人間関係を円滑に進めることが、社内環境の整備には必要不可欠です。
しかし、対人コミュニケーションの問題は、そう簡単に解決するものではありません。気の合わない上司とのやり取りや、言うことを聞かない部下の管理など、人間関係で頭を悩ます社員はどの会社にも存在します。
そこで、アドラー心理学の考え方が重要になってきます。
アドラー心理学の考え方を応用すれば、環境ではなく自分を変えることで環境に適応できたり、対人コミュニケーションを円滑に進められるようになったりできるのです。
当記事ではアドラー心理学がどういったものなのか、また学習するメリットなどについて徹底解説しています。人間関係にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
アドラー心理学とは?
まずは、アドラー心理学がどういったものなのかを解説していきます。
アドラー心理学はどういうもの?
アドラー心理学とは、正式には「個人心理学」と呼ばれる心理学の一種です。
社会心理学や集団心理学とは異なり、個人を対象とした心理現象を研究しているのがアドラー心理学です。
なぜアドラー心理学と呼ばれるのかというと、アルフレッド・アドラーが提唱した「人は目的のもと生きている、幸せになるには勇気を持つ」という思考から発展した心理学だからです。
アドラー心理学が有名になるきっかけとなった『嫌われる勇気』とは
アドラー心理学が昨今、さまざまなシーンで名前を聞くようになったのは、とある書籍がきっかけです。
その書籍とは、『嫌われる勇気』です。
『嫌われる勇気』は、岸見一郎氏・古賀史健氏によって書かれた書籍で、アドラー心理学をベースにした考え方を提唱しています。
単にアドラー心理学を解説する内容ではなく、哲学者と青年の対話形式で進行していき、実生活への応用という観点でアドラー心理学を学べる良書です。
読みやすい構成だったことも相まってベストセラーとなり、その後、ドラマ化されるまでに至りました。
後述するユング・フロイトと並んで心理学会の三大巨匠と呼ばれるアドラーですが、日本では無名に近い状況でした。
しかし『嫌われる勇気』の大ヒットにより、アドラー心理学は一気に日本人に馴染み深いものとなったのです。
参考:https://www.amazon.co.jp/dp/B00H7RACY8/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
アドラーとフロイトやユングとの違い
次に、心理学会の三大巨匠と呼ばれるフロイト・ユングとアドラーの考え方の違いについて解説していきます。
フロイトとの違い
はじめに、フロイトとの違いをみていきましょう。
フロイトは精神分析学の創始者で、神経症や心的外傷(PTSD)について研究しました。
彼は「原因論」という「人間は過去の経験が原因となり、今の行動が規定される」といった考え方を提唱しています。
一方、アドラーは「目的論」として「人間は原因によって行動するのではなく、現在の目的によって行動している」といっています。
要するに、行動を引き起こす引き金となるのが原因か目的のどちらにあるのか、その違いがアドラーとフロイトの考え方の分かれる部分といえます。
ユングとの違い
もう一人のユングとの違いもみていきましょう。
ユングは「普遍的無意識」を提唱しています。
普遍的無意識とは、「無意識は個人よりも集団的なものである」という考え方です。人間には共通の考えが心の中に存在し、その共通イメージのおかげで他人と会話したり、理解し合えたりできるというのが、ユングの説です。
一方、アドラーの心理学は個人心理学と呼ばれるほど、個人に焦点を絞った考え方です。個人から人間心理を理解しようと試みたか、はたまた集団から試みたか、その違いがユングとアドラーの違いといえるでしょう。
アドラー心理学の5つの特徴
アドラー心理学の話をより深く掘り下げるために、アドラー心理学の5つの特徴について解説していきます。
以下の5つを理解できれば、アドラー心理学の特徴をつかめるでしょう。
- 目的論
- 劣等感
- 課題の分離
- ヨコの関係
- 勇気づけ
1つずつ解説していきます。
目的論
目的論はアドラーの代表的な論理です。
「人間は原因によって行動するのではなく、現在の目的によって行動している」というのが目的論の考え方とされています。
要するに、環境や過去ではなく、自分の現在の目的が重要であるという考え方です。
たとえば、ブラック企業に勤めている社員がいたとしましょう。
その社員が「仕事がきつい割に給料が低い」と悩んでいながら、「今の会社で業務をこなすこと」を目的に働いていたとします。アドラー心理学の目的論を適用して考えてみると、本来の目的は「仕事に見合った給料をもらうために働く」ことにあるので、社員は本来の目的に焦点を合わせた行動をとっていく必要があります。本ケースにおける具体的な行動例としては、
- 適正な給料を支払ってくれる会社に転職する
- 給料アップの可能性がないか、会社へ交渉する
などが挙げられます。
自分の目的を正しく見つめてみれば、自ずと行動がついてくるのが目的論の考え方といえるでしょう。
劣等感
アドラー心理学は劣等感にも着目しています。
アドラー心理学では、理想があるからこそ人は劣等感を抱くものとし、劣等感を力にすれば行動を促す原動力となると説いています。
たとえば、好きな女性に告白してフラれ、その後相手に恋人ができたとします。普通であれば自分の魅力の無さに落ち込んでしまうだけになりそうですが、アドラー心理学の考えを取り入れれば、次のように能動的な考え方が生まれてきます。
- よし、もっと自分を磨いて、いつかあの子を見返してやる
- 異性にモテる人間になるために、もっと人付き合いを学んでいこう
このように、劣等感を活用することの大切さをアドラー心理学は教えてくれます。
ヨコの関係
ヨコの関係とは、どんな立場でも人間関係を横並びにして考えるというものです。
対比する言葉としてタテを定義するなら、主従関係などが該当します。
アドラー心理学ではヨコの関係を重要視しているのが特徴です。
自分以外の他人をすべて、自分と横並びの対等な人間として理解し、尊重することが大切と説いています。
課題の分離
課題を分離することの重要性についても、アドラー心理学は教えてくれます。
課題の分離とは、自分自身だけの課題と他人が介在する課題を切り分けることです。
他人が介在する課題は、自分の力ではどうにもならないケースが多いのですが、自分自身の課題なら、自分を変えれば、改善できます。
そのため、課題をまずは切り分けて、自分の課題を集中して消化することで、問題を効率的に解決できるというわけです。
勇気づけ
勇気づけは、自分の問題や劣等感を克服するためのきっかけを作ることを意味します。
アドラー心理学において、現状を変えるためには勇気が必要なのは説明した通りです。
アドラー心理学で「勇気」は非常に重要な要素で、そのポイントを踏まえて『嫌われる勇気』にも「勇気」というキーワードが入っています。
ここまで紹介してきたアドラー心理学の考え方を実践するためのきっかけとして、勇気づけが必要なのです。
勇気づけが起点となることで、目的の再設定→行動という流れができます。
アドラー心理学を日常生活に導入したい場合は、最初に勇気づけを実践してみましょう。
参考:アドラー心理学入門編!5つの要点を分かりやすく解説 | リスタ!
アドラー心理学のメリット
次に、アドラー心理学のメリットについて解説していきます。
自己を理解する
アドラー心理学を導入し、学ぶことで、まずは自分自身を理解できるようになります。
自分のことをどのように理解しているかで、行動は変わってくるものです。
アドラー心理学は個人心理学というほど、個人の理解に特化した心理学です。
自分自身がどういった存在なのか、アドラー心理学を応用して深く理解してみましょう。
物事をシンプルに認識できるようになる
また、アドラー心理学では、課題の分離などで物事をシンプルに思考・認識できるようになるというメリットがあります。
自分にはどうにもならないことは、最初からなすがままにして、自分にできることに注力するなど、考え方をシンプルにできると悩みから解放されるでしょう。
考え方が変わるだけでパフォーマンスが向上することは多々あります。
無駄に悩むのをやめて、シンプルに物事を捉えてみましょう。
行動や感情をより生産的なものにする
アドラー心理学は、自分の目的をベースに行動をコントロールしていきます。
そのため、環境や過去のせいにすることなく、目的のために行動する量が増えていくでしょう。
くよくよ悩むくらいなら、勇気を持って現状を変える努力をするのがアドラー心理学です。
無駄に時間を消費せずに、目的達成のための行動をしていく方が生産的といえるでしょう。
コンプレックス・劣等感との折り合いをつける
アドラー心理学では、劣等感を認めています。
劣等感は理想があるから存在するので、受け入れて自分を高めるためのバネにしていきましょう。
そうすることで、劣等感から他人に当たってしまったり、非生産的な言動をしたりすることも少なくなります。
対人関係を良好にする
アドラー心理学ではヨコの関係を重視し、他人との関係を尊重する特徴があります。
また、問題を他人のせいにすることなく、自分の問題を自分で解決するアドラー心理学は、他人に必要以上に期待することがなくなるので、円滑な人間関係を築きやすい考え方といえるでしょう。
ビジネスにおいて対人関係は重要なので、対人関係に悩んでいる人ほどアドラー心理学を学ぶ意義があります。
アドラー心理学をビジネスで活かすには
最後に、アドラー心理学をビジネスに応用するテクニックや考え方を紹介していきます。
自分の仕事が誰かに貢献していることを自覚する
アドラー心理学では、他人への貢献を重要視しています。
ヨコの関係を重視するアドラー心理学では、他人を助けることにこそ大きな価値があります。
実際、ビジネスにおいてお金を稼ぐことは重要ですが、そのお金は必ず他者貢献による対価です。
困っている人に必要なサービスや物を提供し、その対価としてお金がもらえるという仕組みになっているので、アドラー心理学の考えを意識してみるとビジネスもスムーズに進みやすいことでしょう。
上司・部下のコミュニケーションの取り方を考え直す
また、アドラー心理学では、他者と自分を切り分け、目的のために行動する勇気を持つ必要性を説いています。
その際、ヨコの関係として、上司でも部下でも対等な人間として接する意識が大切です。
もちろん、無礼な言動をしていいというわけではありません。
ただ、人として上司でも部下でも尊重した態度を取る必要があるという話です。
アドラー心理学をお互いに学んでいれば、他者を尊重する考え方ができるようになり、よりスムーズな上司・部下の関係になれるでしょう。
悩むことを問題だと思わない
また、アドラー心理学では悩むことは問題ではありません。
劣等感を感じることは、理想があるからこそ生じる問題だからです。
悩みがあることは苦しい事態ですが、その悩みを分解して、原因となる理想を突き止めましょう。
そして、勇気を出して理想へ一歩前に踏み出してみてください。
そうすることで、悩みは少しずつ改善に向かい、達成感が感じられます。
まとめ
アドラー心理学は「個人心理学」と呼ばれ「人は目的のもと生きている、幸せになるには勇気を持つ」という思考から発展した心理学です。
アドラー心理学の主な特徴は、以下の5点です。
目的論
劣等感
課題の分離
ヨコの関係
勇気づけ
アドラー心理学を応用すれば、ビジネスシーンだけでなく、人間関係全般の問題において役立てることが可能なので、興味のある方はぜひ一度アドラー心理学を学んでみてください。
アドラー心理学の考えを実践し、目的に向かって生き生きと生活する人間を目指していきましょう。
参考:アドラー心理学とは?「嫌われる勇気」に学ぶ、人生と対人関係を変える方法
参考:「嫌われる勇気」を仕事で活かす方法を徹底解説!『他者への貢献』とは? | 識学総研
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