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コンプライアンスとは何か?意味や取り組みを解説【違反事例あり】

本記事ではコンプライアンスの意味や違反事例をわかりやすく解説していきます。

コンプライアンスの意味とは?

コンプライアンスとは法令遵守と訳され、社会的規範を守ることを意味します。

コンプライアンスが持つ代表的な意味は下記のとおりです。

  • 法令遵守
  • 社会的規範を守る
  • ハラスメントがない労働環境をつくる
  • 法律に明文化されていないモラルや倫理を守る
  • ステークホルダーの利益を追求する

このように、コンプライアンスとは、社内の就業規則やハラスメント防止策を整え、社会的なルールに則って企業活動を行うこと全般を意味します。単なる法令遵守ではありません。

参考:コンプライアンスとは-コトバンク

企業がコンプライアンスを重視する背景

コンプライアンス重視の背景を見ていきましょう。

1.企業の社会的責任と情報開示

1980年代以降、不透明な決算やトラブルの隠蔽など企業の不祥事が相次ぎ、企業に対する情報の透明性が求められるようになりました。これは日本だけではなく、海外においても同様で、企業が利益追求のみではなく、社会的責任を果たす存在であるという認識が改めて強くなったきっかけでもあります。

【1980年代以降の企業の不祥事】

  • リクルート事件(1988年)
  • 山一證券事件(1997年)
  • 雪印乳業集団食中毒事件(2000年)

これらを背景に、1996年には経団連の企業行動憲章の改定、2000年には政府が打ち出した行政改革大綱によって、企業の社会的責任および情報開示について明確化されました。

【企業行動憲章の改定】
企業は、公正な競争を通じて利潤を追求するという経済的主体であると同時に、広く社会にとって有用な存在であることが求められている。(中略)国の内外を問わず、全ての法律、国際ルールおよびその精神を遵守するとともに社会的良識をもって行動する。

経団連企業行動憲章

【行政改革大綱】
法人の特性等により、通則法を直ちに適用し難い法人について、原則として、経営責任の明確化、事業運営の効率性の向上、透明性の向上等の観点から、法人の性格に応じ、個別法の整備、通則法に準じた共通スキームの整備等所要の法的措置等を検討するもの

平成12年行政改革大綱

2.グローバル化と人権意識

次に、急速なグローバル化と人権意識の強まりが挙げられます。

日本企業の海外進出などが活発化し、一つの企業が抱えるリスクはとても大きくなりました。例えば、一つの日本企業が不祥事を起こせば、悪影響はすぐに国境を越えて全世界へ広がります。トヨタのリコール問題等が代表例です。

さらに、国際的に一人ひとりの人権を尊重する意識が高まりました。人権に配慮した社内規定整備やルールづくりが求められるようになり、セクシュアリティハラスメント(セクハラ)防止やダイバーシティ促進はその一環といえます。

厚生労働省は、2006年にはセクハラ防止の指針を、2020年には職場におけるダイバーシティ推進事業の事例を発表するなど、正しい理解を促す情報発信を積極的に行っています。

コンプライアンスの重要性|リスク低減と企業価値

企業はコンプライアンスによって企業価値を高めることができます。

一方、コンプライアンスを重視しない企業は、あらゆるステークホルダーが離れるリスクが高く、最悪倒産します。

  • 情報開示が不十分 → 消費者や取引先が敬遠する
  • 労働問題を改善しない → 社員が意欲を失い、離職する
  • 不祥事を起こしても対応が遅い → 社会的信頼を失う

帝国データバンクの調査では、2020年に182件のコンプライアンス違反企業が倒産しました。

コーポレート・ガバナンスとの違い

コーポレート・ガバナンスは、企業統治と訳され、経営者を監視・監督する仕組みを意味します。

経団連の『我が国におけるコーポレート・ガバナンス制度のあり方について(概要)』によると、企業における不正行為の防止と競争力・収益力の向上を目指すもの、とされています。

例えば、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 社外取締役、社外監査役の設置
  • 執行役員制度の導入
  • 取締役会の運営

つまり、コーポレート・ガバナンスは経営者に働きかけて企業活動を健全化すること、コンプライアンスは会社業務全体を健全化すること、というイメージです。

違反事例|企業の不祥事から学ぶ

コンプライアンス違反にはさまざまな種類があります。

  • 不適切な労働環境(残業、賃金未払い、ハラスメントなど)
  • 不正会計(粉飾決算、脱税など)
  • 不適切な衛生管理(食中毒など)
  • 不適切な情報管理(個人情報流出など)
  • 製品偽装(性能、産地、賞味消費期限など)
  • 著作権侵害(無断使用、不正引用など)
  • 出資法違反(投資詐欺など)

1.労働管理|過労とハラスメントによる新入社員の自死

2015年、女性新入社員が社員寮から身を投げて自死しました。その後の調査で月100時間を超える残業、ハラスメントに悩んでいたことが判明します。裁判では労災認定されましたが、後に同社社員1,400名以上が36協定の上限を超える残業をしていたと指摘されました。

2.不正受給|介護報酬の虚偽申請により約700万円も

2016年、介護報酬を不正受給し介護保険事業者等の指定取消処分を受けました。この企業はサービス付き高齢者向け住宅を経営していましたが、介護人材不足や人件費負担の増加を理由に資金繰りが悪化していました。その後、同社は社会的信用を失い、破産申請しました。

出典:東京商工リサーチ『介護福祉業界 倒産急増の陰で増加する不正行為』より

3.製品偽装|賞味期限切れ食品や産地偽装

2007年、食品加工卸売会社の賞味期限切れ食品販売が発覚し、惣菜の産地偽装や食品の使い回しが芋づる式に明らかとなりました。全店営業停止に追い込まれ、その後同社は廃業しました。同年はそのほかにもさまざまな製品偽装が発覚し話題になりました。

出典:時事通信社『各地で食品偽造発覚』より

4.粉飾決算|架空の利益計上

2017年、格安旅行会社が自己破産申請をしました。架空の利益計上で粉飾決算をしていたのです。元社長の逮捕(詐欺容疑)、内定者の採用取消、関連企業の同時破産申請など、多くの問題が生まれました。

出典:ITmedia ビジネスオンラインより

違反事例|私たちの身近に潜むコンプライアンス違反

役職や身分に関係なく、誰もうっかりコンプライアンス違反をする恐れがあります。

1.情報漏洩|SNSへの投稿

例えば顧客の悪口をSNSでつぶやき、勤務先や業務内容がばれた場合です。「⚫︎⚫︎の社員は客の悪口を言う」と会社全体の信用が失われます。SNSの利用には注意しましょう。

2.個人情流出|昼食時の会話

外での会話は気をつけましょう。何気ない昼食時の会話で「取引先の愚痴を言っている」と会社の評価を下げてしまうことがあります

3.労働環境|賃金の未払い

仕事の遅さを理由に残業申請を改ざんされることがあります。賃金の未払い、残業時間の改ざんは立派なコンプライアンス違反です。

コンプライアンス強化に向けた取り組み|4つの施策

コンプライアンス強化は、企業存続において必須です。従業員の意識向上のために、組織の文化や制度を構築する必要があります。具体的な施策は次の4つです。

  • 経営トップから社内外へ宣言
  • 行動指針の策定
  • コンプライアンス研修・教育
  • 専門家によるサポート

1.経営トップから社内外へ宣言

最も重要なのが、経営トップがコンプライアンス違反を許さないという意思表示を社内外に宣言する1ことです。

経営トップが、強い意思で自社の取り組みを表明することで組織全体の意識改革が期待できます。

2.行動指針の策定

次が、行動指針の策定です。行動指針とは、違反を防ぐための行動指針です。行動規範、コンプライアンスマニュアルとも呼ばれます。

自社と関わる法令、業界ルール、社会的ルールなどを加味しつつ、誰もが行動しやすい簡潔な指針にするといいでしょう。あわせて、就業規則などの関連規則を整備することも有効です。

参考:平田光弘氏の『コンプライアンス経営とは何か

3.コンプライアンス研修・教育

コンプライアンスについて理解を深めるには、専門サービスを用いた研修や教育が有効です。

また、従業員のなかでも、一般社員と課長、部長では求められる知識が異なりますので、役職・階層別の実施が良いでしょう。

4.専門家によるサポート

多くの場合、法務部がコンプライアンスを担当します。

専門家のサポートを受けることで、自社のリスク洗い出しや行動指針の策定に、客観的な視点を盛り込めます。

まとめ

本記事ではコンプライアンスについて意味や背景などを解説しました。

コンプライアンスは、社会的なルールに則って企業活動を行うこと全般を意味します。

私たち一人ひとりがコンプライアンス意識を高めるためにも、定期的な研修・教育がとても重要です。そして、私たち一人ひとりの行動こそ、企業のコンプライアンスを支えていることも忘れてはいけません

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