持株会社とは何か?意味やメリット・デメリットなどを解説
他社を傘下に入れる目的で、対象企業の株式を所持する会社のことを「持株会社」といいます。最近は、この「持株会社」が増加しています。しかし、持株会社とは何かといざ聞かれると、答えに困る人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、持株会社の意味やメリット・デメリットについて詳しく紹介していきます。
持株会社とは
持株会社とは、他社を自社の傘下に置く目的で相手会社の株式を保有する会社を指します。一般的には「ホールディングカンパニー」と呼ばれています。ホールディングカンパニーと言われたらイメージがわく人もいらっしゃるでしょう。
持株会社の目的は、対象会社の株式を保有することで事業を支配し、事業拡大や再編などを行なうことです。このことから、持株会社は効率よく企業を発展させるための経営戦略ともいえます。現在、日本に存在する大規模なグループ企業のほとんどが、持株会社の形態をとっています。
純粋持株会社
持株会社には2種類あります。1つ目の純粋持株会社は、他社を傘下に入れて会社を経営することが目的です。相手の株式を保有することで自社の傘下にし、対象企業の事業や組織を支配します。そのため、純粋持株会社は傘下の子会社との連携が重要になります。
純粋持株会社では、主に傘下のグループ会社からの配当を利益とします。そのため、傘下に置いた企業の商品やサービスを作って売ることはせず、あくまでも傘下にした会社が利益を出し続けられるように、グループ全体のマネジメントや連携に注力します。
事業持株会社
2つ目の事業持株会社は、対象会社の株式保有だけでなく、事業にも直接関わる持株会社のことです。事業持株会社は、先ほど解説した純粋持株会社とは大きく異なり、傘下にした会社のビジネス面にも大きく関わります。
事業持株会社の利益は、傘下にした子会社の事業と既存の自社事業によるもののため、グループとして成長していく意識が重要です。
持株会社の日本での歴史
持株会社の日本での歴史は、第二次世界大戦前に、財閥本社が純粋持株会社のような形態をとっていたことが始まりです。しかし、戦後に制定された過度経済力集中排除法によって財閥本社が解体されたことで、持株会社は日本からなくなりました。
さらに独占禁止法により、持株会社の設立や既存の会社を持株会社化することが禁止されました。以後、金融ビッグバンの起こった1997年まで、持株会社は日本に存在しませんでした。
金融ビッグバンが起こった後は、独占禁止法改正により持株会社が解禁され、日本に再び持株会社が現れました。持株会社解禁後の第1号は、株式会社ダイエーホールディングコーポレーションです。
持株会社の需要が高まった背景
持株会社の需要が高まった背景には、インターネットによるビジネスのグローバル化や、持株会社の歴史が大きく関わっています。また、IT企業の急激な発展も持株会社の需要が高まった理由の一つです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
背景1:ビジネス界のグローバル化
インターネットの普及により、ビジネスのグローバル化が進んでいることは周知の事実です。日本で持株会社の設立が禁止されていた期間に、海外ではすでに持株会社による事業の買収や、合併を通じたビジネスモデルを展開させていました。
急速に成長する世界の企業を目のあたりにした日本企業は、対抗手段として持株会社の設立を試みるようになっていきました。
背景2:独占禁止法の改正
世界の企業との競争に持株会社の形態が不可欠だと認識されたことが、独占禁止法の改正に繋がりました。独占禁止法改正後は、多くの大企業が持株会社化しました。
背景3:IT企業の発展
海外の大手IT企業であるGoogleやMicrosoftなどが世界中へサービスを提供し始めたことも、日本での持株会社の需要が高まった理由の一つです。なぜかというと、世界中にサービスを提供している大企業と競争していくためには、持株会社を通じて大きなグループを作り、対抗する必要があったためです。
持株会社のメリット
持株会社では、傘下の会社と適切に連携していくことで、持株会社と傘下の会社を含めたグループとしての成長が見込めます。持株会社になることで得られるメリットは、主に次の3点です。
- 意思決定の迅速化
- 経営の効率化
- 会社の買収を防げる
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット1:意思決定の迅速化
一つの会社では、各部署での意思決定を待たなければならないため、意思決定に時間がかかります。
一方、持株会社の場合は、傘下にした会社の意思決定を待つだけです。そのため、一つの企業でさまざまな部署を持つ会社に比べると、持株会社は迅速な意思決定が可能となり、事業に集中できるメリットがあります。
メリット2:経営の効率化
持株会社では、親会社と子会社で役割分担されているため、それぞれが得意分野を追究し、専門性を高められます。
親会社は経営管理や事業戦略といった部分を担い、子会社は親会社から共有された経営戦略に基づき、事業運営に注力していきます。
役割が明確になるため、やることが見える化し、業務効率の向上が期待できるでしょう。
メリット3:会社の買収を防げる
一般的なグループ会社の場合は、親会社が買収されると子会社も同時に買収されます。一方、持株会社の場合では、親会社が買収を持ちかけられても、子会社の資本は独立しているため、非上場の子会社の買収を防げます。
持株会社のデメリット
メリットの多い持株会社ですが、同時にデメリットも存在します。
ここでは、主なデメリットを2点紹介します。
デメリット1:子会社間の連携が取りにくい
持株会社と子会社は連携しやすいものの、子会社同士の連携が取りにくいケースがあります。連携が取れないことで会社間のシナジー効果が薄れたり、グループの統制が乱れたりする可能性もあります。そのため、グループ内での連携が必要な場合は、持株会社がマネジメント体制を見直し、子会社間の連携を促進できるような仕組みづくりが必要です。
デメリット2:リスクが増える
傘下の会社がトラブルなどを起こした場合、グループのトップである持株会社の信頼が低下する可能性があります。そのため、子会社とは密なコミュニケーションを交わすよう意識し、現場の経営状況を明確に理解しておくことが親会社には求められます。
また、会社の数が増えれば増えるほど中間管理職の確保が必要となるため、人件費などのコストが増加しやすいことも念頭に置きましょう。
持株会社が必要な理由
持株会社が必要な理由は、一つには海外企業と競争するためですが、その他にも「事業分散」や「新規事業の立ち上げ」の観点から必要とされています。
それぞれ詳しくみていきましょう。
理由1:事業分散
通常は1つの会社が多様な事業を展開するのが一般的です。しかし、この方法では効率が悪く、いずれかの事業にのみ集中してしまうと、他の事業がおろそかになる可能性があります。
持株会社では、親会社と子会社で事業を分散し、それぞれが役割を持って動いていくことで事業の効率化や生産性の向上が期待できます。
また、事業分散によって各事業の専門性が高まっていけば、海外の大企業に対抗できる競争力を身につけることも可能になるでしょう。
理由2:新規事業の立ち上げ
持株会社が買収や合併を実施し、多くの会社を傘下に置ければ、新規事業の立ち上げを低リスクで行えるようになります。1から新規事業を立ち上げる場合は、膨大な時間やコストが必要となりますが、買収した会社の事業をそのまま利用できれば、新規事業の立ち上げにかかる時間やコストを大幅に削減できます。
さらに、複数の事業を展開できれば、リスクが分散され、仮に1つの事業で損失を出しても他の事業でもカバーが可能です。
実際の持株会社を紹介
最後に、実際の持株会社をいくつか紹介します。
- アサヒグループホールディングス
- ハウス食品グループ本社
- 吉野家ホールディングス
- 日本航空
- 日清製粉グループ本社
例に挙げた企業をみるとわかるように、各社とも日本を代表する大手企業であり、幅広く事業を展開している事業グループです。
また、金融系の持株会社のことを「金融持株会社」と呼びます。
代表的な金融持株会社は、以下のとおりです。
- 株式会社みずほフィナンシャルグループ
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
- 日本郵政株式会社
まとめ
本記事では、他社を傘下に置く目的で株式を保有する「持株会社」について解説しました。持株会社には、純粋持株会社・事業持株会社の2種類があり、業務の効率化や迅速な意思決定が期待できることから、海外企業にも負けない競争力を身につけられるメリットがあります。
持株会社を検討する際は、子会社間の連携がスムーズに取れるように親会社が仕組みづくりを行ない、子会社の経営状況を適切にチェックすることで、大きなトラブル発生を防ぐよう心がけましょう。
会社を大きく成長させるための手段として、ぜひ持株会社を検討してみてください。
参考:
持株会社とは?種類やメリット・デメリット、設立方法について解説 |M&Aコラム|日本M&Aセンター
持株会社と持分会社って違うの!? | 持株会社研究所
近年「持株会社」が増えている!その概要やメリットを解説!
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