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経営者が権限委譲しないと起こる問題とは?進めるうえでの注意点も解説

権限委譲は多くの経営者が直面する課題の一つです。適切に権限を委譲できないと、経営者自身に業務が集中し、意思決定の遅れや組織全体の生産性低下を招くおそれがあります。また、部下の自主性や成長の機会を奪うことで、モチベーションの低下や離職率の増加につながるリスクも否めません。

本記事では、経営者が権限委譲しないデメリットや、権限委譲を成功させるための具体的な方法を詳しく解説します。権限委譲がもたらす組織全体の成長や活性化といったメリットについても触れています。権限委譲を円滑に進める方法を知りたい方は、ぜひご一読ください。

経営者が権限委譲しないことで起こる問題3つ

経営者が権限委譲しないことで起こる問題は、以下の3つです。

  • 業務進行が滞ってしまう
  • 部下のモチベーション低下につながる
  • 創造的なアイデアや改善提案が出にくくなる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

業務進行が滞ってしまう

経営者が権限を部下に委譲しないと、業務の進行が滞るおそれがあります。その理由は以下のとおりです。

  • 意思決定や業務執行のすべてが経営者に依存してしまう
  • 経営者が多忙な場合、重要な決定が遅れてしまう
  • 全体の業務進行がスローダウンし、停滞してしまう

迅速な対応が求められる場面では、この問題が顕著に表れます。経営者に判断を仰ぐのに時間がかかり、迅速な意思決定や行動ができなくなるためです。その結果、ビジネスチャンスを逃したり、競合他社に先を越されたりするリスクが高まります。

権限委譲が不十分だと組織の機動力が失われ、環境変化への適応が遅れてしまいます。スピード感のある経営を実現するには、適切な権限委譲が欠かせません。

部下のモチベーション低下につながる

権限委譲がないと、部下は自らの判断で行動する機会を失い、業務へのモチベーションを下げてしまいます。モチベーションが低下すると部下の態度は受動的となり、自発的に考えて行動しなくなります。その結果、業務全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼしかねません。

また、職場やチームにおいて自分の意見やアイデアが尊重されないと「自分は上司から信頼されていないのだ」と感じ、業務に対する責任感や愛着を持てなくなります。

権限委譲は、部下の成長とモチベーションアップに欠かせません。部下に適切な権限を与え、自律的に働ける環境を整えることが、上司の重要な役割です。

創造的なアイデアや改善提案が出にくくなる

権限が委譲されない環境では、部下は新たな提案を行うことをためらってしまいます。その理由は以下のとおりです。

  • 自分の意見が影響力を持たないと考える
  • 上司の反応をおそれ、提案を控えてしまう
  • 自分の役割は与えられた仕事をこなすことだけだと思い込んでいる

このような状況では、部下の創造性が十分に発揮されず、新しいアイデアや改善案が出てきません。イノベーションが停滞することで、企業全体の成長が阻害されるでしょう。

部下の創造性を引き出すためには、経営者が積極的に権限を委譲し、自由に提案できる環境を整えることが重要です。部下が自分の意見を尊重されていると感じられれば、より積極的にアイデアを出してくれるようになり、企業の継続的な発展につながります。

経営者が権限委譲するための具体的な流れ

経営者が権限委譲するための具体的な流れは以下のとおりです。

  1. 今抱えている仕事をまずは整理する
  2. 権限委譲する仕事を見極める
  3. 権限委譲する部下を選定する
  4. 業務の指示と期待を明確に伝える
  5. フォローアップとフィードバックを行う

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 今抱えている仕事をまずは整理する

経営者が権限委譲を成功させるには、まず自身の業務内容を整理することが重要です。現在抱えているタスクを詳細にリストアップし、以下の観点から分析しましょう。

  • 業務の重要度:会社の目標達成や成長に直結する業務か
  • 業務の緊急度:すぐに対応が必要な業務か、先延ばしにできるか
  • 業務の専門性:自身の知識や経験が不可欠な業務か、他者でも対応可能か
  • 業務の時間配分:1日のなかでどの程度の時間を要する業務か

業務内容を整理したうえで、重要度が高く、自身の専門性が求められる業務に注力しましょう。一方で、重要度が低く、他者でも対応可能な業務は権限委譲の対象として検討します。

また、業務の緊急度と時間配分を考慮し、優先順位をつけることも大切です。緊急度が高く、時間を要する業務から順次権限委譲を進めていけば、経営者自身の負担を効果的に軽減できるでしょう。

業務内容の整理は、権限委譲の第一歩として欠かせないプロセスです。自身の業務を可視化し、戦略的に権限委譲を進めることで、経営者はより重要な意思決定に集中できます。

2. 権限委譲する仕事を見極める

権限委譲する仕事を見極めるためには、以下の点を考慮しましょう。

  • 業務の重要度:組織にとって戦略的に重要な業務は経営者が担当し、それ以外の業務は権限委譲の対象とする
  • 業務の専門性:高度な専門知識を必要とする業務は、その分野のエキスパートに任せると効率アップを図れる
  • 業務のリスク:失敗が許されない業務や機密性の高い業務は、経営者が直接管理することが望ましい

これらの点を踏まえて、権限委譲に適した業務を選定します。例えば、ルーティンワークや定型的な業務、現場に近い業務などは、ほかのメンバーに任せることで、経営者は戦略的な意思決定に集中できるようになります。

3. 権限委譲する部下を選定する

権限委譲する部下を選定する際は、以下の点を考慮することが重要です。

  • 部下のスキルと経験
  • 業務に対する適性
  • 成長意欲と可能性
  • コミュニケーション能力
  • 自律性と責任感

単に経験豊富な部下を選ぶのではなく、権限委譲により部下自身も成長できるかどうかを見極めましょう。また、部下とのコミュニケーションを通じて、本人の意欲や適性を確認することも大切です。

適材適所の人員配置を心がけ、部下の強みを活かせる環境を整えることで、チーム全体のパフォーマンスを最大化できるでしょう。

4. 業務の指示と期待を明確に伝える

選定した部下に対して、具体的な指示を与えることが重要です。特に、以下の点を明確に伝えましょう。

  • 業務内容:どのような仕事を任せるのか、具体的なタスクや責任範囲を説明する
  • 期待する成果:仕事を通じて達成してほしい目標や、求めるアウトプットを明示する
  • 達成目標:数値目標や質的目標など、明確な達成基準を設定する
  • 期限:いつまでに仕事を完了させるべきか、明確な期日を伝える

また、業務を円滑に遂行できるよう、必要な情報やリソースの提供も不可欠です。例えば、関連資料の共有、予算の確保、人的サポートの手配などが考えられます。

このように、仕事の内容と目標を明確に示し、必要なサポートを提供することで、部下は自信を持って業務に取り組めます。

5. フォローアップとフィードバックを行う

業務の進捗状況を定期的に確認し、部下にサポートやアドバイスを提供します。具体的には、以下のようなフォローアップとフィードバックを行いましょう。

  • 定期的に部下とのミーティングを設定し、業務の進捗状況や課題について話し合う
  • 部下が困難に直面している場合は、解決策を一緒に考え、必要なサポートを提供する
  • 部下の成果に対して、具体的かつ建設的なフィードバックを行う
  • 良い点は褒め、改善点は明確に伝えることで部下の成長を促す
  • 部下の自主性を尊重しつつ、必要に応じてアドバイスや指導を行う

このようなフォローアップとフィードバックを通じて、部下との信頼関係を構築できます。また、部下の成長を支援し、自立性を高めることで、権限委譲の効果を最大限に引き出せるでしょう。

経営者が権限委譲する際の注意点3つ

経営者が権限委譲する際は、以下の点に注意が必要です。

  • 権限委譲する人物の選定には細心の注意を払う
  • 権限と責任の範囲を明確に定義する
  • リスク管理とサポート体制を整える

それぞれの注意点について詳しく解説します。

権限委譲する人物の選定には細心の注意を払う

権限委譲を成功させるためには、適切な人材の選定が鍵となります。部下の能力や経験、意欲を正確に把握することが重要です。

任せる業務に対して適切なスキルセットを持つ人物を選ぶには、以下の点に注意しましょう。

  • 部下の強みと弱みを理解する
  • 部下の成長段階を考慮する
  • 部下の意欲を確認する

部下一人ひとりの得意分野や課題を把握し、その人物の能力を最大限に活かせる業務を割り当てることが大切です。また、経験や能力に応じて、徐々に権限を委譲していくとよいでしょう。

また、権限委譲に対する部下の意欲や意識を確認することも重要です。やる気のある部下に任せることで、より高い成果が期待できます。

適材適所の人選を心がけ、部下の成長段階に合わせて段階的に業務を任せることで、円滑な権限委譲を実現できます。部下の能力を信じ、適切なサポートを提供しながら、組織全体の成長につなげていきましょう。

権限と責任の範囲を明確に定義する

部下に委譲する権限と責任の範囲を明確に定義することも重要です。以下の点に注意しながら、部下の役割を明確にしましょう。

  • 意思決定の範囲を具体的に示す
  • 責任の及ぶ範囲を明らかにする
  • 期待される成果を明確に伝える

部下が自分の権限の範囲内で適切な判断を下せるよう、意思決定の範囲を具体的に示す必要があります。権限に伴う責任の範囲も明らかにし、部下が自覚を持って業務に取り組めるようにしましょう。

さらに、権限委譲によって期待される成果を明確に伝えることで、部下は目標を理解し、その達成に向けて努力するようになります。

リスク管理とサポート体制を整える

権限委譲を行う際は、リスク管理とサポート体制を整えることが重要です。特に、以下の点に注意して進めてください。

  • 権限委譲に伴うリスクを事前に洗い出し、対策を立てる
  • 部下が直面しそうな困難や課題を予測し、解決策を用意しておく
  • 部下からの相談や報告を受ける体制を整え、コミュニケーションを円滑にする
  • 必要に応じて部下にアドバイスやフィードバックを与え、成長を支援する
  • 権限委譲後も部下の業務進捗を適切にモニタリングし、問題があれば介入する

権限委譲を成功させるには、リスクを最小限に抑えつつ、部下が自立的に業務を遂行できるようサポートすることが重要です。トラブルが発生した際、迅速に対応できる体制を整えておくことで、部下は安心して新しい責任に取り組めるでしょう。

また、部下の成長を後押しすることで、将来的により大きな役割を任せられる人材の育成につながります。

経営者の権限委譲を進めて組織の成長を加速させよう

権限委譲は、業務効率化、部下の成長促進、組織全体のイノベーション創出に不可欠な取り組みです。ただ権限を委譲するのではなく、部下をフォローしていく体制づくりを心がけることで、組織全体の成長につながります。

ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」では、月に一度のパルスサーベイでメンバーの状況や心理状態の変化を細かく確認できます。権限委譲後のメンバーが抱える課題や不安を早期に発見し、適切なフォローを行えるため、自律した組織へと成長させることができるでしょう。

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