ビジネスが複雑化している現在、企業は抱えている問題や課題への論理的かつ統計的解決が求められています。そこで役立つのがQCストーリーという考え方です。QCストーリーとは、従来において品質管理に用いられる考え方でしたが、最近では品質管理のみならず、ビジネスにおける様々なシーンで活用されています。
本記事ではQCストーリーについて、実践手順やメリットを踏まえて詳しく解説していきます。「職場で抱えている問題を論理的に解決したい」「自社の課題を筋道立てて解決していきたい」という人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
QCストーリーの基本
「QCストーリー」もしくは「QC」という言葉について、「聞いたことはあるけれど、意味はよくわからない」という人も少なくないでしょう。そこでまずはQCストーリーの基本について説明していきます。
QCとは
QCとは「Quality Control」の略語で、日本語では「品質管理」と訳されています。JIS(日本産業規格)は品質管理について、「買い手の要求にあった品質の品物、もしくはサービスを経済的に作り出す手段の体系」であると説明しています。
「品質管理(QC)」という言葉は製造業で用いられることが一般的でした。しかし、最近は製造業における品質保証のみならず、顧客満足度向上の観点から、非製造業や営業職などにおいても重要なキーワードとなっています。
QCストーリーとは
QCストーリーとは、問題解決へのプロセスや手順の道筋を意味します。従来、QCストーリーは改善した内容を報告書にまとめる際や、発表する際に用いられてきました。しかし、最近はこのプロセスが改善活動全般において有効であると認められ、QCストーリーはビジネスパーソンの中で広く知られるようになりました。
QCストーリーは他者に理解してもらうことを目的とした手順でしたが、最近では自身での問題解決にも役立つ手順だと認識されています。QCストーリーを上手く活用することができれば、問題を正しく把握し、解決する力が身につきます。
QCストーリーを用いた問題解決の8ステップ
QCストーリーを用いた問題解決法は、以下の8ステップに従って実施されます。
- テーマの選定
- 現状把握
- 目標設定
- 活動計画の策定
- 要因解析
- 対策立案と実施
- 効果の確認
- 歯止め・標準化
ステップごとに詳しくみていきましょう。
①テーマの選定
QCストーリーでは、まず問題点を洗い出すことから始めます。問題点を把握し、改善対象を明確にしていきましょう。
問題テーマを選定する際は、以下のポイントを押さえてください。
- 問題を日頃から集めるように心がけ、気付いたことをメモ(記録)する
- 社内や部署のメンバーの意見を聞く
- メンバー全員で納得がいくまで話し合う
問題のテーマ選定では、早急に解決すべき事柄だけでなく、日々の業務の中で改善が必要と思われる事柄に関しても整理しておきましょう。また、選んだ問題に対しては、選定理由を明確に定めておくことで、関係者間の認識を統一させられるよう試みてください。
②現状把握
問題テーマが決まったら、次はその問題点の現状を把握していきます。現状把握には5W1Hの観点がおすすめです。いつ、どこで、誰が、なぜ、何が、どのようになっているのかを押さえれば、現状を正しく理解できるでしょう。
把握できない部分があれば、データを収集したり、知っている人がいないか周囲に質問したりします。洗い出した問題については特性要因図や新和図などを活用して整理すれば、全体像を把握するのに役立ちます。
ポイントとして、現状把握するためには現在だけでなく、過去も振り返ることです。現在の状況だけを見ても、何が原因で問題が発生したのか理解することは難しいでしょう。現状把握では、過去から現在までの一定期間を確認することを心がけてください。対象となる期間は1ヵ月、3ヵ月、半年、1年、3年、5年など、取り扱うテーマによって調整していきます。
③目標設定
洗い出した問題や、把握した現状を基にして目標を立てます。目標を立てる際は、何を、いつまでに、どの程度改善するかを明確にしましょう。目標は明確化しておくことで実現可能性が高まります。
目標を立てる際には、以下のように具体的な期限と数字を定めるのがポイントです。
- 来年の3月までに生産性を20%アップさせる
- 再来年の11月までに〇〇部を100万円コストダウンする
- 再来年の12月の売上を30%アップする
④活動計画の策定
目標達成において、思いつきで行動するのは危険です。活動計画を立て、スケジュール化しておきましょう。活動計画の策定では、ステップごとにいつまで完了させるか期限を決めておきます。また、完了したステップについては、実績や感想などを書き込みます。
活動計画に従って進めていくためには、スケジュールを立てる際に繁忙期を考慮することをおすすめします。また、当初の計画から遅れが生じた場合は、計画を見直し、改善策を立てる必要もあるでしょう。
⑤要因解析
要因解析では、要因を洗い出した後に重要な要因を絞り込みます。その後、重要な要因を事実ベースで検証し、レビューします。
要因を洗い出す際は、特性要因図を用いて整理すると、洗い出した要因がわかりやすくなり、見落としなどを防ぐことができます。特性要因図とは、特性(=結果)が引き起こされた要因を図にして可視化することで、問題の所在を特定できる手法のことです。
重要な要因の決定には、上司や専門家といった経験豊富な人や、チームメンバーの意見を幅広く取り入れ、全員が納得できるよう議論を進めましょう。
⑥対策立案と実施
要因解析ができたら、今度は解析結果に基づき対策案を立て、実行に移していきます。対策案を練るうえで重要なのが、発生対策と流出対策の両方をケアすることです。
発生対策とは、問題が生じたことに対するアクションを意味し、例えば商品の製造過程で加工ミスがあった場合、加工ミスを防ぐための対策が発生対策にあたります。
一方、流出対策とは、加工ミスした商品が顧客へ届いてしまったことへの対策のことです。問題への対策を考える際は、発生対策だけでなく流出対策も念頭におくことが大切です。
対策案を立案する際はリーダーと記録係を決め、30分程度の会合時間を設けることが一般的です。参加メンバーには自由に発言してもらいましょう。質のよい発言も大切ですが、なにげない発言から解決策が導き出されることも少なくありません。そのため、リーダーは参加者に対して発言内容の質にこだわらず、自由かつ積極的に意見を出せるような場の雰囲気を提供できるよう心がけましょう。
⑦効果の確認
対策立案と実施が終わったら、問題に対して効果があったか評価します。効果の確認では、共に以下のポイントが重要だといわれています。
- 目標値の達成度を確認する
- 現状把握において用いた手法や尺度で効果を確認する
- 対策ごとの評価と全体の変化を確認する
- 目標値に達していない場合は、前のステップに戻って再チャレンジする
効果を確認してみたところ、結果が期待どおりではなかったケースもあるでしょう。しかし、どのような案であっても失敗することはあります。失敗から得た教訓を基に改善していければ、少しずつ目標達成へと近づいていけるでしょう。そのため、効果が出ていない場合であっても、気落ちせずに再チャレンジする心構えが大切です。
⑧歯止め・標準化
高い効果が出た場合は、最も効果が出た施策を標準化していきます。歯止め・標準化には対策を継続して実施し、効果の定着化を図る目的があります。成果については社内規約、ルール、マニュアルなどを作成し、社内全体で共有していきましょう。
歯止め・標準化を怠った場合、社内で自然と忘れられたり、人の異動とともに成果(ノウハウ)が自然消滅したりするのでご注意ください。
QCストーリーを使う3つのメリット
ここでは、QCストーリーを活用することで得られるメリットを3つご紹介していきます。
メリット①やるべきことが明確になる
QCストーリーは複数のステップによって構成されているため、現状の立ち位置を把握し、今やるべきことを明確化できます。また、各ステップの終わりに成果をチェックすることで、現在取り組んでいる仕事が成果に直接的に関わっているのかも確認できます。
他にも、QCストーリーは段階ごとの見直しを可能にします。そのため、成果が出ていない場合に、問題の所在がどこにあるのか把握しやすい点もメリットといえるでしょう。
メリット②改善業務における全体像の確認
QCストーリーでは、目標の設定、対策の立案、そして標準化といった一連の検討の流れを把握できます。
QCストーリーの構成要素を、無意識に実践できている企業も存在します。たとえば、QCストーリーを導入していない企業でも、課題が見つかれば現状把握を試みるでしょう。ただし、体系的に問題解決プロセスを踏まなければ、課題を把握できなかったり、課題を見落としたりすることも懸念されます。
QCストーリーに従って取り組むことで、全体像を意識しながら、目標達成に向けて筋道を立てて進めていけるでしょう。
メリット③進捗状況の共有
QCストーリーを用いれば、全体像と現在の立ち位置を確認できます。自分だけではなく、部署や社内への情報共有にも役立ちます。
社内であっても、他の人の担当分野の進捗を正しく把握することは容易ではありません。また、リモートワークが普及している現在、業務に行き詰まっている人がいても、その状況を可視化できない問題も生じています。QCストーリーを活用すれば、上司は部下の課題を理解・分析し、適切なアドバイスを与えられるようになります。
QCストーリーを活用すれば、社内での情報共有が容易になるため、スムーズに業務を進めていけるでしょう。
まとめ
モノや商品があふれ、ビジネスが複雑化している現在では、課題や問題に対して論理的かつ分析的な手法を活用する必要性が高まってきています。QCストーリーを活用すれば、自社の抱える課題や問題を明確にし、筋道を立てて解決に導くことが可能です。
QCストーリーを用いた問題解決のコツは、問題を明確にし、実現可能な目標を段階ごとに明確に立てていく点にあります。失敗した場合や成果を感じられない場合には、失敗した段階に戻り、検討と再チャレンジを繰り返しながら課題解決を図っていきましょう。
参考:
【初心者向け解説】QCストーリーとは?絶対に押さえておくべき前提知識・まとめ | アイアール技術者教育研究所 | 製造業エンジニア・研究開発者のための研修/教育ソリューション
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