現代社会は、仕事や日常生活でストレスを感じることが多いです。時には、精神的に深く落ち込んでしまい、回復に時間を要するケースもあるでしょう。
このような時代で、現在注目を集めている能力が「レジリエンス」です。
本記事ではこのレジリエンスについて、詳細を解説していきます。
レジリエンスとは何か
レジリエンス(resilience)とは、日本語で「跳ね返り、回復力」という意味を持ちます。もともと物理学で使用されていた用語でしたが、近年は心理学の分野でも利用されています。
心理学分野におけるレジリエンスは「困難・脅威に直面した際に、その状況に適応する力や適応していく過程・結果」を意味します。
レジリエンスが強い人ほど、外部から加わるストレスに上手く適応して、困難な状況を打開する力が強いです。
レジリエンスは現代社会で必要な力
現代社会では、仕事によってストレスを感じてしまう場面が多いです。上司からのパワハラや取引先からのクレームなど、外的要因で自分の心身に影響を与える状況が少なからず生じます。
ストレスに打ち勝って仕事のパフォーマンスを高めるためにも、レジリエンスは重要です。
もちろん、過度なパワハラやクレームを無理に我慢する必要はありません。ただ、そのような事態に直面しても、自身で精神的に回復できるか否かで、その後の仕事のパフォーマンスも変わってきます。
心が折れやすい人の特徴
心が折れやすい人の特徴として、下記の3つが挙げられます。
・諦めが早い
・失敗を引きずる
・目の前の出来事に一喜一憂する
諦めが早い
心が折れやすい人は、諦めが早い点が特徴です。目標・目的などを決めても、少しの失敗や、周りから評価されないと、すぐ諦めてしまいます。
諦めが早いと、物事を継続して行うことができません。この結果、「自分はすぐに諦めてしまう、ダメな人間だ」と思い込んでしまい、レジリエンスがますます弱まってしまいます。
失敗を引きずる
レジリエンスが強い人だと「失敗から学ぼう」というポジティブな姿勢をもてますが、心が折れやすい、レジリエンスの弱い人だと、失敗から立ち直るのが難しいです。
失敗に対して、「自分には能力がない」「何をやっても上手くいかない」など、ネガティブな感情を抱いてしまいます。
目の前の出来事に一喜一憂する
心が折れやすい人は、目の前の出来事に一喜一憂しやすいです。
長期的な視野やビジョンを持てずに、場当たり的に感情が揺れ動いてしまいます。感情が安定しない分、エネルギーの消耗が多くなってしまい、自分を客観的に捉えることが難しいです。
その結果、自分の意思で感情をコントロールできず、レジリエンスが弱くなってしまうケースが多いです。
レジリエンスを持った人の特徴
レジリエンスを持った人の特徴として、下記の4点が挙げられます。
- 感情を自分でコントロールできる
- 柔軟な思考力がある
- 常に挑戦する姿勢を持っている
- ポジティブに考える
感情を自分でコントロールできる
レジリエンスを持った人は、感情を自分でコントールすることが得意です。環境の変化や周りの意見によって自分の感情が左右されず、常に自分で感情をコントールできます。
喜怒哀楽がないという訳ではありません。あくまでも、衝動的に怒ったり、陽気になることが少ない状態です。
柔軟な思考力がある
柔軟な思考力がある点も、レジリエンスを持った人の特徴になります。困難に直面した際に、視野を広く持ち、凝り固まった考えをせず、常に柔軟に思考して解決策を模索します。
たとえば、仕事でトラブルに見舞われた際に、困難でショックを受けるのではなく、どのようにトラブルを解決していくか柔軟に考えていくことが可能です。
思考力がある人は、周りの意見に流されることも少ないです。芯をもって思考・行動できるので、困難から立ち直るスピードも速くなります。
上記のような柔軟な思考過程は、「ABCDE理論」と呼ばれる心理学の理論に当てはめることが可能です。
ABCDE理論とは、アメリカの心理学者アルバート・エリス博士が提唱した認知療法になります。ABCDE理論の「ABCDE」は、それぞれ下記の内容を表します。
A:Activating Event(出来事など外部からの刺激)
B:Belief(認知、解釈)
RB=Rational Belief(合理的な良い思考)とIB=Irrational Belief(非合理的な悪い思考)
C:Consequence(結果)
D:Dispute(反論)
E:Effect(高価、影響)
A(外部からの刺激)に対して、B(合理的な良い思考or非合理的な悪い思考)が生じてきます。Bの認知によって、C(結果)の内容が左右され、D(反論)・E(Effect)に繋がる流れです。Dの反論は、日本語のイメージだと「周りからの批判」と思えてしまいますが、ここでは「自身による、自分への反論(自問自答)」にあたります。
Bの認知で、ポジティブな思考を行えれば、その後の行動・結果も前向きなものに変えられます。上記の例でいうと、「どのようにトラブルを解決していくか考える」というのが、B(合理的な良い思考)です。
ABCDE理論を身につけることで、困難に対して多面的に対処することが可能なのです。
常に挑戦する姿勢を持っている
レジリエンスが強い人は、常に挑戦するスタンスであることが多いです。
挑戦する姿勢が身についていると、たとえ困難に直面しても、その困難を乗り越えていこうとする力が働いてきます。
困難を「成長機会」として捉えることができるため、ショックを受けて動けなくなることも少ないです。
特に起業家やプロスポーツ選手など、常に挑戦を止めない人はレジリエンスが強いと考えてよいでしょう。
楽観的に考える
楽観的に考えられる人も、レジリエンスが強い傾向にあります。「どうにかなるっしょ」というお気楽な楽観的とは意味合いが異なりますのでご注意ください。「未来はより良いものになる、より良くできる力を自分は持っている」とポジティブに考えることです。
前述の「挑戦する姿勢を持っている」と重複しますが、
- ストレスを成長機会と捉える
- 自分を信じ解決に尽力する
こういった姿勢を貫くと、直面した困難を前向きにとらえやすくなり、結果的に困難への適応も早くなります。
レジリエンスは鍛えることができる
年を重ねるごとに、レジリエンスが高まるケースも少なくありません。
スポーツなど自らを追い込んで鍛えてきた人は、一般的にレジリエンスが高い傾向にあります。企業の新卒採用活動で体育会系の学生が採用されやすいのも、高いレジリエンスが理由と考えてよいでしょう。
もちろん、それ以外の人でもレジリエンスは意識的に鍛えられます。
次の章で、レジリエンスを鍛えるポイントを具体的に見ていきましょう。
レジリエンスを鍛える際のポイント
レジリエンスを鍛える際は、下記のポイントを押さえるのが肝要です。
- 感情を意識的にコントロールする
- 自己効力感を上げる
- 自尊感情を高める
感情を意識的にコントロールする
レジリエンスを鍛える際に重要になるのが、感情を意識的にコントロールすることです。レジリエンスが弱い人は、外部の出来事によって一喜一憂しやすいです。
そして物事の本質を見失い、的確な判断ができなくなってしまいます。
感情をコントールするポイントは、「心の中で、自分に言葉を問いかける」ことです。困難に直面した際に、闇雲に不安になるのではなく、一呼吸おいてから心の中で「今の状況は○○だから、まずは~をしよう」といった具合に問いかけてみてください。
最初はストレスによる不安の方が勝るかもしれませんが、継続していくうちに感情のコントールができるようになります。
自己効力感を上げる
自己効力感とは、「掲げた目標を達成できる自信」を意味する心理学の用語です。
自己効力感が強い人は、繰り返し失敗しても諦めることなく、継続してチャレンジすることができます。
自己効力感を高めるためには、「目標達成の経験」を積み上げることがポイントです。いきなり大きな目標を立てるのではなく、最初は小さな目標を設定します。たとえば、「毎日30分、英語の勉強をする」など、自分がコントールできる範囲で小さな目標を設定すれば継続しやすいです。
小さな目標達成を積み上げる中で、少しずつ自己効力感を高めることが可能になります。目標は仕事と直接関係ないものでも大丈夫です。「目標を達成した」という経験自体が自己効力感の向上に役立つので、目標を必ず仕事に結びつける必要はありません。
自尊感情を高める
自尊感情は、その名の通り「自分を尊敬する感情」になります。「自分を尊敬するなんて、おこがましい」と考える方もいるかもしれませんが、あまりにも自分を低く考えてしまうとレジリエンスが低くなります。
自尊感情を高めるためには、成功体験を積むことが不可欠です。成功体験を積むことで、「自分でもできる」という感情を強めることができ、自尊感情の向上につながります。
成功体験は、日々の些細な成功で問題ありません。たとえば、日常業務をミスなくできた、スケジュール通りに仕事を終えられた等、普段取り組んでいる業務・仕事でも成功体験を積めます。これらの小さな成功体験を「成功」と認識できるか否かで、自尊感情の向上が左右されると考えてください。
企業におけるレジリエンス
レジリエンスは企業単位でも必要です。
リンダ・グラットン氏は、レジリエンスの高い企業には以下の3つが必要だと論じています。
- 知性と知恵(従業員の洞察力や分析力)
- 精神的活力(従業員のやる気)
- 成功体験や失敗体験から教訓を学び取り、組織内で共有する仕組みや習慣がある
企業といっても、実際に企業を動かしているのは「従業員」です。従業員の洞察力や分析力、やる気が企業のレジリエンスに直結します。また、成功体験や失敗体験を組織内で共有できるか否かも、企業のレジリエンスを左右してきます。
強いレジリエンスを持つ企業として、例えばトヨタが挙げられます。
トヨタは2009年~2010年にかけて、北米と日本で大規模なリコールを行いました。リコールによって、トヨタはアメリカ議会やマスコミなどから大々的に批判され、トヨタのイメージは一気に落ちてしまいます。
ただ、このような大規模な批判に負けることなく、トヨタの業績は急回復していきました。2014年には2兆円もの営業利益を出し、過去最高益を記録しました。レジリエンスが弱い企業であったら回復は難しかったかもしれません。しかしトヨタは、大々的に批判されたにも関わらず、その圧に臆することなく業績回復を果たしたのです。
採用活動におけるレジリエンス力
企業の採用活動においても、レジリエンスが求められてきます。
たとえば、自社企業が外的環境の変化に左右されない、レジリエンスの高い企業であれば、採用活動を自社の計画通りに行うことができるでしょう。
企業の中には、景気や競合他社の変化によって採用計画を大きく変更するところも少なくありません。
もちろん、外的環境の変化を分析することは大切ですが、変化のたびに方針を変更していては、長期的に安定した採用を行うことは難しいです。
深掘りすれば、企業を運営するのは「人」ですので、経営陣・役職クラスの人たちが意識してレジリエンスを高めることが重要といえるでしょう。
研修を通じて、社員のレジリエンスを高める
社員のレジリエンスを高めるためには、企業内で研修を行うことがおすすめです。
レジリエンス研修としては、「グループワーク」や「ディスカッション」が挙げられます。グループワーク、ディスカッションを通じて、ネガティブな考えをポジティブに変えていく訓練を行います。たとえば、自分の悩みや不安を共有して、その解決策や打開策を参加者で考えるといった研修です。
継続的に研修を行うことで、自然にポジティブ思考を身に着けることができます。重要なのは「徹底して研修をやり込むこと」です。月に1回程度の研修では、レジリエンスを高めることは難しいです。週に複数回、レジリエンス研修の時間を設けるのが理想になります。
レジリエンスを高めて、環境に左右されない人材になろう
レジリエンスを高めることで、困難に直面しても乗り越え前に進むことができます。
多様なストレスがかかる現代社会において、レジリエンスは強かに生きるために必須の能力といってよいでしょう。
レジリエンスは訓練することで高めることが可能です。現状、レジリエンスが低い人でも、今日からの取り組み次第でレジリエンス向上を目指せます。本記事で紹介した内容を参考にしてもらい、レジリエンスを高めてもらえると幸いです。
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