- エンゲージメントとモチベーションの違い
- それぞれの重要性・高める方法・取り組み事例
- 企業が取るべきアプローチ
組織の成長には欠かせない「エンゲージメント」と「モチベーション」ですが、その両者の違いをよく理解できていない人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
エンゲージメントは「組織と従業員との双方向のつながり」をあらわす指標であり、モチベーションは「仕事に対する従業員のやる気・意欲」を指す言葉です。
概念は異なりますが「エンゲージメント向上によってモチベーションも高まる」といった好循環が生まれ、組織の生産性にも大きく影響します。
本記事では、エンゲージメントとモチベーションの違いについて、概念・構成要素・測定方法の3項目でわかりやすく解説しています。
両者を高める方法と、実際に企業が取り組んでいる事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
エンゲージメントとモチベーションの違い
エンゲージメントとモチベーションは、両者とも企業の生産性や業績に影響を与える重要な要素ですが、以下のように概念や構成要素に違いがあります。
種類 | 概念 | 構成要素 | 測定方法 |
---|---|---|---|
エンゲージメント | 企業目標・理念に共感し、仕事を通して貢献しようとする意欲や状態のこと (組織と従業員の双方向のつながり) | ・組織への理解度 ・主体的な行動意欲 ・仕事への熱意 など | エンゲージメントサーベイ |
モチベーション | 仕事に対して持つ意欲や動機づけのこと (従業員個人の内面的な感情) | ・外発的動機づけ ・内発的動機づけ | モチベーションサーベイ |
企業におけるエンゲージメントは、組織と従業員が同じ方向性を持って仕事に取り組み、双方に貢献し合う関係性をあらわします。
一方でモチベーションは、従業員個人の行動原理や動機づけの側面が強く、組織とのつながりに関する要素ではありません。
組織の成長や従業員のパフォーマンス向上を図るためには、上記の違いを理解したうえで、双方を高めるための施策検討が必要です。
エンゲージメントとモチベーションの関係とは?
エンゲージメントとモチベーションは、一方向の関係性ではなく、相互に影響し合うような関係です。
従業員のモチベーションが高まれば、目標達成に向けて熱心に取り組み「組織のために貢献したい」という気持ちも強くなります。
エンゲージメントの向上においても、従業員は組織の一員としての自覚を持ち、組織の成長を自身の課題と捉えるため、モチベーションアップにつながります。
しかし、エンゲージメント向上によって、必ずしもモチベーションが高まるとは限りません。
そのため、働きやすい労働環境を整えるだけではなく、組織の価値観や経営者の考えを伝えていくような取り組みも重要なのです。
エンゲージメントの概要
エンゲージメントの理解を深めるために、概念・構成要素・測定方法の3項目に絞って解説します。
概念 | 従業員が企業目標・理念に共感し、仕事を通して貢献しようとする意欲や状態のこと (組織と従業員の双方向のつながり) |
構成要素 | ・組織への理解度 ・主体的な行動意欲 ・仕事への熱意 など |
測定方法 | エンゲージメントサーベイ |
エンゲージメントは、組織の生産性・定着率向上のカギとなる指標であり、上記の要素を満たすような取り組みが企業に求められています。
以下の記事では、エンゲージメントを高めるメリットや具体的な取り組みを解説しています。施策を検討するときの参考にしてみてください。
【概念】組織と従業員との深いつながり
エンゲージメントとは、組織と従業員との間に存在する「深いつながり」のことを指し、従業員が抱く「愛社精神」や「愛着」の意味を持ちます。
エンゲージメントの概念は、おもに「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」の2種類に大別されます。
種類 | 概念 |
---|---|
従業員エンゲージメント | 「組織のために貢献したい」と感じる意欲のこと |
ワークエンゲージメント | 仕事に対してポジティブな感情を持ち、充実した心理状態であること |
上記2つのエンゲージメントは、従業員が抱くポジティブな感情という意味では同じですが、その対象が「組織」か「仕事」かの違いがあります。
「従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い」について詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。両者を高める方法やメリットも解説しています。
【構成要素】組織への理解度・仕事への熱意など
エンゲージメントの構成要素には、おもに以下の6つがあり、従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントで要素が異なります。
構成要素 | 内容 | エンゲージメントの種類 |
---|---|---|
理解度 | 企業理念や価値観を理解し、仕事の目的・役割を認識して行動している状態 | 従業員エンゲージメント |
共感度 | 企業の方針や目標に共感し、帰属意識を持って意欲的な姿勢で仕事に取り組む状態 | |
行動意欲 | 問題解決や改善に向けて、主体的かつ積極的に仕事に取り組む状態 | |
活力 | 仕事から活力を得ていきいきとしている状態 | ワークエンゲージメント |
熱意 | 仕事に誇りとやりがいを感じている状態 | |
没頭 | 仕事に熱心に取り組んでいる状態 |
従業員エンゲージメントは、ワークエンゲージメントの要素を含めて考える場合もあります。
そのため、従業員エンゲージメントは「組織への貢献意欲」だけではなく、従業員の「仕事に対する意欲や熱意」にも関わりがある指標です。
【測定方法】エンゲージメントサーベイ
従業員のエンゲージメントを測定して数値化し、組織全体の状態を把握する手段が「エンゲージメントサーベイ」です。
エンゲージメントサーベイは、従業員に対して「仕事や会社への意識・満足度」などの設問を行い、回答をもとにエンゲージメントスコアを測定します。
エンゲージメントスコアとは?
組織と従業員との関係性や、仕事に対する意欲などの「エンゲージメント」を数値化したもの。
一般的な設問例としては、以下のようなものが挙げられます。
この会社の一員であることを誇りに思いますか?
担当している仕事に熱意を持っていますか?
会社の理念や方針に共感できていますか?
サーベイを継続して行い、組織の状態変化を分析していくことで、スコアの上昇・低下の要因がわかり、施策検討時のデータとして活用が可能です。
エンゲージメントサーベイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。具体的な導入の手順や活用方法をわかりやすく解説しています。
モチベーションの概要
続いては、モチベーションの概要を詳しく解説します。
エンゲージメントと同様に、概念・構成要素・測定方法の3項目に分けてご紹介します。
モチベーションの概要を正しく理解し、適切な取り組みを行うことで、従業員の「やる気」を生み出し、仕事のパフォーマンス向上も実現可能です。
以下の記事では、モチベーションの概要を詳しく解説しています。代表的な3つの理論もわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【概念】やる気・意欲・動機づけ
モチベーションとは、特定の目的・目標に向かって行動するための原動力「やる気」「意欲」「動機づけ」を指す概念です。
「行動を方向づける」「行動を持続させる」の意味としても、モチベーションという言葉が使われます。
そのため、自身の成長やスキルアップへの意識も高く、難易度の高い業務にも積極的に挑戦し、組織に貢献するような働きをします。
【構成要素】外発的動機づけ・内発的動機づけ
モチベーションは「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2つの要素から構成されています。
種類 | 意味 | 取り組み例 |
---|---|---|
外発的動機づけ | 評価や報酬を得るために行動すること | ・給与以外のインセンティブ報酬 ・表彰制度の整備 |
内発的動機づけ | 誇りや喜びのような感情を得るために行動すること | ・キャリアアップの機会の提供 ・裁量権の付与 |
外発的動機づけの取り組みは、短期的なモチベーションにはなりますが、評価や報酬が得られなくなると、従業員は行動の原動力を失います。
一方で内発的動機づけは、ポジティブな感情を得られるようにサポートするため、従業員はモチベーションを長期的に保ちやすいです。
そのため、業績アップによる臨時報酬(外発的)と、自己成長に役立つキャリアプランの提供(内発的)といった、両者をバランスよく行う工夫が大切です。
【測定方法】モチベーションサーベイ
従業員のモチベーションを定量的に把握するためには、モチベーションサーベイの実施がおもな手段です。
このサーベイでは、外発的・内発的の両面から設問を行い、従業員が回答した結果を数値化することで、モチベーションの度合いを測定します。
モチベーションサーベイでよく用いられる設問例としては、以下のようなものが挙げられます。
給与や賞与などの報酬に満足していますか?
会社の評価は公平だと感じますか?
自分の能力が活かせる仕事をしていると感じますか?
エンゲージメントと同様に、モチベーションという実体のない要素を可視化することで、スコアに影響を与えている環境や事柄の分析も可能です。
モチベーションサーベイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。具体的な調査項目や導入手順をわかりやすく解説しています。
エンゲージメント向上によるメリット・効果
エンゲージメントの向上によって、以下のようなメリットや効果があります。
エンゲージメント向上による離職率の低下は、企業が必要とする人材の定着を図れるため、採用や教育コストの削減にもつながります。
「モチベーション向上によるメリット」との違いとは?
モチベーションは、仕事の成果や目標達成によって高まり、従業員個々の成長と自己実現に影響します。
一方でエンゲージメントは、組織の目標や価値観への共感によって高まります。
そのため、仕事の目的・役割を認識して仕事に取り組むことから、業績向上や離職率低下など「組織への影響」として現れやすいです。
以下より各メリットを解説していきますので、エンゲージメントの重要性を認識し、適切な施策検討を行ってみてください。
生産性や業績が向上する
エンゲージメントの高い従業員は、企業理念や目標に共感し、仕事を通じて自己実現を図ろうという強い意欲を持っています。
そのため、仕事に対して熱意を持って取り組み、創意工夫を凝らすことで高い生産性やパフォーマンスを発揮します。
経済産業省は、2019年に日本企業の競争力強化を図る目的で、人材マネジメントに関する調査を行いました。
企業の競争力強化の原則となる要素として、従業員のエンゲージメントを高めることが重要だと報告されています。
調査によると、エンゲージメントが高い上位25%の企業は、下位25%の企業よりも、生産性や業績が向上していることがわかりました。
出典:企業の戦略的人事機能の強化に関する調査(P39)|経済産業省
組織全体の生産性が向上することで、より効率的に仕事が進められることから、必要最低限の人員配置による人件費の削減にもつながります。
離職率の低下によって企業価値が高まる
エンゲージメントが高まることで、会社への愛着や帰属意識が強くなり、従業員が離職する可能性も低くなります。
自社が必要とする人材の定着によって、採用・教育にかかるコストの削減と、社内外からの評価向上につながり、企業価値が高まります。
厚生労働省では、働く人の「働きがい」について分析を行い、そこで使われた概念が「ワークエンゲージメント」です。
調査によると、働きがいを示す「ワークエンゲージメントスコア」が高い企業ほど、従業員の離職率が低下していることがわかりました。
出典:令和元年版 労働経済の分析【要約版】(P22)|厚生労働省
また、人手不足の企業であっても、定着率の上昇や離職率の低下につながっている企業が多いこともわかっています。
モチベーション向上の相乗効果が生まれる
エンゲージメントが高まると、従業員が自身の仕事に対する意味を感じながら、目的を持って取り組むようになります。
その状態が持続できれば、おのずと仕事へのモチベーションも高まっていくのです。
たとえば、経営陣と従業員との対話の機会を増やし、会社のビジョンを共有したことで、従業員の会社に対する理解と愛着が深まったとします。
そのエンゲージメントの高い状態が続くことで、従業員は「自分の仕事が会社の成長につながっている」と実感し、より高いモチベーションで仕事に取り組めます。
前述したように、エンゲージメントの向上によってモチベーションが高まるという関係にあり、両者がお互いに高め合う相乗効果も生まれるのです。
モチベーション向上によるメリット・効果
続いては、モチベーション向上によるメリットを3つご紹介します。
「エンゲージメント向上によるメリット」との違いとは?
エンゲージメントは、組織や仕事に対する満足度や貢献度によって影響します。
そのため、エンゲージメントが向上することで、生産性向上や離職率低下などの組織へのメリットにつながりやすいです。
一方でモチベーションは、報酬や労働環境、評価によって影響するため、従業員個人が「行動を起こすための原動力」となる効果が現れます。
以下より各メリットを解説していきますので、モチベーション向上による効果の大きさを確認しておきましょう。
労働生産性が向上する
モチベーションの高い従業員は、積極的かつ自発的に業務に取り組むため、作業効率を高めながら仕事をします。
そのため、従業員一人ひとりのモチベーションが高められるような施策を行うことで、結果として企業の労働生産性の向上につながります。
労働生産性とは?
労働者数・労働時間あたりに生み出した成果(生産量・付加価値額)を示す指標。
参考:生産性とは|公益財団法人日本生産性本部
内閣府の報告では、モチベーションに影響するワークライフバランスの改善(長時間の是正)と、労働生産性との関係性について考察しています。
日本の約8割の労働時間であるドイツは、一人当たりの労働生産性が、日本の水準を50%近く上回っていることがわかりました。
また、一人当たりの労働時間が10%減少すると、一時間当たりの労働生産性は25%高まることもわかっています。
参考:平成29年度 年次経済財政報告(働き方の変化と経済・国民生活への影響)|内閣府
従業員の成長やスキルアップにつながる
従業員の成長やスキルアップにつながる点も、モチベーションを向上させるメリットの一つです。
モチベーションの高い従業員は、成長に向けた高い意欲も持ち合わせており、キャリアアップやスキルアップにつながるような行動をします。
そのため、高みを目指そうと自己研鑽を重ねて、必然的に能力やスキルが向上するため、最終的には企業にとって必要不可欠な人材への成長が期待できます。
教育コストを削減した分は、給与や福利厚生への予算に割り当てられるため、より従業員のモチベーションを高められる取り組みも実施できます。
周囲の従業員にも好影響を与える
モチベーションの高い従業員の存在によって、その影響が周囲に波及し、チーム全体の活力向上につながります。
前向きな姿勢や仕事への熱意は、他の従業員にもポジティブな刺激を与え、以下のような効果を生み出します。
- 業務上の問題が起きても、お互いに助け合う関係性が築ける
- 積極的に成功体験を共有し、チーム全体が成長する雰囲気を作れる
- 目標達成に向けて、チームの連帯感が生まれる
高いモチベーションの人材が周囲に与える影響は、個々の感情をポジティブにするだけではなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
エンゲージメントを高める方法・取り組み事例
ここからは、エンゲージメントを高める具体的な方法と、関連する企業事例をご紹介します。
上記のような施策によって、従業員の組織への興味や関与度が高まり、仕事に対する姿勢もより意欲的になります。
エンゲージメントを高めるメリットや向上施策については、以下の記事でも詳しく解説していますので、理解を深めたい方は確認してみてください。
会社のビジョンを明確にして浸透させる
従業員のエンゲージメントを高めるためには、まず会社の経営理念やビジョンを明確にし、全従業員に浸透させることが重要です。
従業員一人ひとりが会社の目指す姿を理解し共感することで、仕事を通じて「自分の仕事が役立っている」ことを実感し、エンゲージメントが向上します。
具体的な取り組みとしては、全社的な研修や勉強会の開催が有効です。
会社のビジョンを浸透させることで、従業員はその意味や目的を念頭に置きながら仕事に取り組め、会社への貢献意欲も高まります。
【事例】「JALフィロソフィ」浸透に向けた勉強会の実施
JALグループでは、商品やサービスに携わるすべての人が持つべき意識・価値観・考え方として「JALフィロソフィ」を策定しています。
JALフィロソフィの理解を深めて実践につなげるため、年3回の「JALフィロソフィ勉強会」を実施しており、全社員の約3万6000人が対象です。
勉強会ではフィロソフィの項目ごとにテーマを変えながら、以下のようなことを実施しています。
- 現場での取り組み
- 社長のコメント紹介
- ディスカッション
- ワークシート記入
2020年度以降はオンラインで勉強会を開催し、国内外の社員をつなぐ機会の場にもなっており、組織の一体感の醸成にもつながっています。
組織と従業員の双方向でコミュニケーションを図る
エンゲージメントを向上させるには、経営層から一方的に施策を押しつけるのではなく、従業員の声に耳を傾け、双方向でコミュニケーションを取ることが重要です。
具体例として、現場の実情や従業員の意見を聞き入れられる、以下のような取り組みが有効です。
- 定期的な従業員との面談
- 社内のSNS・オンラインコミュニティ
- 全員参加型の意見交換会
従業員が自分の意見や考えを自由に伝えられる環境があれば、お互いのコミュニケーションの機会になり、仕事に対するやりがいも高まります。
また、周囲の人とのコミュニケーションのしやすさや「自分が参加している・認められている」という感覚も、エンゲージメント向上につながります。
【事例】従業員の性格・心理状態をもとに面談を実施
不動産や物品賃貸の業務を行っている企業では、従業員の性格や心理状態をもとに面談を実施しています。
この企業では、従業員のエンゲージメントを向上させ、退職者の少ない会社を目指すため、従業員の状態を可視化する『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』を導入しました。
サーベイの調査結果から、従業員の性格や心理状態を把握し、心のケアに重点を置いたアプローチをしています。
上記の取り組みによって、面談者双方の情報共有や相談のハードルが下がり、コミュニケーションの円滑化につながっています。
参考:ミキワメ導入事例:従業員エンゲージメントを向上できた事例【3選】
モチベーションを高める方法・取り組み事例
続いては、モチベーションを高める具体的な方法と、関連する企業事例を3つご紹介します。
方法 | 企業事例 |
---|---|
「働きやすさ・働きがい」のある職場環境を整える | 目標を宣言する「ミッションチャレンジシート」を採用 |
一部の業務を自動化して従業員の負担軽減を図る | AIを活用した配送業務量の予測システムを導入 |
成果に応じた報酬やインセンティブを与える | 目標の達成状況に応じた報奨金の支給 |
上記のように行動の動機づけとなる取り組みによって、従業員の労働環境が大きく改善されモチベーションも高まります。
モチベーションアップの手順やマネジメント手法は、以下の記事で詳しく解説していますので、より理解を深めたい方は確認してみてください。
「働きやすさ・働きがい」のある職場環境を整える
従業員のモチベーションを持続的に高めていくには、働きやすさ・働きがいのある職場環境への整備が不可欠です。
仕事へのストレスが少なく、集中して業務に打ち込めるような環境が「働きやすさ」につながります。
一方「働きがい」のある職場は、従業員が個人の目標を設定し、その目標を達成したときの満足感が得られるような環境です。
「働きやすさ・働きがい」のある環境づくりの具体例は、以下のとおりです。
- フレックスタイムやリモートワークなど柔軟に働ける制度の構築
- 従業員の状態に合わせた健康プログラムの提供
- 社内コミュニケーションツールの導入
上記のような職場環境にするためには、経営陣の判断だけではなく、現場で働く従業員の声を聞いて取り組まなければなりません。
以下の記事では、サーベイフィードバックの手順を5ステップでわかりやすく解説していますので、実践するときの参考にしてみてください。
【事例】目標を宣言する「ミッションチャレンジシート」を採用
株式会社リーディングマーク(以下当社)では、社員自らが目標を宣言する「ミッションチャレンジシート」を採用しています。
このシートでは業務の目標以外にも、社員一人ひとりの志や姿も宣言し、上司や事業家がオーソライズ(正当性の公認)するシステムです。
当社で働いている社員は、自分の目標や課題を分析し「どのような点を優先すべきか」を考えながら業務を行っています。
また、ミッションチャレンジシートで掲げた目標の成果に応じて、実力のある社員が登用される仕組みも取り組みの一つです。
一部の業務を自動化して従業員の負担軽減を図る
一部業務の自動化やデジタル化を行うことで、従業員の負荷が軽減し、モチベーションの維持・向上につながります。
業務の自動化が進めば、単純作業による疲労から解放され、従業員はよりクリエイティブな業務への注力が可能です。
自動化の具体例としては、以下のような取り組みが挙げられます。
- 「AI」で膨大なデータの集計・分析
- 「RPA(Robotic Process Automation)」で単純なデータの入力
- 「タスク管理ツール」でタスク・進捗の管理
サーベイツールの『ミキワメ ウェルビーイングサーベイ』では、従業員の性格や心の状態をAIで解析する「ミキワメAI」を搭載しています。
「どのようにコミュニケーションすればいいか」「ケアが必要な人の打ち手はなにか」をAIが分析し、上司が行うべき内容をすぐに確認できます。
AIで変わり始める人事業務への影響や「ミキワメAI」については、以下の記事で詳しく紹介していますので、ご興味のある方は確認してみてください。
【事例】AIを活用した配送業務量の予測システムを導入
日本の配送業界を牽引するヤマト運輸株式会社は、ビッグデータとAIを活用した「配送業務量予測システム」を導入しています。
物流業界では、長距離ドライバーが足りておらず労働力不足が深刻化していたため、配送業務の効率化が求められていました。
同システムでは、販売や物流、商品などのビッグデータをAIで分析し、以下のような配送業務量を予測しています。
- 注文数
- 配送発生確率
- 納品時の滞在時間
AIの学習によって予測の精度が向上し、配車計画システムとの併用によって、配送生産性の最大20%の向上が見込まれています。
参考:ビッグデータ・AIを活用した配送業務量予測および適正配車のシステム導入について|ヤマト運輸株式会社
成果に応じた報酬やインセンティブを与える
従業員のモチベーションを高めるためには、仕事の成果に見合った報酬を与えることが大切です。
しかし、単に給与を支払うだけでは、従業員の努力を十分に評価したとは言い切れず、やる気の低下を招きかねません。
そのため、仕事の成果に応じた報酬やインセンティブを設けることで、従業員は目標達成に向けてさらに意欲を持つような動機づけができます。
インセンティブ(incentive)とは?
「刺激・動機・誘因」の意味があり、ビジネスでは業績に応じた報酬のこと。
(具体例)
・ノルマ達成による報奨金
・ギフト券や文房具などの部品報酬
・成績優秀者への表彰
臨時的なボーナス以外にも、個人の働き方を充実させる裁量権の付与といった施策も、インセンティブに含まれます。
インセンティブについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。導入するメリットや制度を設計する方法もわかりやすく解説しています。
【事例】目標の達成状況に応じた報奨金の支給
求人情報サイトを運営しているディップ株式会社では 「人が全て、人が財産」の信念のもと、社員の個性を磨き発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
同社の人事制度の一つとして、目標の達成状況に応じた報奨金を支給する「インセンティブ制度※」を導入しています。
(※コンサルティング営業職に限る)
また、同社では貢献度の高い社員への表彰や、表彰者への報奨旅行の授与など、社員のモチベーション向上につながる多くの施策を取り入れています。
エンゲージメント・モチベーションに関するよくある質問
ここでは、エンゲージメントとモチベーションに関する「よくある質問」を2つ取り上げます。
以下より関連する言葉との違いについて解説していきますので、言葉の意味や使い方の理解を深めましょう。
エンゲージメントとロイヤルティとの違いは?
エンゲージメントとロイヤルティには「組織と従業員が対等の立場であるかどうか」の違いがあります。
エンゲージメントは、従業員の組織に対する「愛着・愛社精神」を意味し、組織と従業員が対等な立場で、両者が貢献し合う関係性を指します。
一方でロイヤリティは、組織に対する「忠誠心・忠誠度」をあらわす言葉で、組織が上の立場になって従業員を従えている「主従関係」のような状態のことです。
モチベーションとやりがいの違いは?
モチベーションとやりがいは、両者とも従業員のパフォーマンスや満足度に影響を与える要素ですが、異なる意味も持っています。
モチベーションとは、行動の原動力となる意欲のことを指し、なにかを成し遂げようとする気持ちが本質となる要素です。
一方、やりがいとは仕事から得られる喜びや充実感のことを意味します。
したがって、自分の仕事に価値を感じ、それが自己実現につながっていると実感できている状態がやりがいと言えます。
エンゲージメントとモチベーションの違いを理解して施策の検討を
今回の記事では、エンゲージメントとモチベーションの違いを中心に解説してきました。
もう一度、その両者の違いを表で確認しておきましょう。
種類 | 概念 | 構成要素 | 測定方法 |
---|---|---|---|
エンゲージメント | 企業目標・理念に共感し、仕事を通して貢献しようとする意欲や状態のこと (組織と従業員の双方向のつながり) | ・組織への理解度 ・主体的な行動意欲 ・仕事への熱意 など | エンゲージメントサーベイ |
モチベーション | 仕事に対して持つ意欲や動機づけのこと (従業員個人の内面的な感情) | ・外発的動機づけ ・内発的動機づけ | モチベーションサーベイ |
上記のような違いがあるものの、エンゲージメントが向上することでモチベーションも高まり、両者の相乗効果によって企業の成長にも大きく影響します。
しかし、経営陣の考えだけで施策を実行しても、必ずしも従業員のエンゲージメントやモチベーションが向上するとは限りません。
サーベイを活用して従業員のニーズを分析し、本記事の取り組みや企業事例を参考にしながら、自社に必要な施策を検討してみてください。
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