優秀な人材の突然の退職は、企業にとって大きな痛手です。「もっと早く気づいていれば……」と後悔した経験のある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、退職の兆候を示す9つのサインと効果的な対処法、企業側ができる予防策について解説します。
退職の兆候を示すサイン9つ
退職を考える社員には、いくつかの共通した兆候が見られます。勤務中と勤務時間外で、どのような変化が起こりやすいのかを見ていきましょう。
勤務中の変化
項目 | 具体的な行動 | 背景 |
---|---|---|
コミュニケーションの減少 | 飲み会や昼食への不参加が増える | 人間関係を維持する必要性がなくなった転職活動に時間を充てたい |
仕事への意欲低下 | 会議での発言が減る新しい仕事に消極的となる | 会社内での自分の将来を考える必要性がなくなった退職予定で発言に責任を負えない退職時に新しい仕事の引継ぎを避けたい |
業績の急激な低下 | 売上目標の未達が続く以前より作業・営業の量が明らかに減っている | モチベーションが低下している退職を決めており、頑張っても無駄だと思っている |
勤怠の変化 | 急な遅刻や早退が多くなる長時間の外出が増える有給休暇を消化する残業や休日出勤が減少する | 退職に向けて有給消化したい転職活動を行っている会社や仕事への責任感が薄れている心身に限界がきている |
ネガティブ発言の増加/減少 | 不満やネガティブな態度を隠さない以前の不満を溜めていた態度がなくなる | 社内での評価がどうでもよくなった我慢の限界が近づいている退職を決めて気持ちが吹っ切れた |
職場環境の整理 | デスク周りの私物が減る古い書類を整理・処分し始めた | 気持ちの整理をしている退職を決心し、準備に入った |
勤務時間外での変化
項目 | 具体的な行動 | 背景 |
---|---|---|
勤務時間外の連絡の変化 | 休憩中の電話やメールが増える勤務時間外の電話やメールへの応答が遅くなる・返信しなくなる | 転職活動でやり取りをしている会社の優先度が低下している |
服装や身だしなみの変化 | 急に服装が良くなる以前より服装が乱れている | 面接対策で整えている心身の疲労が限界 |
スキルアップへの関心 | 新しい資格の取得に向けて勉強を始める | 転職に有利な資格を探している入社前に転職先で求められる資格を取りたい |
これらの兆候が複数見られる場合、退職を考えている可能性が高いでしょう。
退職の兆候に気づいたら?理由別の効果的な対処法
多くの場合、退職が頭によぎってから完全に決意するまでにはタイムラグがあります。退職が決定的になる前に、社員の不満や悩みを解決できれば、退職を回避できるかもしれません。
ここでは、退職の主な理由と対処法について見ていきましょう。
退職の主な理由
退職の主な理由として、以下が挙げられます。
人間関係の悩み | 上司に話を聞いてもらえない同僚の輪に入れないハラスメントを受けている |
労働条件や給与への 不満 | 長時間労働や休日出勤が常態化している給与が低い休みが少ない・取れない |
キャリアアップの機会不足 | 新しいスキルを得られない責任ある立場や重要なプロジェクトを任せてもらえず、やりがいを感じられない |
将来への不安 | 会社の業績悪化や業界全体の縮小傾向により先行きが不安会社の方針に納得できない |
評価制度の不備 | 成果や努力が適切に評価されない評価は上がっても報酬や昇進と連動しない |
個人的理由 | 家族の介護や育児との両立が困難転居や結婚により生活環境が変化した長期治療など健康上の問題がある自己実現(自分探し)や独立のため |
厚生労働省の調査によると、正規労働者の退職理由の上位は男性が「給与・報酬が少なかった」「労働時間が長かった・休暇が少なかった」、女性は「会社の経営方針に不満を感じた」です。また、厚生労働省の「若者の離職理由」では「仕事上のストレス」「会社の将来性」なども挙げられています。
退職を検討している社員への効果的な対処法
個人的理由による退職の場合、企業側で退職を思いとどまらせることは困難ですが、ほかの理由であれば適切な対処によって考え直してもらえる可能性があります。以下では、退職理由に合わせた対処法を紹介します。
アプローチ | 詳細 | 効果が期待できる 退職理由 |
---|---|---|
率直な対話・個別面談の実施 | 社員の価値を伝え、会社にとって重要な存在であることを強調する退職理由を丁寧に聞き、解決策を一緒に考える姿勢を示す | 人間関係の悩み将来への不安キャリアアップの機会不足 |
キャリアプランの再検討・再確認 | 現在の役割の重要性を確認する長期的なキャリア目標を踏まえたステップアップの道筋を示す | キャリアアップの機会不足 |
業務内容や待遇の見直し | 現在の業務内容の調整・タスクの再分配を検討する可能な範囲での給与や手当の調整を提案する | 労働条件や給与への不満評価制度の不備 |
希望に沿った配置転換 | 現在可能な配置転換先の提示スキルを活かせる業務の検討 | 人間関係の悩みキャリアアップの機会不足 |
労働条件の柔軟な対応 | 在宅勤務やフレックス勤務の検討一時的な休職の提案 | 労働条件や給与への不満個人的理由 |
メンタルヘルスケアの提供 | 産業医や専門カウンセラーとの連携利用可能な相談窓口の案内 | 人間関係の悩み |
個々の社員の状況に応じて、これらの対処法を組み合わせれば、退職を未然に防ぐだけではなく、社員に「会社は不満に向き合ってくれる」と感じてもらえ、退職の連鎖を抑止できるでしょう。
退職兆候を早期に察知する方法3つ
退職の兆候は、本人が明確に退職を意識する前からさまざまな形で現れます。
社員が退職を具体的に考え始める前の段階で、潜在的なリスクを早期に察知するための方法を3つ紹介します。
定期的な1on1ミーティングの実施
定期的な1on1ミーティングの実施により、部下の悩みや不満を把握できます。ミーティングでは「現在の業務上の課題や進捗」「職場環境や人間関係」「キャリアプランと目標」の3つに焦点をあてるとよいでしょう。
エンゲージメントサーベイの活用
エンゲージメントサーベイとは、従業員の仕事への意欲や組織への帰属意識を測定し、数値化するアンケート調査です。
サーベイでは「仕事の満足度」「キャリア展望」「人間関係」「職場環境」「労働条件」などの質問項目について回答します。サーベイの定期的な実施により、個人や部署レベルでの変化を察知し、潜在的な問題の早期特定が可能です。
データ分析ツールの活用
勤怠データや業績データの変化も、社員の行動パターンの変化を観察する一助となるでしょう。たとえば、以下のような指標の変化により、退職リスクを察知できる可能性があります。
- 勤怠パターン:遅刻や早退の増加、有給休暇の急な取得増加、残業の極端な増加や減少
- 業績指標:生産性や売上の低下、顧客からのクレーム数の増加
ただし、データの変化が退職意思に直結するわけではありません。1on1ミーティングなどを通じて、社員と直接コミュニケーションを取ることも大切です。
退職率低下のために企業側ができる根本的な対策
ここまで、退職の兆候が現れ始めた段階での対処法を解説してきましたが、従業員が退職を考える機会自体を減らすような、長期的かつ根本的な対策も必要です。
最後に、退職率を低下させるために企業が取り組むべき根本的な対策について解説します。
コミュニケーションの強化
従業員の満足度と組織への帰属意識を高めるためには、以下のような取り組みにより、コミュニケーションの活性化を図ることが重要です。
定期的なフィードバック | 定期的なミーティングや業績評価の実施により、会社での成長実感や満足度向上につなげる |
オープンなコミュニケーション | 成果や問題をオープンに共有し、自由に意見を言える環境を醸成する |
定期的なサーベイ | エンゲージメントサーベイを実施し、従業員の意識や満足度の変化を継続的・定量的に把握する |
ビジョンと取り組みの共有 | 社内での情報発信の機会を増やし、企業の方向性を明確に示すことで従業員の将来に対する安心感と会社への理解を醸成する |
退職者ヒアリング | 退職理由をヒアリングし、結果に基づいて組織改善策を立案する |
キャリア支援と評価
キャリア支援制度と適切な評価制度の整備は、従業員の「この会社で成長できる」というイメージづくりに貢献します。
キャリアデザインのサポートを通じて社員一人ひとりの将来像を具体化し、実現に向けた道筋の提示が可能です。また、上司・同僚・部下からの多角的な評価を行う360度フィードバックなど、透明性の高い評価制度を導入すれば、社員の努力や成果が適切に認識される環境の構築につながります。
採用段階でのミスマッチ防止
退職率を低下させるためには、採用段階でのミスマッチ防止も重要です。情報提供の徹底、インターンシップや見学会など職場を知る機会の提供も効果的ですが、自社と業務をよく理解している企業側で採用条件を明確化し、適性のある人材を見極めることが何より大切です。
求める人材像やスキルを具体的かつ詳細に定義し、実際の業務内容と照らし合わせて要件を設定すると、企業と応募者双方の適切なマッチングが可能となり、入社後のギャップを最小限に抑えられます。
多様な働き方の提供
従業員のニーズや生活状況に合わせた柔軟な働き方の提供は、従業員満足度の向上と人材定着に大きく寄与します。
- ワークライフバランスの推進
- フレックスタイム制度の導入
- 育児・介護支援の強化
- 多様な背景を持つ従業員へのサポート
これらの施策を通じて、従業員一人ひとりのライフスタイルや価値観を尊重する職場環境を整えることで、長期的な定着率の向上と優秀な人材の確保につながります。
退職の兆候の早期発見と人材定着の実現に向けて
退職の兆候を早期に察知し、適切な対応を行うことは人材流出を防ぐために重要です。しかし、日々の業務に追われるなかで兆候を見つけることは容易ではありません。また、長期的な施策をすぐに実施するのも難しいでしょう。
退職の兆候の早期発見と人材定着の実現に向けて、短期的に効果が出やすいのはデータに基づいたアプローチです。ミキワメウェルビーイングサーベイを活用すれば、従業員の心理状態を定期的に把握でき、社員1人ひとりへのサポートが可能です。また、ミキワメ適性検査は採用時に個人の適性を評価し、企業に合った人材の見極めを支援します。
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