ラテラルシンキングは思考法のひとつで、固定観念にとらわれない発想ができる方法として注目を集めています。価値観の多様化が進む現代において、ラテラルシンキングの必要性を感じる企業は多く存在します。
ビジネスシーンをはじめ、さまざまな場面で役に立つと考えられており、ぜひ身につけたいスキルです。本記事では、ラテラルシンキングの意味や思考の進め方・能力を鍛える方法などを解説します。
ラテラルシンキングの意味
はじめにラテラルシンキングの意味について解説します。用語の意味に関する正しい情報は、内容を深く理解し使いこなすうえで必要不可欠です。
ラテラルとは
ラテラルシンキングの「ラテラル(Lateral)」は、「水平な」「横に向かった」「側面」などの意味を有する英単語です。
ラテラルシンキングを直訳すると「水平の考え方」「側面から考えること」となります。そして、よりわかりやすい表現に変化し、「水平思考」といわれるようになりました。
ビジネスシーンではラテラルシンキングではなく、日本語の水平思考が使われる場面も多くあります。どちらも表している意味は同じです。
固定観念にとらわれない多面的な思考
ラテラルシンキングは、固定観念や常識にとらわれず、物事を多面的な視点から考察する思考法です。
物事をひとつの視点から考える方法では、柔軟な思考や新たなアイディアの誕生は難しいです。しかし近年は環境の変化が激しく、価値観の多様化が進んでいます。これまでの常識が否定される場面も珍しくありません。よくあるアイディアでは太刀打ちできないシーンがどんどん増えています。
このような時代に対応するには、物事をさまざまな視点からとらえることが必要不可欠です。したがって、水平的に発想を広げていくラテラルシンキングへの注目度が高まっています。
ラテラルシンキングと他の思考法の違い
ラテラルシンキング以外にも、身につけると役立つ思考法は複数存在します。今回は数ある思考法のなかでも、とくに見聞きする機会の多い2つの思考法について、ラテラルシンキングとの違いを解説します。
クリティカルシンキングとの違い
クリティカルシンキングは「批判的思考」とも呼ばれる思考法です。文字通り物事を批判的にとらえながら思考・発想を進めていきます。
固定観念や常識を疑うという点では、ラテラルシンキングと似ています。しかしラテラルシンキングは批判を目的とするのではなく、別の視点から物事をとらえ思考することに重点を置いています。多角的な見方により、これまでと異なる発想を生み出そうとします。
一方でクリティカルシンキングは、批判的にとらえたうえでの思考により、考え方の誤りや価値観の偏りを正すことが目的です。前提条件から論理といった一連の流れにおいて、あらゆる事項を疑いながら思考を進めます。
ロジカルシンキングとの違い
ロジカルシンキングは「論理的思考」とも呼ばれます。ひとつの物事に関して複数の論理をつなぎあわせ、深く掘り下げたうえで結論を導き出す思考法です。
ロジカルシンキングは「垂直思考」とも表現される思考法であり、「水平思考」と呼ばれるラテラルシンキングとは思考プロセスや目的が大きく異なります。ラテラルシンキングはこれまでの常識などにとらわれず、自由な発想や新しい見方を重視します。創造性を重視する思考法であり、思考によって導かれる結論が複数存在するのが一般的です。
ロジカルシンキングは既存の概念や論理を用いながら、深く考えを掘り下げていきます。納得のいく結論を導き出すことが主な目的です。したがってロジカルシンキングは、既存の考え方や説得力のある材料を大切にし、導き出される結論もひとつです。
ラテラルシンキングを身につけるメリット
ラテラルシンキングを身につける主なメリットとして、以下3つがあげられます。
- 新しい見方ができる
- イノベーションが期待できる
- 失敗に見える結果でも成功に変えられる
それぞれ詳しく解説します。
新しい見方ができる
ラテラルシンキングの大きなメリットのひとつが、物事に対して新しい見方ができるようになる点です。
ほとんどの人は、程度の差はありますが、独自の価値観や何らかの偏見を有しています。したがって物事について考えるにあたって、どうしても偏った考えになりがちです。また無意識のうちに、同じ視点で見てしまう、似たような結論にたどり着いてしまうケースも多くみられます。
ラテラルシンキングは意図的に多角的な視点でとらえる思考法です。そのため自然と、普段とは異なる見方・考え方ができるようになります。思考の偏りや固定観念などにとらわれない思考ができるため、視野が広がり成長につながると期待できます。
イノベーションが期待できる
ラテラルシンキングはイノベーションが期待できる思考法です。
新たなアイディアを生み出すためには、柔軟な発想が必要です。しかし物事を常に同じような視点からとらえる状態では、新しい何かが生まれる可能性も低くなってしまいます。また、ロジカルシンキングのように根拠を積み重ねながら考えを深める方法では、思考の飛躍が起こりにくいため、革新的な発想も生まれにくいです。
ロジカルシンキングなど、別の思考法が劣っているというわけではありません。しかし新たな発想やイノベーションにはつながりにくいのも事実です。
ラテラルシンキングは論理やこれまでの常識をあえて重要視せず、新たな視点を重要とします。そのため抜け道のような考え方や、枠にとらわれない大胆な発想などが見つかる可能性が高いです。ラテラルシンキングによるイノベーションがきっかけで、大きな成功につながるケースも十分に有り得ます。
失敗に見える結果でも成功に変えられる
ラテラルシンキングには、既存の考え方や常識は関係ありません。そのため一見失敗に見える状態も、ラテラルシンキングを用いれば成功に変えられる可能性があります。
失敗と思われた結果が成功に変わった例として、「ポスト・イット(付箋)」があげられます。ポスト・イットを発明したスペンサー・シルバー氏は、もともとは接着剤の開発を行なっていたのですが、その過程で粘着力の低い成果物ができました。接着剤という観点では失敗作ですが、この成果物を別の何かに活用できないかと考え、結果として貼ったり剥がしたりが容易なポスト・イットが生まれたのです。
このようにラテラルシンキングは、失敗にみえる結果を成功にとらえなおすことができる可能性があります。
ラテラルシンキングの進め方
ラテラルシンキングは以下の流れに沿うと進めやすいです。
- 現状の不満に気づく
- 「なぜ」の視点で追求する
- 「ならば」理想は何かを考える
- 「どのように」解決するか案を出す
- 一連の流れを繰り返す
それぞれのステップについて詳しく解説します。
1. 現状の不満に気づく
最初にラテラルシンキングの対象となる物事を定める必要があります。解決するべき課題として、現状の不満を見つけると効率的です。
不満があるとは、何らかの問題・課題を抱えている状態といえます。まずは不満を洗い出すと、ラテラルシンキングを用いて解決したい課題が見つかりやすいです。
今回は例として「業務量が多く残業時間が長くなってしまう」という不満を問題として用います。
2. 「なぜ」の視点で追求する
「業務量が多く残業時間が長くなってしまう」という問題に対して、以下のようにさまざまな「なぜ」を考えます。
- なぜこの業務が必要なのか
- 一人当たりの業務量が多くなってしまう理由は何か
多面的な思考のため、なるべく多くの要素を洗い出すことが大切です。
3. 「ならば」理想は何かを考える
現状抱えている不満に対する「なぜ」を明確にし、そのうえで「ならば」理想は何かを考えていきます。今回の例の場合、理想として以下のような「ならば」があげられます。
- 本当に必要な業務のみを絞り効率化を実現したい
- 一人当たりの業務量を少なくしたい
不満・課題をとらえなおし、視野を広げるために大切なステップです。
4. 「どのように」解決するか案を出す
「どのように」は、ラテラルシンキングのなかでもとくに重要なステップといえます。既存のルールや枠組みを考えず、さまざまな観点からの発想が大切です。アイディアの否定や常識の考慮などをせず、とにかく多くの案を出します。
5. 一連の流れを繰り返す
具体的な案が出てきたら、実際に案を取り入れるのもひとつの方法です。しかしラテラルシンキングをより深め、さらに広い視野で新たな発想を生み出すには、一連の流れを繰り返すことが効果的です。
ラテラルシンキングを繰り返すことで、新たなアイディアが生まれる可能性がより高まるでしょう。
ラテラルシンキングの力を鍛える方法
ラテラルシンキングの力を鍛える方法として、以下3つがあげられます。
- 前提を疑う
- 日常生活でも意識的に取り入れる
- オズボーンのチェックリスト法を用いる
それぞれの方法について詳しく解説します。
前提を疑う
ラテラルシンキングは多面的な視点で物事を考える方法です。前提条件をそのまま受け入れてしまうと、その時点で見方がひとつに固定されてしまいます。
ラテラルシンキングの入り口として、まずは前提を疑うところから始めていきます。
日常生活でも意識的に取り入れる
ラテラルシンキングは繰り返し行うほどに伸びるスキルです。ラテラルシンキングの機会を増やすためには、日常生活でも意識的に取り入れると効果的です。
ラテラルシンキングはビジネスシーンで特に求められるスキルですが、普段の生活でも十分に使えます。日常に存在する不満や常識に対し、多角的な考えをするよう意識すると、自然とラテラルシンキングの機会が増えていきます。
オズボーンのチェックリスト法を用いる
オズボーンのチェックリスト法を用いるのも効果的な手法です。ブレインストーミングの考案者であるオズボーンは、新たな発想を生み出す発想法として、以下9つの項目をあげました。
- 転用:商品やサービスなど対象物について、すでに存在するものの新たな使い方を考える
- 応用:事例を参考にする、今あるアイディアを発展させる
- 変更:対象物について、色・形・場所など一部の要素を変更する
- 拡大:物理的に大きくする、サービスであれば頻度を高めるなど
- 縮小:物理的に小さくする、サービスであれば頻度をおさえるなど
- 代用:対象物を構成する要素を別のものに代える
- 置換:順番や要素などを入れ替える
- 逆転:工程や役割などを逆転させる
- 結合:要素やアイディアなどを組み合わせる
常識にとらわれない考え方にあたって、具体的なヒントとなり得ます。
まとめ
現代は環境の変化が激しく、柔軟な思考やイノベーション・アイディアが求められる時代です。そのため多面的な視点で考えるラテラルシンキングが求められる場面が多く存在します。
ラテラルシンキングは一見難しく感じるかもしれませんが、思考のステップや鍛え方をおさえれば、必ず身につけられます。今回紹介した内容をもとに、ラテラルシンキングを活用してみてはいかがでしょうか。
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