社会保険は、公的医療保険や年金保険など、5つの保険の総称です。本記事では社会保険の制度や種類、加入条件などをわかりやすく解説します。
社会保険とは?
社会保険とは、万が一のリスクに備え、国民に最低限度の生活を保証するための公的な保険制度で、原則加入が義務づけられています。社会保障制度のひとつで、リスクの予防線的役割を果たしています。
社会保障制度とは?
社会保障制度は、4つの行政サービスで成り立っています。
社会保険以外の「社会福祉」「公的扶助」「保険医療・公衆衛生」について説明します。
社会福祉
障害のある方や高齢者、母子家庭など、社会的に弱い立場に対して公的な支援を行い、一定水準の生活を保証する制度です。
公的扶助
生活に困窮する国民に対し、最低限の生活を保証する制度です。生活保護法に基づき生活保護費が支給されます。
保険医療・公衆衛生
国民の健康増進や疾病の予防などの取り組みを指します。がん検診や健康診断の実施、感染症の予防接種、公害対策、ペットの保護などが含まれます。
参考:社会保障制度−コトバンク
社会保険の仕組みは「相互扶助」
社会保険は「相互扶助」で成り立っています。相互扶助とは、一人ひとりが支え合う精神や考え方のことです。
国民一人ひとりが保険料を支払うことで、いつ誰かに起こるかもしれない多様なリスクに対して、費用を蓄え備えることが可能です。
社会保険の種類
社会保険は以下の5つに分けられます。
- 公的医療保険
- 公的年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
うち「公的医療保険」「年金保険」「介護保険」の3つは狭義の社会保険と呼ばれます。「社会保険」というとこちらを意味することも多いので注意してください。
「雇用保険」と「労災保険」はまとめて「労働保険」と呼ばれ、企業に所属する場合に加入が必要です。
公的医療保険
ケガや病気、入院などで医療機関を受診した際、医療費の一部を国または地方自治体が負担する制度です。
対象者によって加入する保険が変わります。
- 健康保険・・・企業に勤めている会社員など
- 共済組合・・・公務員、私立の教職員など
- 国民健康保険・・・自営業者や退職者、無職者など
- 船員保険・・・船員
- 後期高齢者医療制度・・・75歳以の方、65〜74歳の方で一定の障害がある場合
また自己負担額は年齢によって異なります。
- 0〜5歳(義務教育就学前)の自己負担割合:2割
- 6〜69歳の自己負担割合:3割
- 70〜74歳の自己負担割合:2割
- 75歳以上の自己負担割合:1割
※70歳以上で年収が370万円以上ある場合、現役世代と同等の所得があるとみなされることから3割の負担が義務づけられています。
公的年金保険
公的年金保険とは、社会人時代に保険料を納めることで、原則65歳から老齢年金を受け取れる制度です。具体的な種類は下記です。
- 厚生年金保険・・・職域を中心として組織されている
- 国民年金・・・一般国民が対象となっている。フリーランスや自営業も入る
- 国家公務員共済組合・・・公務員などが加入する
- 船員保険
- 各種共済組合
- 農業者年金
公的年金制度の中でも多くの国民が加入しているのが国民年金と厚生年金です。
【国民年金】
- 加入対象者:
- 「第1号保険者」・・・自営業者、フリーター、学生、無職の方
- 「第2号保険者」・・・厚生年金保険を受けている方
- 「第3号保険者」・・・第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の方(ただし年間収入が130万円以上で健康保険の扶養となれない方は第3号被保険者とはならず、第1号被保険者となる)
- 保険料:全額自己負担
- 支払期限:20〜60歳
- 満額受給額:満額約78万円(令和3年度)
- 年金受給開始:原則65歳
【厚生年金】
- 加入対象者:会社員、公務員
- 保険料:労使折半(個人と企業が半々ずつ負担)
- 支払期限:会社に所属している期間
- 満額受給額:報酬によって異なる
- 年金受給開始:原則65歳
年金の受給開始時期は、60歳から70歳までの間であれば申請すれば変更できます。また国民年金の場合、厚生年金とは異なり、20歳を迎えた時点で強制加入となります。
参考:老齢年金ガイド
介護保険
介護保険の対象介護保険制度は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳から64歳までの「第2号被保険者」に分けられ、適用されるために「要介護認定」が必要です。
保険料は、40歳から64歳までは公的医療保険と一緒に徴収され、65歳以上は介護保険料の名目で納めることになっています。
雇用保険
雇用保険とは、労働者の生活・雇用の安定・就職の促進を目的とした対失業者支援制度です。
失業者には再就職するまでの間、求職者給付金が支給されます。またハローワークの指示で職業訓練を受けた場合の技能習得手当、国が指定している有料カリキュラムの受講による教育訓練給付金、介護や育児などで休職する際の休業給付金も該当します。
雇用保険の料金は、事業主と被保険者が負担します。
労災保険
「労働者災害補償保険」のことです。勤務中のケガや病気に対する「業務災害」と、通勤中のケガや病気に対する「通勤災害」に対して、それぞれの治療費や休業時の賃金補償が行われる制度です。後遺障害が残ったり死亡した場合も該当します。
企業の健康保険と厚生年金保険の加入要件
勤務先が適用事業所、且つ自身が要件を満たす「被保険者」であれば、健康保険と厚生年金保険に加入できます。
適用事業所とは
「適用事業所」とは健康保険や厚生年金保険の適用を受けている事業所を指します。法律で加入が義務づけられている「強制適用事業所」と、任意で加入する「任意適用事業所」の2種類があります。
強制適用事業所とは
「強制適用事業所」は、健康保険・厚生年金保険の加入が義務づけられている事業所です。一人以上の被保険者が在籍するすべての法人事業所と定められた職種において常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所が該当します。定められた職種は以下の16業種です。
- 製造業
- 土木建築業
- 鉱業
- 電気ガス事業
- 運送業
- 貨物積卸し業
- 清掃業
- 物品販売業
- 金融保険業
- 保管賃貸業
- 媒介斡旋業
- 集金案内広告業
- 教育研究調査業
- 医療事業
- 通信報道業
- 社会福祉事業
学校法人の場合は、法人事業所であっても「私立学校職員共済制度」に加入するため該当しません。
任意適用事業所とは
「任意適用事業所」とは、強制適用事業所に該当しないが許可を受けたことにより健康保険・厚生年金保険が適用される事業所を指します。
被保険者となる予定の従業員の半数以上が同意し、事業主の申請が厚生労働大臣(日本年金機構)の認可を受けると適応事業所になります。保険料や保険給付は強制適用事業所と同様の扱いです。
強制適用事業所と異なる点として、健康保険または厚生年金保険どちらか一つだけを選択することもできます。脱退には4分の3以上の被保険者の同意が必要です。
被保険者の加入条件
一般的に適用事業所に常に使用されている方(正社員、法人の代表者、役員など)は、国籍や性別、年齢、報酬額などに関係なく被保険者として社会保険に加入できます。
パートタイマーやアルバイトの加入条件
パートやアルバイトも、下記いずれかに当てはまれば被保険者となります。
①事業所と常用的使用関係にある場合
②1か月の所定労働日数や1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上である場合
③1か月の所定労働日数や1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満であっても、
下記5要件をすべて満たす場合
- 学生ではない
- 特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めている
- 雇用する期間が1年以上になることが見込まれ
- 所定労働時間が1週間20時間以上の
- 月額の賃金が8.8万円以上
日雇いで働く「日雇特例被保険者」の場合
日雇特例被保険者とは、日雇いなど臨時で雇用されている労働者を指します。社会保険適用事業所での勤務であれば、一般の被保険者になりま。臨時雇用の場合、日雇特例被保険者として加入することになります。日雇特例被保険者は、「健康保険制度」と「介護保険制度」にのみ加入可能です。
以下の方は「日雇特例被保険者」に該当します。
- 2か月以内の期間で雇用される
- 1か月以内で雇用される日雇労働者
- 4か月以内で季節的業務に雇用される
- 6か月以内で臨時的事業に雇用される
事業主が行う健康保険・厚生年金保険の加入手続き
年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。
基本的に事実の発生から5日以内の届け出が必要なので、速やかに対応しましょう。
手続きは事業主が行うため、従業員が個人で行うことはありません。
<企業の社会保険に入るメリット>
企業の社会保険に入る主なメリットは下記です。
- 保険料の半分を会社が負担する
- 傷病手当金や出産手当金を受給できる
- 扶養制度があるため世帯における保険料額を抑えられる
- 障害年金と遺族年金が増える
- 老齢年金が増える
最後の「老齢年金が増える」について、
前述の通り、厚生年金加入者は自動的に国民年金第2号保険者になりますので、
どちらの年金も受給できるということなのです。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の金額を知る方法
狭義の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は「標準報酬月額」と「保険料率」で決まります。
「標準報酬月額」とは、1か月で受け取る報酬の金額です。健康保険と厚生年金保険の標準報酬月額はそれぞれ等級が設定されており、健康保険の場合は1~50等級ごと、厚生年金保険の場合は1~32等級ごとに分けられています。
「保険料率」は健康保険と厚生年金保険でそれぞれ異なります。協会けんぽが管掌する健康保険は、都道府県ごとに保険料率が定められています。
そして「保険料」は、「標準報酬月額」と「保険料率」の掛け算で算出できます。もっとも簡単な方法は協会けんぽ「保険料額表」で健康保険料額を確認することです。
参考:令和3年度保険料額表(令和3年3月分から)|全国健康保険協会 協会けんぽ
健康保険と厚生年金保険は毎月の給与から天引きされて支払われます。金額が気になる方は給与明細を確認してみましょう。なお明細には折半後の金額が記載されています。
まとめ:社会保険は相互扶助の大切な制度
社会保険は相互扶助の精神により、リスクを一人ひとりが支え合う制度です。介護保険を含めた公的医療保険と年金保険からなる狭義の意味として使われることが多いです。原則として加入が義務づけられているため、企業に所属する正社員は健康保険料と厚生年金保険料が徴収されます。パートタイマーやアルバイト、日雇特例被保険者に該当する方は加入条件が異なります。事業主はそれぞれの条件を理解したうえで適切に対応しましょう。
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