女性活躍推進法をご存知でしょうか。
女性の社会的地位向上は現代日本の重要な課題です。
そこで、昨今改正された女性活躍推進法について当記事では徹底解説していきます。
女性活躍推進法とは?概要を解説!
女性活躍推進法は、政府、自治体、民間企業などに対し、女性の活躍に向けた行動計画の策定を義務づけた法律です。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。「職場で活躍したい」と希望する女性が、その力や個性を十分に発揮できるような社会の実現に向けて、2015年に成立しました。現在は、労働者数301人以上の事業主に義務付けられています。
なお女性活躍推進法は10年間の時限立法(一時的な事態に対応するため、有効期間を限定して法律を定めること)です。
女性活躍推進法の条文を解説
女性活躍推進法の条文は下記です。
【引用】 自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること(以下「女性の職業生活における活躍」という。)が一層重要となっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定めることにより、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって男女の人権が尊重され、かつ、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することを目的とする。
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=427AC0000000064
女性活躍推進法の背景
女性活躍推進法施行の背景はいくつかあります。
1986年に施行された「男女雇用機会均等法」で、職場の「性別による不平等」をなくし、男女格差を是正することが求められました。この法律をさらに進める打ち手として成立したのが「女性活躍推進法」です。
少子高齢化に伴う労働者不足の加速化
少子高齢化によって慢性的な人手不足が発生しており、事態は深刻化をたどる一方です。「グローバル化やダイバーシティへの対応」や「職場での各種ハラスメントに対処」といった目的で女性活躍を推進している企業もあります。
女性の潜在的能力の発揮
女性は男性よりもライフイベントが多いです。彼女らの「働く意思はあっても働けない」という状況は、昨今の日本社会全体の課題です。
このような女性の能力発揮が阻害されている要因を取り除くのも、「女性活躍推進法」の狙いの一つでもあります。
ジェンダーギャップ指数が低水準
日本は経済的な性差が大きく、女性管理職が非常に少ないという問題を抱えていました。女性の管理職割合も全体の1割程度しかありません。
実際、ジェンダーギャップ指数(男女格差を測る指標)は153ヵ国中121位と、先進国にしては非常に低水準です。
このような事態を是正するためにも女性活躍推進法が施行されました。
女性活躍推進法に期待される効果
女性活躍推進法に期待されるのは、女性が自身の希望によって個性やスキルを社会で十分発揮できるような環境作りです。政府は「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合を30%程度とする」という目標を掲げています。しかし、2018年3月時点で、都内の課長職以上の女性の割合は8.6%と、30%にはほど遠い数値です。
この法律では、女性が自らの意思で働き、個性と能力を十分に発揮することが、これからの社会でより重要になってくると位置づけています。
<女性活躍推進法を構成する3つの基本方針>
- 採用や昇進が平等に行われ、職場環境においても平等が配慮されるべきこと
- 約半数の女性が出産や育児を理由に離職するといわれますが、女性にも継続的な勤務や自己実現のために努力する権利があります。「採用や昇進が平等に行われること」は、従来の性別による固定観念を排除し、女性が働きやすい環境をつくっていくことを意味しています。
- 仕事と家庭が両立できる環境を作ること
- 近年、ワーク・ライフ・バランスが重視されつつありますが、女性が不自由なく働くためには、出産や子育てなどのプライベートと仕事を両立できる環境が必要です。「仕事と家庭が両立できる環境をつくること」は女性が社会で活躍できる労働環境を整えようという考え方を示しています。
- 女性本人が、仕事と家庭の両立に関する意思決定ができること
- 「女性が仕事と家庭の両立を選べること」は、本人が希望した場合には、それが実現できる環境を整えようという考え方です。働くことを強制するのではなく、あくまでも本人の意思を尊重しよう、ということです。
女性活躍推進法で企業が取るべき対応
女性活躍推進法で企業が取るべき対応は下記の5つです。
- 自社の現状把握・課題の分析
- 計画を作成・社内への周知と外部への公表
- 都道府県労働局への届出
- 実際に取り組みを行い、効果を測定する
- 女性の活躍に関する情報を公表する
それぞれを解説していきましょう。
自社の現状把握・課題の分析と改善
自社の問題点を把握し、改善しましょう。
まず下記4項目をチェックしましょう。
- 採用した労働者に占める女性労働者の割合
- 管理職に占める女性労働者の割合
- 男女の平均継続勤務年数の差異
- 労働者の各月の平均残業時間等の労働時間の状況
加えて、採用、配置・育成、キャリアコース、職場風土改革、賃金格差等も可能な限り押さえておくことが重要です。
そして課題改善のための目標を設定しましょう。無理なく、実現できる値にすることをおすすめします。その後、具体的な取り組み内容を決めましょう。
計画を作成・社内への周知と外部への公表
次は計画を作成し、社内への周知と外部への公表を行いましょう。
- 計画期間
- 数値目標
- 取り組み内容
- 取り組み内容の実施時期
上記4ポイントを抑えるとわかりやすい計画になります。
そして社内への周知です。
掲示板、書面、メール、企業サイトなどを用いて、しっかり社員に認識させましょう。
その後、外部への公表してください。
策定した行動計画は、厚生労働省の女性の活躍推進企業データベースなどに掲載しましょう。外部への計画公表は、企業のイメージアップはもちろん、社会全体の女性活躍への意識を高めることにつながるため、とても重要です。
都道府県労働局への届出
管轄の都道府県労働局への届出も行いましょう。
提出方法は、持参、郵送、電子申請の3種類です。
実際に取り組みを行い、効果を測定する
計画を実施し、定期的に効果を測定しましょう。
行動方針や計画が適切か逐一確認しながら進めていきましょう。
女性の活躍に関する情報を公表する
行動計画の外部公表と同様、女性の活躍推進企業データベースや自社サイトへの掲載など、女性の活躍に関する情報を公表しましょう。
女性活躍推進法の改正について徹底解説
女性活躍推進法は2019年に改正され、主に下記3項目が変更されました。
- 一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大
- 女性活躍に関する情報公表の強化
- 特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設
それぞれ説明します。
一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大(令和4年4月1日施行)
一般事業主行動計画の策定義務の対象が、労働者301人以上から、101人以上に拡大されました。より小規模な場合でも、行動計画の策定義務、情報の公表義務が課されるということです。
女性活躍に関する情報公表の強化(令和2年6月1日施行)
雇用労働者数が301人以上の場合、
- 職業生活に関する機会の提供に関する実績
- 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
の各区分から1項目以上の公表が必要になりました。
特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設(令和2年6月1日施行)
かつて、高水準の事業主に与えられたえるぼし認定よりも高水準の「プラチナえるぼし」認定が新たに創設されました。
プラチナえるぼし認定を受けるには、すでにえるぼし認定を受け、
- 5つの評価基準(採用・継続就業・労働時間等の働き方・管理職比率・多様なキャリアコース)をプラチナえるぼし基準で満たしている
- 策定した一般事業主行動計画に基づく取り組みの実施、目標達成している
- 男女雇用機会均等推進者・職業家庭両立推進者を選任している
- 情報公表項目(8項目以上)をデータベース上で公表している
といった項目を全て満たす必要があります。
参考:女性活躍推進法が改正されました | 長岡京市公式ホームページ
参考:女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」 | しょくばらぼ(職場情報総合サイト)
女性活躍推進法の事例
女性活躍推進法の事例を紹介いたします。
阪急電鉄株式会社
阪急電鉄株式会社では下記取り組みを実施しています。
- 女性社員のキャリア形成:先輩社員との交流会や、育児休職取得者に向けた復職支援セミナーの実施
- 上司や周囲への理解促進:管理職等の上司を対象にマネジメントスキルの研修会を実施
- 仕事と育児を両立できる環境の整備:保育支援手当やベビーシッター利用補助制度
このように、女性のキャリア構築や育児との両立に注目した対策を実施しており、女性の活躍を推進しています。
参考:女性活躍推進法とは?施行で変わった女性の雇用制度を解説
シーエスラボ
株式会社シーエスラボは、化粧品や医薬部外品などの企画・開発、受託製造をする会社です。シーエスラボでは以前から、女性社員に対し女性管理職の割合が少ないことが問題視されていました。そこで、女性管理職の割合を20%にまで引き上げることを目標にしました。
他社との差別化で優秀な女性を採用し、継続的に働ける環境を整えることにしたのです。
管理職に近しい女性社員の研修を強化したり、結婚・出産・育児などのライフイベントに柔軟に対応できる制度を強化しました。
その結果、2017年3月24日付でえるぼしマークで最も高い「3段階目」を取得しました。
参考:女性活躍推進法に基づく認定マーク「えるぼし」3段階目に認定されました
東急リバブル株式会社
男性が優位と言われる不動産業界ですが、東急リバブル株式会社は2012年から3段階に分けてダイバーシティを推進しました。
第1段階(2013~14年):女性が活躍するための制度を整える
例)休日事業所内保育所:休日に出勤する社員向けに休日保育所を開設
第2段階(2013~15年):女性社員や管理職の意識改革をする
例)
・ダイバーシティマネジメントセンター:女性社員活躍の必要性に気づくことで、管理職の意識醸成を図る
・キャリアアップ支援セミナー:先輩社員の体験談や昇給制度なども盛り込んだセミナーを実施し、モチベーションアップを図る
第3段階(2016年~):「働き方」を改革する
例)時差出勤やテレワークを導入し、全社員が効率よく最大限の力を発揮できる環境を作る
上記のような取り組みの結果、女性育児社員数2012年から2014年で1.9倍に増加し、総合職の女性採用比率の2012年5.2%→2015年23.6%に向上しました。そして東急リバブルは、2018年にえるぼしマークの「3段階目」を獲得しました。
参考:東急リバブル「3段階」で働き方を一新 | (2/2) | PRESIDENT WOMAN Online
参考:東急リバブル 女性活躍推進法に基づく「えるぼし」最高ランク取得
補足:女性活躍推進法の実施義務を守らない場合
女性活躍推進法の実施義務を守らなくても、特に罰則はありません。
しかし、下記2点のデメリットが生じる場合があります。
指導や勧告を受ける場合がある
厚生労働大臣は必要に応じて、一般事業主に対し、助言や指導、勧告を行うことがあります。
著しく女性活躍推進法を逸脱するような労働環境をとっている場合は、指導や勧告が入る場合があるので、基本的に女性活躍推進法に従って活動をするべきです。
企業イメージがダウンする
また、企業イメージがダウンすることも考えられます。
えるぼし・プラチナえるぼし認定を受けた企業は女性にとって好イメージです。
逆に女性活躍推進法を守らない企業は、イメージが下がるでしょう。
優秀な女性社員の獲得をするためにも、女性活躍推進法を遵守して、適切な取り組みを行い、各種認定を目指しましょう。
まとめ:女性活躍推進法を正しく理解・対応し、えるぼし認定を取得しよう
女性活躍推進法は、働く女性が十分に力を発揮できる社会の実現に向けて、成立した法律です。女性の活躍を推進する企業は、企業イメージがアップし、採用応募人数も増加も期待できるでしょう。自社での環境を整え、各種認定を目指してみてください。
ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。
社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。