近年、企業の人材育成において「内省」が注目を集めています。過去の出来事を振り返り、自分の内面と向き合うことでさまざまな効果が期待できますが、やり方を誤るとかえって逆効果となる恐れもあります。
本記事では、内省の重要性や内省力の鍛え方、注意点について解説します。効果的な人材育成を行いたいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
内省とは
内省とは、自分の考え方や言動を深く省みる行為のことです。
日々の出来事に対してどのように感じたか、またなぜそのような行動したかを客観的に振り返ることで、自分自身を見つめ直すきっかけとなります。そして、普段は意識することのなかった物事の本質に気づくとともに、今後同じような出来事に直面したときにどう対処すべきかを学ぶことができるといった効果があります。
参考:内省とは – コトバンク
反省との違い
反省とは、自分の考え方や行動を振り返り、良くなかった点を認めて改めようとする行為のことです。
今後のために過去を振り返るという意味では内省と同じですが、内省は良かった点と良くなかった点をどちらも振り返るのに対し、反省は良くなかった点に重点を置いているところが異なります。
また、内省は客観的に自己観察を行うことを目的としているのに対し、反省は振り返りの内容や改善点を周囲に伝えることを目的としています。
参考:反省とは – コトバンク
内観との違い
内観は、内省と同様に自分の考え方や言動を省みる行為のことです。
もともとは自分の感覚や感情を意識的に観察する心理学の手法として用いられていた言葉ですが、現在では内省と同じ意味で用いられています。
参考:内観とは – コトバンク
内省が重要視される理由
近年、内省は企業の人材育成の手法として注目を集めています。理由は以下の通りです。
- 自分の客観的に理解できる
- 将来のキャリア形成ができる
- 企業の生産性向上つながる
それぞれ詳しく解説します。
自分を客観的に理解できる
社員一人ひとりが自分を客観的に理解できる点は、内省が重要視される理由のひとつです。
仕事に対する考え方や、仕事中の言動を振り返ることで、普段意識していなかった価値観に気づくことができます。さらに、「なぜそのように感じたか」「なぜそのように行動したか」を考えることや、同じような出来事が起こったときにどのような考え・行動をすべきかを明らかにすることもできます。
もちろん、上司や先輩社員から指摘を受けて自分の考えや行動に気づくこともありますが、自分自身で振り返ることでより深い理解を得ることができるのです。
将来のキャリア形成ができる
さらに、将来のキャリア形成においても内省が効果的です。
自分を客観的に理解することで、将来像が明確になり、直近の目標を立てやすくなるためです。目標を立てることで、自分がどのように仕事に取り組むべきかが明らかになり、効率的なキャリア形成が可能となります。
いきなり将来について考えるのではなく、まずは内省によって過去の自分を振り返ることで、
より大きな成長が期待できるのです。
企業の生産性向上につながる
また、内省は企業の生産性向上にも効果的です。
社員一人ひとりが仕事に対する考え方や言動を省みることで、日々の業務を効率よく行えるようになるためです。また、上司や先輩社員からの指示に従うだけでなく、自身の目標に向かって主体的に行動することもできるようになります。
したがって、組織全体のパフォーマンス向上のためには、日頃から一人ひとりが内省に取り組むことが大切だといえます。
内省力の鍛え方
内省する力、いわゆる「内省力」を鍛える方法は以下の通りです。
- 過去の出来事を客観的に振り返る
- 事実を引き起こした原因を振り返る
- 振り返りから得た学びを今後に生かす
事実を客観的に振り返る
内省力を鍛えるためには、まず過去の出来事を客観的に振り返ることが大切です。
たとえば「予定していたタスクを実行できなかった」という事実を、「トラブルが生じ、予定していたタスクを後回しにせざるを得なかった」「タスクの優先順位が低かったため、一旦保留にした」など、自分の都合のいいように捻じ曲げてしまっては意味がありません。
事実の深掘りは後から行えばよいので、はじめは自分の主観や言い訳を抜きにして、客観的な事実のみをリストアップしましょう。
事実を引き起こした原因を振り返る
事実を客観的に振り返ることができたら、その出来事を引き起こした原因を振り返りましょう。「予定していたタスクを実行できなかった」という事実に関して、なぜこのような結果に至ったのか、考えられる原因を挙げていきます。
たとえば、以下のような原因が思い浮かぶでしょう。
- トラブル対応に時間を取られ、余裕がなかった
- タスクの存在を忘れていた
- タスクを実行するための準備が足りなかった
このとき、自分の心に嘘をついたり、保身に走ったりしてしまうと、自分自身を見つめ直すことができなくなります。内省力を鍛えるためには、自分に正直になることが大切です。
振り返りから得た学びを今後に生かす
過去の出来事とその原因を振り返ることができたら、そこで得た学びを今後に生かしましょう。
「予定していたタスクを実行できなかった」という例では、以下のような学びを得られるでしょう。
- トラブル対応に時間を取られ、余裕がなかった → 業務全体を俯瞰し、タスクを管理する習慣をつける
- タスクの存在を忘れていた → TODOリストを作成するなど、タスクを忘れないための工夫をする
- タスクを実行するための準備が足りなかった → その場で対応するのではなく、はやい段階から準備を進めておく
同じ出来事が起こったとしても、人によってさまざまな原因が考えられます。しかし、内省力を鍛えることで、過去の失敗に関する共通点などから、自分の考え方や行動の特性を理解し、改善策を講じることができるようになります。
内省の注意点
前述の通り、内省を行うことで個人の成長や企業の生産性向上などさまざまな効果が期待できますが、以下のポイントに注意する必要があります。
- 完璧主義になりすぎない
- ネガティブ思考にならず前向きに考える
- 自分の価値観や固定観念にとらわれない
それぞれ詳しく解説します。
完璧主義になりすぎない
まず、内省を行うにあたって完璧主義になりすぎないよう注意が必要です。
内省は、自分の内面を見つめ直し改善点を見つける上で効果的ですが、完璧を求めすぎると、自分らしさが失われたり、これまで通りの成果が発揮できなくなったりする恐れがあります。
内省に限らず、何事も完璧にこなすことは不可能です。時にはストイックな目標を立てることも大切ですが、自分の個性を大切にするよう意識しましょう。
ネガティブ思考にならず前向きに考える
また、ネガティブ思考にならず前向きに考えることも大切です。
内省は、過去の出来事や自分の内面を深く掘り下げる行為であるため、普段は目を逸らしがちな事実とも向き合わなければなりません。その結果、ネガティブになったり、気分が憂うつになったりするケースが多くみられます。
しかし、内省の目的は自分を責めることではなく、今後のために自分を成長させることです。自分の中に生まれたネガティブな気持ちを無理に押し殺す必要はありませんが、どんな結果でも前向きに考えるよう意識しましょう。
自分の価値観や固定観念にとらわれない
なお、自分の価値観や固定観念にとらわれないようにも注意しましょう。
過去の出来事を振り返るにあたって、自分の価値観や固定観念にとらわれていては、新たな学びを得ることができません。どうしても視野が狭くなってしまいがちなときは、上司や先輩社員、同僚などの第三者に意見を求めることも大切です。また、他者の内省の事例を参考にするのも効果的です。
よりよい考え方や言動を身につけられるよう、柔軟な発想で内省に取り組むようにしましょう。
まとめ
内省とは、自分の考え方や言動を深く省みる行為のことです。日々の出来事に対してどのように感じたか、またなぜそのような行動したかを客観的に振り返ることで、同じような出来事に直面したときにどう対処すべきかを学ぶことができます。
近年では、社員のキャリア形成や企業の生産性向上の観点から、ビジネスの現場でも内省を取り入れるケースが増加しています。内省を行うにあたっては、完璧主義やネガティブ思考になりすぎないこと、自分の価値観や固定観念にとらわれないことに注意が必要です。ポイントを理解した上で、内省を上手く取り入れましょう。
参考:
内省と反省の違いとは?内省力の育成方法と注意点を解説 | ソリューションサイト
これを読めばあなたも内省的な人に!内省の具体的な方法・注意点までまとめ | ピポラボ | ピポラボ
リフレクション(内省)とは?人材育成で注目される理由と実践方法|グロービスキャリアノート
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