同時に、65歳以上の高齢者が総人口の約3割を占める深刻な少子高齢化に直面しており、採用人材の定着による労働力の確保も重要課題の一つです。
しかし、若手社員の早期離職傾向や価値観の変化により、従来の長期的・画一的観点からの人材育成方法は通用しにくくなってきました。
終身雇用制度を前提とした人材育成が機能しにくくなっている現在、企業においては以下2つの目的から短期間での効果的な人材育成の重要性が高まっています。
- 若手社員の早期戦力化
- 早期の成果達成による若手社員のモチベーションと定着率の向上
若手社員の育成において企業が抱える5つの課題
労働政策研究・研修機構が2024年に行った企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員に対する意識調査の結果から見えてくる、人材育成において企業が抱えている課題は次の5つです。
- 人材育成計画が不十分である
- 若手社員育成に必要な時間や指導者が不足している
- 若手社員の多様な価値観に対応しきれない
- 若手社員の早期離職
- 若手社員のメンタルヘルス管理が困難である
それぞれ解説します。
人材育成計画が不十分である
同調査によると、人材育成に関する取り組みにおいて「新卒者の育成計画の作成」を行ったと回答した企業は58.3%です。裏を返せば、4割強の企業が育成計画を作成しないまま人材育成を行っていることになります。
「新卒者を対象とした研修制度や人材育成に向けた取組内容の見直し」を行っている企業も24.0%で、明確な人材育成計画の策定から課題となっている可能性もあります。
若手社員育成に必要な時間や指導者が不足している
同調査で「若手社員の指導・育成に関する企業としての課題」として4割近くの企業がもっとも多く挙げた回答が「若手社員の指導・育成にかけられる時間が不足している」です。
育成の中心となる先輩の中核社員や管理職は、自身の業務やほかの社員の管理と並行して育成を行わなければなりません。若手社員を育成したくとも、業務の忙しさから指導・育成に十分な時間をかけられない状況となっています。
若手社員の多様な価値観に対応しきれない
同調査で「指導・育成時に困っていること」の2位として挙げられているのが「価値観や勤労観がわからない」です。
今の若手社員は、細かな指導や具体的なフィードバックを求める人が多く、より受動的な傾向が見られます。同時に会社一筋という考え方は薄れ、自分のキャリアを重視する傾向が強まっています。
こうした若手社員の価値観や勤労観の多様化によるモチベーションのギャップに、育成側が対応しきれない点も課題の一つです。
若手社員の早期離職
同調査で挙げられた課題には「指導・育成しても会社を辞めてしまう」というものもありました。
厚生労働省が公表した新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)によると、大卒就職者の3年以内の離職率は31.2%にのぼります。
その要因の一つと考えられるのが、会社に対する帰属意識の低下です。東京商工会議所が行った2023年度新入社員意識調査では「チャンスがあれば転職したい」と回答した人が約20%と、10年前より転職志向が高まっています。
業務時間を割いて育成にあたった若手社員が早期に離職すると、育成に投資した時間とリソースが無駄になるばかりではなく、育成側のモチベーション低下にもつながります。
若手社員のメンタルヘルス管理が困難である
同調査ではいわゆる「Z世代」と呼ばれる若手社員の特徴として、IT・デジタル関連のスキルや成長意欲の高さを上げた半面「打たれ弱い」と回答した企業が多く見られました。
前述の新入社員意識調査では、理想の上司像として「丁寧に指導を行うこと」「優しく丁寧に接すること」などが挙げられており、育成側の時代の上司像との剥離により若手社員の扱いに難しさを感じるケースもあるようです。
若手社員の育成で押さえておくべき5つのポイント
前述した課題を踏まえ、企業が若手社員の育成において押さえておくべきポイントは次の5つです。
- 会社が期待する人材像と育成課題を明確にする
- 的確なフィードバックを与える
- 企業側の環境整備を行う
- 若手社員個人に合わせた育成を行う
- 定期的な状況把握の仕組みを作る
それぞれ解説します。
会社が期待する人材像と育成課題を明確にする
人材育成で期待する効果を出すためにまず必要なのが、自社の経営戦略に基づいた人材像の定義と、必要な育成課題の特定です。
人材像と育成課題を明確にすることで、現状から目標に至る効果的な育成プランを立てられます。同時に、若手社員も自己の成長方向を理解し、主体的に学習や経験を積めるため、育成時間を短縮できます。
たとえば「新事業の立ち上げ」という経営課題に対して「新規プロジェクトリーダーの育成」を目標とし、プロジェクト管理能力や顧客志向を重視した評価基準を作成するといった育成計画が考えられるでしょう。
的確なフィードバックを与える
産業能率大学総合研究所が行った「新入社員の会社生活調査」においても、「上司や先輩に期待すること」の上位に「褒めてくれること」「率直かつ建設的なフィードバック」が挙げられています。
「できるようになって当たり前」ではなく、スモールステップで指導し、具体的かつポジティブなフィードバックを与えるアプローチが有効です。若手社員が自己の強みや改善点を明確に理解し、モチベーションを維持できれば、早期離職の防止につながります。
企業側の環境整備を行う
「若手社員の育成」というと、育成対象の若手社員に焦点を合わせがちですが、効果的な人材育成のためには企業側の環境整備も欠かせません。若手社員のモチベーションを維持し、早期離職を防ぐためには、以下のような施策が有効です。
- 教える側のローテーションを行い、育成側の負担増大と育成スタイルの偏りを防ぐ
- メンター制度の導入や1on1ミーティング、社内SNSなど意見発信・交流の場を提供する
- 個別化されたキャリア支援など、ステップアップが見える制度をつくる
若手社員個人に合わせた育成を行う
近年の若手社員は価値観や特性が多様化しており、画一的な育成では効果が限られます。
たとえば、以下のような個々の特性や強み・弱みに合わせた対策が考えられるでしょう。
- チャレンジ精神旺盛な社員には新規プロジェクトへの参画機会を提供する
- 慎重で失敗したくない傾向がある社員にはスモールステップから始める
- 受け身傾向がある社員には小さな権限から徐々に任せていき、自主性を育む
- 帰属意識が低い傾向がある社員にはキャリアパスを明確に示し、将来の成長機会を可視化する
定期的な状況把握の仕組みをつくる
メンタル面に弱さがある若手社員の育成には、業務内容のインプットを行うだけではなく、メンタル面でのサポートや社会人としての考え方についての育成も必要です。
企業への帰属意識を高めて離職を防ぐためには、1on1面談など定期的に話せる機会を設けるとともに、定期的な状況把握を行う仕組みづくりが必要となります。
状況把握の方法としては、アンケートやストレスチェックのほか、サーベイの導入と定期的な実施も有効な手段です。
企業における若手社員の育成事例7つ
一般的に普及している人材育成の施策は、OJTやメンターシステム、若手社員向けの研修システムなどです。これらの基本的な施策とあわせて、独自の取り組みを展開している企業もあります。
ここでは、大企業の人材育成事例と、厚生労働省が公開している中小企業の人材育成事例を見ていきましょう。
企業名 | 主要な人材育成施策 |
---|---|
ヤフー | 週1回30分、部下が主導で自身の考えを話す点が特徴の「1on1ミーティング」 |
ソニー | 自ら設定したテーマに取り組み成果を発表する「新人テーマ研修」 |
ワークスアプリケーションズ | 成長スピードを軸にした半年スパンの評価制度で、最短2年でマネジメントクラスに昇進可能な「ライト・パス制度」 |
三菱商事 | ・研修を受けた先輩社員が講師として新入社員を指導する「インストラクタートレーニング」 ・入社3年目の若手社員を対象に、基礎力強化を目的とした2段階の「総合研修プログラム」 |
サイバーエージェント | 20代社員の成長を目的とした全社横断組織による独自の育成・評価施策「YMCA」 |
山田製作所 | ・就業後やお昼休みを利用し技術・技能研修を行う「吉岡教室」 ・他社も交えた半年間のOJT/Off-JTによる新入社員研修 ・目標と取り組みを年1回泊まりがけで設定・計画する「目標チャレンジシート」の導入 |
浅野製版所 | ・内定時の面接所見・適性検査の結果をすべて新入社員に開示 ・ヒアリングと適性検査により効果的な社員同士の組み合わせで教育担当者、教育方針を決定 ・新入社員の特性などの教育担当者向け教育の実施 ・研修後は全部署からのフィードバックを本人に提供 |
このように、企業では若手社員の主体性やフィードバックに焦点を当てたさまざまな取り組みが実施されています。
特に浅野製版所の事例では「期待する人材像を伝える」「的確なフィードバック」「個人に合わせた教育担当・方針」「育成側の教育」など、前述した人材育成のポイントを多く押さえています。
人材育成における課題を解決に導く「ミキワメウェルビーイングサーベイ」
若手社員の育成においてスキルアップと並び重要なのが、メンタル管理やフォロー体制の構築です。「ミキワメウェルビーイングサーベイ」は、若手社員育成で生じやすい課題の解消に役立ちます。
ミキワメウェルビーイングサーベイでできること | 課題解消のポイント |
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適切な人材育成計画の立案 | ・チームごとの分析データを活用し組織に必要な人材の育成ニーズを把握 ・人材ニーズとのギャップの把握により効果的な育成計画の立案が可能 |
育成時間の効率化 | ・AIによる分析と提案機能で、個々の従業員に対する最適な育成アプローチを提示 ・従業員やチームの状況を一目で把握し、迅速な対応が可能 |
価値観の把握 | ・従業員の性格や価値観を可視化でき、個々の従業員に合わせたアプローチが可能 ・個人の価値観と業務・役割との適合度を分析し、適材適所の配置に活用可能 |
離職防止 | ・3分間のサーベイで従業員の心理状態や満足度をリアルタイムかつ継続的にモニタリング ・AIによる分析で離職リスクの高い従業員を早期に特定 |
メンタル面のサポート | ・実名制の定期サーベイにより、メンタルケアが必要な兆候のある従業員を早期に特定 ・AIが個人の性格や状況に応じた具体的なケア方法を提案し、きめ細かいサポートを実現 |
ミキワメウェルビーイングは若手社員の定期的な状況把握を可能とし、一人ひとりの特性と価値観を踏まえた効果的な人材育成をサポートします。
ツールの導入で若手と組織が成長する好循環を生み出そう
ミキワメウェルビーイングサーベイの導入により、個人に合わせた適切な育成が可能です。若手の成長と組織の発展の好循環を生み出し、企業の競争力向上と若手社員の定着率改善の実現を目指せます。
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