最近になって、「VUCA(ブーカ)」という言葉がビジネスの場で使用される機会が増えてきています。ビジネス雑誌やニュースなどで、見聞きしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、言葉を聞いたことがあっても、ビジネスの場でどのように活用されるものなのか、具体的にイメージできていない方も少なくありません。
そこで本記事では、VUCAの意味や、「VUCAの時代」と呼ばれている現代において、企業や個人が求められていることを紹介していきます。
VUCAとは何か
「VUCA(ブーカ)」は、将来の予測が困難な状況を示す言葉として使われています。
以下の言葉の頭文字を並べて作られたビジネス用語です。
- Volatility(変動性)
- Uncertainly(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
もともとVUCAは、予測困難な戦況を意味する軍事用語でした。ところが、最近ではビジネスの現場でも予測困難な状況がこれまで以上に意識され始めるようになり、その結果、ビジネス用語としてもVUCAが使われるようになりました。
ここからは、VUCAの示す4つの状況をそれぞれ解説していきます。
参考:「VUCA」の意味とは? VUCAの時代に必要なマネージャーのスキルやリーダーシップ、人材育成を解説 _ 人事のプロを支援するHRプロ
Volatility(変動性)
変動性は、短期間で物事が変化していくことを指します。変動性の高いものとしては、主に以下が挙げられます。
- 人々の中で主要となっている価値観
- 生活や仕事などを支える様々なテクノロジー
- 社会の仕組み
- 消費者のニーズ
- 市場の状況
これらはいずれもビジネスを進めるために欠かせない、重要な前提要素です。これらが変動すると、将来を予測し的確なプランを立てるのは困難になるでしょう。
例えば、消費者ニーズを掴み、そのニーズを満たす商品やサービスを作り出せたとします。ところが、商品やサービスが実現したときには、すでに消費者ニーズが別のものに変わっている可能性があります。Volatility(変動性)の高い現代社会では、状況が急変することも珍しくないため、スピーディーかつ柔軟性に富んだ対応が企業には求められています。
参考:VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと : i-Learning 株式会社アイ・ラーニング
Uncertainly(不確実性)
不確実性は、確実だと思えていた前提が崩れることを指します。
例えば現在では、これまで確実視されていた以下の事柄が、100%保証されるものではなくなってきています。
- 終身雇用
- 年功序列
- 会社に出勤して仕事をするワークスタイル
特に2019年からの新型コロナウイルスの感染拡大は、それまで確実視されていた従来の前提を大きく崩す要因になりました。
さらに今後も、病気の感染拡大や災害、気候変動によるビジネス環境の変化は避けられません。
参考:VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと : i-Learning 株式会社アイ・ラーニング
Complexity(複雑性)
複雑性とは、物事の成立に多数の要因が複雑に影響し合っている状況を指します。
例えば、グローバル化や情報化が進んだ結果、人・物・金が国境を越えて行き交うことが当たり前になりました。
国内、あるいは近隣国だけを対象としたビジネスであれば、ルールや商文化も把握しやすく、スムーズに事業が展開できるでしょう。
しかし、ビジネスのグローバル化が顕著になった現在では、ルールや商文化の複雑化が進み、物事を正確に理解することが困難になっています。
商品やサービスを同じ手法で販売しても、ある文化圏では成功し、別の文化圏では失敗するケースも珍しくありません。
参考:VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと : i-Learning 株式会社アイ・ラーニング
Ambiguity(曖昧性)
曖昧性とは、状況が正確に掴めないことです。
例えば、「化粧品を使うことでより美しくなり、自分らしい快活な毎日を過ごしたい」というニーズがあったとします。
しかし、ここに登場する「美しさ」「自分らしさ」「快活な毎日」という言葉の持つ意味は、消費者ごとに異なります。
一昔前であれば、画一的な消費者ニーズを満たせば商品やサービスは問題なく売れていました。ところが現在では、従来の成功事例をそのまま活用しても、同じような結果を出すのは困難です。
言葉の解釈が複数あったり、物事の因果関係が不明確であったりといった、曖昧性の高いビジネス環境にさらされているのが現代社会といえるでしょう。
VUCA時代の企業に必要な2つのポイント
VUCAの時代において、企業が押さえておきたいポイントは以下の2点です。
- 従来の日本型雇用システムからの脱却
- ステークホルダーとの対話
VUCAの時代に適応するため、特に重要なのは人材といわれています。先行きの不透明なビジネス環境において、古い考えに固執した組織経営の見直しは急務です。
終身雇用や年功序列といった言葉で特徴付けられる旧来の雇用システムは、一度採用した人材を長期に渡って雇用し続けることが前提になっています。
しかし現在は、採用時期によって自社の欲する人材やスキルが変化することも珍しくありません。そのため、多様な人材を確保して適材適所で配置することに加え、人材の流動を前提とした採用体制を構築する必要があるでしょう。
また、このような人材戦略の路線変更は、社内外のステークホルダー(消費者、従業員、株主など)の理解なしには成立しません。ステークホルダーの理解を得るための情報発信や対話を、リアルとオンラインの双方から取り組むことが求められます。
参考:「VUCA」の意味とは? VUCAの時代に必要なマネージャーのスキルやリーダーシップ、人材育成を解説 _ 人事のプロを支援するHRプロ
VUCAの時代に求められる対応
VUCAの時代に取り組んでおきたい具体的なアクションとしては、以下の4点が挙げられます。
- 明確なビジョン設定
- メンバー個々人のモチベーションアップ
- 新しい情報の収集と古いステレオタイプの払拭
- 解決策の選択・決断と実行
それぞれ詳しくみていきましょう。
アクション1:明確なビジョン設定
VUCAの時代は将来が予測しにくいからこそ、明確なビジョンの設定が重要です。
VUCAの時代では、多様な能力や視点を持ったメンバーが、自主的に動いていくことが求められます。その際、明確なビジョンが無ければメンバー間の足並みが揃わないため、期待した成果を出すのは困難です。
企業の進むべき道をビジョンという形で具体化しておくことで、個性あふれるメンバーが同じ方向を見て業務に取り組めるようになるため、スムーズな連携が期待できるでしょう。
参考:「VUCA」の意味とは? VUCAの時代に必要なマネージャーのスキルやリーダーシップ、人材育成を解説 _ 人事のプロを支援するHRプロ
メンバー個々人のモチベーションアップ
多様な能力や視点を持ったメンバーが自主的に動いていくためには、メンバー個々人のモチベーションアップが欠かせません。
参考:「VUCA」の意味とは? VUCAの時代に必要なマネージャーのスキルやリーダーシップ、人材育成を解説 _ 人事のプロを支援するHRプロ
トップダウン形式で、1つの意見や方法を教育したり指示したりしてしまうと、いくらメンバーが個性的であっても、個々の能力や個性を発揮できません。場合によっては仕事のやりがいを感じられなくなり、離職してしまうリスクもあるでしょう。
VUCAの時代におけるリーダーやマネージャーの役割は、メンバーの意見や主張を柔軟に受け入れ、メンバーの主体性を尊重することにあります。
「自分の意見や取り組みが、会社の業績に繋がっている」とメンバーに認識してもらえれば、モチベーションが向上し、高いパフォーマンスが期待できるでしょう。
モチベーション向上については、以下の記事でも詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
新しい情報の収集と古いステレオタイプの払拭
VUCAの時代は変化が激しいため、新しい情報を常に入手し、ベストな判断をしていかなければなりません。
そのためには、これまで当たり前とされていた常識を一度疑ってみることも大切です。「今までこうだったから」「世間一般ではこのように言われているから」といったステレオタイプを払拭し、新しい情報や価値観を素直に受け入れる姿勢が求められます。
情報収集の際には複数のツールを活用し、信憑性の高い情報元を参考にするよう心がけましょう。情報化社会の現在では、誤った情報や有益とはいえない情報も多いからです。
参考:「VUCA」の意味とは? VUCAの時代に必要なマネージャーのスキルやリーダーシップ、人材育成を解説 _ 人事のプロを支援するHRプロ
解決策の選択・決断と実行
VUCAの時代では、課題に対して解決策を選択・決断し、素早く実行に移すことが求められます。
もちろん、実行した結果が思わしくない場合には、素早く方向転換しなくてはなりません。
事業の先行きが予測しにくく、取捨選択する情報も膨大であれば、意思決定に踏み切るのは容易ではないでしょう。しかし、そのような状況でも最善と思われる解決策を選び、チーム全体を牽引できるリーダーシップが経営者には求められています。
参考:「VUCA」の意味とは? VUCAの時代に必要なマネージャーのスキルやリーダーシップ、人材育成を解説 _ 人事のプロを支援するHRプロ
VUCAの時代に個々人に必要な能力
VUCAの時代では、企業だけでなく、個々人も社会を生き残るスキルや能力を身につける必要があります。
個人が身につけておきたい能力は、主に次の6点です。
- 情報収集力
- 意志決定力
- 臨機応変さ
- コミュニケーション能力
- 問題解決力
- ポータブルスキル
それぞれ詳しく解説していきます。
必要な能力1:情報収集力
組織全体として新しい情報を収集することは大切だと説明してきましたが、個人においても同様です。
社員として、あるいは生活者としても、常に新しい情報を的確に収集・取捨選択し、有効活用していくスキルが求められます。
必要な能力2:意志決定力
十分に情報収集できたとしても、意志決定に時間がかかりすぎてしまうと、ビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
意志決定のためには、新しい情報だけでなく、十分な知識や経験、そして論理力が必要です。情報収集と合わせ、これらの知識やスキルの獲得にも努めていきましょう。
必要な能力3:臨機応変さ
VUCAの時代では、ビジネス環境の急変も珍しくありません。急激な変化に対しては、従来のやり方に固執せず、状況に合わせた柔軟な対応が取れないと、事態の悪化を引き起こす可能性があります。
ビジョンに沿って動きつつも、変化する状況に合わせてその都度ベストな対応を考え、柔軟に動く臨機応変さも大切です。
必要な能力4:コミュニケーション能力
VUCAの時代では、多種多様な人材が連携し、チームとして事業に取り組むことが大切です。
お互いが気持ちよくスムーズに仕事を進めるためには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
相手の意見を引き出す傾聴力や、自らの主張をわかりやすく伝える論理的な話し方を身につけることで、互いのパフォーマンスを最大化していきましょう。
必要な能力5:問題解決力
VUCAの時代では、「これさえやれば問題が解決できる」という明確な回答が得られないケースも珍しくありません。
そのため、リーダーの立場でない人間であっても、状況を把握し、主体的に問題への解決策を提案する姿勢が求められます。
必要な能力6:ポータブルスキル
ポータブルスキルとは、業種や職種をまたいで持ち運び可能な能力のことです。
VUCAの時代において、一つの会社に生涯働き続けることは簡単ではありません。勤務先や業種・職種の変更を経験する人も増えていくでしょう。
そのため、現在勤務している会社でのみ役立つスキルではなく、様々な業種・業界で通用する汎用性の高いスキルを身につける必要があります。
まとめ
本記事では、VUCAという言葉の意味や、VUCAの時代である現代において企業や個人が取り組むべきことについて紹介してきました。
VUCAの時代は、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高い時代であり、将来の予測を立てることは容易ではありません。
企業は明確なビジョンを設定したり、社員のモチベーションを高めたりすることで、結束力の高い柔軟な組織づくりを心がけ、個人としては情報収集力やコミュニケーション能力を研鑽していくことで、VUCA時代を力強く乗り越えられるよう努めていきましょう。
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