事業を効率よく展開し成功につなげるためには、事前に立てる戦略が重要な鍵となります。事業ドメインは、事業成功に向けて決定するべき大切な要素のひとつです。
事業ドメインの決定を上手く行うには、事業ドメインに関する正しい知識や深い理解が欠かせません。
本記事では、事業ドメインを設定するべき理由やポイント、事業ドメインの設定による成功事例などを解説します。
事業ドメインとは
はじめに、事業ドメインの概要や、似たイメージを持ちやすい用語との違いについて解説します。
企業の事業領域・本業となる事業活動
事業ドメインとは、企業の事業領域や本業となる事業活動を意味する用語です。具体的には以下のような内容を指します。
- 誰に向けて事業を行うか(商品・サービスを提供する対象)
- 何を提供するか(提供する商品・サービスの内容)
- どのように提供するのか(大量生産、受注生産、オーダーメイド、セミオーダーメイドなど)
このように、事業の対象や進め方などを絞ったものが事業ドメインです。すなわち事業ドメインの設定は、事業活動の範囲の設定とも言い換えができます。
市場セグメンテーションとの違い
事業ドメインと似た用語として、「市場セグメンテーション」があげられます。
市場セグメンテーションは、顧客の属性や嗜好ごとに市場を細分化したものです。自社のターゲットとする市場を決定するために行います。近年では顧客の価値観やニーズが多様化しているため、市場を細分化したうえで、ターゲットとする顧客をピンポイントに狙うのが効果的です。
事業ドメインと市場セグメンテーションの大きな違いは設定する範囲です。事業ドメインは、事業の進め方や活動の範囲を設定します。一方で市場セグメンテーションは、ターゲット層の決定が主な目的です。すなわち市場セグメンテーションのほうが、扱う範囲がより小さいです。
市場セグメンテーションは、事業ドメインの決定に関わる要素のひとつともいえます。
経営理念との違い
経営理念は、事業を行う目的や、企業として目指すゴール・理想を言語化したものです。なぜ事業を展開するのか、どのように事業を進めるのかを表します。
経営理念の内容によっては、事業ドメインと似たイメージとなります。たとえば「その人に合ったスーツをオーダーメイドで提供し、ビジネスで活躍する人を支えたい」という経営理念は「誰に・何を・どのように」のすべてが入った内容です。事業ドメインとパターンが似ています。
しかし事業ドメインと経営理念は、何を表しているかの本質がまったく異なります。事業ドメインは事業領域・活動内容を具体的に定めたものです。一方で経営理念は、あくまでも価値観・ゴールを言語化したものであり、事業の範囲そのものの明確化が目的ではありません。
結果として似た表現になるケースはあるものの、根本的な意味合いは大きく異なります。経営理念は事業ドメインよりも、本質的・抽象的な概念です。
事業ドメインを設定するべき理由
事業ドメインを設定するべき理由として以下3点があげられます。
- ビジネスの軸やリソースを割く部分を明確にするため
- 競合となる相手を正しく把握することにつながる
- 企業の継続的かつ安定した成長が期待できる
それぞれ詳しく解説します。
ビジネスの軸やリソースを割く部分を明確にするため
事業ドメインの設定は、ビジネスの軸やリソースを割く部分を明確化するために必要です。
事業ドメインとしてビジネスの対象や内容を決定すれば、ビジネスの軸が生まれ、ブレない事業展開ができるようになります。自社が行うビジネスの方向性がハッキリとするため、一貫性のある事業展開が可能です。
また、自社にとって大切な要素やリソースを割くべき部分が明確になれば、不要な場所にリソースを費やしてしまうリスクを抑えられます。
軸がないままビジネスを進めると、方向性やゴールが曖昧になってしまうため、非効率な進め方をしてしまう恐れがあります。リソースの無駄遣いを起こすリスクもあり、利益率の低下につながります。
効率的な事業展開のためには、事業ドメインの設定によるビジネスの軸・リソースを割くべき部分の明確化が大切です。
競合となる相手を正しく把握することにつながる
事業ドメインの設定は、競合となる相手の正確な把握にもつながります。
自社のライバルとなる存在は、自社と同じようなビジネス展開を行う企業や、似た客層を相手にする企業です。効率的な事業展開のためには、競合分析が欠かせません。そして競合分析を行うには、競合相手がどこであるかを正確におさえる必要があります。
家族や友人グループなどが利用しやすい、低価格かつ提供スピードの早いレストラン(ファミリーレストランなど)を経営する企業を例に考えます。
この場合、提供するメニューの内容は違いますが、ターゲット層や提供方法が同じであるファストフード店が競合となりうる存在です。一方で、似たメニューを提供するお店でも、高級レストランは客層や提供する価値が異なるため、競合にはなりません。
もし事業ドメインを正しく設定していないと、「似たメニューを提供する」という理由だけで、競合となり得ない高級レストランをライバル視してしまう恐れがあります。その結果、効果の薄い対策をしてしまい、利益率や顧客満足度の低下を招いてしまうリスクがあります。
競合となる存在を正確に把握するためには、客層の明確化、すなわち事業ドメインの設定が大切です。
企業の継続的かつ安定した成長が期待できる
事業ドメインを設定すれば、自社が行うべき事業やビジネスが明確になります。力を入れるべき部分がわかりやすいため、リソースの無駄遣いや不要に事業範囲を広げるリスクが低いです。高い効果が期待できる事業のみに注力でき、結果として継続的かつ安定した成長につながります。
過度なリソース投入や無意味な事業拡大は、成長どころか退化の恐れが大きいです。顧客ニーズの多様化や労働人口の減少に対応しつつ、無駄を最小限にするためにも、事業ドメインを設定する必要があります。
事業ドメインを設定する際のポイント
事業ドメインを設定する際は、以下3点のポイントをおさえることが大切です。
- コア・コンピタンスを把握する
- 広すぎず狭すぎない、バランスのとれた範囲設定を行う
- 自社に適した市場を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
コア・コンピタンスを把握する
コア・コンピタンスとは、自社の中核となる強みを意味します。同業他社が真似できない、もしくは追いつけないような高いレベルの能力や要素です。コア・コンピタンスは以下の条件を満たす必要があります。
- 顧客に提供できる利益につながる
- 競合他社に真似されるリスクが低い
- ごく限られた分野だけでなく、ある程度広い範囲に活用できる
自社の中心的な強みであるコア・コンピタンスは、事業ドメインを設定するうえで欠かせない要素です。コア・コンピタンスを把握し、それをもとに自社の主力事業やアプローチの対象を明確にしていきます。
広すぎず狭すぎない、バランスのとれた範囲設定を行う
事業ドメインではアプローチの対象、すなわちターゲットを設定します。この際、広すぎず狭すぎない、バランスのとれた範囲設定を行うことが大切です。
ターゲットの範囲が広すぎると、的確なアプローチの実施が難しくなってしまいます。必要な経営資源が大きくなり、事業展開が追いつかない恐れも大きいです。かといって狭すぎる場合、そもそものターゲットが少なくなり、大きな売上や成果につながりません。市場の成長もすぐに止まってしまいます。
投入できるリソースの大きさと市場で期待できる可能性を考慮し、バランスの良い範囲設定が必要です。
自社に適した市場を選ぶ
事業の成功には、競合との差別化や、市場における優位性の確保が必要です。これらを実現するには、自社の強みを活かせる分野や、競合が少ない市場などを選ぶ必要があります。自社が競争優位を獲得できそうにない市場は、いくらリソースを投入しても成果が得られない恐れが大きいです。
自社の強みや弱みなどさまざまな要素を分析しつつ、自社に適した市場を選ぶ必要があります。
事業ドメインの成功事例
事業ドメインの設定における有名な成功事例として、以下の2社があげられます。
- セブンイレブン
- モスフードサービス
施策の展開や戦略策定を進めるにあたって、成功事例を参考にするのは効果的です。上記2社の事例について詳しく解説します。
セブンイレブン
セブンイレブンは日本の大手コンビニエンスストアチェーンです。事業ドメインを「近くて便利」と設定し、事業展開を進めています。
セブンイレブンの事業ドメインを紐解くと以下のようになります。
- 誰に:地域の住人全体
- 何を:日常生活で便利なもの
- どのように:24時間営業をはじめ、商品の取り置きや銀行設立、弁当の宅配サービスなど
「便利」の追求として、店舗で商品を提供するだけでなく、本の取り置きや近隣への体躯配サービスなどの展開も始めました。セブン銀行の設立も行い、店舗で手軽に銀行取引が実施できる状態も実現しています。このように幅広い事業展開をしていますが、一貫した軸があり、無駄が生まれていないことがわかります。
「近くて便利」として事業ドメインを設定し直したことにより、これまでの店舗という概念にとらわれず、顧客の満足度を高める新たな事業が実現した例です。
タニタ
タニタは当初、体重計をはじめとした計測機器を製造・販売する企業でした。そんなタニタですが、事業ドメインを「人々の健康を作る」として再定義し、新たな事業展開を進めました。なかでも有名な成功事例がタニタ食堂です。
もともと社員の健康維持および増進のために設けられていた社員食堂でしたが、低カロリーかつ栄養バランスのとれた食事内容に、多くの注目や需要がありました。そこで「タニタ食堂」として一般向けの食堂展開や、健康的な食事を作るための手法の公表を行なった結果、高い評価を実現しました。ほかにもレシピ本の発行や、本の内容をテーマにした映画の制作など、新たに始めた事業はさまざまです。
結果として新規顧客の獲得および売上アップを実現しました。これらの成果は、計測機器メーカーとしての事業展開だけでは得られなかったものです。事業ドメインの再定義により事業が広がり、大きな成果を得られた例です。
まとめ
事業ドメインの設定は、事業の方向性やリソースを投入する範囲を明確にするために必要です。事業の範囲がハッキリとするため、より効率的な事業展開や、成果を得られるような活動につながります。
事業ドメインの設定は、いくつかのポイントをおさえることで行いやすくなります。事業ドメイン設定の成功事例を参考にするのも効果的です。今回紹介した内容をもとに事業ドメインを設定し、事業をより良い方向に進めていきましょう。
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