理想の組織づくりを考えることは、会社を経営するうえで欠かせない要素の一つといえます。
組織には様々なタイプがあり、会社に合った組織体制を採用することで、高いパフォーマンスを維持しながら業務に取り組めるようになります。
本記事では、組織管理システムの一つである「ホラクラシー」について、メリット・デメリットを踏まえながら解説していきます。
ホラクラシーとは
ホラクラシーとは、役職の存在しないフラットな組織形態のことです。
ホラクラシーの特徴は、上司や部下といった上下関係が存在しないため、意思決定権が分散される点です。社員それぞれが対等なポジションであることから、各々が主体性を持って業務に取り組める労働環境となっています。
ホラクラシーを導入している代表的な企業としては、靴を中心としたECサイトを運営する「ザッポス」が挙げられます。
従来の組織体制と大きく異なるため、当初は社内から反対の声も上がっていたようです。しかし現在では、独自の組織づくりが功を奏して事業規模の拡大に成功し、世界中の経営者から注目される企業となっています。
参考:
ホラクラシー型組織のメリット・デメリット|ヒエラルキー型との違い – 福利厚生のRELO総務人事タイムズ
ホラクラシー組織のメリット・デメリットとは? ティール組織との違いも併せて解説
ヒエラルキーとの違い
ホラクラシーと真逆の組織形態が、ヒエラルキーです。上下関係のない分散型の組織がホラクラシーであるのに対し、ヒエラルキー型は中央集権的で、上下関係が存在する組織形態です。
現在ほとんどの企業が採用している組織形態がヒエラルキー型といえば、イメージしやすいのではないでしょうか。
ヒエラルキー組織では、管理職やリーダーが意思決定を行ないます。一方、ホラクラシー組織は社内ルールに従い、個人やチームが意思決定していきます。
参考:ホラクラシー組織とは?これを読めばホラクラシー組織を完全理解 | ピポラボ | ピポラボ
ホラクラシーが注目される背景
従来の組織管理システムは、情報が流動的な現代社会に不向きだと言われています。
新しいテクノロジーが日々開発されたり、社員の多様化が加速してきたりするなかで、今までの組織構造では経営がスムーズに行なえないケースも増えてきました。
中央集権型であるヒエラルキー組織では、社員個人の意見は反映されないため、仕事のやりがいを見失う社員が発生してしまう課題がありました。
そこで登場したのが、分散型の組織体制であるホラクラシーです。社員ひとりひとりの裁量が大きいため、社員は責任感を持って主体的に業務するようになり、自分のパフォーマンスが会社の業績に繋がっていることを実感できます。
現代社会に適した画期的な組織管理システムとして、ホラクラシーは今後ますます注目されていくでしょう。
ホラクラシー組織のメリット
企業がホラクラシーを導入した場合、具体的には以下のようなメリットを実感できます。
- 意思決定スピードの向上
- 生産性の向上
- ストレス軽減やモチベーションアップ
- 社員の主体性の向上
柔軟な組織運営 それぞれ詳しくみていきましょう。
メリット1:意思決定スピードの向上
フラットな構造であるホラクラシー組織では、意思決定に上司や役員の承認を得る必要がありません。
確認の手間が省けるため、その分スピーディーに物事を進められる点がメリットの一つです。
例えば、大きな案件を獲得できそうな時、競合他社が上層部へ確認している間に素早く意思決定を行ない、先手を打つことも可能です。
ほかにも、新型コロナウイルスのような疫病が流行した際、ホラクラシー組織であれば業務体制を素早く修正できるため、影響を最小限に抑えられるでしょう。
メリット2:生産性の向上
ホラクラシー組織では、組織の管理業務が発生しません。上司への報告用に日報を作成したり、人事担当者が人事評価を行なったりする必要がない点は、一般的な組織体制と大きく異なる点です。
管理業務が発生しないことから、会社全体の業務量が減少するだけでなく、事業に直結する業務に集中することで、生産性の向上が期待できます。
メリット3:ストレス軽減やモチベーションアップ
上司からの理不尽な指示を受けることがなくなるため、社員のストレスを最小限に抑えられます。
従来の組織でよく見受けられるような、若手が雑務を担うという暗黙の了解も存在しません。
社員ひとりひとりが対等な関係であり、働き方の自由度も高いため、気持ちよく仕事ができます。
ストレスなく業務に取り組める環境であれば、自ずと社員のモチベーションも向上していくでしょう。
メリット4:社員の主体性の向上
上司が存在しないため、社員それぞれが自分で考えて行動していくのがホラクラシー組織の特徴です。
指示に従うといった受動的な労働スタイルではなく、自らやるべきことを見つけ出す自主性や、企業や社会への貢献を意識した働き方が社員には求められます。
社員それぞれに責任が分散されることで、主体性が向上します。主体的に仕事を進められることに喜びを感じ、高いエンゲージメントを保ちながら業務に取り組む社員も出てくるでしょう。
メリット5:柔軟な組織運営
ホラクラシー組織では、チームとして動くことはあるものの、管理職は存在しません。
それぞれが担当業務に集中し、役割を果たすために最大限のパフォーマンスを心がけます。部署という大きな枠組みで業務が割り当てられるわけではなく、個人単位で仕事を進められる点がホラクラシー組織の特徴の一つです。
プロジェクトごとに適した人材を配置し、必要に応じてチームメンバーを入れ替えることも容易であるため、ホラクラシー組織であれば流動的かつ柔軟な組織運営が実現できるでしょう。
参考: ティール組織とホラクラシーの違い〜2020年代も成長し続ける企業が探求すべき組織モデル〜 | ProSharing Consulting(プロシェアリングコンサルティング)
ホラクラシー組織のデメリット
ホラクラシーにはメリットが多数ある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- リスク管理が難しい
- 組織管理が困難
- コストがかかる
- 企業文化として定着するまでに時間がかかる
詳しくみていきましょう。
デメリット1:リスク管理が難しい
ホラクラシー組織では、上司や部下といった上下関係がなく、基本的に全員が同じポジションです。
誰でも重要な情報を入手でき、共有可能な点はメリットともいえますが、外部への情報漏洩には注意が必要です。
例えば新規事業を立ち上げる際に、重要事項の決定前に情報が外部へ漏れてしまうと、多くの利害関係者を混乱させてしまいます。そのような事態を避けるために、ヒエラルキー型の組織は一部の人間だけが情報を管理し、漏洩リスクを防いでいるのです。
ホラクラシー組織は社員同士の信頼関係によって成り立っているため、信頼関係の構築が不十分な組織に導入してしまうと、リスク管理の難しさからトラブルを招いてしまう可能性があります。
デメリット2:組織管理が困難
ホラクラシー組織は、個々人の主体的な行動を前提とした職場環境です。社員を信頼して業務を任せることから、社員ひとりの裁量権は従来のヒエラルキー組織より大きくなっています。
プロジェクトを管理するリーダーが存在しないホラクラシー組織は、チームをまとめるのが困難な一面を持っています。参加プロジェクトの進捗がわかりづらく、突然スケジュールが大幅に変更される可能性もゼロではありません。
組織として一つの仕事を完遂するという視点では、ヒエラルキー組織のほうが安心感を持って業務に取り組めるケースもあるでしょう。
デメリット3:コストがかかる
組織形態の改革には、コストが発生します。従来のような上下関係がなくなるため、今までとは異なる職場環境づくりが求められるでしょう。
新しい管理ツールや業務システムの導入には、当然ながらコストがかかります。
また、ホラクラシー組織での働き方を浸透させるためには、社員教育や研修を充実させる必要も出てきます。
組織形態の変更にはコストがかかることを念頭に置いたうえで、ホラクラシー体制を導入するか否かを判断しましょう。
デメリット4:企業文化として定着するまでに時間がかかる
ホラクラシーは、最近少しずつ広まり始めた組織形態です。そのため、組織の仕組みや社員の働き方を把握している人は少なく、ときにはホラクラシー組織への誤った認識を持ってしまうケースもあります。
従来の組織構造に慣れ親しんでいる社員にとって、ホラクラシー組織での働き方は最初戸惑うことも多いでしょう。一時的に業務効率が悪くなるケースもあるため、あらかじめ定着に時間がかかるものだと認識しておき、長期的な視点でホラクラシーを導入していきましょう。
参考:
ホラクラシー組織のメリット・デメリットとは? ティール組織との違いも併せて解説
ティール組織とホラクラシーの違い〜2020年代も成長し続ける企業が探求すべき組織モデル〜 | ProSharing Consulting(プロシェアリングコンサルティング)
ホラクラシーを運営する際の注意ポイント
ホラクラシー組織を効果的に運営する際に、押さえておきたいポイントは以下の3点です。
- 責任の所在を明らかにしておく
- 段階的に導入していく
- 自己管理能力の高い社員を起用する
それぞれ詳しく解説していきます。
ポイント1:責任の所在を明らかにしておく
ヒエラルキー組織の場合、責任者は基本的にリーダーやマネージャーといった上層部の人間人が担当します。
たとえ部下が原因のミスだとしても、部下の管理ができていないという理由で上司の責任が問われることもあるでしょう。
一方、ホラクラシー組織の場合は、社員同士の関係がフラットであることから、責任の所在が明らかではありません。
トラブル発生時に素早く対応できるように、あらかじめ責任の所在を明確にしておくことがホラクラシー組織には求められます。
ポイント2:段階的に導入していく
ヒエラルキー組織から突然ホラクラシー組織へと移行すると、組織形態の違いにより混乱を招く可能性があります。長年会社で働いてきた人であればあるほど急激な変化変革は受け入れにくく、場合によっては離職を選ぶ人も出てくるでしょう。
最初は小規模にチーム単位で導入してみて、社員の反応などを見ながら段階的にホラクラシー型を浸透させていくのが理想的です。
テスト運用を通じて、課題や改善の必要なポイントを明らかにしたうえで、自社に合ったホラクラシー組織づくりを心がけましょう。
ポイント3:自己管理能力の高い社員を起用する
ホラクラシー組織では、社員それぞれが自主性を持って能動的に動いていくため、自己管理能力の高さが重要です。
たとえ業務を進めるスピードが速くても、スケジュールや仕事量を自分で管理し、調整できなければ業務に支障が生じます。
管理職のいないホラクラシー組織では、自己管理能力の高い社員を積極的に採用しておくと、生産性の高い企業体質を作り上げられます。
参考:ホラクラシー型組織のメリット・デメリット|ヒエラルキー型との違い – 福利厚生のRELO総務人事タイムズ
まとめ
本記事では、分散型の組織形態であるホラクラシーについて、メリットやデメリットを踏まえて解説してきました。
ホラクラシーは従来のヒエラルキー型の組織とは異なり、社員間の上下関係が存在しません。意思決定のスピードが速く、社員が主体性を持って働けることから、ホラクラシー型の組織づくりを検討する企業も少なくありません。
ただし、従来の組織形態とは大きく異なるため、社員への理解を促しながら段階的に導入していくことが求められます。
また、組織文化として定着するのに時間がかかることから、短期的な効果を求めるのではなく、長期的な視点で組織改革を行なう意識が大切です。
ホラクラシーへの理解を深め、自社を成長させる組織づくりを目指していきましょう。
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