RPA(アールピーエー)とは、人間がコンピューターの画面上で行う作業を自動化する技術のことです。日本国内でも導入している企業は多く、人材不足などの社会的課題を解決するツールとして注目を集めています。本記事では、RPAの仕組みや導入のメリット、自動化できる業務について解説。最適なRPAツールを選ぶポイントや企業の導入事例もご紹介します。
RPAとは?
RPAとは、人間がコンピューターを使用して行うデスクワークなどの業務をロボットにより自動化する技術を指します。ロボットへの指示を登録する開発ツールや、実際に処理を実行するロボット、またそれらを管理するツールなどを総称してRPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション、の略称)と呼ばれます。(別称は仮想知的労働者)
RPAは、これまで人間しかできないと考えられていた作業を、パソコンやサーバー上にあるソフトウェア型のロボットが代替することで、自動で正確且つ高速に処理できる取り組みです。
人間が行う業務の処理手順を操作画面から登録しておくだけで、業務の自動化を実現することが可能です。
RPAの仕組み
RPAは、定型業務などの作業手順をロボットに一つひとつ記憶させることで実現します。記憶させる方法は「画像認識」「オブジェクト認識」「座標認識」の3つがあります。
- 画像認識:特定の画像がある場所を記憶させます。非エンジニアやRPA初心者向きです。
- オブジェクト認識:対象の構造や階層を検出する方法です。
- 座標認識:デスクトップなどの指定範囲内の座標を指定する方法です。
プログラミングなど専門的な知識がなくても運用できるソフトウェアも多く、業務の効率化を推進できるツールとして期待されています。
企業がRPAに注目している背景
企業がRPAに注目している背景には以下の点が挙げられます。
- 人材不足の解消
- 労働生産性低下の解消
- DXの推進に不可欠
それぞれ確認していきましょう。
人材不足の解消
少子高齢化により、日本企業では労働人材の確保が課題になっています。生産活動の中心となる生産年齢人口が1995年をピークに減少しており、今後も減っていく見込みが強いです。そのため、業務を自動化できるRPAが人材不足解消の手段として注目を集めています。実際に導入・運用する企業も増えています。
労働生産性低下の解消
「労働生産性」とは、1時間あたりで生み出される付加価値を指します。2019年の日本の労働生産性はアメリカの6割にとどまり、G7最下位が続いています。
RPAで定型業務を自動化することにより、人間は単純なルーティンワークから解放され、従業員1人あたりや時間あたりの生産性が上がるでしょう。
参考:日本の労働生産性、G7最下位 OECDで21位: 日本経済新聞
DXの推進に不可欠
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、インターネットなどのデジタル技術を活用することで、ビジネスや生活などをより良い方向に変化させることを指します。
RPAはDXの目的を達成するための手段の一つであり、生産性やスピードの向上、コスト削減などにおいて重要な役割を担うツールであることから注目されています。
RPAが得意な業務
RPAには、「コンピューターの画面上で行われる、決まったルールに基づいて実行される単純な作業」が適しています。
<例>
- 入力:販売管理システムなどへのデータ入力や自動メールの作成など
- 転記:販売管理システムから得たデータを別のシステムに転記するなど
- 照合:異なるサイトからの情報収集、内容を比較・精査し正誤判断
- モニタリング:システムのデータ監視、異常を検知し報告
- 送付:必要な情報を収集、レポート作成&送付、電話やメールで自動回答
- 集約、加工:収集データの集約や加工
RPAを導入するメリット
企業がRPAを導入することで以下のメリットが得られます。
- サービス品質の向上
- ヒューマンエラーの減少
- 無駄なコストの削減
サービス品質の向上
単純作業をRPAに任せることで、従業員は付加価値の高いコア業務に集中して取り組めるようになります。企画の検討や業務改善など創造的な仕事に注力でき、サービス品質向上に繋がります。従業員のモチベーションも向上し、企業の業績にも良い影響を与えるでしょう。
ヒューマンエラーの減少
ロボットは設定したルールに沿って正確に作業を実行します。そのため、ヒューマンエラーを防止し、業務品質の向上が期待できます。また、ミス防止のダブルチェックやフォローの手間も省けます。
ロボットが人間に代わることで、従業員の作業量や時間を増やすことなく、エラーを減らせるのです。
無駄なコストの削減
ロボットは同じ動作を繰り返すのが得意で、さらに人間よりもスピーディーで正確です。
そのため、大幅な人件費や時間などの無駄なコストを削減できます。また、ロボットは24時間365日稼働なため、スケジュールの大幅な短縮が期待でき、残業時間や残業代の削減にも繋がります。
さらに、パソコンから導入できるデスクトップ型やクラウド型など、小規模な現場単位で取り扱いが可能です。必要な分だけ導入すればよいので、余計な導入コストが発生しにくいです。
RPAを導入する際の注意点
例外に弱い
RPAは想定外の事態に対応できません。システム障害やバグ、災害が発生した際に作業が停止したり、データが消失する可能性があります。基本的にシナリオ通りの処理は可能ですが、例外的な処理やシステム変更に弱いのです。
不正アクセスの恐れがある
ネットワークに繋がったサーバにインストールしたRPAであれば、不正アクセスされる可能性があります。不正アクセスされることで情報漏洩の被害が起きたり、サイバー攻撃によるロボットの乗っ取りが発生するリスクがあります。十分注意してください。
定期的なメンテナンスが必要
また、業務手順やルールを変えた場合には設定をし直すなどのメンテナンスをしなければなりません。RPAは一度設定すれば終わりではないことを導入前に認識しておきましょう。
最適なRPAツールを選ぶポイント
RPAツールを利用する際には自社にマッチした製品の導入が求められます。
最適なものを選びましょう。
クラウド型とオンプレミス型どちらが適しているか
クラウド型:Webブラウザ上で操作を行えます。現在使っているクラウドサービスの業務を自動化する際に有効です。
オンプレミス型:自社サーバーに設置します。クラウド型よりも専門的知識や技術が必要です。機密情報を保護したい企業はオンプレミス型を利用することが多いです。
自社の規模や目的にあっているか
RPAは単純作業の自動化が得意ですが、複雑な業務に対応可能なソフトウェアもあります(AI搭載)目的が達成できるRPAツールを選ぶことが重要です。
非エンジニアでも運用可能か
非エンジニアの従業員も容易に使いこなせるかも確認しておきましょう。
特に画像認識タイプのRPAなら、非エンジニアやRPA初心者でも運用しやすいです。
社内システムと相性がいいか
社内ツールと相性が良いと、エラーが起こる回数を減らすことができます。
また、仕様変更のメンテナンスや不具合が生じても、調整が柔軟に行えるかも事前にチェックしておきましょう。
サポートが充実しているか
RPAツールの導入・運用する際には不明点やトラブルなどが起こる可能性があります。マニュアルやカスタマーサポートの体制も、導入ツールの選択基準の一つです。
RPA導入の手順
RPAを導入する手順を説明します。
- 導入目的を明確にする
- 自動化する業務や範囲を決める
- ツールの選定
- トライアル導入
- 効果測定と課題検証
- 本格導入
- イレギュラーや想定外の事態が発生した場合の処理方法を検討する
- 従業員が運用できるよう研修をする
ポイントはトライアル導入をすることです。試験運用によって、導入効果(どれくらい作業時間が短縮できたか)を確認できます。また、システム障害による予期せぬ停止や、不正アクセス備えたセキュリティ対策の構築もきちんと行いましょう。
RPAの導入事例
自動化による作業時間削減や業務効率化のためにRPAを導入している企業は数多くあります。活用事例をご紹介しますので、参考にしてください。
日本通運株式会社の事例
物流会社として最大手の日本通運株式会社では、新たな時間の創出や働きやすい環境を目指し、事務職の定型業務をRPAで自動化しています。
2020年3月時点で125の業務が自動化されており、年間34万時間以上の業務を削減に成功しました。生産年齢人口減少による労働力不足が叫ばれるなかで、働きやすい環境を提供することで、労働力の確保に努めています。
参考:Ui path
出光興産株式会社の事例
エネルギー業界のリーディングカンパニーである出光興産株式会社では、RPAを活用した働き方改革により、導入からわずか1年半ほどで5万8,000時間の業務を削減しました。T例えば千葉の製油所では、都度担当者が行っていたSAP入力作業を自動化し、大幅な業務時間の削減ができました。現在は全製油所に同じRPAを導入するまでに至っています。
参考:Ui path
総務省の事例
総務省では、株式会社アイティフォーが提供するRPA業務自動化ソリューション「ナイス・アドバンストプロセスオートメーション(NICE APA)」を導入しました。
無線局の免許申請業務を自動化し、大量の入力処理や定形業務の効率化に成功しました。
参考:総務省様がRPAを活用して業務を自動化|アイティフォー
類義語との違い
RPAには類義語があります。違いを説明します。
RPAとAIとの違い
RPAの類義語に「AI(人工知能)」があります。
AIは、PRAなどのシステム内に組み込まれています。データに基づいた判断や作業の振り分けを行う機能を意味し、人間の代わりにRPAなど他のツールに指示を出すことが可能です。
RPAは業務の自動化ツールであるのに対し、AIは人間の頭脳の代わりとしてRPAに指示を出したり、判断したりすることができます。両者の役割は異なるため、導入の際には混同しないよう違いを認識しておく必要があります。
RPAとRDAとの違い
「RDA(ロボティック・デスクトップ・オートメーション)」もRPAの類義語です。
RDAも作業を自動化するロボットですが、RPAとは自動処理する範囲が異なります。
RPAは、サーバーにロボットがインストールされているので、サーバーが管理する複数のロボットに対して一度に作業指示が出せます。一方、RDAは個別のパソコン(デスクトップ)にインストールされるので、デスクトップ1台に対して1つのRDAが必要です。 またRDAの処理範囲はあくまでデスクトップ内なので、作業規模が小さい場合に有効です。
まとめ
RPAは少子高齢化による生産年齢人口の減少や労働生産性の低下を解消するツールとして企業から注目を集めています。定型業務の自動化により、人間にしかできないクリエイティブな業務に時間を割くことが可能な点も魅力といえます。注意点や選ぶポイントを確認したうえで自社にマッチしたRPAツールの導入を目指しましょう。
参考:働き方改革やDXを実現するRPAとは? | UiPath
参考:【必読!!】RPAとは?RPAを導入するメリットから導入方法までをわかりやすく解説!
参考:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション) | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)
参考:RPA導入に失敗しない「ツールの選び方」5選! | 連携・自動化はBizteX
参考:RPAの画像認識のメリット・デメリット、その精度は高いのか? | RPA – Robo-Pat(ロボパット)
ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。
社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。