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持ち帰り残業の問題点と防止策|持ち帰り残業が発生する原因も解説

「持ち帰り残業」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
日本では現在、働き方改革の一環として、残業をなるべく減らす動きが進められています。
しかしその一方で、持ち帰り残業が増えていることが問題視されています。

本記事では、持ち帰り残業とは何か、問題点や防止策を踏まえて解説します。

「持ち帰り残業」とは何か

「持ち帰り残業」は、会社から仕事を持ち帰っておこなう残業です。
終業時間を過ぎたあと、自宅やカフェなどで、その日終わらなかった業務に取り組む行為を指します。

終業時間後に仕事する点では、通常の残業と変わりません。
しかし、社外でおこなわれるため、残業をしていることが把握されず、残業代が発生しないケースが多いのが特徴です。

持ち帰り残業の問題点

持ち帰り残業の代表的な問題点は、以下の5点です。

  • 残業代を支払わないと違法になることがある
  • セキュリティ面でリスクが発生する
  • 社員の健康に悪影響がある
  • 社員のモチベーションが下がる
  • 労働問題に発展するケースがある

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

問題点1:残業代を支払わないと違法になることがある

持ち帰り残業は社外でおこなわれますが、労働である以上、労働時間としてカウントされるべきものです。つまり、基本的に通常の残業と同様、残業代が支払われなくてはなりません。

ただし、持ち帰り残業のなかには、残業代の支払いが義務になるものと、そうでないものがあります。
詳しくは後述しますが、残業代の支払い義務がある場合に残業代を支払わないと、労働基準法に違反する可能性があるため、注意が必要です。

問題点2:セキュリティ面でリスクが発生する

持ち帰り残業には、セキュリティ面でのリスクもあります。
社外での作業は、仕事に関する資料やデータなどが社外に持ち出されることを意味します。

通常のテレワークであれば、社員がどこでどのくらい働いているのか把握は容易です。
また、テレワークを導入している企業であれば、社員に対してセキュリティ対策の指示や教育が実施されているでしょう。

ところが、持ち帰り残業の場合、社員がどこでどのような仕事をしているのか把握するのは難しく、そもそも持ち帰り残業の発生自体を見過ごしている可能性もあります。

このような状況では、以下のようなセキュリティリスクが発生します。

  • 社員が社内の資料を社外に置き忘れる・紛失する
  • 社員が社外に置き忘れた顧客情報が悪用される
  • 社員がカフェやコワーキングスペースなどで残業をした際、情報を盗み見られる
  • 社員が社外の公共Wi-Fiを使って仕事をした結果、パソコンに不正にアクセスされ、企業情報を盗まれる
  • 社員が個人のパソコンで作業した結果、ウイルス感染により重要データが失われる

特に危険なのは、機密情報や顧客情報などが盗まれ、悪用されるケースです。顧客の個人情報の流出が起こると、企業の社会的信用を大きく損なう恐れがあります。

問題点3:社員の健康に悪影響がある

持ち帰り残業は、社員の心身の健康に悪影響を与えます。具体的には以下の影響が懸念されるでしょう。

  • 労働時間が長くなり、心身への負担が増大する
  • 終業後に仕事することで、ストレスが増大する
  • 自宅でダラダラと作業することで業務効率が下がり、無駄に労働時間が増えていく

労働時間が長くなるだけで、社員の心身への負担は大きくなります。
持ち帰り残業の場合は社外で仕事をするため、より大きなストレスを感じる可能性があるでしょう。

また、社外では集中力が落ち、業務効率が下がりやすいため、さらに労働時間が長くなる悪循環が発生しやすい点にも注意が必要です。

問題点4:社員のモチベーションが下がる

持ち帰り残業が増えると、社員の仕事に対するモチベーションも下がってしまいます。

持ち帰り残業をする前提で働くため、本来の就業時間のモチベーションが低下します。結果として仕事が就業時間内に終わらないため、持ち帰り残業をすることになるのです。
また、持ち帰り残業は残業代が支払われないケースが多いため、無償でやらされている気持ちを社員に抱かせます。受動的な姿勢のまま作業していても、モチベーションは高まらないでしょう。

モチベーションが下がると業務効率が下がり、結果的により多くの持ち帰り残業が発生しやすい状況が生まれます。

社員のモチベーションを上げるためには、以下の記事を参考にしてみてください。

問題点5:労働問題に発展するケースがある

持ち帰り残業によって社員に健康上の被害が発生した場合、労災認定される場合があります。
過去には持ち帰り残業が原因となって社員が自殺した事例もあり、その事件は労災認定されました。

持ち帰り残業は労働時間や負担を把握しにくく、労働災害の発生を未然に防ぎにくいのが特徴のひとつです。
労働災害が発生してはじめて持ち帰り残業の実態が明らかになる場合も少なくありませんが、そうなってからでは手遅れです。

社員の健康被害や労働問題を避けるためにも、持ち帰り残業の防止が重要だといえるでしょう。

残業代を支払わないと違法になる場合

持ち帰り残業には、残業代の支払いが義務になる場合とならない場合の2種類があります。
このうち残業代の支払い義務が発生するのは、主に以下の2つのいずれかに該当する場合です。

  • 会社や上司が指示した場合
  • 黙示の指示があった場合

それぞれ詳しく解説していきます。

ケース1:会社や上司が指示した場合

まずは、会社や上司が「持ち帰り残業をしなさい」と直接指示をした場合です。

その場合、持ち帰り残業は会社の指揮のもとでおこなわれた労働に該当するため、労働時間にカウントされ、賃金の支払いが義務になります。
この場合に会社が残業代を支払わないと、違法行為に該当する可能性が高いため、ご注意ください。

ケース2:黙示の指示があった場合

会社や上司が直接指示していなくても、黙示の指示(暗黙の指示)があったと見なされる場合、残業代の支払い義務が生じます。

黙示の指示とは、例えば以下のような場合です。

  • 持ち帰り残業なしでは終わらない業務量を課した場合
  • 部下が持ち帰り残業していることを知っていて黙認していた場合

上記2つのいずれかに該当し、裁判で「時間外勤務命令が存在していた」と判断された場合は、法的に支払い義務が生じます。

残業代を支払わなくても違法にならない場合

残業代が支払われなくても違法にならない持ち帰り残業には、以下のようなものがあります。

  • 必要不可欠でない業務を社員が自主的におこなった場合
  • 「管理監督者」が持ち帰り残業をおこなった場合

例えばある社員が上司から、1週間後の商談で使う資料を作るよう頼まれたとします。その資料は数時間あればできるもので、残業してまでその日におこなう必要はありません。
それにもかかわらず、社員が「この仕事を今日終わらせれば、来週はもっと余裕を持って仕事ができる」と考え、持ち帰り残業をしたとします。

この場合、社員の持ち帰り残業は「会社の指揮のもとでおこなわれた労働」とは見なされず、社員の自主的な行動と見なされます。よって、残業代の支払い義務は生じません。

また、労働基準法上の「管理監督者」が持ち帰り残業をした場合も、残業代の支払い義務は発生しません。

持ち帰り残業が発生する原因

持ち帰り残業が発生する主な原因として、以下の5つが挙げられます。

  • 働き方改革の影響
  • 割り振られる仕事量に無理がある
  • 就業時間中の業務効率が悪い
  • 社員が自主的に持ち帰っている
  • 持ち帰り残業すべきという暗黙のルールがある

日本国内では現在、「働き方改革」が進められています。働き方改革のなかには「長時間労働の是正」も含まれており、これに積極的に取り組んでいる企業も少なくありません。
しかし、仕事の絶対量や業務効率が改善されずに労働時間だけを短くした場合、未処理の仕事がどんどん増えていくことになります。

その結果、持ち帰り残業が増えてしまっている側面があります。もちろんこれは、本来の「長時間労働の是正」に繋がっていません。

また、1日の仕事量が就業時間内に終わらない量になっていたり、就業時間内の業務効率が悪いために仕事が片付かなかったりすることも、持ち帰り残業の発生原因です。

さらに、ここまで紹介したような原因はないものの、社員が自主的に持ち帰る場合や、会社によっては「持ち帰り残業するのは当然」という暗黙のルールがあり、持ち帰り残業を発生させているケースも見受けられます。

持ち帰り残業を防止するには

ここからは、持ち帰り残業を防止するための4つのポイントを紹介していきます。

  • 仕事量と時間を正しく把握する
  • 業務を効率化する
  • 持ち帰り残業についてのルールを作る
  • コミュニケーションを活性化する

それぞれ詳しくみていきましょう。

防止策1:仕事量と時間を正しく把握する

持ち帰り残業は、社員の仕事量が就業時間内に終わらない状態において発生します。そのため、持ち帰り残業を予防するうえで、社員の担当業務量の把握が重要となります。具体的には以下のポイントをチェックしましょう。

  • 各社員が担当する業務のボリューム
  • 各社員の業務スピード

上記2点を把握し、1日の就業時間内に終わる現実的な仕事量を割り振っていければ、持ち帰り残業の発生を予防できるでしょう。

防止策2:業務を効率化する

適切な業務量を割り振ったとしても、業務効率が悪ければ、就業時間内に仕事を終わらせるのは難しいでしょう。

仕事の工程を見直し、効率化できる点はないかチェックしてみましょう。
業務が効率化されれば持ち帰り残業が減り、社員のモチベーション向上や全体的な生産性の向上が期待できます。

防止策3:持ち帰り残業についてのルールを作る

持ち帰り残業は好ましいものではありませんが、いきなりゼロにするのは難しいかもしれません。
急なトラブルで取り組むはずだった仕事ができず、持ち帰り残業をしなければ翌日以降に支障がでるケースもあるでしょう。

そのような場合に備え、以下のようなルールをあらかじめ定めておくのがおすすめです。

  • 持ち帰り残業が許される条件
  • 上司から許可を取る・労働時間を申告するなどのルール設定
  • 社外に持ち出してよい資料・持ち出し禁止の資料の線引き
  • 利用デバイスやセキュリティ対策についてのルール設定

ルールを作って共有することで、持ち帰り残業についてより慎重な姿勢の社員が増えていくはずです。

防止策4:コミュニケーションを活性化する

コミュニケーションの活性化も、持ち帰り残業の防止には欠かせません。
日頃からコミュニケーションを十分にとることには、以下のようなメリットがあります。

  • 「モチベーションが高いか低いか」「仕事を抱えすぎていないか」「ストレスを抱えてないか」などを会社や上司が把握できる
  • 互いに協力し合うことで業務効率が上がる

これらのメリットは持ち帰り残業を防ぐだけでなく、社員が快適に働ける社内環境づくりに役立ちます。

まとめ

本記事では、持ち帰り残業とは何か、持ち帰り残業の問題点、持ち帰り残業が発生する原因や防止策を解説しました。

持ち帰り残業には、セキュリティ面のリスクや社員の健康へのリスクなど、複数の問題点があります。
持ち帰り残業をいきなりゼロにするのは難しいかもしれませんが、本記事で紹介した対処法を参考に、持ち帰り残業を減らす取り組みを実践していきましょう。

参考:
持ち帰り残業とは?持ち帰り残業の違法性やリスクと持ち帰り残業の防止策 _ ビジネスチャットならChatwork
持ち帰り残業は労働時間(残業時間)に含まれるか? – そこが知りたい!残業代請求コラム(弁護士監修)|労働問題の弁護士への法律相談

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