ツァイガルニク効果とは、すでに達成したことよりも未達成の事柄が気になってしまう心理現象です。やり残した仕事が気になるのもツァイガルニク効果が関係しています。
本記事では、ツァイガルニク効果が起こる理由やメリット・デメリット、ビジネスシーンで活用する方法や注意点について解説します。
ツァイガルニク効果とは
ツァイガルニク効果とは、達成してやり遂げた出来事よりも、達成できていない事柄や中断された物事のほうがより強く記憶に残り、気になってしまう心理的な現象を指します。
テレビCMでよく見かける「続きはWebで」というフレーズは、一部の情報だけを映像で流し、視聴者により強く関心を抱かせるツァイガルニク効果の代表的な例です。
ツァイガルニク効果は、心理学者のクルト・レヴィン氏とブルーマ・ツァイガルニク氏によって提唱されました。「ツァイガルニック効果」「ゼイガルニック効果」「ゼイガルニク効果」などの名称でも呼ばれています。
ツァイガルニク効果で起こる心理的な現象を上手に活用すれば、営業やマーケティングのほか、勉強・恋愛の面でもよい効果をもたらします。
ツァイガルニク効果が起こる理由
達成できていないことや途中で諦めてしまったことがより記憶に残るツァイガルニク効果ですが、「心理的リアクタンス」という心理現象が高まるほど起こりやすいとされています。
心理的リアクタンスとは
「心理的リアクタンス」とは、心理学者のジャック・ブレーム氏によって提唱された心理現象で、自分の行動が制限されると、より行いたいとの心理的反発が生まれる状態を指します。
具体的な例としては、「危険だから行ってはいけない」と言われた場合、行ってはいけないと言われたことに対して心理的反発が生まれ、余計に行ってみたくなる気持ちが強くなることが挙げられます。
ツァイガルニク効果は、心理的リアクタンスが起こることで、達成したことよりも達成できていないことや途中で諦めてしまったことへの関心が強くなり、その気持ちを満たすための行動を起こそうとします。
ツァイガルニク効果が起こるシーン
ツァイガルニク効果はどんなシーンで起こりやすいのか、例をあげてご紹介します。
- 仕事を途中までしか終わらせていない状態で帰宅すると気になってしまう
- 仕事中に別の依頼を頼まれるとそれまで行っていた作業を早く終わらせたいと感じる
- 買いたい商品が売り切れになったことで以前よりも欲しい気持ちが強くなる
- 途中までしか聞くことができなかった話の続きが気になる
- ドラマやアニメの第1話目を見るとその続きも見たくなる
- 知りたい情報を小出しにされるとすべての情報を知りたいと思うようになる
- 恋愛で自分から振った相手よりも振られた相手のことをよく覚えている
人は達成できていないことにより執着します。ツァイガルニク効果は、仕事や日常生活など、身近なところで頻繁に起こる現象といえます。
ツァイガルニク効果によるメリット
ツァイガルニク効果の心理現象が起こりやすい例をご紹介しましたが、活用すれば以下のようなメリットが得られます。
- 生産性が高まる
- モチベーションの維持につながる
- マーケティングで効果を発揮する
生産性が高まる
ツァイガルニク効果は仕事などの生産性を高めるメリットがあります。
仕事中に新規で仕事の依頼を引き受けた場合、これまでやっていた仕事は中途半端になります。中途半端な仕事が気になる心理状態が生まれると、再開したときにはツァイガルニク効果によって高い集中力を維持でき、効率的に業務を遂行できるようになるのです。
また、「これまで行っていた仕事を早く終わらせたい」との欲求も高まるため、結果として新規で引き受けた仕事も効率的に行えるようになり、業務全体の生産性を高めることができます。
モチベーションの維持につながる
ツァイガルニク効果によって仕事などの生産性を高めることができれば、物事に取り組むモチベーションの維持や向上につながるメリットが得られます。
中途半端なままの状態になった事柄があると気になる心理が生まれますが、「早く終わらせたい」「解決したい」との強い思いを上手にコントロールすることで、高いモチベーションを維持したまま物事を解決へと導けるようになるでしょう。
「モチベーション」については以下の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
マーケティングで効果を発揮する
ツァイガルニク効果はマーケティングの手法としても高い効果を発揮します。CM・広告を制作する際、情報を小出しにする手法を使えば、視聴者や顧客の「より続きが知りたい」との気持ちを高めることが可能です。
意識的に不完全な状態を視聴者や顧客に与えれば、高い関心をもったままの状態を作り出せるため、販売個数の増加や新規顧客獲得などの成果も期待できます。
ツァイガルニク効果によるデメリット
ツァイガルニク効果をうまく活用すれば多くのメリットを得られますが、以下のようなデメリットも存在します。
- ストレスが増える
- 作業効率が低下するおそれがある
デメリットも確認したうえで取り入れることが大切です。
ストレスが増える
ツァイガルニク効果が起こるのは、未達成や中途半端な状態の事柄がある場合です。うまく活用すれば生産性の向上やモチベーションの維持などに役立つ一方で、仕事などをやり残した状態が続くとストレスの原因にもなります。未達成の仕事が増えれば増えるほどストレスが蓄積される可能性があることから、モチベーションの低下につながる恐れもあります。
ツァイガルニク効果は、人によって効果が得られる場合と得られない場合があるため、自分や周りの人にとって有効に働くのかを見極めながら行わなければなりません。
作業効率が低下するおそれがある
ツァイガルニク効果は生産性の向上に期待がもてますが、中途半端な状態で仕事などを残すことにより、集中力が途切れて余計に時間がかかってしまう可能性があります。また、ムダな業務が増え、作業効率が低下するリスクも考えなければなりません。
生産性の向上に期待してツァイガルニク効果を活用する場合でも、メリットが得られず失敗してしまうおそれもあります。これまで行っていた業務や途中で依頼された仕事の作業時間をしっかり把握・管理することで、生産性を低下させないよう努力する必要があります。
ツァイガルニク効果をビジネスシーンで活用する方法
メリットだけでなくデメリットもあるツァイガルニク効果ですが、ビジネスシーンにおけるテクニックとして活用されています。営業活動やマーケティングなど、それぞれの活用方法についてご紹介します。
営業活動におけるツァイガルニク効果
営業活動におけるツァイガルニク効果は、既存顧客や新規顧客に対して連絡する際に活用されています。アポイントを取る際、日時を決めるだけではなく、先方が興味をもちそうな商品やサービスなどの概要を伝え、それ以外の詳細は訪問時に説明する旨を事前に伝えておきます。
概要のみを先に伝えることで、顧客は詳細がより気になる心理状態になるため、商品やサービスに対して興味をもってもらいやすくなるというわけです。
テレビ番組におけるツァイガルニク効果
ツァイガルニク効果はマーケティングにも有効活用できます。有名な事例の1つはテレビ番組のなかでもっとも盛り上がりそうなシーンの前にCMを流す手法です。
クイズ番組で答えを発表する際やドラマのクライマックスの前にCMを挟むことで、番組の続きが気になる視聴者を引きつけられます。これまで見てきた内容よりも見ていない続きが気になって仕方がない心理状態をうまく活用した事例です。
Webサイトにおけるツァイガルニク効果
ツァイガルニク効果はWebサイトにおいても有効活用されています。
専門性の高いニュースを扱うサイトでは、記事の途中まで読めるようになっており、続きを読みたい場合は会員登録や月額料金を支払うことで閲覧が可能となります。記事を途中まで読ませる点がポイントで、続きの内容を知りたいとの欲求を抱かせるテクニックです。
漫画や小説などを扱うマーケットプレイスも同様で、第1話を無料で公開し、続きを読みたい人には購入を促します。第1話を読むことで、その後が知りたいと思う読者の気持ちをうまく取り込んでいます。
また、Webサイトの記事タイトルも「業務を効率化できるテクニックとは?」など、本当に知りたい答えの部分をあえて書かずに未完成の状態にしておくことで、読んで内容を知りたいと思う読者を誘導できます。
セミナーやスピーチにおけるツァイガルニク効果
セミナーやスピーチにおいてもツァイガルニク効果は活用できます。話をはじめる前に、「重要な点はのちほど詳しく紹介します」と伝えることで、聞き手に重要な情報を聞き漏らしたくないとの欲求を抱かせるのです。それにより、聞き手は話し手のセミナーやスピーチをより集中して聞くようになります。
業務効率化におけるツァイガルニク効果
業務の効率化を高めたい人は、仕事を完了させずにあえて残しておく方法が考えられます。残った仕事を早く終わらせたいとのツァイガルニク効果による心理現象が生まれるため、スピーディーに終えられる可能性があります。
ただし、いつもツァイガルニク効果を狙い、あえて仕事をやり残したままにしていると、人によっては大きなストレスに感じることもあります。締め切りが迫っている仕事や後回しにしている仕事に対して使うなど、活用方法を事前に決めておくとストレスが軽減されるでしょう。
ツァイガルニク効果を取り入れる際の注意点
ツァイガルニク効果は、営業活動やマーケティングなどに応用して関わる人の欲求を喚起できるほか、業務効率化のために自ら取り入れることも可能です。しかし、誤った取り入れ方をした場合、逆効果になるため注意が必要です。
顧客や視聴者にツァイガルニク効果を使う際の注意点
顧客や視聴者に対してツァイガルニク効果を応用する場合、使いすぎると逆効果になり、よい結果が得られない状況に陥ります。
たとえば「答えはCMのあとで」とのフレーズが多いテレビ番組が乱立した場合、テレビ制作側が何度も同じ手法を繰り返すことで、視聴者は心理的なストレスを感じます。ストレスを感じると、その手の番組を見たいとの気持ちが薄れ、視聴率の低下につながります。
ツァイガルニク効果を活用する際には使いすぎに注意し、数を絞って取り入れる必要があります。
参考:mitsucari「 ツァイガルニク効果が良い影響をあたえる具体例とは?様々なシーンで活用可能」
自らツァイガルニク効果を取り入れる際の注意点
ツァイガルニク効果によって業務効率化や生産性を高めたい場合の注意点として「慣れ」が挙げられます。ツァイガルニク効果を狙って何度も同じ行動をとっていると慣れが生じてしまい、思ったほどの効果が得られなくなるのです。慣れを回避してツァイガルニク効果を継続的に得るには、仕事のパターンをいくつか用意しておくことがおすすめです。
たとえば、仕事にとりかかる前に制限時間を設けておき、作業が終わってなくても時間がきたら休憩をとります。強制的に休憩を挟むことで途切れた集中力が高められ、ツァイガルニク効果によってモチベーションをアップさせられるというわけです。
休憩を取り過ぎて作業が終わらなかったのでは意味がないため、タスク管理とともに時間の管理はしっかりと行い、適切な休憩時間を設定するとよいでしょう。
また、区切りのいいところまで仕事が進んだ場合、そこで終わりにするのではなく、次の仕事も少しだけ行ってから業務を終了させましょう。あえて「やりかけ」の仕事を作って業務を終えることで、ツァイガルニク効果が発揮しやすくなります。
まとめ
ツァイガルニク効果は、すでに達成した事柄よりも、やり遂げていない未達成の事柄がより気になる心理的な現象です。日常生活から営業活動やマーケティングなどのビジネスシーンにいたるまで幅広く活用されています。メリットだけでなくデメリットにも注意を払い、ツァイガルニク効果を上手に取り入れましょう。
参考:
ツァイガルニク効果が良い影響を与える具体例とは?様々なシーンで活用可能 – 人事担当者のためのミツカリ公式ブログ
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