会社を設立する際、まず選択肢に浮かぶのは株式会社としての設立ではないでしょうか。しかし、会社の形態は株式会社だけではなく、合同会社という選択肢もあります。
株式会社にはないメリットを多数持つ合同会社ですが、詳しい情報がないことから「よくわからないから、合同会社にするのはやめておこう」と考える人も少なくありません。
そこで本記事では、合同会社のメリット・デメリットや設立の流れについて詳しく解説していきます。これから会社を立ち上げようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
合同会社とは
合同会社とは、経営者と出資者が同一であり、出資者全員が有限責任社員である会社形態です。合資会社や合名会社と並び、持分会社の一つといわれています。
2006年施行の会社法によって導入されたものなので、日本での歴史は深くありません。しかし、アメリカでは株式会社と並び利用されている会社形態の一つであり、日本でも徐々に浸透してきている状況です。
合同会社が誕生した背景
合同会社の元になったのは、LLCです。LLCは「Limited Liability Company」の略称で、1977年にアメリカのワイオミング州で誕生した会社形態を指します。
当初は税金の扱い方が不明確であったため、利用者は多くありませんでした。しかし、1997年にチェック・ザ・ボックス・ルール」と呼ばれる規則が導入され、税金の扱い方がわかりやすくなったことを受け、アメリカ国内で一気にLLCの会社形態をとる企業が増えました。
アメリカで増えたLLCは、その後日本にも伝わり、合同会社という企業形態が誕生しました。株式会社と組合に似た中間的な性質を持っており、使い勝手が良いため、日本での利用も増えてきています。
参考:合同会社誕生の歴史的背景
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社の一番の違いは、所有者と経営者が同じかどうかです。 株式会社では、株主が会社の経営を経営者に任せて、経営者が会社の実務を行ないます。これを「所有と経営の分離」と呼びます。
一方で、合同会社では出資者自身が業務執行の権限を持ち、実務を担当します。これを「所有と経営の一致」と呼びます。 ただし、株主や出資者の責任が有限責任であることは、共通部分です。
参考:合同会社とは?設立のメリット・デメリットや株式会社との違い、設立の手続きまで解説!
合同会社を設立するメリット
合同会社を設立するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 少ないコストで会社を設立できる
- 自由度の高い経営ができる
- 法人の節税メリットがある
- 決算発表が義務ではない
- 社員が有限責任である
- 株式会社への移行もできる それぞれ詳しく解説していきます。
メリット1:少ないコストで会社を設立できる
会社設立には、登録免許税を支払う必要があります。株式会社の場合だと最低でも15万円かかりますが、合同会社なら最低6万円の登録免許税に抑えられます。
また、株式会社の場合、公証役場による定款の認証が必要で、手数料として5万円が発生します。一方、合同会社の場合は認証する必要がないため、認証料がかかりません。
電子定款にすれば定款用の収入印紙代も不要となるため、合同会社であれば登録免許税の6万円だけで会社を設立できます。
参考:合同会社とは?特徴やメリット、向いている業種を詳しく解説! | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
メリット2:自由度の高い経営ができる
株式会社の場合、株式の保有割合に応じて利益配分が決定されますが、合同会社の場合は出資比率に関係なく、自由に利益配分が行なえます。
そのため、出資金が多い人ではなく、会社に貢献している優秀な社員に利益を多く配分することも可能です。 他にも、株主総会を開催する必要もないため、スピーディーな経営判断が実行できる点も合同会社の魅力の一つといえるでしょう。
メリット3:法人の節税メリットがある
合同会社は法人なので、個人事業主よりも経費の対象範囲が広くなります。
例えば、自宅兼事務所の家賃について、個人事業主だと一部しか経費として認められませんが、合同会社だと全額経費として扱えます。
経費にできる範囲が広くなると節税効果が期待できるため、個人事業から合同会社へとステップアップさせる事業者も増えています。
メリット4:決算発表が義務ではない
株式会社の場合、決算発表を毎年必ず行なう義務があります。
費用や手間のかかる決算発表ですが、合同会社の場合は公表する義務がありません。そのため、決算発表の準備に人員やお金をかけることなく、事業に専念できるメリットがあります。
メリット5:社員が有限責任である
合名会社や合資会社の場合は無限責任が生じますが、合同会社は株式会社と同じく「間接有限責任」です。
そのため、会社に負債があっても、出資者は出資額以上の責任を負う必要がありません。
メリット6:株式会社への移行もできる
事業を拡大していくうちに、合同会社よりも株式会社の形態をとったほうが多くのメリットを享受できるケースがあります。
出資者を変更したり、事業規模を大きくしたりする場合、組織変更の手続きを行なえば、合同会社から株式会社へ移行可能です。
株式会社への移行には、官報掲載費の3万円、登録免許税の収入印紙代6万円、そして司法書士への手数料5万円程度の費用が発生します。
参考:合同会社とは?特徴やメリット、向いている業種を詳しく解説! | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
合同会社を設立するデメリット
合同会社を設立するデメリットとしては、以下が挙げられます。
- 株式会社よりも認知度が低く、信用を得にくい
- 資金調達の方法が少ない
- 社員の対立が会社規模のトラブルになりやすい それぞれ解説していきます。
デメリット1:株式会社よりも認知度が低く、信用を得にくい
合同会社と聞くと、会社の規模が小さいと判断されてしまいがちです。会社形態の認知度が低いため、取引先から低く評価されてしまう可能性も懸念されます。
合同会社であることが企業との提携や取引に支障をきたしそうであれば、合同会社ではなく株式会社の形態をとることをおすすめします。
デメリット2:資金調達の方法が少ない
株式会社の場合、株式の発行によって資金調達が可能です。一方、合同会社の場合は株式という概念がありません。そのため、資金調達を行なう際は、国や自治体の補助金・助成金、または融資に頼ることになります。このように、資金調達手段が株式会社より限定されている点が、合同会社の不利な点といえます。
なお、合同会社でも社債の発行は可能です。ただし、負債扱いになるため注意が必要です。
デメリット3:社員の対立が会社規模のトラブルになりやすい
合同会社では、社員全員が同等の議決権を持っています。そのため、社員同士の対立が経営に大きく影響します。
利益配分が自由に決められる点は、メリットでもありますが、それが理由で揉める可能性もあります。事前に利益配分のルールを定款に記載しておくなどして、社員同士の対立を未然に防ぎましょう。
合同会社を設立する流れ
合同会社の設立には、大きく4つのステップがあります。
- 設立項目の決定
- 定款の作成
- 登記書類の作成
- 登記申請
それぞれ詳しくみていきましょう。
設立ステップ1:設立項目の決定
まずは、会社設立に必要な項目を決定していきます。必要な項目としては、以下が挙げられます。
- 会社名
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金額
- 社員構成
- 事業年度
資本金は1円からでも起業できますが、半年程度の運転資金を用意するのが一般的といわれています。
また、事業年度の開始日は自由に設定可能です。一般的には、国の事業年度(4月1日〜3月31日)もしくは暦(1月1日〜12月31日)に合わせる企業が多い傾向にあります。
設立ステップ2:定款の作成
次に、定款を作成します。会社の規則である定款では、以下の項目を必ず記載しなければなりません。
- 事業目的
- 会社名
- 本店所在地
- 社員の氏名と住所
- 社員が有限責任社員であること
- 社員の出資目的と金額
作成は義務ですが、公証役場での定款の認証は不要です。
設立ステップ3:登記書類の作成
次に、登記書類を作成します。主な書類は次のとおりです。
- 合同会社設立登記申請書
- 代表社員の印鑑証明書
- 払込証明書
- 印鑑届出書
- 登録免許税の収入印紙
設立ステップ4:登記申請
書類が用意できたら、いよいよ登記申請です。申請は、管轄の法務局で行ないます。
管轄外の法務局では申請できないので、ご注意ください。 登記申請が終われば、合同会社の設立手続きは完了です。
参考:合同会社とは?設立のメリット・デメリットや株式会社との違い、設立の手続きまで解説!
合同会社運営時に覚えておきたい税金
合同会社を運営する際、覚えておきたいのが法人住民税と消費税の取り扱いです。ここでは、それぞれの税と合同会社の関係を解説していきます。
法人住民税
税金の負担は株式会社と同様なので、合同会社でも法人住民税を納付する義務があります。
具体的な金額については、黒字決算の場合、「利益の金額×法人税率」という式で算出します。 赤字決算の場合は、均等割額の支払い義務が発生します。なお、法人住民税の均等割額は会社の規模によって異なるため、詳しい金額は政府の公式サイトをご確認ください。
消費税
合同会社を新たに設立する場合、消費税課税に該当する1期目と2期目の基準期間がないので、基本的には消費税を納付する必要はありません。
ただし、資本金が1千万円を超える場合は納税義務が免除されないため、注意が必要です。
合同会社に向いている業種
最後に、合同会社に向いている業種を3つご紹介します。
小規模のスタートアップ
小規模のスタートアップにとって、スピーディーな意思決定ができたり、利益分配が自由に行えたりできる合同会社の形態は、利点の大きいものといえるでしょう。
年商1千万円以下の場合であれば消費税の納税が免除されることも、小規模スタートアップに合同会社がおすすめの理由の一つです。
一般消費者向けの事業
喫茶店や美容室などのように一般消費者向けの事業を展開する場合も、合同会社がおすすめです。 BtoCビジネスにおいては、顧客が一般消費者であるため、企業間の取引とは異なり、会社の形態を気にされる可能性はほとんどありません。
学習塾やITサービスについても、同様の理由で合同会社の持つデメリットの影響を受けにくい事業といえるでしょう。 一般消費者向けの事業を行なう場合は、合同会社の設立を検討してみることをおすすめします。
まとめ
本記事では、合同会社のメリット・デメリットや設立の流れについて解説してきました。
合同会社には、少ないコストで会社を設立できたり、スピーディーな意思決定が可能であったりと、多くのメリットがあります。 日本での知名度はまだまだ低い合同会社ですが、経営スタイルや業種によっては株式会社より利点のある会社形態なので、これから会社を立ち上げたい方はぜひ一度検討してみてください。
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