新卒採用の際、多くの企業様は自社の基幹技術を支える人材を求めています。
そういった人材確保のため、旧帝大早慶層の理系大学院生の採用に特に力を入れている企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの一流企業が採用ターゲットとしてプロモーションを行う結果、採用は簡単ではないとお感じの人事の方も多いかと思います。
旧帝大早慶層の理系大学院生に正しく採用ブランディングを行っていく上で、志向性や企業選択の軸などについて学部生との差分も理解しながら、その傾向・特徴を理解することが有益です。
本稿では、当社が実施した「2024年卒 最上位校就職人気企業ランキング」調査から得られたデータを基に、旧帝大早慶層理系大学院生の傾向分析結果をご紹介します。
過去のデータや他大学のデータについては、以下よりお問い合わせください。
https://www.recme.jp/for-company/
1. 本記事でお伝えしたいこと(サマリー)
24卒旧帝大早慶層の理系大学院生と理系学部生を対象にした就活実態調査を行った結果、以下のような実態がわかりました。
・理系大学院生の志望企業ランキングTOP30内16企業が「化学・食品・電機業界」
・技術職採用を検討している理系大学院生は、理系学部生より多い傾向
・企業を選ぶ際に「チャレンジ性のある仕事・将来的な教育の支援」を重視するのは理系大学院生特有の傾向として顕著
・キャリアゴールとして「スペシャリスト」を目指す理系大学院生が49.72%、「リーダー・マネージャー」を目指す理系大学院生が40.56%でランキング1,2位
・キャリアゴールとして「国際的な職業」を重視するのは理系大学院生特有の傾向として顕著
・業界全体、さらに国際的なフィールドで、「その道の第一人者になりたい」と考える傾向
・理系大学院生向け採用ブランディングにおいては、「挑戦機会の充実・教育支援の充実・国際的な業務の機会」の訴求がポイント
・将来的に「国際的なフィールドでその道の第一人者」を目指すことができるような成長環境を紹介できると効果的
2.志望企業ランキング
この章では、理系大学院生の志望企業ランキングを発表します。さらに理系大学院生ならではの志望企業の傾向も解説していきます。
2-1 調査結果
Q:下記の企業リストの中で、どの企業を就職先として検討しますか。該当するものを5社までチェックしてください。
※企業リストは弊社にてリストアップした約400社
2-2 傾向
以上のデータから、理系大学院生特有の傾向として以下の2点が見えてきました。
(1)化学・食品・電機などの業界が人気
理系大学院生の志望企業ランキングTOP30社のうち、半数以上を化学・食品・電機業界の企業が占める結果となりました。(図表の青色の企業)
(2)総合商社の人気がやや低下
学部生の順位をみると1位、2位はいずれも総合商社です。一方で理系大学院生の順位では総合商社の最高順位は4位(三菱商事)にとどまり、2位、3位はソニーグループ(電機)と旭化成(化学)となりました。
ランキングの半数以上を占めている化学・食品・電機系の企業の多くは、技術職採用を行っています。ランキング2、3位のソニーグループや旭化成でも技術職採用を行っています。理系大学院生には、総合職採用ではなく技術職採用(理系就職)を検討している学生が多い可能性が示唆されます。
3.企業を選ぶ際に重視する特徴
この章では、理系大学院生が「企業を選ぶ際に重視する特徴」についての調査結果、およびそこから考察できる理系大学院生の傾向を解説します。
3-1 調査結果
Q:ご自身が企業を選ぶ際に重視する特徴は何ですか?該当するものをすべて選択してください。
3-2 傾向
以上のデータから、理系大学院生特有の傾向として以下の2点が見えてきました。
(1)「チャレンジ性のある仕事」を好む
「チャレンジ性のある仕事」(2位)を選択する理系大学院生の割合は45.35%であり、理系学部生よりも2.73%高い結果となりました。この差分は魅力要因上位15項目の中ではもっとも高い値でした。
理系大学院生は、理系学部生よりも「チャレンジ性のある仕事」を好む傾向にあるといえるでしょう。
(2)「将来的な教育の支援」を求める
「将来的な教育の支援」(20位)は、魅力要因TOP20の中で理系大学院生と理系学部生の選択率の差がもっとも開いた項目でした。「将来的な教育の支援」(20位)を選択する理系大学院生の割合は19.15%であり、理系学部生よりも4.81%高い結果となりました。
理系大学院生は、理系学部生よりも「将来的な教育の支援」を好む傾向にあることがわかりました。
4.キャリアで目指すもの
この章では、理系大学院生がキャリアで目指すものについての調査結果と、そこから考察できる理系大学院生の傾向を解説していきます。
4-1 調査結果
Q:以下の九つのキャリアゴールの中からもっとも重要だと感じるものはどれですか?該当するものを三つ選択してください。
4-2 傾向
以上のデータから、理系大学院生特有の傾向として以下の3点が挙げられます。
(1)「スペシャリスト」、「リーダー・マネージャー」を目指す
キャリアゴールとして「スペシャリスト」(1位)を選択する理系大学院生の割合は49.72%であり、理系学部生よりも5.05%高い結果でした。「リーダー・マネージャー」(2位)を選択する理系大学院生の割合は40.56%であり、理系学部生よりも2.45%高くなりました。
理系大学院生は理系学部生よりも、「スペシャリスト・リーダー・マネージャー」を目指す傾向が顕著であることがわかりました。別の表現をすれば、「その道の第一人者になりたい」と考えている理系大学院生が多いといえるでしょう。
(2)「国際的な職業」を目指す
「国際的な職業」(6位)を選択する理系大学院生の割合は21.55%であり、理系学部生よりも5.57%高い結果でした。理系大学院生は理系学部生よりも、「国際的な職業」に就くことを目指す傾向があることがわかります。
本記事執筆者が理系大学院生にヒアリングしていても、日本だけでなく世界の中でその分野の第一人者になりたいと考えている理系大学院生も多いです。
理系大学院生は、旧帝大早慶層学生全体と比較して「世界を舞台に仕事をしたい」と考える傾向が強い可能性が考えられます。
(3)「ワークライフバランス」を重視しない
「ワークライフバランス」(7位)は、キャリアゴールランキングの中で理系大学院生と理系学部生の選択率の差がもっとも開いた項目でした。
「ワークライフバランス」(7位)を選択する理系大学院生の割合は20.56%であり、理系学部生よりも8.13%低い結果となりました。
理系大学院生は理系学部生よりも、ワークライフバランスを重視しない傾向があることが明らかになりました。
ワークライフバランスを軽視しているとまでは言えませんが、ワークライフバランスがとれていることを最優先とするのではなく、多少苦労してでもその道の第一人者になりたいという志向性が強いと考えらえます。
5.【理系大学院生向け】採用ブランディングのポイント
この章では、理系大学院生に特化した採用ブランディングのポイントを解説していきます。
ここまでの調査結果を踏まえると、自社の魅力の中に
・挑戦機会の充実
・教育支援の充実
・国際的な業務の機会
と通じる部分があれば訴求することが望ましいといえそうです。
※理系大学院生の中にも一人一人の学生には個性があり、異なる志向性を有します。そのため、とくに採用数が少ない場合は理系大学院生の傾向に影響されすぎず、自社の魅力がもっとも刺さるペルソナを定義することも重要です。
本稿で紹介する観点は、あくまで「理系大学院生の母集団シェアを最大化すること」を目的に、参照いただければと思います。
(1)挑戦機会の充実
その道の第一人者を目指す上では、その過程で相応の挑戦機会が必要です。理系大学院生に訴求する上で、たとえば以下のような内容で自社の訴求ができないか検討してみるとよいでしょう。
・自社の業務/扱う技術の先進性や、今後技術的にどのような課題に挑戦しているのか
・その業務に取り組む中で社員はどのように専門家として成長できるか/やりがいを得られるのか
・実際に業界やその技術領域で世界的に第一人者になっているような社員がいるのか
(2)教育支援の充実
その道で第一人者となるために、単に挑戦機会があるだけではなく、その道で第一人者となるために、ただ挑戦の機会があるだけでなく、挑戦できるだけのスキルを養う「適切な教育支援の提供」が必要です。これを強調することが効果的でしょう。
たとえば、以下のような観点での訴求ができないか検討してみてください。
・大学での専攻が直結していない場合でも、必要な知見・スキルを身に着けられる研修機会
・高い技術力を有する先輩社員からフィードバックを受けられる機会
・講演やワークショップ、学会や留学等、社内だけではなく社外でも学びを得らえる機会
等
(3)国際的な業務の機会
国内だけでなく、世界的なレベルで第一人者を目指していきたいという志向の大学院生も多いです。たとえば、以下のように国際的なフィールドでの業務経験、活躍機会があることを訴求できないか検討してみるとよいでしょう。
・海外の工場や研究所へのへの派遣、技術指導を行える
・社内で得られた知見を英語で論文発表する機会がある
・海外企業と連携する業務がある、技術交流がある
等
6.調査概要
※本調査についての詳細は、以下よりお問い合わせください。
https://www.recme.jp/for-company/
調査方法:
弊社主催の合同説明会の参加者、または弊社会員へのWEBアンケート
調査期間:
2023年2月20日~2023年3月15日
調査対象:
2024年卒予定の東京大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京工業大学、一橋大学、京都大学、大阪大学、神戸大学、北海道大学、東北大学、名古屋大学、九州大学の計12大学の大学生もしくは大学院生
※有効回答数は、全体2092名(理系953名、文系1139名)、理系大学生953名(学部生243名、大学院生710名)。
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