社員が会社に本音を伝えきれていないケースは少なくありません。
「社員が何を考えているかわからない」「もっと本音を聞きたいのに、なかなか難しい……」多くの経営者や管理職が抱える悩みではないでしょうか。
しかし、社員の「本音」こそが、組織の隠れた課題を発見し、生産性向上や離職防止につながる重要なカギとなります。
本記事では、社員の本音が重要な理由や、実際に社員が抱えがちな不満の具体例、そして本音を引き出すための効果的な方法や環境づくりのポイントを解説します。
この記事を最後までお読みいただければ、社員の真の声に耳を傾け、より良い組織へと変えていくためのヒントが見つかるはずです。
なぜ「社員の本音」が重要なのか
パーソル総合研究所の調査によると、従業員の半数以上が、上司との面談やチーム内の会議で本音を話せていないのが現状です。
風通しの悪い職場では経営や人事における不正リスクが高まるとされており、社員の本音を把握することには以下のようなメリットがあります。
- 経営・人事における課題解決につながる
- 組織改善のヒントになる
- 離職率の低下につながる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
経営・人事における課題解決につながる
従業員の本音を把握することは、企業にとって職場の課題を早期に察知し、重大な問題に発展する前に対処するための重要な手がかりとなります。
風通しの悪い職場では、問題が表面化しにくく、不正の温床となるおそれがあるため、日頃から従業員の声に耳を傾ける姿勢が重要です。
組織改善のヒントになる
従業員の本音を引き出すことは、組織の課題を明確にし、改善の方向性を見出すためにも重要です。
JTBが提供する「WILL CANVAS」は、約30年にわたるワーク・モチベーション理論の研究をもとに開発されたHR-Techサーベイであり、組織開発を支援するツールとして活用されています。
このツールを活用した事例では、以下の効果が報告されています。
- 従業員の率直な意見や感情を把握することで、組織の潜在的な問題点が浮き彫りになった
- 従業員のモチベーションに影響を与える要因を特定し、それらに対処することができた
- 従業員の声に耳を傾け、それを反映させることで、組織全体の一体感と信頼関係が強化された
- 従業員のアイデアや提案を取り入れることで、イノベーションと継続的な改善が促進された
「WILL CANVAS」は、組織の現状を可視化し、課題の優先順位を明確にすることで、具体的な改善施策の立案を支援するツールです。28のサブカテゴリーに対して約700種類の施策アイデアを提示する機能もあり、組織の課題解決に役立てられています 。
このように、従業員の本音を引き出し、それらを組織運営に活かすことは、組織の活性化やパフォーマンスの向上につながります。従業員一人ひとりの声を大切にする組織文化を育むことが、持続的な成長と発展のカギとなるのです。
離職率の低下につながる
離職率を低下させるためには、社員の本音を把握することが重要です。表面的な満足度調査やアンケート結果だけでは、社員の本当の気持ちはわからないでしょう。
特に注意すべきは、本音を言わないまま黙って離職してしまう社員の存在です。彼らの声を拾い上げることができなければ、離職率の上昇を招くおそれがあります。
たとえば、飲食チェーンを展開する株式会社ホットランドでは、新入社員の離職率が高いという課題に直面していました。この問題に対処するため、同社は人事部による個別面談の実施や育成体制の強化、退職者への面談などの施策を導入しました。
これらの取り組みにより、2016年には新入社員17人中5人が離職していた状況から、2017年には15人中1人の離職に改善されました。
社員が抱えがちな不満の例5つ
社員が抱えやすい不満や悩みとしては、以下の5つが挙げられます。
- 上司が話を聞いてくれない
- 自分の意見を伝えても意味がないと感じる
- 正当に評価されていない
- 公平に扱われていないと感じる
- 弱音を吐けない、相談できない
それぞれ詳しく解説します。
上司が話を聞いてくれない
上司が話をさえぎったり、結論を急いだりすることで、部下は「どうせ言ってもムダだ」と考え、意見を伝えること自体をためらうようになります。
また、コミュニケーションの場や機会が十分に提供されていない場合も、部下は上司が自分の話を聞いてくれないと感じ、不満を抱えます。
自分の意見を伝えても意味がないと感じる
トップダウンで現場の声が反映されない環境にいたり、過去に意見を言っても何も変わらなかった経験があったりすると、社員は諦めの気持ちから自分の本音や意見を口にしなくなります。
正当に評価されていない
努力が正当に評価されないことも、社員の不満につながる原因です。One人事株式会社の調査によると、以下のような結果が明らかになっています。
- 約6割のZ世代が自身の給与に不満を持っている
- 41.3%が会社からの評価が正しくないと感じている
社員が正当に評価されていないと感じるおもな理由は以下のとおりです。
- 上司や人事部門とのコミュニケーション不足で仕事ぶりや成果が正しく伝わっていない
- 評価基準が曖昧で、何を基準に評価されているのかわからない
- 成果主義の導入が不十分で、がんばった分だけ評価に反映されない
- 同僚と比べて、自分のほうが高い成果を出しているにもかかわらず、評価に差がつかない
- 会社の業績不振により、全体的に評価が低くなっている
社員が正当な評価を受けられないと感じると、モチベーションが大きく低下し、生産性の低下や離職率の増加につながります。
公平に扱われていないと感じる
SideHustle.comが実施した調査では、社員の60%が「えこひいきのせいで仕事への満足度が下がった」と答え、約半数(49%)が「不平等な扱いのせいで仕事上の機会を阻まれた」と感じています。
社員が公平に扱われていないと感じる理由としては、以下が考えられます。
- 昇進や評価の基準が不透明で、能力や成果が正当に評価されていないと感じている
- 特定の社員だけが優遇されており、機会が平等に与えられていないと感じる
- 上司が社員によって態度を変えたり、不適切な言動をしている
- 社員間の報酬格差が大きく、同じ仕事をしているのに待遇に差があると感じる
- 性別、年齢、学歴などの属性によって差別的な扱いを受けていると感じる
社員が不公平感を抱くと、仕事へのやる気が低下し、職場の人間関係も悪化しかねません。ます。さらに、優秀な人材が不満を感じて退職してしまうおそれもあります。
弱音を吐けない、相談できない
社員は以下のような理由から、弱音を吐いたり相談したりすることを躊躇してしまいます。
- 上司や同僚から「弱い人間だ」と思われることをおそれている
- 相談しても理解してもらえないと感じている
- 周りに迷惑をかけたくないと考えている
- 自分だけが苦しんでいるわけではないと自分に言い聞かせている
- 弱音を吐くことは恥ずかしいことだと考えている
業務過多やストレスにより限界を感じていても、社員がそれを口に出せずに我慢してしまうケースは少なくありません。キャパオーバーの状態が続くと、心身に不調をきたすおそれがあります。
長期的なストレスは、うつ病やパニック障害などのメンタルヘルス不調のリスクを高めると指摘されています。心理的な負担が大きくなると、仕事のパフォーマンスも低下してしまうでしょう。
社員が本音を言いやすい環境のつくり方
社員が本音を言いやすい環境のつくり方を、以下の3つに分けて解説します。
- 心理的安全性を確保する
- 一人ひとりと信頼関係を築く
- 定期的に本音を収集できる場・仕組みをつくる
詳しく見ていきましょう。
心理的安全性を確保する
社員が本音を語れる職場環境を整えるためには、心理的安全性の確保が不可欠です。心理的安全性とは、社員が自分の意見や感情を安心して表現できる状態を指します。
このような環境を築くことで、社員はミスや疑問、不満を口にすることへの不安が少なくなり、率直な意見が生まれやすくなります。
心理的安全性を確保するためのポイントは以下の4つです。
- 社員の意見や感情を受け止める姿勢を示す
- ミスを許容する文化を育てる
- 定期的に1対1の面談を行う
- チームビルディングを促進する
まず、上司が否定的な反応を避け、社員の意見に耳を傾ける姿勢を見せることが重要です。これにより、社員が自分の考えを表現しやすい雰囲気が生まれます。
また、失敗をおそれずにチャレンジできる環境を整えることも必要です。ミスから学ぶ姿勢を示し、社員が安心して新しいことに挑戦できるようサポートしてください。
社員との個人面談を通じて、悩みや不安を吐露してもらう機会を設ける取り組みも効果的です。日頃から積極的にコミュニケーションを取ることで、社員との信頼関係を築けるでしょう。
さらに、チームのつながりを強めるために社内イベントや交流会を企画すると、お互いを理解し合える関係性の構築につながり、心理的安全性が高まります。
一人ひとりと信頼関係を築く
社員からの意見を引き出すだけでは、信頼関係の構築には不十分です。社員が「言っても何も変わらない」と感じれば、せっかく集めた声が無駄になってしまいます。
社員一人ひとりと信頼関係を築くには、以下の取り組みが効果的です。
- 集まった意見にどう対応するかのルールや方針を明確にし、社員と共有する
- 実現が難しい要望についても、その理由をきちんと説明して納得感を得る
- フィードバックへの対応ルールを文書化し、社内で周知する
- 定期的に意見への対応状況を開示し、進捗を可視化する
このように、社員の声に真摯に耳を傾け、透明性をもって対応することが重要です。コミュニケーションを大切にし、社員が安心して本音を言える環境を整えていきましょう。
定期的に本音を収集できる場・仕組みをつくる
社員の本音を引き出すことは、一度きりのイベントではありません。組織の変化に対応し続けるためには、社員の声を継続的に拾い上げる仕組みづくりが不可欠です。例えば、以下のような取り組みが考えられます。
- 1on1ミーティングを定期的に実施し、上司と部下が率直に意見交換できる場を設ける
- 匿名アンケートを定期的に行い、社員が安心して本音を吐露できるようにする
- 意見投稿ボックスを設置し、いつでも自由に提案や不満を提出できる環境を整える
このように、形式にとらわれず、社員が自然に意見を出せるタイミングを複数用意することが大切です。さまざまなタイプの社員がいるなかで、一つの方法だけでは声を拾い上げることはできません。
多様な「場」を制度として整備し、社員の声を漏れなく吸い上げる体制を構築することが、社員の本音を活かした組織づくりには欠かせません。
定期的な本音収集の仕組みを確立することで、社員は自分の意見が尊重され、組織の改善に役立てられていると実感できるはずです。そうした環境があってこそ、社員はモチベーション高く働き、組織の成長に貢献していけます。
社員の本音を引き出すための具体的な質問例
社員の本音を引き出すには、日頃からどのようなコミュニケーションを取ればよいのでしょうか。ここでは、以下の3つのシーンに分けて具体的な質問例を紹介します。
- オフィスでのカジュアルな会話
- 1on1ミーティング
- 匿名アンケート
オフィスでのカジュアルな会話で使える質問
軽い雑談の延長として以下のような質問をすることで、社員の本音を引き出せる可能性があります。
- 最近、仕事でちょっと困っていることってある?
- なんか最近、業務でモヤモヤしていることはない?
- この前のプロジェクト、何かやりにくかったことってある?
ポイントは、質問を軽い雰囲気で投げかけ、相手の反応を見ながら徐々に深堀りしていくことです。いきなり重たい話をするのではなく、日常会話の延長線上で自然に切り出します。
相手が話し始めたら、じっくりと耳を傾けましょう。共感を示しながら、適切なタイミングで掘り下げるための質問を投げかけていきます。「そのモヤモヤの原因って何だと思う?」「そのやりにくさを解消するためには何が必要だと思う?」など、建設的な方向に話を導いていくことが大切です。
社員の本音に耳を傾けることで、職場の課題やストレス要因を把握し、改善へとつなげられます。カジュアルな雑談から始めて徐々に深い話へと移行していく、という自然な流れを意識してください。
1on1ミーティングで深掘りするための質問
1on1ミーティングでは、社員の本音を引き出すための質問が重要です。以下のような質問を投げかけ、普段は言いにくい悩みや課題を引き出しましょう。
- 最近、仕事で意見を出しづらいと感じたことはある?
- ここ最近忙しさが続いているけど、無理はしていない?
- チームや上司との関係で、何か気になることはある?
答えにくいテーマこそ、1on1の信頼関係のなかで丁寧に聞くことがポイントです。相手の反応を見ながら、適切なタイミングで掘り下げの質問をしていきましょう。
「その状況で、どんなことを感じた?」「それによって、どんな影響が出ていると思う?」のように具体的な状況や影響を聞いていくと、問題の本質に迫れます。
匿名アンケートで収集する際の質問
匿名アンケートを使って社員の本音を収集する際は、以下のような質問を盛り込むことが効果的です。
- 現在の評価制度に満足していますか?
- 最近、職場で不公平に感じたことはありますか?
- 仕事に対してストレスや限界を感じていることはありますか?
- 意見を伝えても変わらないと感じることはありますか?
- 仕事上で感じた不満を上司や同僚に相談しやすいと感じますか?
これらの質問は、社員が日頃感じている不満や課題を引き出すのに役立ちます。特に、評価制度への満足度や職場での不公平感、ストレス、意見の反映度合い、相談のしやすさなどは、社員のモチベーションや生産性に大きな影響を与える要因です。
匿名アンケートでは「選択肢形式」と「自由記述形式」の質問を組み合わせるのが理想的です。選択肢形式の質問では数値的なデータを取得でき、自由記述形式の質問では社員の生の声を拾い上げることができます。
アンケートの設計に際しては、質問の順番や言葉選びにも気を配りましょう。答えやすい質問から徐々に核心に迫るような流れにすると、回答率や回答の質が高まります。また、質問文は平易な言葉で簡潔に表現し、誘導的な表現は避けることが大切です。
社員の本音を引き出して会社の成長につなげよう
社員の本音に耳を傾けることは、企業にとって不可欠な取り組みであり、不正リスクの回避や組織改善、離職率の低下につながります。
しかし、多くの社員が上司や会議で本音を言えておらず、「話を聞いてくれない」「意見を言っても無意味」「正当な評価や公平な扱いがされていない」「弱音を吐けない」といった不満を抱えがちです。
社員の本音を引き出すためには、カジュアルな会話や1on1、匿名アンケートなど、多様な場面で適切な質問を投げかける工夫が必要です。さらに、心理的安全性の高い環境を整備して、社員一人ひとりと信頼関係を築き、定期的に本音を収集できる仕組みをつくり上げる必要があります。
社員の本音は、単純に質問するだけではなかなか引き出せません。本音を伝えられるような機会や、日頃からの信頼関係があってこそ、社員は本当の声を上げてくれるのです。そして、集めた本音を組織改善につなげるためには、その後の適切な対応も不可欠です。
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