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みなし残業とは?メリット・デメリット、導入時の注意点などを解説

みなし残業の制度を取り入れている企業は多く存在します。
給与計算の手間が省けるなどのメリットがある一方で、適切な周知ができないと残業時間が増えてしまう恐れもあります。
またみなし残業の導入に際しては、法律に反しないようさまざまな注意が必要です。
本記事ではみなし残業について、メリット・デメリットや、導入時の注意点などを解説します。

みなし残業とは

みなし残業とは残業時間に関係なく、一定時間分の残業代を支給する制度のことです。実際の労働時間に関係なく、月々の基本給に固定の残業代が含まれます。
たとえば「月30時間分の残業代を含む」と規定があれば、実際の労働時間に関係なく、30時間分の残業代が支払われます。実際には残業時間が発生していない、もしくは30時間を下回っている場合でも、30時間分が支給されます。

みなし残業の制度を導入している場合、以下の割増賃金は給与に含まれているとされるため、別途支給はありません。
1日8時間、週40時間を超える時間外労働に対する割増賃金
深夜割増賃金(22時〜5時の労働)
休日出勤に対する割増賃金

みなし時間を超えて残業を行った場合には、超過分の残業代は支給されます。
たとえばみなし残業の時間が月30時間と設定されている会社で35時間の残業をした場合、超過分の5時間については別途残業代が支給されます。

・労働基準法38

みなし残業の種類

みなし残業には以下の3種類があります。

  • 事業場外労働
  • 専門業務型裁量労働制
  • 企画業務型裁量労働制

それぞれの意味や違いについて解説します。

事業場外労働

社外での業務が多く、正確な労働時間の把握が難しい場合に利用されます。
会社から細かな指示が難しく、労働時間の算定・管理が困難な職種・職業が当てはまります。例えば下記です。

  • 外回りの営業
  • バスガイドや旅行の添乗員
  • 在宅勤務などオフィス外での業務

なお事業場外労働に当てはまる職種の人がオフィスに戻ってから残業をした場合は、その時間もみなし残業時間に含みます。

専門業務型裁量労働制

労働時間や業務の進め方などの指示・管理が難しく、社員に任せる方が効率的な場合に適用されます。専門業務型裁量労働制に当てはまる職種は、厚生労働大臣から指定された19種類です。公認会計士や弁護士などの士業をはじめ、専門性が求められるさまざまな職種が対象です。

  • 公認会計士
  • 弁護士
  • コピーライター
  • 証券アナリスト
  • システムコンサルタント など

企画業務型裁量労働制

業務の効率化や成果向上のために、労働時間の管理や業務進行を社員に任せた方が良い職種に適用されます。

  • 経理・財務
  • 人事・労務
  • 経営企画
  • 広報 など

3種類に当てはまらなくてもみなし残業が適用できる

みなし残業の対象となる職種は複数挙げられていますが、いずれの場合も以下の要件を満たす必要があります。

労働条件・就業規則・募集要項などの中で、みなし残業について明確に提示している
基礎賃金と残業代が明確に区別されている
残業時間が固定を超えた場合、超過分の割増賃金を支払う

なお時間外労働および裁量労働に該当しない職種であっても、労働基準法などの法律を満たせばどの企業でも導入可能です。
実際に、みなし残業制を導入する企業は年々増加傾向にあり、厚生労働省が実施した「平成30年就労条件総合調査」では、
みなし労働時間制を採用している企業割合 15.9%(前年比+1.9ポイント)という結果でした。

参考:労働時間制度

みなし残業のメリット

みなし残業の主なメリットは以下の3点です。

  • 会社側:残業代の計算が容易になる
  • 会社側:従業員の意欲・業務効率の向上につながる
  • 従業員側:残業時間が少ない場合でも残業代を得られる

それぞれの内容や実現できる理由を解説します。

会社側:残業代の計算が容易になる

残業代を正確に支払うためには、労働時間の管理や細かな計算が必要です。これらは従業員・給与計算担当者に大きな負担となります。しかしみなし残業制度は、
残業代が明確なため、給与計算の手間を抑えられます。担当者の工数も減り、時間の短縮や給与計算ミスの削減にもつながるでしょう。

会社側:従業員の意欲・業務効率の向上につながる

みなし残業では、実際には残業をしていない場合も、残業代が得られます。
そのため、時間あたりの給与を上げようと、従業員一人ひとりが効率化を意識します。
「給与目当てにわざとゆっくり業務をする」事態を無くせるのです。

従業員側:残業時間が少ない場合でも残業代を得られる

残業時間が固定より少なくても、一定額の残業代を必ず得られます。
安定的な月給が実現しやすい点は、従業員にとって大きなメリットとなる部分です。

みなし残業のデメリット

しかし制度を導入する際は、メリットだけでなくデメリットの確認も必要です。みなし残業には以下のようなデメリットも存在します。

  • 会社側:残業がなくても残業代の支払いが必要
  • 会社側:残業の増加につながる恐れがある
  • 従業員側:超過分の残業代がもらえないことがある
  • 時間当たりの給料が安く設定されることがある

みなし残業のデメリットについても、それぞれ具体的に解説します。

会社側:残業がなくても残業代の支払いが必要

みなし残業では、残業がなくても残業代を支払わないといけません。そのため、必要以上に人件費がかかるケースが十分にあり得るのです。特に、新しくみなし残業の制度を導入した場合、導入前よりも人件費が高くなる恐れが考えられます。

会社側:残業の増加につながる恐れがある

「残業を強制する制度ではない」と従業員に周知しないと、残業が増加する恐れがあります。たとえば30時間のみなし残業を導入した場合、伝え方によっては「30時間は残業が必要」と誤解させてしまうからです。
みなし残業はあくまで計算や管理を容易にするための制度であり、残業を定常化する目的はありません。
従業員には、残業の必要がなければ定時の帰宅で問題ないことを、しっかり理解させましょう。

従業員側:超過分の残業代がもらえないことがある

法律上支払われるべき金額がみなし残業代を上回る場合、必ず精算されないといけません。しかし、超過分が支払われないケースが多々あります。これは違法行為ですので、証拠や情報を集め、超過分を計算し、会社に請求しましょう。また、労働基準監督署に報告する方法もあります。

従業員側:時間当たりの給料が安く設定されることがある

みなし残業代を含む給与は、通常よりも金額が高く見えますが、労働時間で計算すると必ずしもそうではありません。逆に、基本賃金がその地域の最低賃金を下回る場合もあります。ブラック会社に就職しないよう、求人条件はしっかりと確認しておきましょう。

みなし残業を導入する際の注意

みなし残業によるトラブル・法律違反を避けるため、導入時には以下の点に注意が必要です。

  • 雇用契約書などに必要事項を明記する
  • 給与明細にみなし残業代・残業時間を明記する
  • みなし残業時間は月45時間まで
  • 最低賃金を下回らない

これらの内容に反してしまうと、みなし残業の制度適用が認められない恐れがあるため注意が必要です。それぞれの内容について詳しく解説します。

雇用契約書などに必要事項を明記する

みなし残業の制度を導入する際には、雇用契約書や就業規則、人材採用の募集要項などに必要事項の明記が求められます。明示しなければならない内容は以下のとおりです。

  • みなし残業に当てはまる労働時間および残業代
  • みなし残業分(固定残業代)を除いた基本給の金額
  • みなし残業として設定された固定残業時間を超えた場合、超過分の残業や休日出勤などの割増賃金は別途支給する旨

みなし残業に関する説明を書面に残さず口頭のみで行った場合、違法とみなされる恐れが大きいです。実際に多くの裁判所は、書面に明記されていない場合のみなし残業代を認めていません。募集要項・雇用契約書・就業規則のすべてにおいて、必要事項の明記が必須です。

給与明細にみなし残業代・残業時間を明記する

給与明細には、みなし残業代および残業時間の明記が必要です。たとえ支払っていても、未記載の場合、みなし残業の制度が認められず、裁判所から残業代の支払い命令が下される恐れがあります。

みなし残業時間は月45時間まで

みなし残業の時間は好きな時間を設定できるわけではありません。
みなし残業時間として設定できるのは、36協定で明記されている月45時間までです。
月45時間を超えるみなし残業については、裁判所に無効と判断されると考えられます。

例えば漫画喫茶で有名な「マンボー」は、みなし残業制のもと、1回12時間のシフトで店員を働かせていました。しかし、裁判でその固定残業代が無効となり、会社は1500万の支払いを命じられました。

参考:社会問題化する「固定残業代100時間」 自販機ベンダー業界からの告発(今野晴貴) – 個人 – Yahoo!ニュース

最低賃金を下回らない

みなし残業の設定時には、厚生労働省が定めた最低賃金を下回らないよう注意しましょう。基本給として設定している部分、固定残業代として設定している部分、いずれも最低賃金を下回らない適切な金額設定が必要です。なお、みなし残業を途中から導入にあたって基本給の減額をする場合は、従業員から同意書を取る必要もあります。

まとめ

みなし残業の制度は、残業代計算の簡易化や従業員の意欲向上など、さまざまなメリットが期待できます。

一方で発生した残業時間以上の残業代を支給する必要性や、従業員への説明が難しい点はデメリットといえます。メリット・デメリットの両方を把握し、そのうえで制度の導入を検討しましょう。

また、みなし残業を適用する場合は、法律違反にならないよう、書面への明記や設定する時間、最低賃金を上回るかなどの配慮が求められます。

参考:
みなし残業とは?2つの意味やメリット・デメリット、導入時の注意点も解説 | NECソリューションイノベータ
みなし残業(固定残業代制度)とは?メリットや違法性を解説|労働問題弁護士ナビ
企画業務型裁量労働制とは?対象業務や導入手順、注意点まで徹底解説 | BizHint(ビズヒント)- クラウド活用と生産性向上の専門サイト

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