本記事では、R&Dの意味や種類、メリットやR&Dが抱える課題、R&Dで成功した企業事例などについて解説していきます。
R&Dの意味とは?英語で「Research and Development」
R&D(Research and Development)は「企業における研究開発活動業務、および部門」を意味します。該当組織やプロジェクトをR&Dと呼ぶ場合もあります。
Research:研究、調査、下調べ
Development:開発、発達、発展、進化
金融庁の『研究開発費等に係る会計基準』では、「研究」と「開発」を以下のとおり定義しています。
研究:新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究
開発:新しい製品・サービス・生産方法(以下、「製品等」という。)についての計画若し
くは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究
の成果その他の知識を具体化すること
引用元:金融庁|研究開発費等に係る会計基準
つまり、R&Dとは、新しい知識の発見を目的とした研究を通じて、新しい製品・サービス・生産方法を開発する活動全般を意味すると言えるでしょう。
参考:コトバンク|リサーチ
R&Dの種類|基礎・応用・開発の3種類
R&Dは3種類あります。一つずつ見ていきましょう。
1.基礎研究
基礎研究(Basic research)とは、新しい知識や科学的事実を得るための研究です。
応用や用途を考慮せず、仮説や理論を立証することが目的なので、製品やサービス開発につながることは非常に少ないです。例えば、「AとBを混ぜるとCになる」「Cになるときの反応はDと近い」など、他2つの研究の基礎・基本となる研究と言えます。
2.応用研究
応用研究(Applied research)内容は2つあります。
1つ目は「既に実用化されている方法に関して、新たな手法・方法を模索する」、そして2つ目は「基礎研究で立証された事実や理論に基づき、特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる」です。後者について、例えば「立証された化学反応を実用化できるか」「新しく発見した素材で商品開発できるか」などが、基礎研究で判明した事実や理論から商品開発を進める研究です。
3.開発研究
開発研究(Experimental development)内容は、
「基礎研究・応用研究で得た事実や、経験から学んだ知識を活用して、新しい製品やサービスを生み出すまたは既存製品やサービスを改良する」です。後者については、例えば「新しい知見を活用してこれまでにない商品を生み出す」「新しい工程を導入して既存商品を改良する」などの研究です。
R&Dの種類まとめ
R&D(研究開発)は下表の3種類です。
種類 | 目的 |
基礎研究 | 新しい知識や事実を得るための研究 |
応用研究 | 実用化されている方法に関して新たな手法・方法を探索する、または基礎研究の経験を活用し実用化を検証するための研究 |
開発研究 | 基礎研究・応用研究で得た事実や経験から得た知識を活用して、新しい製品やサービスを生み出すしたり、既存製品やサービスを改良する研究 |
R&Dの歴史
日本でR&Dが重要視され始めたのは、1980年代の高度経済成長期だと言われています。
当時は、世界のイノベーションを牽引した松下電器(現:Panasonic)やSONYなど多くの企業が、R&Dに特化した施設(研究開発センターや研究所)を設立しました。自社技術を蓄積し、莫大なコストをかけて研究開発を行ったのです。
しかし、自社で内製化する自前主義(自社内の経営資源や研究開発に依存する)に陥り、1990年代以降日本のR&Dは失速傾向にありました。
その後、2010年代以降は自前主義脱却のため、オープンイノベーションに主軸を置いたR&Dが活発になりました。
参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構|オープンイノベーション白書
R&Dのメリットとは?R&Dを企業戦略に活用しよう!
R&Dに取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つのメリットを紹介します。
参考:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構|オープンイノベーション白書
メリット1.知的資産が増える
R&Dのメリットは、研究分野に関する技術や知見が深まり、資産や技術が蓄積される点です。知的財産や特許として厳重に保護する必要はありますが、技術面で他社に比べてアドバンテージを持てるのです。
また、未開拓事業の立ち上げ、市場に出回っていない商品やサービスを生み出すなど、革新的なイノベーションを起こせば、市場を独占あるいは寡占できます。市場ニーズが大きければ先行利益も得られ、他社をリードする存在にもなれるでしょう。
メリット2.製品の改良や開発スピードが向上する
R&D部門を設けると、専門分野のスペシャリストを集めやすくなります。知的資産や技術が増え、さらに継続的にアップデートされれば、製品改良や製品開発のスピードが格段に上がります。
ただし、経営や収益に直結する研究開発の目標と将来的なニーズを捉えた研究開発の目標、これら2つのバランスを考えてR&D推進戦略を練る必要があります。
メリット3.企業競争力の向上
R&Dで生み出された「自社にしかない技術」「自社だけが実用化できる製品やサービス」は市場優位性を高め、他社との差別化につながります。さらに、特許を取得すれば、特許権使用料も得られます。このようにR&Dによって企業競争力の向上も期待できるのです。
メリット4.低コストでも設置可能
アジアなどの新興国では、日本よりも低コストで研究開発が行なえます。そのため、今後の経済成長が見込める国に、拠点を設置する企業が増えています。
例)タイ、中国、インドなど
R&Dが抱える課題とは?企業戦略を練るときは要注意
メリットがある反面、R&Dは課題も抱えています。
課題1.莫大なコストがかかる
R&D(研究開発)には、従事する人員の労力、研究開発の成果が出るまでの時間なども含めると、トータルコストは大きく膨らみます。さらに、研究開発の成果が出たとしても、商品化や利益につながるとは限りません。
例えば東洋経済『研究開発費の大きい「トップ300社」はこれだ』によると、日本企業で最も研究開発にお金をかけているのは、トヨタ自動車で1兆556億円でした。
また、TPCマーケティングリサーチの調査結果で、2019年度の製薬企業のR&D戦略では、平均785億8,000万円の研究開発費が投じられたこともわかりました。
このように、最先端技術の追求、新たな事業領域開拓や商品開発には、莫大なコストがかかります。コストマネジメントは、R&Dが抱える課題の1つなのです。
参考:東洋経済ONLINE|研究開発費の大きい「トップ300社」はこれだ
参考:日本経済新聞|TPCマーケティングリサーチ、製薬企業のR&D戦略について調査結果を発表
課題2.新商品やサービスの実用化に結びつけられない
新商品やサービスの実用化に結びつけられない可能性もあります。
莫大なコストや労力をかけて研究開発し、技術を確立できたとしても、市場ニーズがあるとは限りません。また、実用化しても利益が生まれるかは未知数です。
企業活動として研究開発をする以上は、「利益」「市場ニーズ」を満たした新商品やサービスである必要があります。全ての研究成果をすぐに実用化できない点も認識しましょう。
参考:中小企業庁委託|株式会社野村総合研究所『中小企業・小規模事業者の成長に向けた事業戦略等に関する調査に係る委託事業事業報告書』
課題3.R&Dの技術やノウハウを持つ人材の不足<
R&D(研究開発)に従事する人材は一朝一夕では育成できません。優秀な人材を採用、教育し、リーダーシップの醸成や研究開発分野の知見獲得など、十分な時間をが必要です。
人材の流動性が高い現代は、優秀な人材が自社に残るとは限らず、課題に感じる企業が増えています。外部のR&D人材を活用するなどの対策が必要です。
参考:中小企業庁委託|株式会社野村総合研究所『中小企業・小規模事業者の成長に向けた事業戦略等に関する調査に係る委託事業事業報告書』
R&Dの企業事例
実際にR&Dに取り組んでいる企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。R&Dを推進する企業事例を2つ紹介します。
事例1.NEC(日本電気株式会社)
NEC(日本電気株式会社)では、6つの技術領域「認識AI」「分析AI」「制御AI」「システムプラットフォーム」「通信」「セキュリティ&ネットワーク」を定め、各領域において「新たな社会価値を創造するための研究開発」に取り組んでいます。
拠点は、日本国内にある中央研究所を含め、世界で7ヶ所あります。さらに、研究人財育成の特色として「選択制研究職プロフェッショナル制度」「AI研究者数300名宣言」などがあります。このようにNECは、研究者にとって最高の成果を出せる場で有り続けたいと願っているのです。
事例2.株式会社キリンホールディングス
現在のキリングループの事業領域は「食領域」「医領域」「ヘルスサイエンス領域」の3つです。そして事業を支えながら、研究開発も成長してきました。
キリンホールディングスR&D本部は、主に食領域とヘルスサイエンス領域の研究開発を行っています。
具体的な研究分野は5つです。
- 原料・・・様々な飲み物の原料
- 発酵・培養・・・菌や微生物
- 味・・・飲み物の香味や機能
- パッケージ・・・容器や包装など、あらゆるパッケージ
- 基盤・・・高度成分分析
キリンは、“本気で、わくわくする未来をつくる”という志をもち、失敗を恐れずたくさんのチャレンジをしてきました。中には成果につながらず断念した研究も多々ありました。しかし、これからも挑戦を続けていきます。
まとめ
R&Dには、保有技術の蓄積や製品開発スピードの向上、企業競争力が高まるといったメリットがあります。しかし、コストがかかったり人材確保に難航したりと、課題もあります。
これからのR&D(研究開発)では、必要なノウハウや人材を外部から積極的に活用する姿勢が求められます。「自社の技術」に固執せず、「より良いものを生み出す技術」に目を向けて研究開発に取り組みましょう。
本記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
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