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OJTとOFF-JTの違いとは?メリットとデメリット、活用法についても解説

OJTとOFF-JTは、ともに社員教育の手法です。OJTは現場での実務を通じて、OFF-JTは主に研修による座学で、業務に必要な知識や技術を学びます。

効果的な人材育成のためには、OJTとOFF-JTの特徴を理解したうえで、自社の規模や分野に合った教育法を考えることが重要です。

今回の記事では、OJTとOFF-JTの違いやメリット、デメリットについてご紹介し、双方の手法を効果的に組み合わせるためのポイントを解説します。

OJTとOFF-JTの違い

「OJT」と「OFF-JT」は、ビジネスにおける人材育成において重要視される教育の手法です。それぞれの違いを以下の表にまとめました。

手法名概要目的教育担当期間
OJT実務や実践を通じて担当業務に直結するノウハウを学ぶ業務効率やコミュニケーション能力をアップさせる社内の担当者中長期的
OFF-JT座学によりビジネス全般に必要な知識や理論を学ぶビジネスマンとしての視野や知見を広げる外部の講師が行う場合が多い短期

OJTは実践を通じて即戦力となる人材を育成し、業務効率やコミュニケーション能力を向上させることを目的としています。社員は現場で業務を行いながら、教育によって実務に必要なノウハウや技術、コミュニケーション術を習得します。

教育を受ける側が自ら動いてスキルを得ることから、アウトプット型の教育法といわれるのがOJTです。

OJTにおける教育担当者は主にチーム内の上司や先輩です。社員は教育担当者とマンツーマンで業務を身につけることができ、評価や課題設定を繰り返してスキルアップしていきます。期間は3ヶ月〜1年という中長期で設定されるのが一般的です。

対してOFF-JTは、社員が座学研修を受け、ビジネスに関する体系的な知識や理論をインプットする教育方法です。教育担当者は外部講師であるケースが多く、実施場所も外部の会議室や研修室になることがあります。最近ではオンラインでも実施されています。

OFF-JTは社員のビジネスパーソンとしてのスキルを底上げすることを目的に実施され、1〜3日の短期集中型であるのが一般的です。

OJTのメリット

OJTの主なメリットは以下の3点です。

  • 個人に合わせた指導ができる
  • エンゲージメントの構築につながる
  • 教育担当者のスキルアップにつながる

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

個人に合わせた指導ができる

OJTは社員に対して教育担当者がマンツーマンで実務を教える形式であるため、教育を受ける社員の性格や得意・不得意に合わせて教育計画や教育方針をカスタマイズできる点がメリットです。

社員と相性の良い教育担当者を選定すれば、コミュニケーションが円滑になり、より効率的に教育の成果をあげられます。

少子化による人材不足が慢性化している現在、社員一人ひとりの能力を最大限に活用する「人的資本経営」の重要性が増しています。社員の個性に合わせたきめ細やかな教育ができるOJTは、人的資本経営の促進に適した教育法だといえるでしょう。

エンゲージメントの構築につながる

OJTにおける教育担当者の業務は、業務指導だけにとどまりません。社員のモチベーション管理や問題解決のサポートも行うため、OJTを受けた社員は会社に対するエンゲージメント(愛着)を持ちやすくなります。

社員のなかで組織や企業に対する愛着が高まれば、職場定着率がアップし、企業の持続的発展につながります。また、業務に対するモチベーションが向上すれば、企業全体の生産性もアップするでしょう。

教育担当者のスキルアップにつながる

OJTを実施することは、社員だけではなく教育担当者のスキルアップにもつながります。新入社員への説明や解説を通じて、業務の背景や目的を再認識するきっかけを得られるためです。

指導をするなかで、コーチング力やヒアリング力といったリーダーに必要なスキルを身につけられることも、OJTを実施するメリットです。

OFF-JTのメリット

OFF-JTの主なメリットは以下の3点です。

  • 均一な教育が可能
  • 体系的に知識を習得でき、視野が広がる
  • 現場への影響が少ない

それぞれ詳しく解説します。

均一な教育が可能

OFF-JTは複数の社員に対し、研修やセミナーの形式で教育を行うため、知識や技術を均一に教えられるメリットがあります。

階層や年代に合わせて適切なOFF-JT教育を提供することで、各階層に求める専門性の習得や共通認識の強化を図れます。

体系的に知識を習得でき、視野が広がる

OFF-JTでは体系的、理論的な知識の習得が可能です。通常の業務では学べない汎用性の高い知識や新しい技術を総合的に学べます。OFF-JTで得たスキルを実務に応用することで、業務効率の向上が期待できるでしょう。

また、新しい知見を得て視野が広がることで、社員が自分の強みや課題を俯瞰的に見られるようになる点もOFF-JTのメリットです。自主的なキャリアデザインや目標設定が可能となり、SD(自己啓発)へのモチベーションが高まります。

現場への影響が少ない

OFF-JTは現場への影響が少なく、多忙な企業や部署であっても人材育成が可能です。

とくに新入社員の場合、ビジネスマナーや基礎知識の段階から教育する必要があり、手間や時間がかかります。新入社員研修などのOFF-JTにより基本的なスキルを習得させることで、現場の負担を大幅に軽減できるでしょう。

また、OFF-JTは一般的に数日以内の短期で完結します。教育を受ける社員が不在となる期間が短い点も、現場への影響が少ないといわれる要因です。

OJTのデメリット

OJTの主なデメリットは次の3点です。

  • 教育担当者の力量や相性によっては成果が出ないことがある
  • 教育担当者の負担が大きい
  • 体系的な知識を得られにくい

それぞれのデメリットと解決策について解説します。

教育担当者の力量や相性によっては成果が出ないことがある

OJTの成否は教育担当者の指導力に大きく左右されます。指導力の低い社員を教育担当者にしてしまうと、新入社員の業務への理解やスキル習得が進まず、期待どおりに成長しない場合があります。

また、教育担当者と新入社員の相性も重要なポイントです。相性が悪いと円滑なコミュニケーションができず、教育担当者と新入社員双方にストレスがかかりかねません。

OJTが失敗すると、新入社員のモチベーションが大幅に下がり、休職や早期離職につながるおそれがあります。OJTの教育担当者を選ぶ際には、指導者としての力量はもちろんのこと、新入社員との相性も考慮しましょう。

OJTのマニュアル作成やOJT研修の開催による指導力の底上げも、企業として行うべき対策です。

教育担当者の負担が大きい

OJTは教育担当者の負担が大きく、実務に影響が及ぶおそれがあります。教育担当者は通常の業務を遂行しながら新入社員の教育を行わなくてはならず、指導に時間がかかりすぎると、通常業務が圧迫されるためです。

また、逆に多忙により新入社員を放置してしまう事態も起こりえます。

教育担当者の負担を減らすためには、チーム全体で教育担当者の業務調整や教育のサポートを行うことが重要です。OJTの目的や意義を組織全体で共有し、フォロー体制を整えましょう。

体系的・論理的な知識を得られにくい

OJTは実務実行に関するノウハウや能力を学べる一方で、ビジネスに関する体系的・理論的な知識を得にくいデメリットがあります。

社員がOJTを受けたとしても、目の前の業務をこなせるようになるだけです。そもそもなぜその業務が必要なのかや、学んだ内容をどう活用していけるのかなど、ビジネスに対する理解が深まるわけではないため、ビジネスパーソンとしての成長までは見込めません。

OJTにおける問題点や成功させるポイントは以下の記事で詳しくご紹介しています。

OFF-JTのデメリット

OFF-JTの主なデメリットは以下の3点です。

  • コストがかかる
  • 個人の適性に合った教育は難しい
  • 社員の主体性が育たない場合がある

各デメリットについて詳しくご紹介します。

コストがかかる

OFF-JTは金銭的なコストがかかります。社外研修を実施する場合、講師謝礼や会場のレンタル費用、社員の交通費などが生じるためです。

厚生労働省が発表した「令和5年度 能力開発基本調査」によると、OFF-JTの平均費用は年間一人当たり約1.5万円です。企業の規模や売り上げによっては、教育費が大きな負担となるでしょう。

また、OFF-JTにかかる時間的コストも重要な問題です。実施する際には、研修内容や講師の設定、会場のセッティング、社員への周知といった準備が必要です。

さらに、研修終了後は各社員へのフィードバックを行わなければなりません。OFF-JTの比重が大きくなるほど、担当者にかかる負担は大きくなってしまいます。

習得すべきスキルによってはオンライン研修や読書など、比較的コストの低い方法を選ぶことで、OFF-JTにかかるコストを削減できます。

出典:厚生労働省 令和5年度 能力開発基本調査 調査結果の概要

個人の適性に合った教育は難しい

個人に合わせた教育が困難な点もOFF-JTのデメリットです。OFF-JTは均一な教育ができる反面、教育を受ける側の適性や能力によって、理解度にバラつきが生じるおそれがあります。

また、OFF-JTの内容や形式によっては、新入社員のモチベーションを下げてしまう点も問題です。たとえば、自主性が高く、実践を通じてスキルアップしたい新入社員にとっては、座学形式で一方的に知識を伝えるタイプの研修は苦痛になってしまうでしょう。

個々人の適性やニーズに合わせてフレキシブルに教育内容を変更できるOJTと比較すると、OFF-JTは柔軟性の面で課題が多いといえます。

研修後はフォローアップや個別トレーニング、メンター制度を活用し、理解度やモチベーションを高めましょう。

社員の主体性が育たない場合がある

OFF-JTでは社員の主体性が育たない場合があります。一方的な講義形式で行われることが多く、学習姿勢が受け身になる傾向があるためです。

研修内でロールプレイングやチームディスカッションといった能動的に学ぶ時間を取る、研修後にアウトプットする機会を設けるなど、学習内容を応用、活用できるよう対策することが重要です。

OJTとOFF-JTどちらを優先すべきか

OJTとOFF-JTは教育形式や習得できるスキル、特徴が大きく異なります。人材育成において、どちらが効果的なのでしょうか。

先ほどご紹介した、厚生労働省の「令和5年度 能力開発基本調査」における「OJTとOFF-JTどちらを重視しているか」という質問では、約8割の企業が「OJTを重視する」、または「OJTを重視するに近い」と答えています。

OJTは即戦力を育成するために有効であり、短期的な視点で見ると費用対効果の大きな教育法です。しかし、人的資本を醸造し、長期的な経営成長を目指すためには、理論や知識を総合的に学べるOFF-JTが欠かせません。

OJTとOFF-JTは「どちらがよい」というものではありません。それぞれの特徴を理解し、自社の分野やニーズに合わせて適切に組み合わせることで、企業の利益増大と持続的発展につながります。

出典:厚生労働省 令和5年度 能力開発基本調査 調査結果の概要

OJTとOFF-JTを連動させるポイント

OJTとOFF-JTの成果を上げるためには、双方の教育法を連動させることが重要です。

それぞれをうまく連動させるためには、以下のポイントを押さえましょう。

  • OJTとOFF-JTの特徴と自社の特性をすり合わせる
  • OFF-JTで学んだあと、OJTで実践する
  • キャリアアップにOFF-JTを活用する
  • OFF-JT担当者とOJT担当者が連携する
  • 1on1により現状を把握する

それぞれ詳しく解説します。

OJTとOFF-JTの特徴と自社の特性をすり合わせる

OJTとOFF-JTの配分を決める際には、自社の特性を考慮することが重要です。OJTとOFF-JTのどちらを優先すべきか、企業規模とジャンルという2つの観点から見ていきましょう。

判断企業の規模企業のジャンル
OJTを優先する中小企業製造業、技術職
OFF-JTを優先する大企業販売業、サービス業

大企業は社員数が多いため、同時教育が可能なOFF-JTが有効です。資金面での余裕もあることから、専門的な知識や技術を広く学ぶ機会を多く提供できるでしょう。

一方、中小企業はコスト面で制約が多いため、OJT主体の教育計画が適しています。現場で活躍できる人材を早期育成でき、経営の安定や発展を望めます。

また、製造業や技術職といった、現場で体を動かしてスキルを習得する職業にもOJTが有効です。機械の操作や製品の製造、管理といった現場仕事を通じて、実践的な学びを得られます。

OFF-JTに向いているジャンルとしては、販売業やサービス業が挙げられます。研修により基本的なビジネスマナーや言葉遣い、営業スキルを総合的に学ぶことで、実践に必要な専門的知識や応用力を身につけられるでしょう。

OFF-JTで学んだあと、OJTで実践する

とくに新入社員には、OFF-JTで体系的な知識を学んだあと、OJTで実践するという流れが有効です。

入社後、新入社員にすぐ業務を任せると、戸惑いや不安を抱かせてしまうおそれがあります。また、教育担当者にとってもスキルレベルがわからない新入社員を一から教えるのは、大きな負担になりかねません。

まずはOFF-JTでビジネスマナーや基礎知識を学び、業務の全体像を把握することで、OJTを行うための土台ができます。業務に対する理解度が上がるため、スムーズに現場へ出られるでしょう。

キャリアアップにOFF-JTを活用する

OFF-JTは中堅社員のキャリアアップにも役立ちます。教育担当者やメンターになるときや、管理職に昇進するときなど、キャリアアップする節目で研修を実施することで、高度なスキルや新たな視点の獲得が望めます。

しかし、OFF-JTだけでは十分とはいえません。中堅社員は新入社員と異なりキャリアや知見があるため、自分流に業務を進めてしまい、研修で得た知識を実務で活用できない場合があります。

OFF-JTの成果を高めるためには、OJTと組み合わせることが重要です。研修で学んだ知識を実務で活用できているかを評価することで、社員自身が主体的に学びを活かす体制を整えましょう。

OFF-JT担当者とOJT担当者が連携する

一般的に、OFF-JTは人事担当者、OJTは教育を受ける社員と同部署の上司や先輩が担当します。双方の連携が不十分だと、OFF-JTで得たスキルをOJTに活用できず、社員のモチベーションは低下してしまいます。

OFF-JT担当者とOJT担当者が連携し、双方の教育法がシームレスに結びつくような体制や評価方法を整備することが重要です。

具体的な対策例を以下にご紹介します。

  • OJTでの学習が難しいスキルや知識をOFF-JT担当者と共有し、研修内容を考える
  • OFF-JTの内容をOJT担当者が把握し、研修後に実務を通じて理解度を評価する
  • OJTで習得したスキルよりも一段階上の内容をOFF-JTで学習させる

1on1により現状を把握する

教育成果を高めるためには、フィードバックによる現状把握と課題設定が重要です。1on1を実施し、社員のコンディションや教育の進捗状況を把握するとともに、今後の課題設定を行いましょう。

課題を明確に定めることで、OJTとOFF-JTのバランス調整や教育方針・教育内容の見直しが可能となります。

また、社員のモチベーションアップやメンタルケアにつながる点も1on1のメリットです。定期的に行い、教育の成果を上げましょう。

OJTの効果を上げる方法について知りたい方は、以下の記事をお読みください。

OJTとOFF-JTの違いを理解して人材育成の成果を上げよう

OJTとOFF-JTの違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。OJTとOFF-JTは手法や特徴において、正反対ともいえる教育法です。双方の教育法を適切に組み合わせ、連携させることで教育の成果は大幅にアップします。

OJTとOFF-JTのバランス調整をはじめとした教育方針を設定するためには、新入社員一人ひとりの適性を理解することが重要です。能力はもちろん、性格や価値観についてもしっかり把握し、個々の社員に合った教育機会を提供しましょう。

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